《すばらしき竜生!》第25話 冒険者組合
結局、一部始終を見ていた親切な兵士が冒険者組合の場所まで案をしてくれた。 その兵士は誰にでも親切に接しているらしく、道を歩く人に挨拶をされていた。その兵士も律儀に返しており、本當に人気の人らしい。
確かに男子と言えるほどイケメンで、ロードとは真反対の格だ。やっぱりどこの世界でもイケメンはモテるなぁ………と思うロードであった。
「悪いな、見回りとかで忙しいだろうに」「いやぁ、やっぱり國っていうだけあって広いからね。君達みたいに初めてくる人とか道が分からないんだよ。 実際に俺も最初に來た時は迷ったし。………いやぁ、あの時はマジで焦った」
ハハッと笑いながら頭をペシペシ叩いている。
「……にしても君達って珍しい組み合わせだよね。子供達も見た目からしてロード君とシエラさん、でいいのかな? の子供では無いようだし、兄妹でも無いよね?」「ガキ六人は俺が預かっているんだよ」
超級魔法の事を曖昧に誤魔化しながら説明をすると、兵士は納得したようで驚いていた。
「じゃあ君達が先生みたいなじなんだ。………やっぱり先生やってるだけあって強いの?」「いや、井の中の蛙かもしれないから自信満々に強いって言えないな………」「あはは、隨分と謙遜してるね。 ………俺の目からしたら君は異常なまでに異質な雰囲気を纏っている。そこのシエラさんもただのってわけじゃあなさそうだ。 ………そして、僅かに鉄の臭いがする」「―――え! マジで?」
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兵士は目を細めながらロード達を見通すように考えを述べる。観察眼が鋭いのか、隨分と的をている考えで純粋にロードは心した。
反対に鉄臭いと言われたシエルは、自分の服を摑んで匂いを嗅いでいる。だが、そんな匂いはしなかったのか、アリルに鉄臭いか必死に聞いている。
「そういう鉄臭いって意味じゃねぇよ、この殘念娘が」「はぁ!? また殘念って言ったわね! 殘念って言ったほうが殘念なのよ、このバカチン!」「はぁ!? 馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだよド阿呆!」
「―――フフッ、二人は仲が良いんだね。もしかして人同士なのかな?」
「「違う(わよ)!」」
見事に息がピッタリで、説得力の欠片も無かった。
◆◇◆
しばらく會話をしながら歩いていると、一際大きな三階建ての建が見えてきた。二階部分の看板に『冒険者組合』と書いてある。
「あそこが冒険者組合だよ。……じゃあ俺はここで見回りに戻るとするよ」「あぁ、本當にすまんな」「気にしないで。あ、後で兵舎にでも遊びに來てよ、歓迎するから」「また困った事があったら行くかもな」「ライズロークって名前を出せばれてもらえるよ。それじゃあねー」
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ライズロークはトコトコ走って來た道を戻って行く。
「………中にるか」「うん」
冒険者組合の扉を開けて全員で中にると、中に居た冒険者達の視線がロード達に集中する。筋が凄いガチムチ系やローブを羽織っている魔法使いっぽい人など、様々な人がいた。 奧にカウンターらしきものがあり、の人が素晴らしい営業スマイルで座っている。ロードは周囲の視線を無視してカウンターまで歩き、話しかける。
「八人冒険者登録したいんだが」「はい、八名様ですね。登録には一人銅貨十枚となっています」
意外と金がギリギリだった。村長は冒険者だったので銅貨十枚必要と分かっていたのかもしれない。
「銀貨四枚で」「はい、確かに。それでは冒険者について説明をするので………ここで説明するのは八人では狹いですね、お手數ですが二階までお越し頂けますか?」
二階は冒険者達が任務についての作戦會議等をする為の場所らしく。一階の騒がしい雰囲気とは違く、靜寂に包まれている。 ロード達はカウンターのお姉さんに促されるまま、それぞれの椅子に座り、詳しい話を聞く勢になる。
「………それでは冒険者についての説明をする前に、冒険者カードの説明を致します。 こちらが冒険者カードです。お名前はご自分でお書きください。偽名でも可となっています」
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詳しく聞いてみたところ偽名が了承されている理由は、貴族だが名を出しづらい場合や獣人等には名前が無い場合が多いらしく、その為の処置だ。
「カードに魔力を込めていただくと魔力解析が行われ、ステータスが表示されます」
言われたとおりに魔力を込めると、大まかなステータスが浮かび上がってきた。
================
ロード 十八才
ランク:未定
稱號:無し
================
ステータスというより名刺じゃね? と思うが深くは考えないようにした。能でいうとロードの"竜眼"の若干下くらいだった。
「これは分証のようななので無くさないようにお願いします」「クラス未定っていうのは?」「それは試験がありますので、そこで最初のランクが決まります。評価によっては中級冒険者から始められます。………まぁ、ほとんどの冒険者が初級からなのですが」
「………それでは、冒険者の規則を説明致します。―――と言っても冒険者は【自由】を掲げているので、そこまで厳しいものではありません」
規則と聞いて、見るからに嫌そうな顔をしたロードを見て慌ててフォローをするお姉さん。
「冒険者には階級があります。下級、中級、上級、超級、そして特級です。特級は勇者様やその仲間等の特別な冒険者にしかなれない階級なので、超級が最高ランクとなっております」
「下級冒険者は中級冒険者の依頼をけられません。ただし、中級冒険者が2人いる場合であれば特別に依頼をけることができます。
階級の昇格には、とりあえず依頼を一定數ければ上がります。そこは頑張ってください」
「冒険者同士のめ事は自己責任となっていますのでご了承ください。殺し合いは厳となっており、殺してしまった場合は冒険者資格を剝奪となりますので、やるとしたならば半殺しにしてください」
(………さらっと怖い事言いやがるな)
「依頼には普通依頼と指名依頼があります。普通依頼は1階の掲示板に紙がありますので、それをカウンターに持ってきてください。 指名依頼は難易度が高い代わりに報酬は期待できます。そのかわり、依頼失敗のリスクは大きいです」
「基本的にはパーティーを組む事をおすすめします。ロードさん達は八人パーティーなのですか?」「いや、俺とシエルで二人、後の六人だ」「それなら大丈夫ですね。………では試験會場に移しますのでついてきてください」「………そろそろ起きろ。移するぞ」「―――んぁ?」
長い話に飽きて寢ていたシエルを叩き起こし、案されたところへ歩く。 そこは闘技場を小さくしたような場所で、先に中に八人が待機していた。
「試験では暇をしていた上級冒険者と戦ってもらいます」「おいおい暇してたとか辛口じゃないか」「そうだぜ、俺達は旅の疲れを癒やしていただけだってのに……」「それが暇してたと見えたんです」
冒険者達は「そりぁそうか」と笑っていた。 気を使ってくれているのか場を和ませようとしているが、子供達は張でカチコチになっていた。右腕と右足が同時に出ていて見ているロードとしては面白かった。
と言ってもこのまま張していたのでは、下級どころか冒険者になれるのか心配だったのでしアドバイスをしてあげる。
「これは殺し合いじゃないんだ。村長と特訓してた時みたいに気軽にやって、全力を出して負けてこい。………というかお前らが上級に勝てるわけねぇだろうが。俺のレベル一に勝てねぇんだから」
厳しめの言葉に逆に吹っ切れたような顔をする。それを上級冒険者達は心したように見ている。
「そこの兄ちゃんは現実的だねぇ」「理想を語っても、どうせ現実は上手く行かないだろ。変に希を持たせるのは嫌いなんだ」「………そういう兄ちゃんは俺達に勝てると思っているようだが?」「勝てるに決まってる。俺が負けるとかあり得ないな」「逆にロードに勝てる奴って、この世界に居るのか怪しいよねぇ」「俺だってそこまで強くねぇよ」
ロードの答えにシエルが同意するが、そこまで最強になったつもりは無い。まだまだ足りないと思っているくらいだ。
「それじゃあ誰から始めるんだ?」「――ガイ。行け」「えぇ!? 俺からですか?」「うっせぇ行け。そして負けろ。思いっきり笑ってやる」「ド直球にも程があるでしょアンタ!」
―――スパァン!
シエルお得意となってきたツッコミは今日も良い音がなる。
「………痛え」
◆◇◆
「―――ハァ!」「おお! いい速さだガキ」
ガイは短剣を扱って男の周りを走っている。時折、死角に潛り込んでは切りかかっているが、流石は上級冒険者なだけあり難なく防している。
「………ねぇロード」「なんだ、お前の番はまだだぞ」「うん……そっちじゃなくてね。ガイが使っている武なんだけどね」
シエルが指差す先には、ガイが握っている短剣があった。その短剣は紅蓮に染まっており周囲には炎の渦が纏わりついている。
ロードが戦いの前、ピアスに魔力を込めて武を作り出し、ガイに渡しておいたのだ。
「いやぁ、ちょうどいい実験臺がいて助かったぜ。武の能チェックは大切だからな。俺は使わないけど」「ほいほい【神話級ゴッズ】使ってんじゃねぇえええ」
シエルが肩を激しく揺すっているが、ロードは気にした様子も無く「ハハハハハ」と笑っている。
「お、そろそろ終わるぞ」「…………ん?」
ガイが上級冒険者に傷を付けられている事にイケると思ったのか、短剣を中段に構え、更に加速して突進する。
だが、それは愚策と言える事であり、冒険者はこの機會を待ってましたと言わんばかりに深い笑みを浮かべてガイを視界に捉える。
ヤバイと気づいた時にはもう遅い。ガイは腕を摑まれて短剣を落とされる。こうなったら負けは確定だった。
「………はぁ、ガイはまだまだ、っと。………まぁ頑張ったから及第點ってところだな」
それから他の子供達も頑張ったが上級に勝てるはずも無く、闘はしたが負けた。
意外と良い戦いをしていたのがアリルだった。初級炎魔法の高速詠唱で、冒険者の行を見事に阻害していた。
初級に殺傷力は無いとしても炎魔法は熱い。熱さに我慢出來なくなった冒険者が一旦距離を取った時にお得意の"焔の飛槍ファイアランサー"を放ったが、軌道を読まれていたのか距離を詰めながら回避されて勝敗は決した。
子供達はなんとか下級冒険者になれたが、調子に乗らないようにロードがしだけ釘を差しておいた。
次はシエルの番だ。 相手の冒険者は戦士系ので、武は軽めの扱いやすい剣だ。
「ねぇねぇ、貴に勝てば中級確定なの?」「………そうよ。本當に勝てたなら中級冒険者として認めてくれるでしょうね。―――勝てたならね!」
シエルの軽い態度にしだけイラついたのか、唐突にが低い制で走り出す。
―――パン!
短い銃聲が鳴り、足を確に撃たれたはバランスを崩し、そのままシエル目掛けて倒れ込む。
「そぅら!」
無防備に倒れ込むに容赦無くシエルが腹蹴りを叩き込み、は吹っ飛んで壁に激突する。 舞い上がる土煙が晴れた時、は壁にめり込み既に気絶しており呆気無い決著となった。
「………あれぇ?」「本気出しすぎだ、馬鹿シエル」
相手が上級冒険者だという事にし楽しめるかと思っていたシエルは、早すぎる決著に理解が追いついていなかった。
「なんか足りないわぁ、求不満だわぁ、やりたいわぁ」「おい、々と危険な言葉を使うな」
次はロードの番だ。 本當は適當に遊んで決著をつけるつもりだったのだが、圧倒的な力を見せなければシエルより下に見られてしまう。 何故かそれだけは無に嫌だったので、仕方無く殺らない程度にやる事にする。
ロードの対戦相手は、ここに居る上級冒険者の中でも1番実力がある男だ。男も先程のシエルを見て気持ちを切り替えたらしく、真剣な面持ちでロードと向き合う。
「……すまない」「あん? どうしたんだいきなり」「俺は、俺達はお前らを見くびっていた。子供達にしてもそうだ、あんな年であそこまで実力があるのは凄い事だ。 それに、あそこの白髪の姉ちゃん。これは俺の推測だが、まだ本気を出してねぇだろ?」「そうだな。そして俺もあんたに謝ろう。これからあんたの験談に泥を塗るだろう」「ハハッ! 俺にも勝つってか、じゃあ々足掻いてやるよ。いつでも掛かって來い」「じゃあ―――」
ロードの姿がブレて見えなくなる。
「―――遠慮無く」
その聲は耳元から聞こえてきた。聲がした方向に振り向く前に男の意識は刈り取られた。
ロードが素早くき、反応出來てない男に手刀を打ち込み、意識を奪っただけの事だ。何も難しい事はないのだが、場は信じられないと言うように靜寂に満ちていた。
唯一、ロードを捉えていたシエルは冒険者に対する容赦の無さに呆れていた。
「はい、俺の勝ち」
疲れをじさせない聲が靜寂に響き渡り、場に居る全員が現実に引き戻された。
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