アリス王に呼ばれ、整列する鎧たちの奧から一人の男が姿を現した。歩く度にガチャガチャと金屬音をならす、分厚い鎧を著た大男。幸いにも兜はに付けていないため、その兇悪な顔を拝むことが出來た。

「私はフェルマニア王國第一騎士団団長、名はベルザムだ。今後は君達の指導役を務めることになる。よろしく頼む」

ベルザムと名乗る男は、只者ではない威圧を放ちながら自己紹介を終えた。いずれ多分きっと殺されるんじゃないかと思う。とても仲良くなれそうにはない。

「早速で悪いが、今後の君達の指導の為にも、まずは勇者である君達のステータスを知りたい。失禮を承知だが、ステータス報を教えて貰えないだろうか？當然それらの報を知るのは、私を含むごく一部の者だけで、決して他者に明かすことは無いと約束しよう」

ステータス？何だそりゃ？

ステータスと聞けば、単純に思い浮かぶのはゲーム等でお馴染みのあの『ステータス』であるが、まさか分などを聞いているのだろうか。何れにせよベルザムの言い草からすると、かなり匿の高い報のようだ。

「あのすみません......そのステータス？とは何ですか？」

皆の代表一神が尋ねると、ベルザムはし驚いた表を見せた。

「なんと、ステータスを知らないのか。君達の世界には、そもそもステータスと言う概念がないのかも知れないな。ならばし見せよう」

そう言うと、突然ベルザムの眼前、空中に半明の四角い面が出現した。ホログラムのようなそれを俺たちに見せつけベルザムは、

「これがステータス、もといステータスプレートだ。自の的な能力が數値化されたものがここに記載されている。この世界の人間は皆この技能を持って生まれてくるんだ」

まるでゲームみたいな話だと思った。だが実際に目の前で実演してくれているのだから、これは紛れもない現実なのだろう。この世界の人間特有の技能、つまりは神が人類を生み出した際、元々人間の設計上存在していた技能という訳だ。中々面白い世界だ。

「君達にも出來るか分からないが、試してみてくれ。単純に頭の中でステータスプレートを開こうと考えるだけでいい」

ベルザムに言われ、俺は頭の中でベルザムの出現させたプレートを開こうと考えた、その瞬間、

【雨宮優】Lv.1

別：男

種族：人間族

力：12／12

魔力：12／12

筋力：12

防：12

敏捷：12

覚：12

〈AS〉

〈PS〉

・超回復

・言語理解

〈稱號〉

・異世界人 

目の前に半明のウィンドウのようなものが現れた。おそらくこれがステータスプレートとやらだろう。どうやら俺以外の奴らも表示に功したようだ。

しかし何だ、これは強いのだろうか。數値は低いように思うが、レベル1とあるからまあこんなものなのだろうか。基準が分かればいいのだが。

俺はベルザムに聞いてみようと考えたが踏みとどまる。ちょうど近くにいる人間が目にった。アリス王、彼の方がベルザムより聞きやすそうだ。

俺はアリスに近づく。

「ねぇ王さん」

「はい！なんでしょうか？」

王はすこぶる機嫌が良さそうだ。よほど一神たちの協力を得られたのが嬉しいらしい。一神たちもそうだが、俺はこういう眩しい奴らがすんごく苦手だ。こういうのに限って、腹ではエグいことを考えてたりする。

「あの、この世界でのステータスの平均みたいなものってあるのかなって」

「平均ですか......そうですね、一般の方はレベル1でだいたいどのステータスも10前後じゃないですかね」

「へぇ、10前後......ってじゅう！？」

「はい！」

王は眩しい笑顔で答えてくれた。

まさかとは思うが、いやまさかとは思う。しかしステータスを何度確認してもオール12に変化はない。アリス王の言葉が本當ならば、俺は一般人と変わりない凡人ということになる。いやもしかしたら10から12の間にはとてつもない差がある可能も無きにしも非ず、ではある。何だか不安になってきて、他の奴らはどうなっているのだろうと思ったその時、

「まぁ！あなたが勇者様ですね！レベル1でこんなにお強いなんて、頼もしいです！」

「いやぁそれ程でも......」

王に褒められて照れ混じりに頭を搔く、一神の姿が目にった。俺はこっそり後ろに回り込んで、一神のステータスを覗き込む。

【一神汰】Lv.1

別：男

種族：人間族

力：100／100

魔力：100／100

筋力：100

防：100

敏捷：100

覚：100

〈AS〉

・全屬魔法

・強化

・屬強化

・覚醒

・聖剣召喚

〈PS〉

・全屬適

・全屬耐

・高速力回復

・高速魔力回復

・長補正

・ユーバーセンス

・言語理解

〈稱號〉

・勇者

・異世界人

目玉が飛び出るかと思った。それ程までに俺のステータスと違いすぎる。まずステータス數値が異常だ。単純に俺の8倍以上。そしてなんと言ってもスキルの數。パッと見ただけでは分からないが、何だか凄く強そうだ。これが正に桁違いと言うやつか。

とりあえず神は一神のことが大好きらしい。それにしたって贔屓しすぎだと思う。それともステータスプレート自が壊れているのだろうか。

「あ、あの〜、俺のステータスプレート壊れてるみたいなんだけど......」

弱気な聲で、僅かな可能に縋るように尋ねる。そんな俺を見て、王はすかさず俺の側へ來てステータスを確認した。

「............えと」

王は數秒固まったあと、何とも言いがたい表をして、

「レ、レベルが上がれば強くなれますよ！......多分」

あ、これ絶対ダメなやつだ。

視線を逸らす王を見て、の力が一気に抜けていく。正直な話、異世界で無雙するのも悪くないだとか思っていた。その矢先にこの現実はかなりショックだった。

俺が絶に打ちひしがれてると、

「そ、そうだスキル！もしかしたらこのスキルは凄く強いのかもしれませんよ！」

閃いたように王は聲を上げた。何とか俺を勵まそうと懸命に考えたのだろう。王が指さすスキルは〈超回復〉、パッシブスキルの欄にあるスキルだ。

なんだよ超回復って、筋トレの効果でも上がるってのか......？

半ば諦め半分で確認してみる。

〈超回復〉

常に自のを最も健康な狀態にまで回復する。

「おぉ......、おお！」

「凄いです！こんなスキル初めて見ました！」

意外と優秀なスキルで驚いた。これはつまり、怪我やダメージなんかをけても勝手に回復してくれるということだろう。回復速度までは分からないが、超がつくのだ。遅いなんてことはないはずだ。

「けっ、傷が治るから何だってんだ。攻撃出來ねぇんじゃ足でまといにしかならねぇだろ」

水を差したのは桐山だった。図だけじゃなく態度もでかい男だ。正論すぎて何も言えないのが辛いところである。

「あ、あの、ステータスはどうでしたか？」

先程泣かされたこともあり、王は恐る恐るといった様子で桐山に尋ねる。桐山はそんな彼を橫目でギロりと一瞥し、無言でステータスプレートを表示した。

【桐山大河】Lv.1

別：男

種族：人間族

力：100／100

魔力：50／50

筋力：120

防：120

敏捷：70

覚：80

〈AS〉

・屬魔法（熱・雷）

・強化

・屬強化

・剛腕

〈PS〉

・屬適（熱・雷）

・高速力回復

・長補正

・バトルセンス

・言語理解

〈稱號〉

・バトルマスター

・異世界人

「す、凄いです......！とても頼りになりますね！」

「けっ、くだらねぇ」

口元に手を當てて驚く王に、桐山は腕を組んで無想にそういった。

全く、言うだけあって滅茶苦茶な強さだ。

「みんな凄いのね。私、何だか弱いみたい」

「風ちゃんも？実は私もそうみたい......」

言い出したのは星野と村の子ペアだ。一神と桐山という判斷基準があってなおそう言うのだから、確かに弱いのだろう。そう思っていたのだが、

【星野風】Lv.1

別：

種族：人間族

力：50／50

魔力：120／120

筋力：40

防：50

敏捷：50

覚：60

〈AS〉

・屬魔法（熱・水・風）

・治癒魔法

・強化

・屬強化

〈PS〉

・屬適（熱・水・風）

・高速魔力回復

・長補正

・ヒールセンス

・言語理解

〈稱號〉

・癒しの巫

・異世界人

【村千代】Lv.1

別：

種族：人間族

力：40／40

魔力：150／150

筋力：40

防：40

敏捷：50

覚：70

〈AS〉

・全屬魔法

・霊魔法

・強化

・屬強化

〈PS〉

・全屬適

・高速魔力回復

・長補正

・マジックセンス

・言語理解

〈稱號〉

・賢者

・異世界人

それを見て言葉を失った。

ステータス、スキル、どれをとっても俺とは比べにならない。中でも俺を絶させたのは、星野が所有するスキル〈治癒魔法〉である。これは恐らく、自分や仲間の傷を直したりするスキルだろう。対して俺の〈超回復〉は自のを治すだけ。治癒魔法の下位互換と言ってもいい。

「お二人共凄くお強いじゃないですか！ねぇベルザム！」

「ええ、まさかこれ程とは。これなら魔王を討伐することも夢ではないでしょう。頼もしい限りです」

王もベルザムも大絶賛だ。

「へえ、これって強いんだ？なんか數字が低いから弱いのかと思っちゃった」

それで弱いと言うのなら、一俺はどうなってしまうのだろう。何だかこの場にいるのが恥ずかしくなってきた。

「さて、ステータスも確認できたところで、そろそろ陛下の元へ行こう。早く報告をせねばならん」

ベルザムはそう言うと、この大広間から俺たちを連れ出した。