《すばらしき竜生!》第27話 奴隷
「………確認をしてもよろしいですか?」「おう」「それでこの鱗はロード様のだと」「イェア」「ロード様は黒竜種であると」「おうイェア」「…………」
アラミールはロードのおふざけには反応せずに、訝しげな視線を向けている。スルーされた事に不機嫌になったロードは皿に乗っている菓子を口に放り込む。
どうやら噓発見の故障を疑っているようで、魔法をジロジロと注意深く見ている。 それならばわざと噓を言ってあげるだけだ。
「俺は人間だ」
―――ジリリリリリ!
「――うぉ!」
なんで時計のアラームみたいな音が鳴るんだよというツッコミは我慢した。というより想像より音が大きすぎてロードでも驚いてしまった。
「………故障では……無いようですね」「だな」「―――すいませんでしたぁあああ!」
見事な土下座が決まった。 今まで見てきた土下座を総合評価して、この世界の人々は土下座が大好きなのだろうかと疑問に思ってしまう。
「まさかあの黒竜様に會えるとは………はっ、もうあの時から黒竜を狩るなどと馬鹿な事はしておりません! どうかお許しを!」
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アラミールの怯えようが凄かった。全がブルブルと震えていて産まれたての鹿っぽかった。
というかまた敬語に戻っていた。
そうなるのも仕方が無い。なにせ本の黒竜の前で昔に黒竜を狩ろうとしていたと言ってしまったのだ。 大昔から竜族は同胞を狩る者に厳しい復讐をすると言われ続けている。アラミールの言葉は殺してほしいと言っているのと同じという事だ。
だが、話した相手がロードだったのが幸いだった
「いや、そういうのどうでもいいから。早く金を出せや」
ロードとしては、そんなの本當にどうでも良かった。まず第一優先している事が金の手なのだから。
「ですが、ロード様も知っていると思いますが金貨はないのです。金貨百枚になりますと國も関わってきます。なので全てを渡すには時間が掛かります」「じゃあ今出せる量だけでいいや。いくら出せるんだ?」「今すぐですと………半分の五十枚になります」
目の前に金貨がジャラジャラと置かれる。それに比例してロードの瞳もキラキラと輝く。
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「いくつか質問してもよろしいですか?」「あ? まぁいいぞ」「なぜここに?」「まぁ、學園に行くのと、ただの旅をしたいってだけだ」「それでしたら、この國には魔學院があります。そこは年齢に関係無く、必要な能力が備わっていれば誰でも學できます。 ただ……実力が高い者達が集まるので、ロード様のお連れ様のお子さん達は冒険者組合が建てている學校に行く事をおすすめいたします」「へぇ、組合が」「はい、若い冒険者が増えたのは嬉しいことですが、戦いの知識が無い若者が多いので、若者の為の學校を作ろうとなったのです」「……なるほど、報ありがとう」「いえ! 滅相もない! ……それと後一つ。先程、今は亡きと言いましたが、黒竜種に何かあったのですか?」「帝國のせいで滅んだ」「――なっ!?」
噓発見もあるので噓は言えないし隠す必要も無いので正直に言ってしまうと、アラミールは驚きのあまり絶句してしまう。
「帝國が異常な程に軍事力を上げているというのは聞いていましたが、まさか黒竜を討てる者がいるとは………」「奴らは竜殺しドラゴンスレイヤーと呼ばれているらしい」「そこまで調べられているのですか……分かりました、私も出來るだけ報を集めてみましょう」「……あぁ、ありがとう助かる」
そこで話は一區切りついて、ふと時計を見ると思いのほか時間が進んでいた。 そろそろ行かないとシエルが不機嫌になり、機嫌を取るのに面倒になってしまう。
「最後に一つ、家を買いたいんだが何処で購出來るんだ?」「不産屋ならば、ここの目の前にあります。金貨50枚もあれば豪邸を買えるでしょうな」「……いや、そこまで大きくなくていいんだ」「そうなのですか? あの人數だと豪邸のほうが住みやすいかと思われますが」「俺とシエルで一軒、子供達で一軒でいい。あいつらには自分で生活する力も必要だからな」「………子供思いなのですね」「世話するのが面倒なだけだ。じゃあ俺は帰るぞ」「はい、ありがとうございました」
その後、アラミールと話をしながら一階の広間に戻る。 本當にシエルが不機嫌になっていそうで気が重くなるロードだが、その時は適當に買いに付き合ってやろうと我慢する。
二階に降りた時、何やら一階から喧騒の音が聞こえてきた。嫌な予がしたロード達はすぐさま階段を降りる。 そこでは、酔っ払った大男がシエルと子供達に絡んでいる景が見えた。
面倒事は避けたいロードだったので、いっそ他人のフリして帰ろうかなと思ってしまう。 そう思いながらも、すでに足は行に移っていた。
「――あ、ロード! 早くこっち來てよ!」
そそくさと人混みの中出口に向かうロードに聲がかけられる。謎のセンサーが付いているのではないかと思ってしまうほどの発見力だった。
「………はぁ、すまんアラミール。殺さない程度に潰してくる」「気絶程度で済んでくれれば後処理も楽で幸いです」「わかった」
人混みを抜けて大男とシエル達の間に立つ。大男はそうとう酒を飲んでいるらしく、近くにいると凄い酒の臭いがした。
「……あぁ? ――ヒック、なんだてめぇ」「こいつらの仲間だ。何があったんだ」「この酔っぱらいが大人しく座って寢ている私にわざとぶつかってきて金払えとか言ってきたのよ。ぶっ殺してやろうかと思ったんだけど我慢しているところよ。褒めて!」
相當キレているらしく何やら騒な事をサラッと言っている。
というよりシエルが座っていた椅子が木っ端微塵になっている事に気になった。ぶつかって來たというより、突撃してきたと言われたほうがまだ信じられる。
「おーよしよし、よく我慢したな。偉い偉い。 おいオッサン、ウチのがすまないな。ギルドマスターもいることだし、ここは穏便に済ませようぜ」「あぁ!? 新人風が上級冒険者の俺様にぶつかったんだぞ! 土下座だよ土下座ぁ!」
本當にこの世界の人々は土下座好きだなぁと思いながら、シエルと子供達を後ろに下がらせる。
「なんだぁ? 出來無いって言うなら俺様が手伝ってやるよ! ………あ?」
ロードに摑みかかろうとするが、自慢の豪腕でピクリともかない事に疑問をじる大男。 その景をハラハラと見つめているギルドマスターのアラミール。
「あぁ……土下座の仕方が分からないんだ。ここは先輩が見本を見せてくれねぇか?」「てめぇ何を―――っづあ!」
高速逆膝カックンをけて、骨が折れる鈍い音と共に大男が倒れる。さらに、痛みでけない大男の頭を何度も踏みつける。
誰も止められない。確かに止めようとした勇敢な者はいた。だが、ロードの顔を見て誰もが腰を抜かした。 その顔は笑っていた。それこそ新しい玩を買ってもらった子供のようなはしゃぎようで。
「……うぁああ! ――ガッ、グァ!」「なぁ土下座の漢字分かるか? 土の下に座るって書くんだぜ? ―――なのになんでお前は土の上で寢てるんだ?」
止めに足を大きく振り上げる。
「―――ダメ!」
それは誰の靜止の聲だったのか、ロードはそんなものを無視して足を振り下ろす。 気絶寸前だった男がそれを避けられるわけがなく、木の板で出來ている地面に顔面からめり込んでピクリともかなくなる。
悪逆非道な行為に誰も何も言えなくなり、いつも騒がしい冒険者組合は靜寂に包まれる。 そして、その場にいる全員がロードに恐れの目を向けることになる。
「………いや、殺してねぇよ?」
やりたい事をやってスッキリしたロードは冷靜に戻り言い訳をするが、ロードのどうでも良い言い訳に場はなんとも言えない空気になっていた。
◆◇◆
酔っ払って絡んだ男も悪いという事で、ロードは厳重注意で終わった。 注意をしているギルドマスターは怯えて敬語になっていたので注意というよりお願いに近かった。
それからロード達は、家を買うために近くの不産屋に立ち寄って、件探しをしていた。
家はどちらも二階建てが良かったのだが、そこら辺の件は売り切れているらしく、三階建ての家を二軒購した。 金額は合計で金貨四十四枚だった。ギリギリすぎて泣けてきたが、必要な出費だと思いポーカーフェイスでなんとかロードは耐えていた。
今は家の掃除をしてくれる人が必要という話になり、子供達におつかいを頼んでロードとシエルの二人は奴隷を買うために裏路地に來ている。 もちろん裏路地という事でチンピラに絡まれたが、何かを言われる前にロードが毆り飛ばしたり、シエルが発砲して撃退していた。
―――だが、最大の問題がロード達に降り掛かっていた。
「………ねぇロード」「………なぁシエル」
「「………どうぞどうぞ」」「「……………」」
「じゃあ私から」「おう」「これって迷ったわよね」「………迷ったな」
先程から同じ所を歩いてる気がしていたのだが、どうやら気のせいではなかったらしく二人の考えは見事に一致していた。
「なんであんたが迷っているのよ!」「うるせぇ! 初めての場所は迷うに決まっているだろうが!」
(クソッ! こうなったらそこら辺のチンピラを脅して道を聞くか)
「クソッ! こうなったらそこら辺のチンピラを脅して道を聞くか」「待て待て待て、思考と言葉が一緒に出てるわよ。……あと騒だからやめなさい」「………チッ」「こらそこ舌打ちしない」「………ペッ」「おのれは子供か」
そこでロードは気がつく。奴隷商人の場所には奴隷も含めて人が沢山居るはずだと。それならば"竜眼"で人がいる所を探知すれば良いのでは? と。
その考えをシエルに言ったところしの間呆けていたが、ようやく理解したらしく「それだ!」と同意した。
早速、探知で人が集まっている場所を探すと、あった。位置はし遠いが沢山の反応が出てきた。
「よし、あったぞ」「その眼ホントに萬能ね」
その場所に行ってみるとそこは普通の建で反応は下から出ている。
「なんで地下なの?」「奴隷も人だからな。萬が一逃げないようにしてるんだろ」「へぇ、そうなんだ」「………蟲唾が奔る」「………どっちに?」「あ? 奴隷制度とそれを利用してる俺自にだよ。………言っとくが俺は奴隷は奴隷扱いじゃなく、普通の人として扱うからな」「フフッ、やっぱり優しいじゃない」「………ほっとけ」
地下に降りると、何処からかカビ臭い臭いと腐った臭いが漂ってきた。 こんな場所に長時間居るなど正気の沙汰ではない。さっさと出たいと思っていた矢先に暗闇の影から男が現れた。
「いらっしゃいませ。今日はどのような奴隷をお探しですかな?」「………あー、とりあえず一通り見て回って良いか? 自分で探したいんだ」「はい。ごゆっくり品定めしてくださいませ」「………どうも」
短いやり取りのあと男が靜かにを潛める。さすがは闇商人といったところか、気配を隠すのが上手く見るだけでは男を視認出來なくなっていた。 を隠さずにしかめっ面で、男が消えていった暗闇を見つめる。
「気味が悪いな」「ド直球ね。………同だけど」
二人は気を取り直して通路を歩いて行く。そこは終わりの見えない暗く深い道のようだった。
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