《すばらしき竜生!》第32話 魔剣祭
鬼族。 世界の端にある孤島を住処としている種族であり、他種族とは流がないとされている。鬼の象徴である角は普段は隠しており見ただけでは鬼族だと分かる者はない。 鬼族はとてつもない怪力と言われており、怒らせたら泣くのは自分自だと伝えられている。
その鬼族が目の前にいる。しかも、鬼族の姫ときた。
「鬼族って初めて見たわ」「普通は鬼族ってことを隠しておるからの。わからずにそのままって者も多い。見分けるとしたら黒髪、怪力、和服を見たらそれは鬼族と考えても良いだろうな」
ロードも竜眼を使わないとツバキが鬼族と分からないほど、鬼族は人の見た目をしている。普通ならばツバキが言った通りの見分け方しか無いのかもしれない。
「他種族との流がない鬼族が留學か? 珍しいな」「ちょいとした文化流じゃ。妾が父上にわがままを言ってここに來ておる。……ちゃんと勉強もしておるぞ?」
(理解してるかは別じゃがな)
「……なるほど、理解してるかは別と。よかったなシエル、お前くらいのアホができたかもしれないぞ」「ん? そうなの?」「――な! なぜお主それを分かったのじゃ!」
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初めてツバキがをわにしてロードを指差しながら狼狽えていた。反応が面白いのでロードの良い話し相手おもちゃになりそうだった。
「ロードが悪い顔をしてる……ツバキさん気をつけてください。こういう時のロードはヤバいです」「そんなヤバいことなんてしないぞ(棒)」「――完全なる棒読み!? 隠す気もない!」
シエルはロードの考えにいち早く気づきツバキに忠告する。もともとシエルがロードの第一おもちゃなので、これ以上被害者を増やしたくないのだろう。
「ふむ、シエラといったか? 妾のことは呼び捨てて良い。それに敬語もいらんぞ? どうか友のように接してくれ」「――わかったわ! 正直言って特別クラスにがいて助かったわ、よろしくねツバキ!」
がっちり握手をして早速友達ができたことに笑顔になるシエル。シエルにとっては幸先が良い學院生活がスタートした。
「………ぼっちに友達ができた」
――パン!
ロードがポツリと呟いた言葉を聞き逃さなかったシエルは即座に拳銃を出してロードに発砲。それをロードは難なく爪で弾いて防ぐ。
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「いきなり學院で発砲とは、ツバキにも危険な友達ができたな。そこのシエルは何かあったら発砲してくるからな気をつけろ」「あんたが余計なことを言うからでしょうが!」
シエルが立て続けに発砲するが、防ぐのも面倒になったロードは強めに結界を張ってその場で座りはじめた。
「あ、魔法使うのズルい! 正々堂々と戦いなさいよ!」「俺が正々堂々戦ったらここら一帯が吹き飛ぶぞ?」「――ムキィイイイイ!」
シエルは張ってある結界をゲシゲシと蹴る。ロードは座ったままなのでシエルを見るとスカートの奧が普通に見えてしまうのだが、シエルはそれに気づかずに蹴り続ける。
ロードも男だ。相手が気づかないなら、とことん見てやろうとそのまま放置している。
「ふっ、なんとも愉快な者達がってきたのぅ。……これで、つまらん學院生活も楽しくなりそうじゃ」
それを面白そうに見つめるツバキ。
「俺ってば早速空気になってね?」
鋭い蹴りと結界が衝突する音が鳴り響く教室に不良君の言葉は霞んで消えていった。
◆◇◆
その後、なんとかシエルの機嫌をとり直したロード達はツバキと不良君に連れられて學院案をしてもらっていた。
ロードは案図を見ただけで全て覚えてしまったのでシエルが學院を覚えるのが目的となっていたのだが、一回案した程度でシエルが覚えられるとは思えない。 學院で行する時はシエルから目を離さないようにしようと決めたロードだった。
道中の會話で不良君の名前も聞いていた。ロードが不良君を呼ぼうとしたところで、そういえば名前聞いてなかったと気づいたのだ。そう聞いた不良君は泣きそうな顔で「今更かよ!」と言いながらも教えてくれた。ちなみに名前は『カリム』だった。 そんなに面白くなかったのでノーコメントを貫いたらカリムは更に泣きそうになってツバキにめられていた。
「ここが訓練場だ」
その訓練場という場所には生徒達が沢山いて剣戟の音や発音が聞こえてくる。 そこにいる皆が真剣な顔で共にいる教員と話し合っている。
「……なんか気合っているわね」「今は魔剣祭が近いからその練習してるんだよ。しかも今回は闘技會に參加出來る特典付きだからな。いつもより派手になってるぜ」「魔剣祭? なんだそりぁ」「……あ、まだ説明してなかったな。魔剣祭ってのは………」
魔剣祭はアルバート學院が年に一度開催する生徒達が力を競い合う大會だ。當日には一般人が見學にきて竜王國でも有名なイベントになっている。 參加は任意で各ブロックに振り分けられる。予選を勝ち抜いた者は各ブロックの優勝者とトーナメント式で戦って一番を決める。
だが、今回違うところは闘技會があるということだ。 闘技會は各國から猛者達が集まって力を競い合う、魔剣祭の上位版のようなもので規模も大きい。國をあげて賑わいを見せる大會になっている。
今回の魔剣祭は各ブロックの優勝者と準優勝者が闘技會の參加資格を持つことができ、出場が可能となる。國民からしたら闘技會に出場しただけでも名譽となるので、生徒のほとんどが魔剣祭に參加して闘技會に出場できるように訓練場でしでも力を付けようと頑張っているそうだ。
(……うずうず)(あ、ロードがうずうずしてる。しかもこれは戦闘狂の目になってる)
「ちなみに今練習してるやつの中で強いのは誰だ?」「ちょっとロード? 問題を起こすのは……」「心配すんな聞くだけだ」
シエルとしては全く信用ならない言葉だったのだが、何を言っても無駄だと思い諦める。
「ふむ………あの中で強い者は、あの中心にいる男かの。あやつは今回の優勝候補とも言われておる。ほれ、今どデカい風魔法を放った奴じゃ」
ツバキが指差した男が放った風魔法は遠目から見ても派手で、練習している生徒と教えていた教員すらも目を奪われていた。 男は魔法を放ったもののほとんどの魔力を消費したらしく、肩で息をしていた。そうなるのも仕方が無く、その魔法は上級魔法で普通に発したら魔力消費が馬鹿にならないのだ。
皆は男に集まって様々な言葉を投げかけている。男が照れていることから褒められているのだろう。確かに普通の生徒からしたら上級魔法を放てるのは凄いことだ。 男は優勝候補と呼ばれているのは伊達ではないのだろう。
だが、それとは違う想を持った者が二人いた。
「雑魚だな」「あの程度で魔力切れとか雑魚過ぎない?」
辛口コメントをしたのはロードとシエルだ。
ロードは上級魔法程度なら直撃を食らってもほぼダメージ無しで耐えられる。むしろ腕を振るうだけで上級魔法を相殺できるだろう。 シエルもあの程度の魔法なら普通に発できる。しかも、魔法を作して更に強力な魔法をほぼ魔力消費無しで無詠唱で放てる。
「キッツい言葉だねぇ。あれでも學院の優等生なんだぜ?」「あんな長い詠唱している間に近接型なら簡単に潰せる。それに相手が魔法職でも中級魔法を連発したほうが何倍も強い。 だから、あいつは雑魚と言える。あんなの『俺は上級魔法を撃てるんだぜ』と自慢しているだけだ」「井の中の蟲ね」
シエルがロードの意見に同意するように首を縦に振って自信満々に応えるが、思いっきり間違えていた。 井の中に蟲とかどんな狀況だ。
「『井の中の蛙』な馬鹿シエル」「――ちょっと間違えただけよ! ほら、蛙も蟲も気持ち悪いのは一緒でしょ!?」
よほど自信満々だったのだろう、顔を真っ赤にさせて言い訳をしている。必死過ぎてむしろ稽だ。 こんなのに雑魚呼ばわりされる男が可哀想に思えてきてしまう。……というより哀れに見える。
「ロードの意見が有効じゃのう、適當に見えてしっかりと考えておる……お主も強いんじゃろうなぁ、戦いたいのぉ」
ここにもロードと同じ戦闘狂がいた。
「お? ちょうどスペースも空いてるから、やるか?」「そうしたいのは山々じゃが、それは闘技會の楽しみにしとこう。今ならまだ魔剣祭の參加申し込みに間にあう、もちろんお主らも參加するのじゃろう?」「俺もやるぜ!」
ツバキとカリムも參加するらしく、完全にやる気だった。 ロードが見たじ、さっきの男よりもツバキとカリムのほうが強い気配を漂わせている。特にツバキは異常なまでの何かを隠している気がする。
「じゃあ俺達も頑張るか。……と言っても鬼族に勝てるか不安だなぁ。なぁシエル?」「そうねぇ、ツバキは鬼族だしカリムも特別クラスにいるんだから私なんかで相手になるか心配になってくるわ」
ロードとシエルの息の合ったわざとらしい謙遜にツバキは笑って返す。
「馬鹿を言うでない。妾とカリムよりもお主らからじられる『気』は異質すぎる。……まさか気づいてないと思ってたのかの?」「俺の直も言ってるぜ、お前さん達から発せられる気配は人間が出せるものじゃねぇ。どっちかというとお前らの言葉は俺とツバキのセリフだ」
すでに始まる前から特別クラスの4人からは火花が散っている。それぞれから放たれる闘気は他人にもじられる大きさになり、訓練場にいる生徒達に注目されているが4人は気にしない。
「真剣勝負なんだから本気で行くわよ?」
シエルは拳銃をチャキッと鳴らして挑発する。
「妾も余裕をかましてる場合じゃなくなったのぉ」
ツバキは闘気を放つ。
「ちゃんと俺にも注目しろよ。足元を掬われるぜ?」
カリムは指を鳴らして不敵に微笑む。
「……あぁ、本當に楽しみだ」
ロードは心の底から嬉しそうに笑った。
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