《竜神の加護を持つ年》66.二人の所信表明演説

「ベッカーさん、今回はお疲れ様でした。無事に王都制圧出來ましたね!」

「ありがとう。これもコータ殿のお力添えあってこそ。謝しております」

「これで獣人も人間も仲良くなれれば良いのですが……」

「後は、我等の働き次第って事ですな」

ちなみに、國王はやっぱりベッカーさんが?

「はい、一応、私がやりますが、こんな大きな國の運営が自分に務まるかどうか」

不安らしい。それで俺から一案を。

「それなら、人間と獣人で、二人の統治者を立てたらいかがですか?アロマさんなんか俺はいいと思いますよ」

「前國王の、第三王のアロマさんなら、獣人の皆さんにも、人間にも分け隔てなく接する事が出來ると信じています」

王達の前で、あれ程獣人差別はおかしいと前から思っていた。兎のの件も含めて。そう毅然とした態度で言い切った彼なら、平和の國を獣人達と手を取り合って築いてくれると半ば確信している。

「そうですな!それで他の王族は?」

んー正直、他の王族って嫌いなんだよね。もういっそ処刑!とか言えたらいいんだけど……アルステッド國の王家の様にきっぱり割り切って処刑とか日本人の俺には出來ない訳で。アロマの事もあるし、國外追放が妥當かな?

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「國外追放でいいと思いますよ。同盟國だったアルステッド國に來ても、國を追われた王なんて、まともに相手にもされないでしょうから。今後、仲間を増やして、攻め込んでくる気概も無いと思いますしね!」

「それでしたら王族一行は、アルステッド國方面へ追放いたします」

「うん、それでお願い」

アルステッド國の西部は、俺の統治する地域だし、何か問題が起きても――俺が対処すればいい。

「それで、大使のオベンリーは見つかりましたか?」

「それが何処にもおりません。馬で逃走を謀ったという証言もけているんですが……」

「そうですか。まぁ放って置いても問題は無いでしょうけどね!」

「住民の方はどうですか?今までこの王都で奴隷だった獣人は解放されたんでしょ?」

「はい!皆大喜びでしたよ」

「今後、その奴隷だった獣人達が、雇い主というか飼い主というか主人に害をなすとかは?」

「一応、心的には思う事もあるでしょうが、そうならない様に注意はしてあります」

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「それで他の住民達の反応とかは?一応、アロマさんにもいてもらうんで大きな混は起きてないのかな?」

心では、混しているとは思いますが、これから次第でしょうか?」

「それもそうですね!」

俺達は、一旦馬車に戻って街の宿に滯在する事にした。

まだやる事とか殘っているしね。

朝日が昇り、普通なら街には天が出始める頃だが、流石に今日の今日では、天やお店を開いている住民は一人も居なかった。

そりゃ統治を、今までと真逆の、しかも自分達が奴隷扱いしていた獣人が行うんだから落ち込むのも分るというもの。

馬車まで、今回のに參加した獣人さんに送ってもらった。フロストさんは相変わらずゴロゴロしている。扉を開けると、タマちゃんは眠っており、メテオラとヘメラは起きていた。

「ただいまぁ!はぁ。終わったよ」

「おかえりなさいですの、無事で何よりですわ」

「お前、汗臭いぞ!」

いつもの、我が家の景である。

「変わった事はなかった?」

「いいえ、特には何も靜かなものでしたわ」

「ないぞ!」

そっか。なら良かった。

し休憩したら、街の宿屋に行こうと話をして、しばしの休息をはさむ。

今回の件を、アルステッド國の、アーノルド國王にも話さないと。そう思ってメテオラにも確認したが、是非そうしてくださいませ。だそうだ。

やっぱ報告は必要らしい。縦社會の図ですね!俺も大人に近づいたって事か!

そう言ったら、みんなに鼻で笑われた。解せん。

これで、あの村で慘殺された皆も、しは安心してくれるかな?死んだら何も殘らないだろうけど……それでも神が本當に居る位だ。そう信じたい。

その後、軽い休憩のつもりが、ぐっすり睡してしまった。

起きると夕方になっていて、皆と共に、馬車で王都へ。もう國は消えたけれど王都でいいんだよな?一応、ベッカーが王?なんかしっくりと來ないが……。あれはボス!とか親分ってじで、王ってじじゃないもんね!

予約してあった宿屋にれてもらって、まずは風呂にった。

ベッカー達には、しばらくここに滯在するって話は通してあるから何も問題は無いね。ただやっぱり他のお客さんも居ないし、宿屋はシーンと靜まり返っていた。

気分が滅りそうな宿だな!そう思っていたら、ヘメラが――。

「なんか辛気臭い宿なんだな!これじゃ客は、満足しないんだぞ!」

俺と同じ事考えていたよ!

「まぁ、仕方が無いのではありませんの?」

「そーですよ、國王が負けたんですから」

「これからもっと平和になるだに!」

「そうですよ、あの國王よりはマシな筈です」

「こればかりは仕方なかろうな!」

「暗いと怖いにゃ!」

若干、暗い意味を履き違えているが、それはごで!

これからこの街は大変だね、城壁や街壁を直さないといけないし……。

え?お前がやったんだろうって?だって仕方ないじゃない!

そうしないと、出來なかったんだからさ!

尖塔は、まぁあんなもの見栄で作っているだけだから、別に無くてもいいでしょ。

獣人からしたら、今までが木の策で砦築いていたんだから、壁いらないんじゃ?

そんな事を言っていたらメテオラから……。

「何を言っていますの!壁が無ければ、魔獣の侵攻を食い止められませんよ!」

そう言われた。そんな頻繁にないでしょうに!

え?これフラグ?まさかね!

――三日後。

正式に、獣人の國王がこの地に誕生する事となった。

王城のテラスから、熊のベッカー國王が街の住民に手を振る。隣には人間代表のアロマが立っており、これから二人の所信表明演説が執り行われる予定だ。

「これまで獣人は、人と同じ言語を話し、同じ食事を食べて來たにも関わらず、人から差別、待、殺、暴力、あらゆる害を向けられてきた。だがこれからは違う!我等獣人も、人も変わらず公平な國を築く為――獣人の村を襲い、獣人の村人全員を殺戮した前王家を打倒した!もう兎の獣人の子供のを食べるなど、愚かな行為を、我等は許しはしない!隣の國、アルステッド國では、既に獣人は差別なく普通に人と共存しておる。我等も、そんな國にしたいと考えている」

「私は、王家に生まれ心ついた時から不思議でなりませんでした。何故、同じ言葉を話し、意思の通じる獣人の皆さんを蔑まなければいけないのか?何故奴隷など必要なのか?そして――最もおぞましい、兎の獣人の子を殺し、それを味しいと言って食する人達を見て――何故この者達はか弱い子供を殺して食べるのか?私もは食べます。しかし、それは言葉も通じないただの獣だから食するのです。言葉の通じる、獣では無く獣人もまた人なのに……何故私達は殺したり、いがみ合ったりしなければいけないのか!今回の騒は、王家が、これまでに犯した罪に対しての、罰だと思っております。今後は、アルステッド國の様に、獣人も、人も公平に、共存出來る國を目指していきたいと私は考えております。街の住民達、兵士達、騎士達良く聞きなさい!これまで獣人の皆さんを苦しめてきた自覚のあるもので、納得出來ない者は、この國から去りなさい!ここは獣人と人が助け合う國です。それに従えないものは必要ありません。私からは以上です」

二人の所信表明演説に會場は沸いた。

中には、を噛締めている者もいたが、恐らく國から出て行くだろう。

いい演説でしたね!というアルテッザに俺も笑顔で頷く。

世界中が、爭いの無い平和な世の中になるといいなと思いながら、皆で街を歩いた。

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