《すばらしき竜生!》第39話 怪しい影
「それでは兄貴! また來週學院でお待ちしてます!」「おう、またな」
ロードとカリムの行く方向が別れた時に二人は別れることになり、カリムは「家までお送りします」と言ってきたのだが、邪魔だしいらないので丁重にお斷りしておいた。
涼しくなってきた夜道を一人で歩いていると所々にある街燈が良い景として映える。
「……にしても春だってのに夜は寒いな」
さっさと帰ってアイが淹れてくれる紅茶でも飲んでゆっくりしたいと思ってしまう。 シエルは先に帰っているだろうからすでにリビングの暖爐でくつろいでいるのどろう。
「……ん、なんだ?」
ふと、ロードは一つの街燈が気になった。なにか説明は難しいのだが嫌な気配を微かに街燈から知したロード。
「気のせい……じゃねぇな。そこに隠れているのは誰だ?」
ロードが言葉を誰も居ないはずの街燈に話しかけると、街燈のしたが空間が歪んで一人の男が現れる。 その男は怪しげな仮面を被っていて、前世で言うピエロを連想させる。
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「隠蔽は完璧なはずでしたが……貴方にはバレてしまいましたか」「俺は誰だって聞いたんだが?」「ふふふっ……敵に名前を教えるわけが無いでしょう?」
この男は自らを『敵』と名乗った。ロードの記憶で敵になりそうなのは帝國しか無い。……ということは隠蔽能力からして帝國の隠部隊というものだろうか。
「お前は帝國軍の何かか?」「――帝國? ふふっ……」
どこに笑うところがあったのだろうか。笑っている男にピエロのような姿がプラスされてなんとも苛つく。
「……あぁ、すいません。まさかあのような雑魚共と一緒にされるとは思っていませんでしたので……」「……帝國とは違う敵ってことか。俺ってばそんなに恨まれることをしたかねぇ?」
実際に覚えがないロードは、唯一の自慢である記憶力に異常でも起きたかと心配になってしまう。 そのくらい帝國以外に敵を作った覚えがない。
「――あ、オークの真の親玉とか?」「違います」「デスヨネー」
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本當になんだろうか。なんとか考えを捻り出すが結局は分からなかった。
「今は正が分からなくても問題ありません。どうせそのうち分かるのですから……ふふっ」「何がおかしい。本當にムカつくなてめぇ」
男は仮面を抑えて再度笑う。どこまでも馬鹿にした言にロードはウザくなり、足に力をれてすぐにでも飛びかかる準備をする。
「おっと、今日はやりあうつもりはありませんよ? 本當は違う目的で待機していたのですが……貴方に見つかってしまいましたからねぇ。今日は大人しく引くとします」
目的が違うからといっても敵なのには変わりないのでロードはやりあう気満々だ。 ジリジリと距離を詰めて隙が出來るのを待っていると、先程までふざけた態度を取っていた男が姿勢を正してこちらを見てくる。仮面の奧から覗かれている覚に気持ち悪くなる。
「あとし……あとしで憎き貴方に罰を與えられる」「……んだとナメてんのかオイ」「私と我が主の悲願がすぐそこに……」「ざけてんじゃねぇ!」
ロードは飛びかかるが、まるでそこに最初から居なかったかのように男の姿は霞に消える。
『それまで楽しい時間を堪能しててくださいませ――クフフ』
ロードはすぐさま集中して気配探知を最大限にするが、どこにも先程の不気味な気配は無かった。
「――チッ、逃げられたか」
(今のは何だったんだ? 何故か俺を憎んでたようだが……分かんねぇ)
本當に記憶に無いロードは首を傾げるしかない。 逃げられたのなら仕方が無いと再度歩きを進めるが、そんなロードを呼ぶ聲がする。
「おーい、ロードさんやーい」
白い髪をなびかせて高速で走ってくる――シエルだ。 ロードの目の前まで走って止まる。そうとうな速さだったのだが、シエルは一切疲れていないらしくいつもの笑顔を向けてきた。 それよりも……
「なんでお前ここに居んの?」
という疑問が出てくる。 てっきり先に帰ってダラダラしているのかと思っていたのだが、違かったようだ。
「ちょっとツバキと話してたら遅くなっちゃって……そしたらロードを見つけたの」
どうやらシエルも同じだったようだ。 街燈があるとしても十分暗いのによくロードを見つけられたものだ。逆の場合でもロードはシエルを見つけるだろうが。
もし、シエルがロードより早かったらあの男と會っていたのだろうか。勘の良いシエルなら同じように男を見つけて、戦いになっていたに違いない。
「……どうしたの?」「いや、さっきシエルが來る前に変な男に絡まれてな」
どちらかというとロードが見つけたので、絡んでいったのはロードなのだがそれは気にしない。
「その人はなんて?」「俺を敵だと言って消えてった」「まーた何かやらかしたの?」「正直言って覚えがないんだよなぁ。……にしても変な奴だった。夜道はそういう奴が多いからお前も気をつけろよ」「ロードじゃないんだから私は無駄に敵を作らないわよ。ロードじゃないんだから」
何故二回も言う必要があったのか分からないが、ロードよりもちゃんとしてるシエルならば大丈夫だろうと思い、この話は終わった。
◆◇◆
「私の洗脳をあっさりと弾きましたか……やはり貴方は危険ですね」
誰も居ない路地にて男は呟く。
「それに勘で私の隠蔽を見破るなど、あの方と同じとは」
男は自慢の隠蔽を見破られた事にしばかり苛立ちを持っていた。自分もまだ力が足りないと嫌でも自覚してしまう。
「これからは警戒もされるでしょうから、しばらく覗くのは止めましょうか。……それにしても本當にあの男は何度も邪魔をしてくれる」
いつもは戯けたような口調も今は苛立ちが伺える。からはしばかりの殺気がれだしてしまうが、すぐさま引っ込める。
「ですか、もうしです。主に敗北はありえない……あの男の表が苦痛に変わるのが楽しみです」
男は笑う。 未來を想像して、願いが葉うと信じて、どこまでも面白そうに笑う。 ケタケタという聲は暗く狹い路地裏にかに消えていった。
◆◇◆
その後、シエルと共に帰ったらアイとマイが玄関でお出迎えしてくれた。 どうやら話し聲が聞こえてきたので待機しててくれたらしく、そんなにうるさかったのかと心配になっていたら「エルフの耳は人一倍良いのです」とアイが教えてくれた。
そしてリビングで溫まっていると、頼んでいないのにマイが紅茶を運んできてくれた。ちょうど飲みたかったので謝して飲み干す。當然おかわりだ。
紅茶は高価なを使っており、リビングも広いので貴族漂う良い雰囲気になっていたのだが、暖爐の目の前に仲良く隣り合わせで三角座りしながら紅茶を啜っているロードとシエルが雰囲気をぶち壊していた。
深夜になってアイとマイが寢にった頃、シエルが先にお風呂にってくると言い出したので、ロードは今日の出來事を整理し始める。
今日は驚く事が多すぎた。
一番は同級生だと思っていたカリムが前世の舎弟の一人である真まことだった事だ。
これには流石のロードも狼狽してしまい、シエルにいらん心配を掛けてしまったなと反省してしまう。 教室を出るときに見せた表はロードでも悪いことをしたなと思ってしまうほど後ろ髪を引かれる覚がした。
そして新たな問題がロードの中で起こっていた。 それは、カリムとどのような接し方をしたら良いのか、という事だ。
カリムはすでにロードの事を『兄貴』と呼ぶように決めたらしいが、それでも一応は同級生なので昔のようにパシらせたり、先輩のように接して良いのかとロードを悩ませる。 どうせなら友人らしく接してやりたい気持ちはあるのだが、カリムがそれを許さないだろう。多分「俺が兄貴と友人らしく接するなんて張で死にます」とか言いそうだ。
これはカリムと要相談だなと思い、この悩みはとりあえず保留とする。
次は仮面を被った謎の男の事だ。
『あとし……あとしで憎き貴方に罰を與えられる』
この言葉にはそれまで話していた男の口調から初めてが読み取れた瞬間だった。だからといって気持ち良いものではなく、こちらを完全に敵として見てるだったのだが。
『私と我が主の悲願がすぐそこに……』
これは仮面野郎よりも上の存在が居ると考えていいだろう。それも心の底から敬しているようなじで言っていたので、相當な手腕を持っている相手だ。 悲願、というのも気になる。ロードは気づかないうちにそいつらの悲願を潰してしまったという事だろうか。
『それまで楽しい時間を堪能しててくださいませ――クフフ』
男は最後にこう言い殘したので再びロードの前に何らかの形で出てくるという事だ。これに関してはロードだけの問題ではない。 ああいう輩は平気で周囲の者も巻き込んで騒を起こす。後でシエルやメイド達、それにガイ達にも注意するように言っとかなければ危ないだろう。
久しぶりにガイ達に特訓をつけてやる良い機會にもなるし、學校に行ってどのくらい長したのか気になる。 ついでにメイド達に自分のを守れるくらいの技量を教えてあげるのも良いかもしれない。
とにかくこれからは周りに気をつけて行するようにしようとロードは決意した。
そして地味にロードを悩ませている問題が一つ。
(なんか帰ってからのシエルの様子がおかしい)
これは気のせいではなく、ちゃんと確信した結果こう思っている。
なぜか妙に暖まりながら紅茶を飲んでいる時も食事の時もソファでくつろいでいる時もシエルがこちらをチラチラと見てきた。
なにかゴミでも付いているのだろうかと鏡を見て全をチェックしてみたのだが、おかしな點はロードが見た限り一つも無い。 まさか、自分がおかしく思ってないだけで他からみたらおかしいと思う部分があるのか、と心配になる。
だが、いつものシエルならば普通に言って教えてくれるはずだし、アイもだしなみには厳しいので指摘してくれるだろう。
アイは自分のご主人様がだらしないと言われるのが嫌なので、だしなみや家周辺の掃除は隅々までしてくれている。 ただし、ロードの喧嘩癖は治らないのでだらしないも何もご近所さんからは頼れる男として、野蠻な冒険者からは喧嘩を片っ端から掛ける悪魔として知られている。
それが最近のアイの悩みなのだが、ロードが知るわけが無いし治すわけも無いので、どうしたら立派な人に見られるかを必死に考えている。
カリムに関しては相談。仮面の男は要注意。シエルは分からんという事にしてロードはソファに寢転ぶ。 暖爐の溫かさも相まって思わず寢そうになってしまうが、風呂もってないので気合で起きているしかない。
「おまたせー、お風呂出たわよっと」
ようやく風呂から出たシエルが寢巻き姿でロードが座っている場所の隣に腰掛ける。シャンプーの匂いが辺りに広がるが、悪くはない。
「ちゃんと髪は乾かしたか? ただでさえお前の髪は綺麗なんだから痛むと勿無いぞ」
男の仲でしか言わない言葉なのだが、ロード達の間ではこのような言葉の掛け合いは普通になっている。今ではなんの恥ずかしさも無くこんな事を言えるようになっていた。
「今でもロードに掛からない程度に溫かい風を起こして乾かしているのよ」「……さすが魔法の扱いに関しては一流だな」「あら? もっと褒めて良いのよ?」「へいへい凄い凄い」
こうやってすぐに調子に乗るからあまり褒めたくはないのだが、自然と口から出てしまうのだから仕方が無い。
「……ねぇロード。ちょっと、部屋に移しない?」
突然、提案してくるが流石に部屋に二人っきりはロードでも恥ずかしい気持ちはある。 適當な事言って拒否しようとシエルを見るが、何かを覚悟したような目にふざけられなくなる。
「……どっちの部屋だ?」「どっちでも」「じゃあ俺の部屋に行くか」
たとえシエルの部屋だろうが子の部屋にるのは遠慮したいロードは迷わずに自分の部屋を選択する。
「行くか」「……うん」
……と言っても二人の部屋は隣通りなのでさほど変わりは無い。 だが、それでも何か違う雰囲気はする。
ロードはクッションを敷いてシエルをそこに座らせ、自分も対面するように座る。
「それで? どうしたんだシエル」
言われてし困ったような焦ったような作を一瞬見せたが、すでに決めていたらしくロードを一直線に見て口を開く。
「――ロードの過去を、教えて」
- 連載中1039 章
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