《竜神の加護を持つ年》28.邂逅
「そこの馬車!止まれ!」
止まれと言われても、フロストさんは簡単には止まれません。
だってこの馬車……マイクロバス位の大きさだよ?
慣力が働いているんだから!
自車學校で習わなかった?
あ、俺免許持っていなかったわ……。
フロストさんの手綱を目一杯引っ張るがなんせ街道は砂地だ。
フロストさん毎、馬車もっていく。
「止まれと言っているのがわからんのか!」
いやぁ、だからやっているんだって。
これ以上どうしろと?
騎士風の男が轢かれる寸前で真橫に飛ぶ。
20mは進んだだろうか?
漸く止まったら目の前には見覚えのある紋章を付けた馬車が止まっており、
どうやら車軸が折れて走行不能に陥って立ち往生していたようだ。
馬車の窓からこちらを見ていた、例の男子の青年が驚いた様子でドアから飛び出してきた。
「いったい君達は……」
続く言葉はなんだろう?
なんで西から戻ってきている?
いつ追い越した?
ドキドキしながら言い訳を考えていると。
「今朝、野営場所で會った方々ですよね?」
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向こうもまさか反対方向から俺達がやってくるとは思ってもみなくて、
揺しているようだ。
仕方ない……まさか王家の王子相手に誤魔化し切れるとも思えない。
「いやぁ~奇遇ですねぇ?」
いったい、いつ追い越しちゃったんだろ?
気付か無かったなぁーと……白を切る。
あ゛ーやっちゃった……誤魔化し切れないって思っていたのに……。
「何を……隠しているんだい?」
あーやっぱりばれちゃうよね?
「えっ?何の事でしょう?」
「君ね、噓を付くならもっとマシな噓をつかないと直ぐばれる噓は自分の心象を悪化させるだけだよ?」
まぁごもっともです。
でも仕方無いよね!
まさか空飛んで追い越しました!
と、言えと?
そっちの方が余程、馬鹿にしているのか!
と、ならない?
え?なるよね!なるでしょ!?
「セバス!」
あれ?もしかしてかなりやばい?
「何で座いましょう?アレフ様」
「ライルとモンテリオンをここへ!」
「畏まりまして座います」
あーあ……応援呼ばれちゃったよ!
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俺……ちびりそう。
「殿下お呼びでしょうか?」
「うむ、この者達の馬車を臨検する。著いて參れ!」
「はっ!」
「では君も車席から降りて一緒に中へ來てもらおうか」
これやばい奴だ……もしかして詰んだかも……。
俺は者臺から降りると、両側を騎士に挾まれドアへと案させられる。
ドアを開け中を覗くとみんな驚いた様子でこちらを見る。
後ろからついてきていた王子が空けたドアの隙間から、
アルテッザの顔を認めた様だ。
「やぁまたお逢いしましたね、今朝ぶりでしょうか?」
ふふ……とか笑っているんじゃないよ!
こっちはそんな気分じゃ無いんだからね!
「これは……今朝方はお世話にりました」
アルテッザも俺同様に、引き攣った表を隠し切る事が出來ずにいる。
俺は相変わらず、騎士に両脇を固められたままだ……もうなる様になれ!
ザ!開き直り作戦開始だ!
じゃここに座ってとか言われた。
これは俺の馬車だ!
大切な事なのでもう一回言います。
俺の馬車だ!
指図するな!
俺は素直に座った。
言っている事とやっている事違うって?
仕方無いじゃん、俺まだ14歳だよ?
3人がけのソファーの真ん中に俺、両脇はいまだに騎士に囲まれている。
正面にセバスとかいう執事っぽい人。
あ……これ執事か!
チャンが付か無いだけでイメージ直ぐに出てこなかったわ。
で、セバスの隣に王子が座った。
俺が3人掛けなのに、お前ゆったり二人がけなのか!
いいご分だぜ!?
あ……王子だった……。
陣は、俺の後ろの席に座ったままだ。
クロはっと……學迷彩で消えているな。
「で?どうして、今朝、僕達の馬車よりも後ろに居た君達が、西から來たのかな?これでも急の用事が出來てね、馬車が壊れてしまう程には急いでいたんだけどね」
ここで馬車の調子がもとから悪かったんでしょ!
とか言えたらいいんだけど……言いてぇ!
「どうしても何も……僕の馬車の方が早かっただけでは?」
「じゃ今朝の話は僕を謀ったって事になるけど? それでいいのかい?」
あーもういいよ。
それで……。
どうせ何言っても信じないし。
「本當なんですって、信じてくださいよ?」
あー小心者の自分が憎い!
「あくまで白を切るのかい……困ったものだね。所で後ろの縄で縛られている男はなんだい?」
やばい!
やばい!
隠せる訳が無いよな……流石に。
「………………………………」
何を言うか迷っていると、急にドアが開いた。
「お兄様、こちらにいらしたんですね!誰も外に居なくなったんで心細くて來てしまいました」
なんちゅうーグットタイミング!
しばらく考える猶予を。
「ローラ!今は臨検中だ!馬車に戻ってなさい!」
「でも、この方達悪い人ではありませんわよ?」
「悪いか否かは今から調べる」
このお姫様お人好しなのか?
なんとか使えないかな……。
「僕達は仲間の妹が拐されたので、その救出に行って帰って來た所なのです」
よし!噓は言ってない。
「拐とはまた穏やかじゃないね、犯人はどうし……なるほど。その縄の男か」
「その通りでございます。これから王都のお役人さんに引き渡しに伺う所だったんですが……」
このまま誤魔化せないかな?
「その話は信じよう!では、本題だ……どうやって僕達の馬車を追い越したんだい?」
駄目でしたぁー。
その時、急に俺を挾んでいた騎士とセバスが気絶した。
俺も何が起こっているのか、分からずに……。
あっけに取られていると正面の王子から、
「いったい……君は……何者だ!」
あーなんか苦しそうだね?
何かの持病もちですか?
助けた方いいのかな?
「どうされました?」
取り敢えず優しくしとくか。
「な、にが……どうしただ……これだけの威圧を掛けておいて」
へ?訳わかんねーよ。
「もう茶番はおしまいだ!」
「ばっ……クロ!」
いつの間にか、あっ今か……クロが姿を現した。
「本のピクシードラゴンですわ!」
え?お姫様は平気なの?
やっぱに甘いなー……おっとこの先は言わないよ?
お約束?知りませんね。
「ふん!王子だったか我が運んだ。これで気が済んだか?」
くっ……まさか僕達が追っていた元兇がここにいたとは……。
「朝、僕達と別れてしばらくして空高く飛んでいる竜を見たが、あなた様だと言うのですね」
「まさか人間如きに見られていたとは思わなかったがな! そうか!お主が勇者か!」
「まだ正式な勇者じゃありませんけどね……」
「で?これで納得できたか?」
「僕達より、先に居た事に関しては納得出來ます。しかし、何故あなたの様な古竜がこの年と共にいるのか?」
おそらく伝説に伝え聞く古竜で間違いない。
初代の會った竜はしゃべらなかったし、ただ気にったのか?
當時の姫の傍にずっと居ただけだ……薨去したその時まで。
「我はこの子の、保護者の様なものじゃと見知りおけばよい!」
そんな馬鹿な……竜が人間の子供を保護するなど聞いた事もない。
「お兄様、だから私が言ったではありませんか」
悪い人では無いと確かに言ったが……。
この力はあまりに強大、このまま放っておく訳にも……。
そうだ――。
確か拐犯を捕まえたと言っていたな。
「古竜様、先程拐犯の話が出ましたが……その経緯をお話願いますか?」
おっと……ここで王子様が折れたぞ!
一時はヒヤッとしたな……ここはクロに任せよう。
大人の時間です。
「よかろう!」
「……なるほど。ピクシードラゴン捕獲ですか……しかも2度も企むとは」
「王子よ、そなたには心當たりがあるのではないか?」
「確かに、我が王家は現狀、民衆の支持もり財政も政策の失敗から常に節制をしなければ危うい狀態です。ですが初代の時とは狀況がまったく違う。クーデターを起こしてもそれで倒されるほど我が王家は脆弱ではない。噂でしか聞いた事がありませんでしたが、オワルスター伯爵家は先代が亡くなってから西部の稅率が上がり悪政を敷いていると……」
「それこそこの縄の男に聞いてみれば分かろう」
セグモンドはあっさり下呂した。
流石に、王家に知られた段階で全て水の泡。
伯爵の指示で盜賊達を雇いれ、達を生贄に、更には2つの事件の証拠隠滅と2度目の部隊の派兵と、生贄の確保に村の生き殘りのと、王都の孤児院から養を裝って生贄に仕立て上げた件。さらには今のオワルスター伯爵になってからの増稅、都合の悪い者の処分などコータ達がとった調書など可いと思える程の悪事が暴かれた。
「ライル!至急早馬で王都へ向い伯爵拘束の王國軍をオワレスに派遣するように手配しろ!書狀は今書く!」
王子からの書狀をけ取り、ライルは急ぎ早馬で王都へと向った。
さて……なんか面白くなってきた?
俺がニヤついているとクロの翼でドツかれた。
尾じゃなくて良かったよ!
「さて、古竜様とコータ殿に頼みがあるのだが?」
ん?なんだろ?
もう一件落著じゃ?……なんとなく分かっているけどね!
「僕に出來る事でしたら……」
「見ての通り僕の馬車はあの通りだ。それで、良ければオワレスまで乗せて行っては貰えないだろうか?」
別に急ぎの用も済んだしいいかな!
「いいですよ!協力させて頂きます」
「助かるよ、王國軍が來るまでここで立ち往生では、軍にも示しがつかないからね」
はははと、笑い方がさっきまでと違って爽やかなんだけど……。
男子は敵だ!
俺、クロ、アルテッザ、ポチ、ホロウ、イアン、タマ、保護した養二人、王子、王、執事、騎士、犯罪者の計13人とクロでオワレスに向けて出発した。
「えっ!ではピクシードラゴンではありませんの?」
あーこの聲は王だな。
「うむ、そもそもピクシードラゴンは力のあるドラゴンの放出した魔素が作り出した妖の様なもの」
この説明を聞くのも2度目だな。
「そーでございましたの。私も初代の王様のようにピクシードラゴンを見てみたかったのですわ」
「この変に強力な竜は居ないようじゃからのぉ、ちと厳しいと思われるぞ!」
王の聲が殘念そうだ。
というか、王とクロの話し聲しか聞こえない。
みんな寢ているのか?
そう思ったら……。
あまりにも立場が違いすぎて、聲を出せずにいた様だ。
「ローラ、僕達は先代よりも、もっと凄い古竜様と會いしているんだよ?これは運命だよ!」
なんだよ、その運命って勝手にフラグ立ててくれるなよ。
王國軍は軍馬のみの部隊で來るらしく、その為、俺達も普通のペースでオワレスに向っていた。
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【書籍化&コミカライズ決定!!】 アルバート・ヴァレスタインに授けられたのは、世界唯一の【全自動レベルアップ】スキルだった―― それはなにもしなくても自動的に経験値が溜まり、超高速でレベルアップしていく最強スキルである。 だがこの世界において、レベルという概念は存在しない。當の本人はもちろん、周囲の人間にもスキル內容がわからず―― 「使い方もわからない役立たず」という理由から、外れスキル認定されるのだった。 そんなアルバートに襲いかかる、何體もの難敵たち。 だがアルバート自身には戦闘経験がないため、デコピン一発で倒れていく強敵たちを「ただのザコ」としか思えない。 そうして無自覚に無雙を繰り広げながら、なんと王女様をも助け出してしまい――? これは、のんびり気ままに生きていたらいつの間にか世界を救ってしまっていた、ひとりの若者の物語である――!
8 166【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔術師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔術の探求をしたいだけなのに~
---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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