《悪役令嬢は麗しの貴公子》15. 貴公子は見た
 はぁ……やっと著いた。
 王宮が広すぎてイベント開始までに薔薇園に辿り著けるか不安だったけど、なんとか間に合ったみたいだ。
 リディアの姿を見つけ、いつイベントが始まってもいいように會話が聞こえるくらいの距離を置いて木影にを潛める。
 「そろそろだと思うんだけど…」
 リディアの呟いた臺詞にやはり転生者だと確信する。キョロキョロと辺りを見回しているリディアはここに來るはずの王子の姿を探しているんだろう。
 あんなあからさまに探して……。ココはゲームではなく現実なのだから、いくらゲームと同じキャラやイベントが起こったとしても容が完全に一致するわけじゃないのに。
 今からそれで大丈夫か、主人公ヒロイン。既に一抹の不安をリディアに抱きつつ見守っていると、待ち人が漸く現れた。
 「…誰だ。ここで何をしている」
 ゲームと同じ臺詞と聲でそう告げて、彼は姿を現した。月夜に照らされた彼は、まさに語に出てくる王子様そのもの。我がリリークラント王國第一王子にして王太子であるアルバート・リリークラントその人である。濃紺の髪は風に靡いて揺れ、深海のをした瞳は訝しむように目を細めてリディアを見つめている。
Advertisement
 「あ、あの! ごめんなさいっ! 道に迷ってしまって… 。それに、ちょっと…一人になりたくて」
 リディアは先ほどまでなかったはずの涙を両目いっぱいに溜めて瞳を潤ませている。
 なんて素晴らしい貓被りだろう。
 関心しながらこの後のイベント容を思い出す。
 
 確かこの後、アルバート王子は主人公ヒロインに泣いている理由を問い、主人公ヒロインがこれまでの事を説明する。そして、涙ながらに語るも必死に耐えて無理に笑おうとする主人公ヒロインの姿に心を打たれたアルバート王子はそんな彼を優しくめ、彼の手の甲に口付けをして別れるという流れだった。
 あのスチルが間近で見られるのかぁ…、とワクワクしていたのだが。
 「……そうか。では、この通路を戻って突き當りを左に曲がれ。衛兵がいるはずだから、後は彼らに案してもらうといい」
 「「え」」
 
 口かられた聲がリディアと重なる。慌てて口元を手で覆う。大丈夫、きっと聞こえていない。
 その証拠に、リディアが王子に言い縋った。
 「あ、あのでもぉ…。私、今日が初社界でお城の中とかよく分からなくて。そっ、それに! 今はまだ、會場に戻りたくなくって」
 「普通、デビューしたばかりの令嬢はこんな所に迷い込んだりしない。そもそも、これは君の自業自得だろう」
 「そっ、そうですけどまだ戻りたくないんです!」
 
 「君の都合は私には関係ない」
 「そ、そんなぁ……」
 必死に言い縋るリディアを間髪れずに切り捨てていくアルバート王子。
 …おかしい。私は今回なんの介もしていないし、主人公ヒロインであるリディアの臺詞も一言一句一緒で完璧だった。
 なのに何故イベントの容がこうも違う?
 ゲームであってゲームでない世界。現実だから。
 そう言われてしまえばそれまでだが、何か引っかかる。
 「兎に角、周りに迷をかけたくなければ早く會場に戻れ」
 「………………はい」
 一人考えている間にも會話は進む。
 完全にアルバート王子に打ちのめされてしまったリディアは、困と揺の表をしながら王子に教えてもらった道をとぼとぼ歩いていった。
 ちょっとだけ同する。 
 それにしても、どうしてイベント容が違ったのだろうか? 好度は関係ないし、悪役令嬢ロザリーも出てきてない。私もアルバート王子と接してないし……ん?
 アルバート王子と接してない・・・・・・?
 それだ! ゲームでは、悪役令嬢ロザリーがアルバート王子の婚約者でデビュー前に何度か顔合わせしている。
 しかし、今の私は男裝している上にアルバート王子の婚約者でもなければ一度も會ったことがない。
 だが、それだけでこんなにもイベント容が違うだろうか?
 「おい、いつまでそこに隠れているつもりだ。出てこい」
 また一人で考え込んでいたため、不意打ちでかけられた聲にビクリと肩が上下する。
 木影からアルバート王子の方をそっと覗くと、彼は私の方をじっと見ていた。
 ば、バレてる…。
 これはもう腹を括るしかなさそうだ。
 私は一つため息を吐いてから観念して王子の前へと出ていった。
 漸くメインヒーロー出せました…
 本日もありがとうございました(´˘`*)
 次回もお楽しみに。
 
【書籍化】學園無雙の勝利中毒者 ─世界最強の『勝ち観』で學園の天才たちを─分からせる─【コミカライズ決定!】
【書籍版一巻、TOブックス様より8/20発売!】 暗殺一族200年に1人の逸材、御杖霧生《みつえきりゅう》が辿り著いたのは、世界中から天才たちが集まる難関校『アダマス學園帝國』。 ──そこは強者だけが《技能》を継承し、弱者は淘汰される過酷な學び舎だった。 霧生の目的はただ一つ。とにかく勝利を貪り食らうこと。 そのためには勝負を選ばない。喧嘩だろうがじゃんけんだろうがメンコだろうがレスバだろうが、全力で臨むのみ。 そして、比類なき才を認められた者だけが住まう《天上宮殿》では、かつて霧生を打ち負かした孤高の天才美少女、ユクシア・ブランシュエットが待っていた。 規格外の才能を持って生まれたばかりに、誰にも挑まれないことを憂いとする彼女は、何度負かしても挑んでくる霧生のことが大好きで……!? 霧生が魅せる勝負の數々が、周りの者の"勝ち観"を鮮烈に変えていく。 ※カクヨム様にも投稿しています!
8 149神様はチートはくれないけど元々俺のステータスはチートだった
女神様から異世界転生することを知った主人公。 しかし主人公は記憶喪失だった。 そんな中、チート能力も貰えず赤ちゃんからやり直すことに・・・ そんなある日、主人公エイトは自分が天才を超えた異才だと知る。 そこから事件や戦爭、學園に入學したりなど、様々な困難が待ち受けていた。 初投稿なので溫かい目で見守ってくださると幸いです。 誤字脫字あるかと思いますがよろしくお願いします。
8 160空間魔法で魔獣とスローライフ
立花 光(タチバナ コウ)は自分がアルビノだと思っていた。特殊な體質もあったためずっと病院で検査の毎日だった。癒しはたまに來るアニマルセラピーの犬達ぐらいだ。 しかしある日異世界の神様から『君は元々儂の世界で産まれるはずだった。』と 地球に戻るか異世界で暮らすか選んでいいと言う。 それなら地球に未練も無いし、異世界でもふもふスローライフでも目指そうかな!! ※小説家になろう様、アルファポリス様にマルチ投稿しております。
8 159転生プログラマのゴーレム王朝建國日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~
ブラック會社で過労死した《巧魔》。 異世界へ転生した巧魔は、《ゴーレム》を作成出來る能力を手に入れていた。 働きたくないでござる癥候群筆頭の巧魔は、メガスローライフ実現のためここぞとばかりにゴーレムを量産。 しかし目立ちすぎてしまったのか、國王に目をつけられてしまい、かえってメガスローライフが遠のいていく。 果たして巧魔に平穏なスローライフは訪れるのだろうか……。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 【本作の特徴】 ・ゴーレムを使い內政チート ・戦闘特化ゴーレムや自己強化型ゴーレムで戦闘チート ・その他ミニゴーレム(マスコットキャラ)など多種多様なゴーレムが登場します ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ※この作品はアルファポリス同時掲載してます
8 70闇夜の世界と消滅者
二〇二四年十一月一日、世界の急激な変化をもって、人類は滅亡の危機に立たされた。 突如として空が暗くなり、海は黒く染まり始めた。 それと同時に出現した、謎の生命體―ヴァリアント それに対抗するかのように、人間に現れた超能力。 人々はこれを魔法と呼び、世界を守るために戦爭をした。 それから六年。いまだにヴァリアントとの戦爭は終わっていない…………。
8 176死に溢れるこの世界で
憎み、恨み、苦しみ、死ぬ。人は生まれてきたからには死ぬもの。そんな死後はどうなのだろうか、未練が殘ったものはこの世に滯在し日が経てば怨霊と化す。 そんな死に溢れるこの世界にある男が選ばれた。
8 151