《すばらしき竜生!》第28話 アイマイミイマイン
暗闇を進んだ先は牢屋のような場所だった。その鉄格子の奧には奴隷達が転がっており、を洗っていないのか酷い臭いがして蟲が集っていた。 奴隷は蟲を払う気力も無いのか、ただただボーっとしている。
「……不気味ね」「だな」
それが2人の素直な想だ。
牢屋の中にっている人は自由に生きる事をほとんど諦めているのか、瞳は暗く濁って虛空を見つめていた。
その中には見たことが無いロード達の姿が目にり、無表で視線を移す者、怯えた視線を向ける者、暗闇にを隠す者と様々にいた。
その中には耳が長いエルフ族やケモ耳が生えている獣人がいた。 ロードは半アニメオタクのようなものなので、このような狀況でも気分は上がっていた。
「……エルフも獣人も居るのね」「シエル。好きに選んでくれ……俺は他人の人生を選ぶことは出來ない」「いや、あのそれに関しては私もなんですが。 ……あ、なるほど。選ぶのが面倒だから、カッコいい言葉を言ってパスしようとしてるでしょ」「…………………ソンナコトナイゾ」「バレバレなんですけど」
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シエルの指摘は大正解だった。 一つの牢屋に奴隷が十人ずつっている。それが合計六つもあるのだから探すのがとても面倒になっていた。
普段は意見を曲げないロードなのだが、シエルのジト目がウザかったので自然と折れてしまう。
「………チッ……わーたよっ、選べばいいんだろ? そのかわり後で文句を言うなよ」「私があんたの決定にそぐわない事なんてあったかしら?」「思いっきりある」
(……はぁ、なるべく長生きでタフな奴が良いな。長生きっていうとエルフか?)
竜眼の探知でエルフ族を探すと何名かが赤で表示された。思いつきでやってみたのだが検索もできるようで、ますます竜眼萬能説が浮上してきた。
更に心読で人生を諦めてないタフな奴を探す。
(お母さんに會いたい……)(……お腹空いたなぁ)(早くこんな地獄を抜け出したい)(あ、トイレ行きたい)(誰でもいいから、助けて)(………眠い)(ちょっとここ臭い)(あ、あの子可い)(ケモ耳、ピコピコいてて癒やされるわぁ)(エルフ族ってホントに人なのね)
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(………この野郎)
他人の心の聲に混じってシエルの呟きがってくる。 ……というより後半部分は全部シエルだったのだが。
「意志があるのは三人。エルフが一人、普通の人が二人か? ……おい、奴隷商人」「はい、どれを購するのかお決まりですかな?」「こいつとこいつ、後はあそこのエルフを買う」
ロードが指定したのは黒髪と茶髪の若いと金髪のエルフだ。
「人間二つで金貨一枚。エルフの娘は々高く銀貨十五になります」
服のポケットから金貨二枚を取り出す。 本當はポケットから取り出すふりをして"収納"で取っているのだが。面倒だがそうでもしなければ周りの反応がうるさいので仕方が無い。
「はい、銀貨五枚のお返しです。直ちに奴隷を洗うので々お待ちくださいませ。食事はどういたしますか?」「俺達で食わせるからいらん」「かしこまりました……」
奴隷商人が手を叩くと、何処からか大柄の男が二人やってきて達を擔いで持っていく。
「――お姉ちゃん! 嫌だ離れたくない!」「えぇい、大人しくしろ!」
エルフのは隣に橫たわっていた姉らしき人にしがみついている。その姉は病気にかかっているのか酷い咳をしている。
奴隷商人はエルフを毆って話そうとしている。 あれは一応ロードが買ったなんだが………。ちょいとイラッとしたが我慢する。
「………ねぇロード……」
服をギュッと摑んで懇願するような顔をしてくる。その表は今にも泣きそうだった。 まったくずるい奴だと思う。そんな顔をされたら誰だって願いを葉えたくなってしまう。
――チャリン。
短くため息をついて、金貨一枚を落とす。 いきなりの行に、その場にいる全員がロードを見つめる。
「あぁ? なんか落ちた気がするけど気のせいだろ。 ……そういえば、関係無い話だが落しって拾った奴のだと俺は思うんだ。だって落としたのが悪いんだから、それに文句言うのは筋違いってもんだよな」
ロード自でも不用過ぎるなと笑ってしまう。
「――ありがとう!」「………さぁ? なんの事やら」
ようやく理解したらしく、顔を明るくして微笑む。
(………ったく、良い笑顔をしやがる)
ロードがうっかり・・・・落としてしまった金貨を拾って奴隷商人に近づく。
「商人さん。そこのエルフのお姉さんも一緒に買うわ」「で、ですが、その娘は重い病気にかかっており―――」「いいから買うの。いくら?」「本來ならばエルフは金貨一枚なのですが、銀貨五枚に致しましょう」「はい、お釣り頂戴」
そこはしっかりしてるシエルだった。
その後、奴隷四人は洗われて布に首を突っ込んだ様な服を著て大柄の男に連れてこられた。
「おまたせいたしました。それでは主従契約の印を刻みますので、どうぞこちらに」「一応、俺がけるじでいいのか?」「いいわよ。そっちのほうが分かりやすいでしょうし」
主従契約とは、奴隷が主に逆らわないようにする為の呪いのようなものだ。それは主が死ぬまで決して消えない。
命令は解除するまで継続し、ほとんどの主は一番最初に自分を殺さないように命令するのだそうだ。
「手を……」「あいよ」
商人が何かを唱え始め、一瞬の鋭い痛みが手の甲に走った。見てみると黒い刻印が手の甲に刻み込まれており、奴隷達にも同じような刻印があった。
「これで契約は完了です。それでは、またご贔屓に………」「あぁ、どうも。行くぞお前ら」
踵を返して歩き出すと、戸いながらも付いて來てくれた。シエルは眠いのか目をりながら欠をして突っ立っている。 それを奴隷商人達が何とも言えない表で見ている。
「シエルもだよ!」「―――ふぁい!」
連れのアホさ加減に恥ずかしくなって、ついツッコんでしまった。
◆◇◆
裏路地にりそこで止まる。同時に引き締めていた気を緩和する。 後ろをピッタリ付いて來ていた娘達五人は、いきなりどうしたのか首を傾げている。
(ん? 五人?)
「………なんでお前まで、首を傾げているんだ?」「いや、ホントに何するんですか? あ、ナニ・・をするんですか?」「なぜ敬語になってるし、それと言い換えるなし!」
シエルが脳天気なのはいつも通りの事なのだが、他人がいる時でもそれは変わらないらしい。
「はぁ……名前だ、お前達の名前を教えてくれ」「……発言をしてもよろしいでしょうか」「あ? 自由に話せ」「私達には名前がありません。奴隷として捕らえられた時に名前を奪われました」「名前を、奪われた?」「………じられた魔法ね。おそらく自分の名前を認識出來ないようにされたんでしょう………外道共め」
シエルが珍しく険しい顔をして、とてつもない殺気を放っている。 奴隷達はその雰囲気に怯えきっている。
「……気持ちはわかるが殺気を抑えろ。こいつらが怯えているぞ」「―――えっ!? あ、ごめんね! そういうつもりじゃなかったの、ただあなた達に同しちゃって………同するのも可笑しいわよね、ごめんなさい」
途端にシュンとするシエルをでる。 人の不幸に対して優しいシエルにしさをじてしまったのだろうか、理由はハッキリしないがそれでシエルの気が和らぐなら安いものだ。
「……なぁ、もしよければ俺達が名付け親になってもいいか?」
その言葉に驚く達。
「――よろしいのですか?」「あぁ、それにそのほうが呼びやすいだろ?」「ねぇ! 私が決めたい! ………いい?」「分かった。お前に任せるよ」
し考えるように頭を捻って、數秒後に閃いたように顔をハッとさせる。
「じゃあ、アイ、マイ、ミイ、マインね! 頑張って考えたのよ!」「――え? それで頑張ったのか?」「――うん!」
達を見ると、名前を付けてもらえた事に激して泣き出している。
「………まぁ、いいか」
本當にこれでいいのか気になったが、本人達が喜んでいるのなら良いと思い、深くは考えなかった。
こうして、 エルフ姉がアイ。 エルフ妹がマイ。 黒髪のがミイ。 茶髪のがマインとなった。
◆◇◆
「クソッ! 何なんだアイツはよぉ!」
怒りにまかせて木箱を蹴り飛ばす。派手な音をたてて木箱は木っ端微塵になる。
こんな事になっている原因は全てアイツのせいだ。
依頼を失敗してヤケ酒をしていた時だ、周囲の冒険者共が何やら騒がしくなっていた。 何事かと気になり視線を向けると、若い男とガキ共がそこにいた。
どうやら先程、冒険者になったばかりらしく若い男はいきなり中級冒険者になったのだそうだ。 どうせ試験をする奴等が油斷してやられたのだろうと思い、そこは気にしなかったのだが若い男が渡した素材というものに興味が湧いた。
やがて、ギルドマスターが出てきて男と一緒に3階に上がっていった。 何事か気になった俺はに話しかけたのだが、は反応をしなかった。
「―――おい! てめぇ無視すんじゃねぇ!」
俺が荒げた聲をあげたことで他の奴等がこちらを見る。 そして止めようと思った奴も、聲を荒げたのが俺だと分かり、靜かに下がっていく。
そしてはというと。
「………zzZ」
………こいつ、寢てやがる。
イライラが溜まっていた俺は、それから怒りにまかせての椅子を蹴り上げて口論になった。
それから例の男が俺達の間にってきたが、それからは余り覚えていない。ただ激痛が奔り、何も出來ないまま俺は意識を失った。
俺が次に目を覚ましたのは組合のベッドだ。その後、組員に詳しい話を聞いて冒険者組合を出てからイライラが収まる気配がねぇ。
「――おやおや、隨分と荒れてますねぇ」
ゆったりとした口調で目の前から聲がする。見てみると怪しいピエロの仮面を被った男が立っていた。
そこで視界がグニャリと歪み、気がつけば辺り一面真っ暗の見知らぬ場所に立っていた。
「――!? どこだここは! 誰だテメェ! 俺に何をしやがった!」「一気に質問しないでください、私も困ってしまいますよ」
仮面の男は戯けた様子でなだめてくるが、俺にとってはそれどころじゃない。
確か、竜王國の裏路地をふらふらと彷徨いていた筈だが、仮面野郎を見た瞬間に場所が変わった。 もしかしなくても仮面野郎が何かしたのは間違いない。
いつまでも戯けた態度を取る仮面野郎にムカついた俺は毆りかかる。 だが、次の言葉で何も出來なくなった。
「――あの若者……黒い若者に復讐したいと思いませんか?」「……は?」
仮面野郎は更に言葉を続ける。
「あなたはあの若者に苛立ちを覚えている。違いますか?」「……なんで分かる」「それはです。さて、あなたは若者を殺したいですか?」
殺す? 確かにムカついているが、そこまで思っていない。ただ、しだけ痛い目にあえばいいのにと思っている程度だ。
「あなたは、あの若者にボコボコにされました」
あぁ、何も出來ずに意識を奪われた。
「あの若者に一太刀浴びせたい」
あぁ、そんな事できたらどんなに良い事なのだろうか。
「――若者が憎いですか?」
――憎い? ――憎い憎いニクイニクい! ――そうだ、俺はアイツが憎い!
「あなたに絶対的な力を與えましょう」
仮面野郎が手を差しべてくる。
それはきっと悪魔の囁きなのだろう。だが、何も考える事が出來ずに手を取ってしまう。
「あの若者を殺しなさい、それが我等が主のみです」
――殺すコロス殺す殺す殺すコロス!
「……人間の心は脆いですねぇ、傷を抉れば容易く洗脳出來る。 ―――本當に良い道だ」
ポツリと呟かれた言葉は暗闇に溶けて消えていった。
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