《悪役令嬢は麗しの貴公子》21. 學式

 「遅い。今まで何処で何をやっていた」

 會場りしてアル様とヴィー様に會って直ぐ、開口一番の言葉に苦笑する。

 「アル、先に挨拶くらいしたらどうだい? ローズが困っているだろう」

 ヴィー様が窘めるが、アル様は厳しい顔のままだ。何かしてしまったかと不安になる。

 

 「…心配しただろ」

 そっぽを向いて小さく呟いたアル様に虛を突かれる。ヴィー様が『久々に會えるから楽しみにしていたんだよ』と補足してくれた。

 私は嬉しくなってそっぽを向いたままのアル様にお禮を言って笑う。アル様は耳をし赤らめて『謝しろ』と鼻を鳴らし、私とヴィー様は顔を合わせてヤレヤレと肩を竦めたのだった。

 式典が始まり、學園長や來賓者達の退屈な話が長々と続く。周りでは皆、欠が出そうなのを必死に堪えている。私も厳しい顔をして欠を噛み殺している。と、ヴィー様が小聲で話しかけてきた。

Advertisement

 「そう言えば、會場に來る前し変わったの子に會ったんだよ」

 「変わったの子、ですか?」

 自然と肩に力がる。もしかしてリディアのことだろうか。

 頷いたヴィー様とその話題が出た瞬間に凄く嫌そうな顔になったアル様に、私は探りをれた。

 「どんな子でしたか?」

 「容姿はリスみたいで可らしい令嬢だったんだけど…」

 「空から降ってきた」

 ヴィー様を遮って発言したアル様にラ●ュタか、と心で盛大にツッコミをれる。そして、知らない間にアルバートルートのイベントが起こっていたのだろうかと焦る。

 ゲームの語が始まるのは、隠れ攻略キャラを含む全攻略キャラが學園に揃う來年からだ。だが、メイン中のメイン攻略キャラであるアルバートは他の攻略キャラに比べて容が濃いものとなっている。つまり、優遇されているのだ。

 先程のアル様の発言から、アルバートルートにおける最初のスチル付きイベントだろうと予測する。そして、その予測は的中することになった。

 

 「まぁ正確には、木から落ちてきた・・・・・・・・んだけどね」

 「そのご令嬢にケガはなかったのですか?」

 「あぁ、それなら心配ないさ。アルが抱き留めたからね」

 ヴィー様は『格好良かったよ、アル』とアル様の肩に手を置いたが、褒められたはずのアル様は何故か心底嫌そうに眉を寄せる。

 「仕方ないだろう。目の前にいたのに何もせず見ていたとなれば、王族おれが批難される」

 アル様は腕を組んで不機嫌オーラを出す。それを見た私は疑問に思った。

 イベントが発生したのにアル様の好度が低いってどういうこと?

 強制イベントを除き、各攻略キャラとイベントを起こすには條件がある。それは『好度』だ。

 ゲームでは、好度が『信頼度』『親度』『理度』の3つに分類されてそれぞれが數値で示され、隨時プレイヤーが確認できるようになっていた。

 『信頼度』が高ければNormal END、『親度』が高ければBest END、『理度』が高ければBad ENDとなる仕様だ。

 勿論、ココはゲームの世界では無いし一々好度を確認することは出來ない。もしかしたら好度の數値に関係なく、イベントを起こすことも可能かもしれない。かなり無理やりな方法ではあるが。

 「そのご令嬢の名前はご存知で?」

 「確か…、リディア・クレインと言ったはず。元は庶民育ちで、クレイン男爵が養子に引き取ったとか。ーーー彼に興味があるのかい?」

 「いえ、そういう訳では…」

 「辭めておいた方がいいぞ。アレは勧めない」

 

 ニヤニヤとからかってきたヴィー様に苦笑いで濁せば、アル様に鋭い口調で止められてしまった。しかも、仮にも主人公ヒロインをアレ呼ばわりする始末だ。

 「俺もあまりお勧めしないかな。ローズには相応しくない」

 「お前の婚約者なら、俺達がもっと好條件の令嬢を選んでやるぞ」

 縦に首を振った覚えはないが、何故か私がリディアに興味を示している定で話が進んでいる。その上、家に連れてきた人との婚約に反対する親のような臺詞まで吐き始めた。

 うんうんと頷き合っている2人をジト目で見る。

 「申し訳ないんですが、婚約者なら自分で選びます。それと、リディア嬢には一切の興味がありませんのでご安心を」

 「何故だ? 王太子おれが婚約者を選んでやる機會なんて滅多にないんだぞ?」

 嫌味っぽく言った私にヴィー様はクツクツとを鳴らし、アル様は心底不思議そうに言い返してくる。

 2人の反応に完全にへそを曲げた私は、視線を上げて壇上を見ながらアル様に素っ気なく言う。

 「それより、ほらアル様。出番ですよ」

 つられて壇上の方へ顔を向けたアル様とヴィー様は背筋を正す。それとほぼ同時にアル様の名前が呼ばれ、彼は壇上へ登り私達と向き合った。そして、威厳ある聲で新生代表の挨拶を述べる。

 一部からは、聲を潛めながらも黃い悲鳴が上がった。

 「人気者はツラいねぇ」

 壇上を見上げたまま、ヴィー様は冗談めかして微笑む。

 「ヴィー様も人のことを言える立場ではないのでは?」

 「はて、なんのことか皆目検討もつかないな」

 「噓がお上手なことで」

 そんなやり取りを続けていれば、新生代表の挨拶を終えたアル様が優雅に禮をとる。會場は賞賛と拍手に包まれ、式典は締め括られた。

 本日もありがとうございました(´˘`*)

 次回もお楽しみに。

    人が読んでいる<悪役令嬢は麗しの貴公子>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください