《現実で無敵を誇った男は異世界でも無雙する》プロローグ~始まり~

世界は退屈だ。ある程度生きてきた人間はもはや半ばパターン化された生を送るが故に、そうじることがある。かくいう俺もその一人だ。だが、退屈でも、そのなかには當然、その人だけの幸せなんかもあるわけで。みんな案外、今のパターン化された日常ってものを気にっているのではないだろうか。俺もそうだった。日常が送れるというのは俺にとっては一つの幸せのカタチだった。そしてそれは、するだけではなく、俺が全力で守っていかなければいけないものだった。そのことに今更...本當に今更気づいた。

「ふざけんなよクソ野郎...!」

今、俺の目の前には馴染の楸が塗れで倒れている。學校帰り、頭のおかしいストーカーに刺され、犯されそうになっていたところにたまたま俺が通りかかった。ちなみにそのストーカーは俺に毆り飛ばされて壁にめり込んでいる。生きているかどうかなんて知らん。

「クソッ!一どうすれば...!」

こんな時は無力な自分が嫌になる。攜帯電話はなぜか圏外表示。そもそも救急車が來るまでもつかどうかもわからない。

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「は...ると...?」

不意に楸が口を開く。

「気がついたのか!大丈夫だ。すぐに助けが來る。それまでの辛抱だ。もうしだからな!」

俺の聲は震えていなかっただろうか。助けは來ないし、全然大丈夫な狀況なんかじゃない。

「あはは...。よかったぁ...。なんだか寒くて不安だったんだぁ...。ごめんね。心配させちゃって。」

力なく俺に笑いかける楸を見てが締め付けられる。

「何言ってんだ。謝るくらいならさっさと心配しないですむくらい元気になれよ。俺、お前に言わなきゃいけないこともあるしな。」

俺はなるべく楸が安心するよう明るい聲で話した。そして勢いで普段なら口が裂けても言えないようなことを言ってしまう。微かに楸が目を見開いた。

「わ...私に?」

俺の目を楸はまっすぐに見つめてくる。し気恥ずかしかったが、今目をそらしてはいけない気がして、俺も楸の目を見つめ返した。しばらく見つめあったが先に目をそらしたのは楸の方だった。そして苦しそうに咳き込む。口を抑えた手にはが付著していた。

「これはちょっとやばいかなぁ...。」

楸は今にも消えてしまいそうに儚い表を浮かべて呟く。そしてゆっくりと瞼を閉じてしまう。

「何で、何でお前がこんな目に...!!!」

どうしようもない怒りに苛まれて、俺は気づけばそう呟いていた。別に意味などない。ただそうせずにはいられなかった。まるで何かに突きかされるように。

『それが世界の意思、というわけだよ。』

頭に唐突に聲が響く。楸には聞こえていないのか、もう反応する気力もないのか、目を閉じたままだ。

(どういうことだ!)

普段なら抱くであろう疑問、そんなことはまるで楸が死ぬのは當然と言わんばかりの言い方をされた怒りで、俺の頭からすっかり抜け落ちていた。頭に響く聲に対して俺は聲を荒げて応える。

『言った通りの意味だよ。世界が、君達の生きる理が彼の死をんでいる。』

世界が...?どういうことだ?

『悪いけど、あまり話している暇はないよ。その子を助けたいのならね。』

まるで思考を読んでいるかのように、質問をしようとした俺の機先を制して聲が聞こえた。いや、そんな事より、楸を救える、と今言ったか?

(どうすればいいんだ?)

一気に思考が冷靜になった俺は謎の聲にそう答える。冷靜な思考が帰ってくると同時にこいつは何者か?という疑問が浮かび上がってきたが、いまそのことは重要じゃない、と思い直す。

『簡単な話だ。君が異世界に行けば彼は助かる。』

俺が異世界に行くだけ?

(わかった。行く。)

俺は即座に答えた。僅かに聲の主が逡巡する気配がした。

『いいのかい?ぼくが本當のことを言ってる保証なんてどこにもないんだよ?それに異世界はこの世界よりもはるかに危険だ。多くの魔や魔族が蔓延っている。なかには魔王や邪神と呼ばれるような存在もいる。どんな強者だって明日を生きている保証はない。』

まるで俺のを案じているかのような脅しをかけてくるのが気になるが、その通りだ。こいつが本當のことを言っている保証なんてどこにもない。何せ相手にメリットが欠片もない。無償の善意なんてそんな馬鹿げたものでもないだろう。なんせ人の命を救える存在がそんなものを施しているのなら、地球に死人なんて出るはずがない。だがそれでも

(構わない)

俺の答えは変わらない。ほかに楸を助ける方法がないのなら、俺はそのわずかな可能にかける。例え、その対価に俺の命が失われることになろうとも。まあ、楸の無事を確認するまで死ぬ気は頭ないがな。

數秒の後、俺の全が淡い青に包まれた。そして俺の全から粒子が天空へと登って行く。それが異世界転移の魔法だと理解した俺は、丁寧に楸を地面に橫たえる。どうやら、俺の存在が希薄になるにつれて楸の傷が塞がって行くようだ。

「平和に生きてくれよ?俺がこっちに帰ってきたときに寂しくないように。頼むぞ?」

俺の最後の言葉は果たして楸に聞こえたのだろうか。確認することもできないまま、俺のの中心からぜるように発して───

この日、柊翔という存在は世界から消失した。

柊 翔   (ひいらぎ はると)

16歳 天の格闘技神力を持ち、間違いなく地球最強の人間だった。その才能は、戦闘だけではなくあらゆることに通している。格は溫厚だが、敵には容赦がない。

楸 桜     (ひさぎ さくら)

16歳 頭脳明晰で、格も明るく、優しい。容姿も文句なしの黒髪ロングの。當然數多の男子に告白をけていたが、なぜか全て斷っていたようだ。

ストーカー

40歳。ほかに特筆することはない。変態。

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基本的にここは話のなかに出てきた中で読者の方が不可解にじるであろうことを説明していこうと思います。細かい話になってくるので読み飛ばしていただいても結構です。

転移の際、なぜ最初は粒子になっていたのに、最後は発したのか

→魂は世界に一種の引力のようなもので引かれています。そのため、魂は別世界に勝手に移したりすることなく、基本的に同じ世界を循環します(これが原因で廻転生が起こる)。そして互いに引かれ合うを引き離すには莫大なエネルギーが必要。そしてその際、當然ながら一気に引き剝がしたほうが労力や時間がなくて済み、効率がいい(例としては磁石がちょうどいいと思います。磁石は一気に離すと一瞬強い力が必要なだけですが、ゆっくり離そうとすると、継続して強い力でひっぱる必要がありますよね)。転移において、粒子になって転移させるのは磁石をゆっくり離しているのと同じ狀況。発させ一気に転移させるのは、磁石を一気に離そうとしているのと同じ狀況。それでも最初聲の主が主人公を粒子にして転移させたのは、ちゃんと楸は助ける、という意思表示。それに主人公が気づいた時點で発転移させた。

『世界の意思』とは?

きっとそのうち明かされる

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