《竜神の加護を持つ年》15.親と娘
「お帰り、遅かったじゃないか!」
商會の付で待っていたオルステッドが、俺達の帰宅早々説教口調で叱る。
「そんな、まだ夕方よ?明かりだって點けてない時間だわ!」
アルテッザが反抗する。
「アルテッザ、昨晩の話の続きをするから、早めに帰宅する様に言ったじゃないか!」
みんな何の事?と不思議がっている――。
俺も同じだ。
黙っているアルテッザに、オルステッドの怒気が浴びせられる。
「せっかく家族が揃ったのに――。家族の有難味を実し僕が今度は家族を護ろうと決意したのに……絶対に認めない!」
黙ったままのアルテッザが顔を俯ける。
何と無く會話の容から、アルテッザは親元を離れると話した?
なんで?と思考を巡らせていると……。
オルステッドの後ろから來た、オフィーリアから聲がかけられた。
「まぁまぁ、こんな店前で聲が外にもれちゃうわよ?」
うふふ、とし楽しげな笑顔で言う。
「フィリアしかし……」
「その話は食堂で、皆さんと食事でもしながら致しましょう」
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皆さんもお腹が減ったでしょ?
ウィンクしながらそう言うオフィーリア。
大人の魅力ってこんなじの事なのかな……。
――などと、どうでもいい事を考えながら皆と食堂へ歩いていく。
食堂に並べられている料理は最初の晩餐よりも――。
更に、豪華な料理が並べられていた。
それを見たアルテッザが涙聲で語る。
「私の大好ばかり……もしかしてお母さんは認めてくれるの?」
「うふふ、お腹を痛めて産んだ子が離れるのは正直寂しいわ。でもね……盜賊に捕らえられ生死が絶的な狀況に比べたら――。
元気に旅立つ娘と離れる事位、なんでも無い事なのよ。それにその旅にはそこの古竜様も一緒なんでしょ?そんな安全な旅は王様だって無いでしょうね。」
ニコやかにそう告げると、肩に乗っていたクロが聲を出す。
「お守りの相手が4人も5人も一緒なのは違わぬわ!」
ほらね――。言ったとおりでしょ?
オフィーリアが、オルステッドに言う。
「娘が前回みたいな、悲慘な目に合わないと約束してくれますか?」
「約束は出來ん――。あくまでも我の目の屆く範囲では護れるというだけじゃ。コータを含め他の娘達も、なくとも自分の位は自分で守れる様になってもらう為の旅でもあるからのぉ」
確かに昨晩、旅の目的は聞いている。
パワーレベリングだってね!
「古竜様、娘をよろしくお願いします。箱りに育ててしまった為に、戦うも知らぬ娘ですがどうか強い子にして下さい」
ほら、あなたからもと言いながらクロに娘を託す。
「古竜様、娘は大事な跡取りで一人娘なのです。どうかよろしくお願いします」
やけに跡取りに拘っているが、男親だからなお更家に拘るのか――。
まだ若いんだから子作りに勵めばいいのに……。
ちょっと不謹慎な事を考えていると毎度毎度の尾が飛んできた。
予想して避けたのは良いが、まさか往復ビンタだとは……南無。
「知っている天井だ……」
「3泊しているのだから當然だ、たわけ!」
起きて早々辛辣な――。
で、あれからどうなったの?
「途中まで聞いておったのなら分かるじゃろ?」
まぁね、これで5人と2の旅か――賑やかになりそうだ。
でも馬車は狹くなるね……そう思ったら。
「馬車くらいもっと大型のを買えばよかろう。あの白いドラゴンライダーのメスは、元々はフロストドラゴンという――。
我が古竜として君臨しておった時に、我の四天王を勤めた族の末裔ぞ。得意魔法は氷結、鍛えれば山脈にあった湖位は一瞬で凍らせる能力があるだろう。そんなドラゴンがあの程度の馬車とは……」
あのドラゴンライダーの格だとそれこそバス並みの大きさ位で丁度らしい。
――どれだけ馬力あるんだよ!
クロは最初から、あのドラゴンの事気づいていたんだ?
「當然じゃろ。我の配下だった末裔だぞ――。向こうも面を下げて無かった時點で気づいた筈じゃ。初見でも我等竜のに深く刻まれた記憶が忘れさせぬは――がはは!」
すげーな竜って……。
そもそも、クロが居た時代って娘達やオルステッド達から聞いた限りでは、1千年以上昔の話の筈――。
それをが覚えているって……まさにミラクル!
それじゃ明日経つ前にもっと大型の馬車でも調達しに行きますか!
急遽、明日の早朝に出立の予定を晝過ぎに先送りした。
オルステッドのコネで大型馬車の専門店を紹介してもらう約束も取り付けた事だし。なんか楽しみだな!
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