《悪役令嬢は麗しの貴公子》1.プロローグ

 

 夢を見た。

 いや、これは夢というより前世の記憶と言うべきだろう。前世の私は、アラサーちょいデブ、エブリデー社畜OLだった。そんな私がよく夢中でプレイしていたのがとある乙ゲーム。

 ストーリーは安定の王道もの。貴族の令息令嬢達が通う學園を舞臺に、攻略対象者達と男爵令嬢であるヒロインが苦難を乗り越えつつ流を深め、最後にはハッピーエンドを迎えるお話だ。

 そして、私はそのストーリーのヒロイン、ではなく殘念ながら悪役令嬢ロザリー · ルビリアンの役としてこの世界に転生してしまったのである。

 ロザリーは攻略対象者の一人であるアルバート·リリークラント王子の婚約者で、王子とヒロインの仲を引き裂こうとする傲慢ワガママ令嬢という立ち位置にいる。

 そして、彼らが晴れて結ばれた時、私(ロザリー)はヒロインをめた罪で一家沒落、國外追放or処刑になってしまう。それだけではない。一つのルートだけでなく、何故か全てのルートにおいてロザリーはヒロインをめた結果、悲慘な末路を辿ってしまう。

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 このゲームの制作スタッフはロザリーに恨みでもあるんだろうか、と言いたくなるくらいそれはもう酷いのだ。

 そんな夢(前世の記憶)を見て、目を覚ますといつも見慣れたベッドの天蓋が見えた。ゆっくり起き上がると、し頭がズキズキと痛み、前世の私と今の私(ロザリー)の記憶がごちゃ混ぜになって混している狀態だった。

 し痛みはあるけど、まぁその慣れるだろうと思い、ベッドから抜け出して部屋にある鏡の前までやってくる。

 そこに映ったのは、さは殘るが夢で見た銀糸のような綺麗な長い髪、髪と同じ銀の瞳の

 頬にそっと手を當てて確認する。

 これが今の私、いづれ悪役令嬢となるロザリー・ルビリアン公爵令嬢の姿。

 鏡に映る自分と見つめ合っていたら、ドアの方からノック音が聞こえ、次いで侍のマーサがってきた。

 「失禮致し......、お嬢様?! お、お目覚めになられたのですか!」

 マーサは一瞬目を丸くして驚いたが、すぐに笑顔になって安堵した様子を見せた。それもそのはず。なんせ今の私は、先日屋敷のバルコニーから飛び降り自殺したお母様を間近で見たショックで三日三晩眠っていたことになっているのだから。

 まぁ、その時ちょうど夢という名の前世の記憶を見ていたことは言うまでもない。

 「えぇ、今はこの通り。何も問題ないわ。」

 私は両手を広げて一回転してみる。長い髪が、スカートのように広がってし遅れて追ってくる。 

 「そうですか、それはよぅございました。」

 一回転した私を見たマーサは、また嬉しそうにに手を當てて微笑んでくれた。

 「ところでマーサ、私が眠っている間、お母様はどうなったの?」

 私がそう問うと、マーサは笑顔を引っ込めて悲しそうな表をして、やや戸いながらも私が眠っていた間のことを教えてくれた。

 あの日、お母様はあのまま亡くなってしまい、その後すぐに葬儀が全て行われたらしい。そして、お父様はお母様の心を守れなかったことに責任をじ、現実逃避のためか、以前と違って家にもほとんど帰らず仕事人間になってしまったという。

 また、私のお見舞いにも全く來ないからお母様に容姿が似ている私を避けているんじゃないかということも教えてくれた。

 これらのことをマーサから聞いて、私は今凄く焦っている。

 なぜなら、私が眠っていた數日間で著々とゲームのシナリオ通りに事が進んでしまっているからだ。

 確かゲームの設定では、悪役令嬢ロザリーは期に母親を亡くし、父親からも距離を置かれたことが原因でワガママ放題しまくった結果、あんなひね曲がった格になってしまうのだ。

 しかも、お父様が私と距離を置くのもお母様が亡くなる原因が私にあるからである。

 元々、我がルビリアン公爵家は以前何度か王族に嫁りしたこともあるくらい、貴族の中では王家に次いで地位が高い。

 それに、代々家を継いだ當主が財務長を務めており、國の経済に大きく関わっているから王族からの信頼も厚いんだとか。

 まぁそんな訳で、我が家凄いらしいんです。なので、お母様はお父様のご両親、つまり私の祖父母から跡継ぎを産めと散々プレッシャーをかけられ、罵られ続けたけど結局生まれたのは私だけ。

 それでお母様は心を病んでしまって、い私に「お父様をお願いね、してるわ…」と言い殘して亡くなってしまったのである。

 だから、私は今凄く焦っている訳で。このままゲームのシナリオ通りに進んでしまったら、私も家も確実に破綻してしまう。けど、せっかく前世の記憶が戻ったんだからそれだけは何とか回避したい。

 「あの、お嬢様。いかがなさいましたか?」

 ここ數日間の出來事を聞いたっきり難しい顔をして黙り込んでしまった私を、マーサが心配そうに見つめて聲をかけてくれた。

 「いえ、何でもないわ。やっぱりまだし疲れているみたい。しベッドで休むわ」

 し一人になって今後どうするか考えたかったため、マーサには笑顔でテキトーな言い訳をして退出してもらうようお願いした。

 気がかりな様子をしていたが、マーサは私の指示に従って部屋を後にした。

 一人になった室で、広すぎるベッドにダイブして今後のことについて考える。

 お母様が亡くなって凄く悲しいけど、今はこの最悪なシナリオをどうにか変えていかないと。現狀を嘆いてたって何も変わらないし、泣いてたってしょうがない。私はベッドから勢いよく起き上がると、両手で自分の頬をペチンと叩いた。

 し力をれすぎて頬がジンジンするけどこのくらいが丁度いい。気合をれた私は、早速マーサを呼び出して笑顔で一つお願いをした。

「マーサ、私の髪をバッサリ切ってちょうだい?」

 ゲームのシナリオ通りなんてまっぴらごめん。し出遅れてしまったけど、ここから巻き返して家も家族も、そして私自も守ってみせる!

 

 こうして、私のフラグ回避の人生が始まったのである。 

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