《竜神の加護を持つ年》23.逸る気持ち

コータ達が出発してからすでに5時間……。

漸く、も山脈の稜線まで降りて來ており。

後1時間もすれば、周囲には闇が立ち込めることだろう。

「ふあぁ、やっとが沈む。ここまで5時間俺のよ!良く耐えた!なんかヒリヒリするけど……」

「レベルが上がって力のみならず見た目には分らずとも強化されている筈だがな?」

クロが俺の肩にのってそんな事をのたまう。

「そんな強化された実は無いんだけど?以前のもやしっ子のにしか見えない……」

「オーガ相手にコータ達だけで倒せたであろう?それが証拠じゃ」

まぁ、確かにワイバーン退治の前なら確実にオーガに殺されていたと思うけどね。

実際そのワイバーンだってクロが空中戦で撃墜してくれて、

さらにくて刃が通らなく四苦八苦していた――。

俺達を見るに見兼ねて、わざわざ致命傷になる部位の鱗を剝がして退治しやすい様にお膳立てしてもらって、やっと退治出來たんだけどね……。

「あのAランクの蛇を退治した事でコータと娘達のレベルはそれこそ達人以上の力を得たのだがのぉ」

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がはは、と大笑いしながらクロは自分の目論見通りだったわいと満足げだ。

俺が考えていたパワーレベリングと全然違ったけど、

自力でやっていたら、お爺ちゃんになっちゃいそうだ。

かなりクロには助けられているな……。

ふむ、そうじゃろそうじゃろ!と満足気だ。

これで尾の回し蹴り?さえなければいいんだけどね!

苦笑いでそんな事を考えていたら、ニヤニヤしながら流し目を向けられた。

さてそろそろ晩飯の支度を始めてもらわないと、暗くなってからじゃ大変だ。

俺は馬車の中に聲をかける。

「みんな、そろそろ今晩の野営地に到著するから用意始めてね!」

「はい!コータさん分りましたぁ」

うん、この聲だけなら、かなり好みなんだけど!アニメ聲はロマンだよね!

前方に丁度馬車を複數臺停車出來るスペースがあり、

野営が出來る様になっている。

馬車を停車させフロストの金を外してあげると、

隣接してある小川へ向けトコトコと歩いていった。

さすがにずっと飛ばしまくっていたから……。

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が渇いていたみたいだ。

「にしてもこの街道ってこういった野営場所とか充実しているよね?これって國で管理しているのかな?」

そう隣に來たアルテッザに聞いて見る。

獣人娘達は村から出た事無いって言っていたし。

知らないだろうからね!

「そうですよ、この國の街道は初代アルステッド國王の治世で整地され、代を重ねる毎に増やしていった。と聞いた事があります。この規模の野営地はそれこそアルステッドの東西南の至る所にあるみたいです」

へぇそれはすごい。

日本の國道の道の駅のミニチュア版みたいなのを、

中世程度の治世で行っていたとか。

余程初代建國王は出來た人だったのだな。

そんな獨り言をいっていたらアルテッザから――。

「その分、現在の王家は何をやってもうまくいかずに、無駄に國稅を使い潰して民衆の支持も低下する一方なのですけどね。もっとも第一王子のアレフ様は武勇に優れ民衆にも支持されているって聞きますが」

あーなんかで聞いた事があるな……。

――3代目にして潰れる?だっけ?分らん。

あまりにも初代が優秀だと、常にそれと比較されるから――。

跡を継承するとしても気苦労が耐えないのだろうね!

うちは両親が天涯孤獨同士の結婚だったから、そんな心配事とは無縁だったけど。

「ご飯の用意が出來ただに!」

ポチが呼びに來てくれたんでソファーから腰をあげた。

何でソファーに座っていたのかって?

そんなのが痛いからに決っているでしょ!

長時間固めの席で、ずっと揺られていたんだよ?

遊園地の一人乗りカートで、5時間も揺られてみれば――。

俺の気持ちも理解出來ると思うのだけど!

「「「「「いただきます!」」」」だに!」

みんなで焚き火を囲んで代わり映えの無い鍋料理(雑炊もどき)をスプーンで頂く。

この時代の行商人とかは、この食事が一般的らしい。

現代の常に新鮮で、味のバラエティーに富んだ料理に慣れきっていた俺にはかなり不満だけど……。

無い袖は振れない。

せっかく皆が作ってくれたんだし。文句言わずに食べよう。

そんな事を考えていたらクロから――。

「あの蛇のは食べんのか?」

えっ?まさに青天の霹靂。

「あのワイバーン食えるの?」

「もちろん食えるに決っておろう!ランクの高い魔獣のは高級品だぞ!」

だってさすがに魔獣のだよ?

街で食べただってそんなの無かったじゃん!

確認の意味を込めて皆に聞いてみた。

「魔獣のとか良く食べられているの?」

「はい、普通は高級品なので食堂とかでは置いてあってもオークとか……。屋さんに行けば置いてはありますが、一般家庭では手を出せない価格なのでまず買わないですね」

ほうほう……そんなに高価なんだ。

日本の松坂牛みたいな扱いなのかな?

うちの食卓には一度も出て來た事が無かったが……。

「この前退治したのは、クロ様のおなので。あれはクロ様が食べるのだと思っていましたよ」

そういって私達が食べるなんて恐れ多い……と言っているイアン。

「クロ、あのワイバーン食べてもいいの?毒とか、腹壊さない?」

「さすがに首の周囲には毒があるやも知れんがには無い筈じゃ!生で食わぬ限り食あたりも無いだろう!」

へぇー。

「ちょっとだけ食べて見る?」

みんなこっちを向いて首をブンブン縦に振った。

なんか福島の赤べこだっけ?あれみたいだな。

なんて間抜けな事を思っていたら、クロにジロリと睨まれた。

――くわばら、くわばら。

虛空魔法を使ってワイバーンを出す。

「やっぱりデカイな」

「おいっぱいなんだに!」

「食べきるのに何ヶ月かかるのでしょうか?」

「毎日おが食べられますね!」

「そこのが滴っている部分がとても味しそうです!」

皆それぞれ期待に目を輝かせる。

「じゃ切り分けるね!」

短剣を突き刺し、そぎ取る様にしながらを削っていく。

「倒した時よりらかいじがするんだけど……?」

「當然じゃ!生きている間は、魔素をに巡らせておるから強化されておる。じゃが死んでしまえば魔素の巡りは悪くなりは普通のになる」

合気道とかの気の様なものなのかな?

取り敢えず、切り取ったを焚き火の上にセットした網で焼いてみる。

調味料は塩しか無いので塩味だ。

油が滴りバチバチ音を鳴らす。

みんなの視線がその油に釘付けだ。

簡単に焼きあがったので、みんなの皿に取り分ける。

クロの分は山盛りにして目の前に置いてあげた。

「うまい!なんだ。これ、舌の上で溶ける様だ」

みんなも無言になって齧っている

A5級の牛になると焼いても噛みやすく舌でけるとは聞いた事があったけど。

まさにそれ!

「わたしはもっと噛みごたえのある方が好きですが、これはこれで油の甘みが……素晴らしいです!」

そう犬歯を立てながら言っているのは狼獣人のホロウだ。

「「本當においしいですね」」

人族二人も、本當に満面の笑顔だ。

「こんな味しい生まれて初めてだに!タマにも食べさせてあげたいだに!」

うんうん、もうすぐそれも葉うからね。

タマちゃんの話が出た事でみんな思うことがあったのか――。

一気に沈んだ雰囲気になる。

しでも場を明るくしようと俺が振舞う。

「なぁに!村に行けばすぐに會えるよ!タマちゃんもポチの事きっと待っているよ!」

「簡単に言わないでしいだに!」

えっ――。場を和ませようとしたら逆に反発された。

解せん。

「そもそもコータさんは村を見て無いから、そんな簡単に言えるんです!」

ホロウからもそんな事を言われる……。

確かに俺は村を見てないけどさ、でも生きているのは確かなんだし。

「今のは、コータが軽率だったと我も思うぞ!そもそもコータのステイタス閲覧では生死しかわからんのだろ?」

クロからも説教が飛んできた。

それはそうだけど……。

「まだかろうじて生きているだけで、元気でおる確証はどこにも無いのではないか?」

それはそうだけど、今この場でそれを言ってどうするっちゅうの?

まだ村まで數日はかかるんだよ。

その道中ずっとこんな雰囲気で生活する気かよ!

「コータよ、何故我に頼まん?我なら村まで一っ飛びで行けるのだぞ?」

え、だって。こんな豪華な馬車だってあるし……。

置いて行く訳には――。

「なんの為の虛空魔法なんじゃ?あのサイズの蛇2だけで容量限界なのか?」

何言っているんだ?こんな大型のバスみたいな馬車る訳無いじゃねーか。

「コータは、娘達に偉そうに言っておったの、魔法はイメージだと。ならると思えばるんじゃないのか?」

頭が混してきた……。

「我は、何時コータが我に願い出る事かと待っておったのだがの?コータが、がどうこう言っておる時も、我に頼まんから自業自得じゃ!と思っておったのだがな」

だって、竜の姿は他の人には見せられないし――。

馬車はデカイし。

「ポチがこれほどに、妹君に會いたいと願っておるのじゃぞ?我もここ數日生活を共にしておれば、先程でも位は沸くものだ。竜の姿と言うが最初にオルゴナーラからトーマズまで飛んだんじゃ。今更じゃと思うがのぅ?」

全てはコータ次第だ!と。

「ちょっと馬車が収納出來るかやってみるよ」

る、る、積はワイバーンより大きいけど長さはワイバーンの方が長い。だからきっとる。

イメージを膨らませ、馬車を収納させようとする。

何度もイメージをし直して漸く虛空倉庫に収納出來た。

出來ちゃったよ!

あれ?でもみんなでクロの上に乗ったら。

フロストは?どうするんだろ?

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