《悪役令嬢は麗しの貴公子》17. 王子と従兄弟

 「おかえりなさい、兄上」

 「ただいま。思ってたより遅くなった、すまない」

 『いえ、ご無事で何よりです』と笑うニコは、アル様と一緒に會場に戻ってきてすぐに私の所に駆け寄ってきてくれた。そして、そのまま新しいグラスを渡してくれる。ちょうどが乾いていたので有難い。

 相変わらず出來た弟である。

 「兄上、アルバート王子殿下とご一緒だったんですね」

 チラリとアル様の方を見たニコにつられてそちらを見やる。

 アル様の登場で、會場の貴族達が一斉に跪き挨拶に向かっていた。

 「あぁ、まぁ……々あってね」

 ニコから手渡されたグラスを傾けてを潤しつつ、薔薇園であったことを(ゲームの容は掻い摘んで)話した。

……

 「そんな事があったんですね」

 全て話し終わる頃には、アル様も漸く一通り貴族達からの挨拶から解放されたようだった。

Advertisement

 私達も挨拶に向かわなければと思い、お父様の姿を探して會場に視線を走らせる。すると、ちょうどお父様がこちらに歩いてくるところだった。目が合った瞬間に頷かれたので、おそらく私の意図を察してくれたのだろう。

 ニコに聲をかけ、お父様と合流後にアル様の元へと向かう。

 アル様の傍らには、ゲームにおける最後のメイン攻略キャラが佇んでいた。

 「アルバート王子殿下、ヴィヴィアン殿下、挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」

 聲をかけたお父様にアル様は完璧な王子様の仮面を被った笑顔を向ける。

 「これはルビリアル公爵殿。息災であったか?」

 「えぇ、お様で。つきましては、私の息子達から挨拶させて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」

 「いや、既にロザリーからは挨拶してもらっているよ」

 

 そう言って、同意を求める為にアル様が私に視線を向けて微笑む。その笑顔に圧をじて寒気がしたが、私も笑顔で返しておいた。

 「アル。貴方はいいかもしれないが、私は彼とは初見だよ」

 お父様がヴィヴィアン殿下と呼んだ人が、苦笑しながらアル様に話しかける。

 「名乗るのが遅れてしまい申し訳ありません。ロザリー・ルビリアルと申します。以後、お見を知り願います」

 「ヴィヴィアン・コーラットだ。ニコラス殿からは、先ほど挨拶して頂いたよ。君達とは従兄弟でもあるからね、これからよろしく頼むよ」

 すかさず禮をして挨拶した私に、ヴィヴィアン様は薄く微笑んでくれた。手を差し出されたので握り返し握手する。

 ゲーム攻略キャラである彼とも今日會うだろうと予想していたので、あまり揺はしていない。

 いつも薄く微笑み、余裕のある佇まいと魅的な雰囲気でゲームでも人気のキャラクターだが、今はまだそこにさが加わっている。

 「ヴィーはロザリーの弟と既に面識があったのか」

 意外だ、と言いたげな顔のアル様にヴィヴィアン様は『貴方が駄々をねている間にね』と意地悪く微笑んだ。それにアル様は子どもらしくムッとした表になる。

 私も聞いていなかったので、ニコに目を向けると『言いそびれました』と肩を竦められた。

 お父様も一瞬目を丸くして驚いたが、すぐに『そうでしたか』とニコにアル様へ挨拶するよう促した。

 「ニコラス・ルビリアルと申します。以後、お見知りを願います」

 「覚えておこう」

 ニコは相変わらずの無表で禮をし、アル様は完璧な王子様に戻って笑顔で返す。

 「それにしても、ロザリーだけでなくニコラスも中的な顔をしているんだな」

 

 面白そうに微笑んでアル様が私とニコを見比べる。私とニコはそうですね、と目を見合わせて苦笑し合う。ヴィヴィアン様も本當だ、と言いながら私に近づいてくる。

 …近い。 とても近い。

 切れ長の瞳が私を映して薄く微笑まれる。ただでさえ端整な顔をしているため、間近にいるとたいへん心臓に悪い。

 「うん、可らしいね。まるで白薔薇みたいだ」

 歯の浮くような臺詞を平然と言える彼を恐ろしく思う。この子、本當に11歳だよね?

 間近で見つめられた挙句、歯の浮くような臺詞と微笑みを頂いた私は耐えきれずよろめいてしまった。笑顔の破壊力が尋常ではない。流石、乙ゲーム攻略キャラなだけはある。

 「大丈夫ですか、兄上?」

 心配そうにニコが私の背中を支えてくれる。大丈夫だ、とお禮を言いながらよろめいたのを機會にし距離を開ける。

 「すみません、張してしまって」

 「そうかい。まぁ、張するなと言っても難しいだろうけど従兄弟なんだから仲良くしてほしいな」

 「なんだロザリー、さっきは張してなかったじゃないか」

 

 私の言い訳にヴィヴィアン様は魅的な微笑みを向け、アル様は呆れた目を向けてきた。

 おそらくアル様は薔薇園での一件を言っているんだろう。それについてはぐうの音も出ないので、曖昧に微笑んで誤魔化した。

 「まぁいい。デビューしたばかりで疲れたんだろう。あちらで話でもしよう」

 アル様が私の腕を摑んだ。そしてそのまま引っ張っていこうとする。お父様とニコが慌てて止めたが、アル様は聞く耳持たずだしヴィヴィアン様が何か言ってあきらめたようだ。

 結局、私はアル様に腕をとられ連れられるままに場所を移していった。

 本日もありがとうございました(´˘`*)

 次回もお楽しみに。

 

    人が読んでいる<悪役令嬢は麗しの貴公子>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください