《すばらしき竜生!》第36話 昔の話
ある晝下がりの教室。 生徒は勉學に勵む時間帯になっている。
「あー、暇だ」
特別クラスに設置してある一つの機に突っ伏してダラダラしているロード。
「そりゃ、そうだろうな」
その隣ではカリムが頬杖をついて呆れたような表でロードを見ている。
「まぁ、教授を講義で泣かすって……馬鹿だろ」
ロードはカリムと共に、シエルはツバキと共に講義をけに行き、後で教室に集合という流れになっていた。
最初はロードの希で近接戦闘に関する講義を聞きに行ったのだが、ここで問題が発生した。 一通り教えた近接攻撃を実戦で見せるために教授が「誰か相手役をしてくれる奴いるか?」と聞いた。それにロードは挙手をして相手役を務めることになった。 ここまでは普通の講義だったのだが、相手役がロードになった時點で教授の運命は決まってしまった。
教授が余裕そうに「本気で來い」と言ったのでロードは承諾して教授から習った投げ技を本気で放った。 教授はロードのきを捉えることが出來ずにそのままロードに投げられて教室の壁を突き抜けて飛んでいってしまい、講義は教授の意識不明により中止になってしまった。
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気を取り直して次の世界の歴史についての講義を聞きに行ったロードはまたしてもやらかす。 元々黒竜の集落で石版を読んで殆どの歴史を覚えたロードにとってこの講義は復習のようなものに近い。つまらな過ぎて寢そうになっていたロードに教授が目をつけて無理難題を押し付けてきた。 その容は『七天竜の家名とそれぞれの特徴』だった。
ロードとしては簡単過ぎて笑える問題なのだが、まだこの學院で七天竜の家名を知らない生徒がほとんどなので答えられる者はない。しかも七天竜別の特徴までも答えろと言われたら、回答できる者は教授だけだろう。
だが、ロードはそれを簡単に、しかも教授ですら知らない各七天竜の家名だけではなく名前までも回答した。それには教授も大口を開けてポカーンとしていた。
ただの生徒に教授が大好きな七天竜の知識で負けることがよほど悔しかったのか、ロードが七天竜について細かい説明をしていくにつれて教授は涙目になっていった。 挙句には各七天竜代表の子供の名前も言おうとしたところで教授は號泣。講義は終了となった。
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そんなこんなで様々な講義を々な意味で終わらせてきたロードとカリムの二人はしばらくの出をくらってしまった。 今は自分達の教室でシエルとツバキが戻ってくるのをボーっとしながら待っている。
「お前の知識って凄いよな。なんでそこまで知ってるんだ?」「……俺は特殊な質でね。一度見たものは何がなんでも覚えている。俺の家からここまでの歩數やレンガの數も覚えているぞ」「――ッ! ……ヘ……ヘぇそれはなんとも凄い質だな」
ロードがさらりと衝撃的なことを言ったから驚いたのか分からないが、酷く揺して息が詰まる音が聞こえる。 ありえない特異質なので信じられてないんだろうなぁ、と思ったロードはさして気にしていない。
「……兄貴……」「あ? なんだって? 聞こえなかったからもう一回言ってくれ」
太の心地良さに若干目蓋が閉じかかっていたロードは、ボソリと呟かれた言葉を聞き逃してしまう。
「……あぁ、いや……俺の兄貴、って言っても俺が勝手にそう呼んでいるだけなんだけど。 俺の兄貴も記憶力が良かったなぁって思っただけだ……久々に會いてぇなぁ」
何かを懐かしむような顔でそんな事を言ってくる。
(兄貴か。俺も昔はそんなじで呼ばれてたな。……俺も後輩に『兄貴』って呼んでくれた時はなんか、嬉しかったな。 カリムのような奴に慕われる『兄貴』ってやつもそんなじだったのかね)
「會いたいなら會えばいいんじゃねぇの?」
ロードの言葉にカリムは微笑んだまま首を振る。それだけで察したロードは自分の失言を悔やむ。この雰囲気は聞いちゃダメだったやつだと。
「會いてぇよ。今すぐ會って昔みたいに馬鹿やりてぇよ。……けどよ兄貴は死んだんだ。別れは突然って言うけどよ、突然過ぎて別れの言葉も言えなかった……」
やはり、ロードが思ったことと同じだった。 ロードにとってこの空気ははっきり言って嫌いだ。どんな言葉も言いづらくなってしまう。
「……わりぃ。変なこと聞いた」「――グスッ……気にすんな。俺だっていきなりこんな話しちまって悪い」
(……あぁクソ。居づらい空気になっちまった。だから嫌いなんだよ辛気臭いのは)
こんな空気になってしまったら夢の世界に逃げるのが確実だ。ロードは未だに泣きそうなカリムを見れずに機に突っ伏した。
◆◇◆
「――き!」
ここは何処だろうか? を舐めるような風が心地良くてをかすのも大変になってくる。
「兄貴!」
さっきから俺を呼んでいるのは誰だ? というか俺はロードだ。この世界で俺を兄貴って呼ぶ奴はいないから人違いだろう。
「こういう時は……失禮します!」「おぉう!?」
痛みは無かった。 だが、凄まじい衝撃が俺を襲って反的に起き上がってしまう。……やっぱり俺を呼んでいたのか。
「……ったく、誰だよ俺の眠りを妨げる奴は……って真まことかよ」
目の前に立っている俺を起こした張本人は寺てらうち真まこと。よく俺の後をくっついて來て、頼んでもいないのに荷とかを運んでくれている舎弟の一人だ。 ……と言っても俺は學校にも行っていなかったのでゲームセンターで取った景品ぐらいしか荷はなかったのだが。
それはそうとここは本當に何処なのだろうか。俺は學院の教室で気まずい空気に耐えられずに……ってそうか、これは夢なのか。 ……全くこの前も妙にリアルな夢を見せられて、今回も同じような夢かよ。これの後は大抵寂しくなるからあまり見たくない夢だってのに。
「兄貴? 大丈夫ですか?」
真が心配そうに俺を見てくる。 なんでそこまでリアルに再現されているんだよ。もしかして神の仕業か? ……いや、それは違うだろうな。可能は否定出來ないが。
「ん、いや何でもない。それでどうした?」「何言ってんすか、もうそろそろ南高の奴らが來るだろうから來そうになったら起こせって言ったの兄貴じゃないですか」
……おう。そういう設定になっているのか俺の夢は。
それを理解した瞬間に目の前にいかにも不良ですオーラの男共が出現し始める。 更に後ろには俺の大勢の舎弟達がいつの間にかスタンバイ完了というじでバッドやメリケンを構えている。
……流石、夢。なんでもありだな。
「兄貴、いつものお願いします!」
いつもの? ……あぁ、喧嘩する時にいつもやってた號令のことか。 夢でもあれやらなきゃダメなのか? し恥ずかしいんだが……マジでやるのか。
「ここは何処だ?」『俺達のシマだ!』
よし、ちゃんと返ってきた。 返ってこなかったらただの恥プレイになるところだったから夢が無駄にリアルでありがたい。
「あいつらはなんだ?」『他のシマから來た奴らだ!』「そうだ。他から來た『客』だ。だったら大切なお客様を丁寧に接待しようじゃねぇか! ――なぁ! 野郎共!」『――うおぉおぉおおお!』
舎弟達が南高の奴らに向かって雄びをあげながら突っ込んでいく。 俺も行こうとしたが足が妙に重くて、うまく歩くことが出來ない。よくある夢で自由にけない現象がここで來てしまった。
そして視界が変わる。 俺はいつの間にか、いつも集いの場所にしているガレージに橫たわっていた。
「……兄貴」「あ?」
聲がした方に顔だけを向けると、また真がいた。……今回は真の登場多いな。夢だからしょうがないけど。
「俺は今が楽しいです。兄貴には謝しても足りないくらいです」「……どうしたいきなり」
俺だってこの時が一番楽しい思い出として記憶に殘っている。 それと謝するのはこちらの方だ。いつも我儘な俺に付いて來てくれて、これでもかなり謝していた。
「なんかこう言っておかないと兄貴がどっか遠くに行ってしまいそうで……」「ばーか、俺は………俺は……」「兄貴?」
この後に俺はトラックからを庇って死ぬのだろうか。別にここで大丈夫だと言っても夢なんだから問題は無い。 だけど言ってしまったら、大切な舎弟達に噓をついてしまっているような罪悪が重く俺にのし掛かる。
だったら夢だろうと俺は俺の考えを貫いてやる。
「俺はどこかに行ってしまうかもしれない。それは謝る。……だけどな、きっと戻ってくるから。心配しないでお前らのリーダーを待っててくれるか?」「……兄貴。――はい! いつまでも待ってます!」
背景が白に塗りつぶされていく。夢ももう終わりなのだろうか。 だとしたら、この背景をもう一度記憶にしっかりと刻み込んでおこう。二度と無いであろう舎弟達との大切な思い出の場所を。
だからリアルな夢は嫌いなんだ。
「……寂しくなるじゃねぇか。馬鹿野郎」
◆◇◆
「ちょっとロード! そろそろ起きなさい!」「……あぁ……」
シエルの聲がしたのでゆっくりと起き上がると空はうっすらと赤く染まり始めて太がほとんど隠れていた。 周りを見るとカリムとツバキもまだ教室にいた。ロードが起きるまで待っていてくれたらしい。
(し寢すぎたか?)
「ちょっとロード!? どうしたのそれ!」「……あ?」「目よ、あんたの目!」
指摘されたので自分の目元にれてみるとし濡れていた。
(……あぁ、夢で泣くとか初めてかもな)
「昔の、夢を見ていた」「昔ってロードの親のこと?」「いや……すまん、説明が難しいからパスで頼む」
正直に前世の思い出だと言っても信じてもらえないだろう。だとしたらロードでも説明が難しい。
「……ごめん」「なぁに辛気臭ぇ顔してんだよ。お前が笑っててくれなきゃ、なんだ……その……調子が狂うだろうが」「――うん!」
別に説明が難しいというだけで、深い理由も言いづらい事でもないのでシエルが謝る必要は無い。
(……にしても本當にリアルな夢だった。カリムが言っていたように俺も皆に會いてぇな)
「……真まこと、か……」
――ガタッ!
「……カリムよ、いきなりどうしたのじゃ?」「………なんで……」
カリムが慌ただしく立ち上がってロードを凄い剣幕で見つめてくる。
「――なんで俺の本名を知ってるんだテメェ!」
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