《現実で無敵を誇った男は異世界でも無雙する》エリーゼ
前までの話を主にリントヴルムの設定について大幅に改稿しました。
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「様なんていらないよ。俺のことは翔って呼び捨てで呼んでくれないか?」
そのほうがエリーゼも親しみやすいだろう。そう思っての発言だったが、どうやらまずかったらしい。
「そ、そんな!呼び捨てなんて畏れ多くてとても!」
顔を若干青ざめさせながらものすごい勢いで首を振っていた。
「わ、悪い!どうしてもってわけじゃないんだ!エリーゼもそのほうが呼びやすいかと思って!様をつけたほうがいいならそのままでいいぞ!」
俺の方もかなり慌ててしまった。なにせそのままにしていたら首が折れるのではないか、と思わせるほどの勢いだったのだ。
「すみません...。ではお言葉に甘えて翔様と呼ばせていただきます...。」
そしてエリーゼが心底ホッとした、という表を浮かべたのを見て俺も小さく苦笑をこぼす。
「よし。それじゃ、宣言通り話をしようか。ひとまずエリーゼは俺について何か知りたいことはあるかい?答えられる質問なら何でも答えるよ。」
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俺の問いかけに彼は僅かに逡巡した後、おずおずと尋ねる。
「あ、あそこに倒れていらっしゃる黒龍様は一...?」
「あぁ、アイツは...。」
俺が倒した。そう答えようとしたが、今、エリーゼが黒龍「様」と呼んだのが気になる。もしかすると彼たちにアイツはとっては神のような存在だったのか?だとすると、それを殺してしまった俺は相當マズイ狀況なんじゃないか...?
しかし、エリーゼに噓をつくことは憚られた。先程から彼が見せている異常なまでの警戒心。おそらく、これまで相當人間というものの悪意に曬されてきたのだろう。怯えの中に含まれている猜疑、懐疑、孤疑etc...。それらはきっと、俺が噓をついたことに気づいたらもう拭えないものとなってしまうのではないか。そんな確信めいた予が俺にはあった。つまり、噓をつけばエリーゼにばれた瞬間、彼と仲間になることは不可能となる。一方、真実を告げた場合もエリーゼ次第では仲間になることはない。どころか俺を憎き神敵として攻撃してくるだろう。そして俺は噓がバレない自信がある。地球最強の格闘家であるために、相手の表を読むこと、そして相手に表を読まれないようにすることは必須技能だったからな。
まあ長々とどうするか考えていたわけだが、最初から答えは決めていた。
「俺が倒した。」
騙して仲間になったとしても、そんな仮初めの信頼関係ではいつか破綻してしまうだろう。俺が今求めているのはそんなものじゃなく、心から信頼し合える相手だ。これでエリーゼと例え仲間になることができなくても、きっと俺は後悔はしないだろう。
「そう、ですか...。」
そう答えたエリーゼは目から大粒の涙を零し始める。
「お、おい、大丈夫か?」
予想だにしない反応をされてさすがの俺も困する。罵倒とかはける用意は出來ていたが、まさか泣いてしまうとは...。
(ど、どうすればいいんだ!?)
元來からの優しい格と、現実にいた頃は楸と一緒に居たせいであまり子も目的ではよって來なかったため(心あわよくば、と思ってるやつはいっぱいいたらしいが)、
翔はの涙というものを見たことがない。つまり全くといっていいほどに耐がないのである。地球最強の意外な弱點発見の瞬間である。
結局エリーゼの涙を納めるのは時間に任せ、翔はしでも落ち著くように優しくエリーゼの頭をでてやっていた。しばらく泣いていたエリーゼだったが、十數分を用してようやく落ち著いた。
「取りしてしまってごめんなさい。本當に今回はダメだと思っていたからつい...。」
と、エリーゼは僅かに頬を朱に染めながら謝罪した。ちなみにまだ翔の手はしっかりとエリーゼの頭をでている。
「大丈夫だけど、出來れば君がどうしてあそこに居たのか聞かせてくれないか?當然無理にとは言わない。言いたくないことは伏せてくれても構わないからさ。」
俺はゆっくり、エリーゼが安心出來るように話かける。それに対してエリーゼはし目を伏せながら、自分の境遇について訥々と語り出す。
「私の両親は二人とも奴隷で、かなりの形だったそうです...。」
(だったそう・・です、か。)
おそらく、両親の顔も見たことがないのだろう。今話しているエリーゼからはあまりの起伏をじられない。
「そして、その二人を掛け合わせれば、もっと形の子が生まれるのではないか、と主人は考えたらしく、その行為の結果として私は生まれました。本來、私は奴隷として生きることになるはずだったのです。」
自分の人生はすでに決まっていて、しかもそれが一切の見えない道だと気づいた時の彼の気持ちは、一どれほどの絶をじたのだろう。今も僅かに肩を震わせている。
「でも実際はそうはなりませんでした...。なぜなら、私には生まれつき『巫』という職業が與えられていたからです...。私が住んでいた村には言い伝えがあって、定期的に生まれてくる巫持ちの子供は、ここに住んでいる龍に捧げなければ、腹を空かせた龍が何もかもを破壊してしまう、というのです。」
結局は、やはり助からない。人としての尊厳が死ぬか、的に死ぬかの違い。どちらにしても、たった一人のに背負わせるような重責ではない。
「そして捧げる巫は必ず純潔でなければいけないそうです。こうして私は奴隷とはならずにすみましたが、このことを知った主人が怒り、私に日常的に酷い労働を代わりにさせるようになりました。毎日畑仕事や掃除などを一日中やって、後は泥のように眠る。當然失敗したら酷い罰をけるので毎日死に狂いで仕事をしました。あわよくば自分が必要とされ、エサとして捨てられないことを願って...。」
自分のことを餌と言ったエリーゼは、自嘲するでも、悔しがるでもなく、ただ淡々と事実を述べているようだった。
「そうしてようやく今日まで命を繋いで來ましたが、どうやら今日が私が人柱となる日だったようです。今考えると前日あまり仕事がなく、おまけに贅沢にも暖かい水を使ってを清めることを許された時點でおかしいと気づくべきだったのでしょう。しかしそんな単純な考えに至らないほどに私は疲れきっていました。そして昨日眠りについて、目が覚めたら翔様がいらっしゃった。というわけです。あまりに目が覚めたとき調がよかったものですから、きっと自分は寢過ごしてしまったんだ、と思ったのであの時慌てて謝ったのです。」
エリーゼが話すのを聞いていた翔は、心腸が煮えくりかえりそうなほどに怒っていた。人間が人間を家畜のように飼う。この世界にとってはそれは一種の當たり前なのかもしれないが、翔からすれば生きようと必死に努力している人間を踏みにじっているにすぎない。それを到底許せるわけもなかった。
(しかし...。)
こういうことは力ずくで解決することはほぼ不可能と言ってもいい。一つを潰しても新しいものがいつの間にかできているのだ。これは働きアリの法則と同じようなものだ。働きアリのうち、実はニ割はなにもせずにサボっているのだが、そのニ割を取り除くと、なぜかまた別の二割がサボり始めるのだ。つまり、悪い奴はどんなに無理やり消したって居なくなりはしない。政治というものを使って奴隷制度そのものを変えていくしかないのである。
(とりあえず今は何もしないのが吉か...。)
藪をつついて蛇や熊を出すような真似はしたくない。蛇や熊は俺以外の人間を、特に奴隷を襲う可能がある。それでは本末転倒だ。
(ひとまず、この世界のことを知らなくては。そして、問題の解決策と、現実に帰還する方法を探そう。)
そうと決まれば話が早い。善は急げ、である。
「なあ、エリーゼ。」
翔はエリーゼと目をしっかりと合わせる。
「俺と一緒に旅をしないか?」
期待と不安で揺れいていたが、一転して表を輝かせたエリーゼは━━━
「はいっ!」
と言って、勢い余って翔に抱きつくのであった...。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     すいません。思ったよりもエリーゼとの會話が長くなったので能力説明は次回に回します!
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