《すばらしき竜生!》第35話 問題児共
「何か、言うことは?」「ちょっとやり過ぎたかなぁと思っているので、その手に持っているをこっちに向けないでください」
ロードは教室で正座させられていた。 しかも絶対にけないようにシエルの魔力で強化されている縄で簀巻にされている。 シエルだけならば遅れを取らないのだが、なぜかツバキとカリムも協力して不意をつかれたロードは捕まってしまった。
本気を出せば強化された縄だろうが何だろうが簡単に力づくで解けるロードなのだが、本気を出せない理由がシエルの手にあった。 それはシエルが二丁拳銃と同じく作り出したロケットランチャーだ。
ゲームでもロケットランチャーは終盤に出てくる最強武の1つとして存在している。その銃口がロードの顔面に超至近距離で向けられているので、流石のロードでもこれはダメだと大人しくなる。
普通の銃弾なら蚊に刺された程度の痛みなのだが、シエルは銃弾を魔力で強化するので二丁拳銃の弾でも普通に當たると痛い。 それがロケットランチャーになるのだから威力は絶大だろう。
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「流石にそれはめっちゃ痛いだろうからやめてしいんだが……」「私の竜すら屠る大砲をめっちゃ痛いで済ませるとか……あんたがおかしいのよ」
一応、ロードも竜なのだがそこはいいのだろうか。 それを言ってみたら「普通なら屠れるの!」と怒られた。まだ、七天竜には試したことが無いらしいが。 なんとも信用出來ないシエルの言葉に眉を顰める。
「……それで本當に反省したんでしょうね」
全くその様子が無いロードを見てジト目で見てくるが、ロードも馬鹿ではない。
「當たり前だろ」
誤魔化さない真剣な表で答える。それを見たシエルは安心したようにロケットランチャーを降ろそうとして……
「次はもっとタフな種族にやる」「――反省してねぇじゃねぇか!」
またロケットランチャーをロードに向けて躊躇いなく引き金を引く。キュイイインという駆音がなって銃口がり始める。
「――ちょ、ま――」
ロードの知っているロケットランチャーから鳴る音とは違うので、慌てて止めにるがシエルは引き金を引いてしまったので全てが遅い。
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「覚悟ぉ!」
ロケットランチャーの銃口があり得ない程のを放ち、あり得ない程の熱量がロードの顔に噴出され始める。 そして……
――チュドン。
◆◇◆
「何か言うことはあるかの?」「いやぁ、私ってこんなに強くなってたんだなぁとしみじみ思います。……私ね、長っていいことだと思うの。だからその拳を下げてください」
ロケットランチャーからぶっ放された砲弾、というよりもレールガンに近いものがロードに直撃した瞬間に凄まじい発が起こり、ロード達の特別クラスとその周囲が原が落ちた時のようなクレーターを殘して消え去った。
シエルは教室が合った場所、クレーターのド真ん中でツバキに正座させられていた。 橫では真っ黒に焦げたロードが不機嫌そうに座っている。
ロードは咄嗟の判斷で結界を顔面に集中させて強度を強化し、シエルのレールガンを超至近距離でけた。 本気で張った結界のおかげで痛みは半分程度緩和されたので致命傷にはならなかったのだが、衝撃は直でけたので吹っ飛んでしまった。 そしてついでに煙を被って真っ黒になってしまっている。若干、焦げ臭い。
「お主らは々と問題がありすぎる。なぜ痛めつけるだけで相手を瀕死まで持っていくのか」「うぐっ……」
ロードがく。
「なぜ相手が反省してないってだけで學院の一角を吹き飛ばすのか」「うぅ……」
シエルが気まずそうに下を向く。
「ロードに関してはこれだけの一撃でも焦げるだけとは……妾はもう頭が痛いぞ」「「面目次第もございません」」
二人してツバキに深々と頭を下げて謝る。 ツバキとしてはこちらに謝るのではなく教員達に謝ってほしい思いだったのだが、謝る程度で済む話では無いと更に頭を痛くする。
「これの修理代は相當なものだぜ? そっちのほうが問題だろ」
カリムがツバキの頭痛の原因を言うと、反省組の二人は聲を揃えて……
「それはなんとでもなる」「そこら辺は大丈夫でしょ」
と、さも當然のように言った。
「お前らなぁ、俺が見積もっても修理代は最大五十金貨は掛かるぞ? それを大丈夫とか言えるのか?」
流石にそこまでは考えていないだろうと思い現実を突き詰めると、二人はキョトンとした顔をしている。 これでやっと事の重大さが分かったか? と安心したカリムだったが、更なる現実は違かった。
「別に金貨五十枚程度なら軽く出せるが?」「ロードなら金貨五十枚程度出せるわよ?」「……もう、お前らが分からないよ」
現実をけ止めさせるはずのカリムが現実逃避を始めた。それを見ていたツバキはカリムの肩を軽く叩いて「気の毒に……」とめている。 カリムをこんな狀態にした犯人達は意外と軽く終わりそうだと思って安心している様子で、次はどうやってツバキを納得させようかと小聲で相談している。
「俺とシエルも反省してるんだから、そろそろ開放してくれてもいいんじゃね?」「そうよそうよ。私だって同じ過ちは二度と繰り返さないって決めてるんだから」
変なところだけ意見がピッタリ合う二人。どう考えても反省してるように見えない二人なのだが、もう疲れたツバキは手をヒラヒラさせて合図を出すと、ロードは一瞬でシエルが強化した縄を力づくで破る。
「ロードぉ……私のも千切ってー」「はいよ」
ロードはシエルに巻き付いている縄を軽く爪で引っ掻くだけで切ってしまう。
「んー、やっと自由になれたー!」「お前に関しては自業自得だけどな。村で襲撃された時もあれを撃てばやれたんじゃないのか?」「あれって結構魔力消費するのよねぇ。しかもあの時の狀態だとさっきの威力の半分しか出なかったと思うわ。……多分、これのおかげかしら」
そう言ってロードが渡した黒竜種の寶である髪飾りをる。どうやら無意識に発してしまって威力が増大したらしい。
「ちゃんとコントロール出來るようにしとけよ。せっかく似合ってるんだから、外したら損だぞ?」「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。ロードがそう言うなら頑張ってみるわ」
ロードが褒めると顔を赤くしながらも照れてるのを隠していつも通りのじで話すシエル。 シエルは隠してるつもりでロードはシエルが照れてるのも気づいてないのだが、他から見ればバレバレだった。
「……それで、金貨五十枚くらいなら用意出來るというのは本當なのじゃろうな?」「……あぁこれでいいんだろ?」
そう言うと収納から黒竜の鱗五十枚を出す。これはツバキでも知っているようで驚いたように目を見開いて鱗を凝視している。
「……お主、これをどこで?」「――取った」
「取った!? ちょっと見せてみろ。それが本か確かめる」
すると橫からカリムの驚いた聲がする。カリムも報に長けている者として黒竜の鱗がどんなにすごいなのかを良く知っているので、平然とそんな事を言えるロードが信じられない。
黒竜の鱗を1枚取ってまじまじと見始める。本の黒竜であるロードから取ったものなので偽であるわけないのだが、ここまでじっくりねっとり見られると何故か心配になってくる。
「……間違いない、本だ。しかも出回っているやつよりも質が良過ぎる。これは金貨二枚でも十分なほどだ」「……うっわマジか。後でギルマスに追加で金貨百枚請求しようかな」
そう考えたが、ロードの手元にはまだ約五百枚の鱗がある。しかも後一年としでロードは皮の季節にるので追加で鱗を大量に手にれることが出來る。 やっぱりギルドマスターの所まで行くのも面倒なので金貨100枚は諦めることにする。もし言っても「許してください」と泣かれるだけだ。
「俺はお前が怖くなってきたぞ。々な意味でな……そしてシエラさん? あんたは何をしてるんだ?」
見るとシエルは何処から出したか分からないペンを持って紙に何かを書いている。後ろからそれを見てみると。
『弁償はこれでお願いします』
と書かれていた。 どうやら教員達が來る前にこの紙と黒竜の鱗を置いて逃げようという作戦らしい。
「シエル……」「なによ」「ナイスだ。逃げるぞ!」「流石ロード! 分かってるぅ!」
ロードは天駆を使って、シエルは蝙蝠化を発してさっさと現場をトンズラする。
「――あ、待てっ!」
息のあった行に反応が遅れてしまい、ツバキも近くにいたカリムも捕まえるのに失敗する。 二人は空中を行するを持たないので犯人達が逃げるのを見てることしかできない。
「フハハハッ! 逃げるが勝ちだ!」「戦略的撤退ってね!」
逃走に功した犯人達はそう言い殘して、竜王國の空に消えていった。
◆◇◆
激怒したツバキとカリムはその後、雑魚君ピクルスをひっ捕まえて手しているであろうロードとシエルの住所を聞き出し、家に毆りこみに行った。
ここまで來るのは予想外だったのだろう。優雅に食後の紅茶を飲んで休憩していたロードとシエルは紅茶を噴き出して驚いていた。
最初は突然の毆りこみに來たツバキとカリムを警戒していたアイだったのだが、ロードやシエルと同じクラスの者だという事と、學院で起きた事件の事を聞いて今は主人である二人を説教する立場になっている。
こってり絞られた二人は部屋の隅っこで仲良くシクシクとめあっている。だが、この場に味方などいない。 いっそ、ガイ達の家に避難しようかと考えたのだが、そういえばし前にお休みの挨拶をしに來たと思い出して、結局行けなかった。
「すいません。ご主人様達がご迷をお掛けして」「いんや、もう満足したから気にしておらん」「せっかくいらっしゃったのですから、よろしければゆっくりしていって下さい。マイ、臺所にあるケーキ持ってきて」「はい、なのですー」
ツバキ達はアイに促されるままリビングに案されてマイが持ってきたケーキと紅茶を楽しみ始めた。
「お、このケーキ味いな」「果実亭というケーキ屋さんの數量限定商品です。今日は運良く殘っていたので、買っておいて正解でした」「果実亭の數量限定ケーキだとぅ!?」
數量限定のケーキと聞いてシエルが飛びつくように、というより本當に飛んできた。
シエルは近所にある果実亭のケーキが大好きで常連と言えるほど良く通っている。 そこの限定商品と聞けば飛びつくのも當然だ。
「シエル様はダメです。今日は反省してて下さい」
アイがピシャリと言い放つと、しばらく呆けた顔だったシエルはだんだんと涙目になっていく。
「――ヒッグ……あんまりだぁ!」
最後にはロードに抱きついてマジ泣きしている。流石に可哀想になったロードは、よしよしと出來るだけ優しくでている。
「うぅ、最近アイが厳しいよぉ。私って嫌われているの? ねぇどうなのロードぉ」「俺が知るかよ」
そろそろ相手をするのも面倒になったロードは、視線でアイにどうにかしろと言った。
「シエル様。私はシエル様が大好きですよ。大好きだからこそしっかりとした"立派な人"になってしいのです」「うぅ、アイ〜!」
今度はアイに抱きついて泣きついている。 ロードはいつの間にかツバキ達と同じ席について果実亭のケーキをこっそりと食べている。挙句にはマイに紅茶を頼んでいる。
「そういえば私って人じゃないからアイの言う"立派な人"になれなくね?」
和み始めた場にシエルの疑問が飛ぶ。
「お前、それをここで言う?」
やっぱりシエルは々な意味でダメだと思ったロードだった。
- 連載中131 章
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