《竜神の加護を持つ年》63.間者の報告
消失した村から、ベッカーの家に戻ったコータは今後の打ち合わせをする。
「もうね、あんな國……滅びればいいと思う訳ですよ!」
「コータさんいきなり何を……」
「流石に、アルステッド國と同盟の國を潰します。はい、そうですか。とは私でも言えませんの」
「私は、コータさんに賛だに!」
「こんな殘な國、消えてしまった方が世の為、獣人の為です!」
「タマは、ムズカシイ事はわからないにゃ!」
「お前いった事をちゃんと出來るのか!」
「コータが、そう決心したなら我も今回は従おう!」
皆、概ね賛の様だ。流石にメテオラの立場では簡単に賛は出來ないだろう。當然だ。
「それで、今回はどうするんです?前回報告されていたエジンバラの様な作戦ですか?」
え?また檻にれって言うの?もの好きだなぁ君も!
「アルテッザ、流石に今回はそうは行かないと思うよ。だって俺達は一度逃げ出しているから、向こうもどうやって逃げ出したのか分らないだろうから用心していると思うしさ。どれだけ用心されても、魔法が使えれば意味は無いけどね!」
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「そうですよね!」
「でだ、今回はもう思いっきり派手に過激にいっちゃおうかと思っている訳なんですが……クロに乗って、ホロウとポチは空から例の魔法を王城にぶち込んでもらって、俺は城壁、市壁を全て消し去ります。その後で、ベッカーたちと一緒に王族を捕らえて――後はベッカーにお任せかな。メテオラはタマちゃんと馬車で待機、アルテッザは俺が市壁と城壁を消している間の、兵の処理をお願い」
流石に、これを夜やればクロの姿も見えず、いったいどこから攻撃されているのかも分らず――混している最中に夜目の利く獣人が攻め込めば、あっという間に王城も落ちるでしょ。
でも、シャイニングブラスターって直線攻撃だから使い勝手悪いんだよね。うまく斜めに打ち込めばいいのかな?市壁は結構面倒だけど……城壁は外周が円狀だから楽そうだ。
「それでベッカー達は、ここから何日でブリッシュの王都まで行けるの?」
「そうじゃのぉ、だいたい3,4日あれば確実に著けるかな?」
「それじゃ、俺達は、ブリッシュ王都までの払いと、王城へ攻撃して待てばいいかな?」
「うむ、助力かたじけない」
熊さんに、かたじけないとか言われてもね、これがPーさんならまだしも……ツキノワグマだからね。普通にしていても怖いわけよ!
座敷に胡坐かいて座っていてもさ、座高が高いからおもいっきり首が疲れるしね。顔見て話さなければいいけど、何処見てしゃべろと?腹ですか!あの筋質の!まさか……シンボルじゃないですよね!この変、げふんげふん。
そんな訳で、俺達全員でブリッシュ王都へ戻る事になった。
途中で、いくつかの軍を見かけたんでさらっと無力化して大きな木に縛り付けておいた。
魔獣や、獰猛な獣でも來ない限りは死なないでしょ。當分は。
この兵隊さんが、自力で出して王都へ戻った時には――既に王城は開放された狀態で、きっと失業している筈だからね!
ちなみに、ベッカーには一般兵達は捕まえても殺さない様に言ってある。
恨みは、後々禍を殘すものだからね!
命令されて行するのと、命令を下すのは同じ罰では駄目だと思うんだよね。
まぁ、日本の様な法治國家では命令した奴も行した奴も同罪だと思うけどね。だって自分で決められる自由があるから。そんな命令をする上司がいればその上に陳すればいいし、もし社長がそんな命令するなら証拠押さえて警察に駆け込めばいいんだから。もっともその警察が腐っていたらどうしようもないが……。
この世界では、王の命令で簡単に人が死ぬ。命令に違反してもそれは同じ。だから命令されているだけの兵は軽い罰でなければならない。
と思うわけよ!14歳の俺は!
そうして、やってきました王城が見える丘の上に!
でも早く著き過ぎてどうしていいか……暇潰しに、オセロでも教えて皆でしようかな?
「ええぇい!まだ辺境伯は見つからんのか!もう3日だぞ。本當に探しておるのだろうな!」
「お父様、どうせですから獣人の國へ兵を差し向けた方が宜しいのでは?」
「そうですよ!あんな年に何が出來ると言うのです。逃げ出した腰抜けですわよ!」
「あんな味しい兎を逃がすなんて、なんて無禮な男だったんでしょう」
「街の治安維持隊でも見つからぬとか、本當に逃げ足だけは一人前でしたね」
「私は……何でもないです……」
一番下の、第三王アマンダだけは、この王族達とは意見が違うようだが……さて、どうなる事か。
「オベンリー様、アルステッド國へ出しております間者からの報告が……」
「この忙しい時に何だ!」
「はっ!」
「恐れながら申し上げます。コータ・ミヤギ辺境伯には手を出すな。反を買えば、このブリッシュ王國がこの地より消滅する。だそうで詳しくは何とも……」
「なんだ、それは――たかが小僧一人で何を大袈裟な!」
「ですがアルステッド國、王城に潛り込んでおります間者から確かに、アーノルド王が第一王子のアレフ殿との會話の中で、そう申し渡しておったとか」
「あの王は、長く病床についておったと聞く。恐らくピクシードラゴンの迷信でも信じておるのであろう!」
「だといいのですが……」
「そんな事はどうでもいい。既に逃亡を謀ったという事は、その程度の輩だからだ。早く見つけ出して処刑しろ!あれにアルステッド國に帰られてはこちらのが危ぶまれる」
そう大使のオベンリーは、間者頭に伝えるのであった。
【書籍化】 宮廷魔術師の婚約者
★角川ビーンズ文庫さまより2022/06/01発売予定★ 今まで數多くの優秀な魔術師を輩出してきた名門スチュワート家に生まれたメラニー。 しかし、彼女は家族の中で唯一魔力の少ない、落ちこぼれだった。 人見知りの性格もあって、いつも屋敷の書庫に篭っているようなメラニーに、婚約者であるジュリアンは一方的に婚約破棄を申しつける。 しかもジュリアンの新しい婚約者は、メラニーの親友のエミリアだった。 ショックを受けて、ますます屋敷に引き篭もるメラニーだったが、叔父で魔術學校の教授であるダリウスに助手として働かないかと誘われる。 そこで発揮されたメラニーの才能。 「メ、メラニー? もしかして、君、古代語が読めるのかい?」 メラニーが古代魔術を復元させて作った薬品を見て、ダリウスは驚愕する。 そして國一番の宮廷魔術師であるクインも偶然その場に居合わせ、異形の才能を持ったメラニーを弟子に誘うのだった。
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