《竜神の加護を持つ年》13.旅の支度
鳥の賑やかなざわめきに眠気が覚める。
晩餐會の後、各自客室をあてがわれて――。
久しぶりにふかふかのベッドで睡眠をとった。
寢る前に溫泉に行ってみたかったが……。
夜は10時までしか運営していなかった為に諦めた。
そして溫水のシャワーで済ませた。
そう!シャワーしかも溫水があったのだ!
この中世っぽいじからてっきり溫水シャワーは無いと思った――。
だが賓客が泊まりに來た時だけ、使用出來るようにしてあったらしい。
何故頻繁には使用しないのか聞いてみたら……。
溫水のシャワーには水の魔石と火の魔石が必要で魔石は以外と高いらしい。
アルテッザは、私でも1週間に2回使えればいい方なのよ!
――と言っていた。
同じ理由からお風呂もあまり使われていない。
高い魔石のシャワーを浴びる位なら――。
鉄貨1枚で溫泉に行った方が余程経済的らしい。
もっともだ。
朝日が、部屋に飛び込んできて眩しい。
木窓をあけて外を眺めると――。
昨晩は暗くてわからなかったが、街の様子が一出來た。
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この商會、意外と儲かっているのか――。
3階建ての建築は、お城の方向に多數ある他は、この付近ではまばらで低い建築が多い事からここからの眺めが非常にいい。
なんでも城の付近には貴族街があり、
その言葉通り貴族の生活する區域だそうな。
どうりで高い建築が多いはずだ。
貴族街と平民街の中間辺りに尖塔のある、一際目立つ建築が見えた。
あれがこの世界唯一の宗教の教會らしい。
地球とは違ってこの世界は、一神教で創造神オルナスによって形あるものは作られていると信じられている。
その話を拐娘達から聞いた時にあれ?
クロも竜の神では?と思ったのだが――。
聞かれたく無さそうだったので黙っていた。
朝食の用意が出來たと、給仕のお姉さんが呼びに來たのでクロを伴って食堂へ向かう。
俺たちが付くと他の娘達はもう揃っており――。
し遅れて商會長のアルテッザの両親もやってきた。
何でも朝から仕れに追われていたらしい――。
農家や牧畜業を営んでいる所は朝も早いから早くに購しないと……。
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質の悪いものしか殘っていないから仕方ないと話してくれた。
「今日の皆さんの予定は買いでしたかな、當商會の取引相手であれば紹介狀を用意出來ますが?」
それは助かる。知らない街でしかも場料だけで門してきた俺達だけだと、高値で売りつけられそうだからだ。
「では、お願いできますか?」
「ええ、勿論です。アルテッザの命の恩人ですからその位は當然です。それとこれを……」
そう言って、俺の目の前に金貨のった袋を置いた。
「娘の命を救って頂いたお禮には足りないかも知れませんが、一杯の気持ちですので――」
どうしようか悩んでいたらクロから――。
「もらって置けばよかろう、これから用意するも多い。著の著のままでは先行き行き詰まる事になる」
そんなものかと思いながらも、
オルステッドさんにお禮を言ってポシェットの中に仕舞う。
朝食は昨晩とは違ってパンに目玉焼き、ベーコン、紅茶の簡単な朝食だ」
獣人とイアンは普段は朝食を食べてないらしく――。
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恐しながらも味しそうに食べていた。
商人でも小さな商會、一般の平民、農家、酪農家などは朝食を食べないのが普通らしい。
朝食を食べるのは裕福な家庭か建築土木作業員。
冒険者などの力仕事の人くらいらしい。
うちの家族は朝からイチャイチャするのが日課だったから、
それを眺めながら毎日朝食を食べていたな。
見ているこっちが恥ずかしくなるイチャつきぶりだったけど――。
それももう……。考えるのをやめよう。
朝からテンション下がるだけだからね!
朝食を食べた後で――。
書斎からオルステッドさんが出てきて各商店への紹介狀を手渡してくれた。
お禮を言ってさっそくみんなで買いに出かける。
アルテッザが今日も道案役だ。
「ここが馬車とかを扱っているお店です。馬は隣の馬繋場ですよ」
お店の扉を潛るといらっしゃい!と元気な聲で迎えられた。
「えっと、旅をするのに使う馬車がしいのですが……乗車人數は4人で出來れば屋が付いていると助かります」
丁度潰れた商會が借金の形に置いていった馬車があるらしく店の裏手に見に行く――。
車臺の後ろ側が布の幌付きの馬車になっていて――。
ちょっと襤褸いのだが作りはしっかりしてそうだ。
「これなんかお勧めですよ?この幌は魔獣の油に漬け込んでから乾燥させたもので雨を弾きますので」
なるほど、旅の途中で雨が降っても――。
急いで屋のある場所に避難しなくてもいいと……。
なんか良さそうだね!
「それでおいくらでしょう?」
値段を聞くと、一見さんだから金貨50枚って所かな?と吹っかけてくる。
さすがに、馬車でも500萬は無いでしょ。
――そうだ!
「これ紹介狀です」
オルステッドさんに書いてもらった紹介狀を店主に見せる。
すると態度が急変して――。
「なんだ、アンドレア商會の方なら早くそう言って下さい。お得意様ですから金貨20枚です」
隨分値段に差があるな!と思い――。
オルステッドさんに謝しながらお金をポシェットから取り出し支払う。
「即金ですか?それなら金貨15枚におまけさせて頂きます」
ほうほう、現ナマの威力は凄いな。
「それじゃ隣で馬が決まりましたら。隣の小姓を使いに出してください」
隣の店で馬を買ったら小姓が馬をここまで連れて來る。
店主はその馬と馬車を繋いでから引渡しになるらしい。
よく出來たシステムだ。
隣の馬繋場へ行くとまた元気な聲で今度は年が出迎えてくれる。
「お探しは馬ですか?それともドラゴンライダーですか?」
ドラゴンライダー?なんだ?それ??聞いてみるか。
「ドラゴンライダーって?この國に最近來たばかりで世に疎くて――」
そう言うと年は詳しく説明してくれる。
「ドラゴンライダーは地竜の仲間でここ300年前位から人間の手によって飼育、調教されて馬の様に馬車や土木建築材とかを運ぶ獣ですよ。単騎での速度は馬には葉いませんが馬の倍の力があってゴブリン程度のモンスターなら蹴散らしてくれますよ?ただ問題は価格が馬の3倍と餌代が馬鹿にならない事でしょうか?」
なる程……ここは同じ竜のクロの考えを、と考えた所で學迷彩を使用していて見えないけど羽で引っ叩かれた。
地竜と同類じゃなかったらしい……解せん。
「一応見せてもらっても?」
そう聞くと快く快諾してくれた。
馬繋場でも奧にドラゴンライダーは繋がれているらしい。
し暗い馬繋場の一際冷え切った場所にそれはいた。
黒いドラゴンライダーがこちらに向け顔を下げている様に見けられる。
案してくれている年もこんな事は始めてだったらしく驚いている。
黒いドラゴンライダーの奧に――。
一匹だけ白いまるで雪の様な白さの、ドラゴンライダーが居た。
このドラゴンライダーだけは勢だけは低いが――。
ほんのしだけ顔をあげていた。
その表は驚愕。
まさか気配でクロに気づいている?
ちょっとクロと會話させてみたいが年が邪魔だな。
「君、隣の馬車屋に行ってドラゴンライダーでもいいか、聞いてきてくれないか?」
「お隣で馬車を購されたのですね!有難うございます。ただいま聞いてきますね」
隣の馬車屋は馬繋場の主の兄弟らしい。
家族経営だったのかよ!上手いシステムな訳だ。
「お主は我が見える様じゃな、元々はフロストドラゴンの脈だったが地に落ちた亜種、奇形児か?」
グオグオ言っているが、俺達にはさっぱりわからん。
「コータよ、この白いのにするがいい。馬なんかより余程役に立つぞ」
「まぁ、クロが言うなら――。店員に聞いてみるね。価格とか……なんか高そうだし」
「心配せんでもこ奴の話を聞いた限りでは二束三文で購出來るだろう」
どんな事を聞いたのか気になったが、購の意思を固める。
だって竜神様の下地を賜ったのだから。
年が息を軽く切らせながら急いで戻ってきた。
「馬車屋のご主人様から伝言です。ドラゴンライダーだと!
また奇妙なものを、馬車に繋ぐ仕掛けは特注だから金貨1枚は上乗せだ。だそうです。それでどれに致しますか?」
金貨1枚が安いのか高いのかわからないけど、まぁいいか。
「ここの奧にいる真っ白なのがいいんだけど……」
「え……この白いヤツですか?この白いのは先日購した商人さんが隣で馬車に繋いでいる時に、商人さんの足に噛み付いて大怪我を負わせ――。商人廃業に追い込んだ超、危険なやつですよ?」
それでもいいのか?と念を押してくる。
クロがいるんだから、問題ないんでしょ。
「面白そうじゃない!決めた。買うよ」
「ひぇ、どうなっても知りませんよ――。この白いのは近々処分される予定だったので相場では金貨20枚ですが銀貨5枚です」
――処分するなら自己責任で他者に被害が出ないようにお願いしますと念書まで書かされた。
隨分安いな……処分前ならそんなものなのか?
そう思いながらも、白のドラゴンライダーを連れ馬車屋に向かう。
馬車屋に付くと――。
「こりゃぁおったまげた――。こんな兇暴なドラゴンを購してくるとは」
馬車屋の店主にまで、心配された。
普通の馬の場合は取り付け金がしと繋ぐ部分が強化縄なのに対し、
ドラゴンライダーの場合――。
馬力が馬の3倍だから強化縄ではすぐ切れてしまうらしい。
その分、魔力で細く紡がれたワイヤーを使っている為に……。
値段が金貨1枚もするらしい。
ドラゴンライダーの値段が安かった分、
かなり得しているので、そこはしを付けて支払った。
そこからの買いは楽だった。
俺達の會話で行きたい場所を――。
クロが念話でドラゴンライダーに告げてくれている為――。
手綱を握っているだけで、勝手に目的の場所にまで引っ張ってくれる。
これ手綱を放しても問題無いんじゃ?
クロの言う通りに購して正解!便利だな。
なんて快適なんだろうって思っていたら、こっそり耳元で……。
「これの価値はそんな事ではないわ、たわけ」
そうクロに叱られた。解せん。
旅の裝備や雑貨、服、食料を買い込んでポーチに仕舞う。
荷がない分、馬車が広く使えていいね!
じゃなかったら……5人じゃ窮屈だっただろう。
夕方になる前に一旦、アンドレア商會に戻り――。
まずは昨日行けなかった溫泉に向う。
――溫泉の話は……出來れば勘弁してしい。
まさか、あれ程、混んでいて、しかも座って漬かるのでは無く。
立って漬かるって――。
真夏の市民プールじゃん!
流石に汚れは落ちたし、溫まったけど気疲れが……。
アニメとかの溫泉の回って普通、っぽくて楽しい筈じゃ――。
明日は、一日ゴロゴロして居たいな。
【書籍化・コミカライズ】三食晝寢付き生活を約束してください、公爵様
【書籍発売中】2022年7月8日 2巻発予定! 書下ろしも収録。 (本編完結) 伯爵家の娘である、リーシャは常に目の下に隈がある。 しかも、肌も髪もボロボロ身體もやせ細り、纏うドレスはそこそこでも姿と全くあっていない。 それに比べ、後妻に入った女性の娘は片親が平民出身ながらも、愛らしく美しい顔だちをしていて、これではどちらが正當な貴族の血を引いているかわからないなとリーシャは社交界で嘲笑されていた。 そんなある日、リーシャに結婚の話がもたらされる。 相手は、イケメン堅物仕事人間のリンドベルド公爵。 かの公爵は結婚したくはないが、周囲からの結婚の打診がうるさく、そして令嬢に付きまとわれるのが面倒で、仕事に口をはさまず、お互いの私生活にも口を出さない、仮面夫婦になってくれるような令嬢を探していた。 そして、リンドベルド公爵に興味を示さないリーシャが選ばれた。 リーシャは結婚に際して一つの條件を提示する。 それは、三食晝寢付きなおかつ最低限の生活を提供してくれるのならば、結婚しますと。 実はリーシャは仕事を放棄して遊びまわる父親の仕事と義理の母親の仕事を兼任した結果、常に忙しく寢不足続きだったのだ。 この忙しさから解放される! なんて素晴らしい! 涙しながら結婚する。 ※設定はゆるめです。 ※7/9、11:ジャンル別異世界戀愛日間1位、日間総合1位、7/12:週間総合1位、7/26:月間総合1位。ブックマーク、評価ありがとうございます。 ※コミカライズ企畫進行中です。
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