《竜神の加護を持つ年》84.アルフヘイムの森大炎上

ここはガルラード帝國の皇帝の部屋。

部屋の中では細に四角い顔で目のは青、銀髪をオールバックにした男が城のテラスから山脈のある方面、正確にはエルフの森を睨みつけていた。

この30年、父の代からずっと冷害、害蟲被害、疫病、魔獣によるスタンピード、挙句の果てに森林伐採が原因で川へ流れ込んでいた水が地下へ浸し水不足、そして砂漠化と化し作も育たずに苦しめられてきた。

その都度対策を練り、それに対応してきたが、もはや限界で、國として民を食わせる事すら葉わなくなった。

いったい自分の政策の何が悪かったというのか?

自然災害は仕方ない。だが――スタンピードによる災害から民を守るために、森林を急遽伐採し防壁を築く必要があった。

その結果、魔獣の討伐には功したものの、森林が消失した事でより酷い狀況に陥ってしまった。

もはや、侵略國家などと遊詩人に歌われたのも過去の話。

今では獣人よりも貧しい生活を強いられる有様だ。何故、何故、この國だけこのような災いに合わねばならないのか。他の周辺國家ではその様な災害は稀では無いか。

Advertisement

皇帝は全てにおいて絶していた。

最近出來た獣人の國はかで人と獣人が共存し、以前より暮らし向きが向上しているときく。

エルフは変わらず常に平穏だ。そして今まで対等だと思っていたアルステッド國は、海の向こうの國家を破り國費が膨大に溢れ、大型の船まで5隻も確保し、將來的に繁栄が約束されたようなものだ。それなのに何故? 帝國だけが……。

普段から厳つい顔の額の真ん中に縦皺を浮かべエルフの森を睨む。

あれもこれも全てエルフが帝國に非協力的だったからだと。

全ての元兇はエルフであったと。

エルフが聞けば運と自業自得だろうと言われかねない事を、ひたすら考えていた。

朝方、森林の方が騒がしくなってコータは飛び起きた。

クロは既に察知し様子を見に行っているようだった。寢室のテラスから外を見れば結界で守られている森林の外が真っ赤に燃えあがっていた。時折けたたましい音が混ざって居る事から、ただの火事で無いのは明らかだ。

Advertisement

コータは達の泊まっている部屋へ急ぎ駆けつけると皆も異変に気づき既に出立出來る準備を済ませていた。あれ程の轟音と火事だ、方向からして帝國が攻めてきたのは誰にでも理解できた。

「コータさん、あの音は……」

アルテッザが言いかけた所でまた轟音が響いてきた。

「恐らく帝國の攻撃だと思うけど、あれが魔法なのか何なのかはわからない。ひとまず俺が様子を見てくるから皆は直ぐに出られるようにだけしておいて!」

アルテッザにそういい殘し、コータは巨大樹の1階フロア目指しエレベーターに乗る。來客がある時は常に案役が付いているのか? 薄い緑の髪の初めて見るエルフのが案してくれる。だがやはりエルフだけありは……言わないでおこう。

「1階の正面フロアです」

「有難う!」

俺は、そのエルフさんにお禮を言いそのまま外へ駆けていった。

結界に守られている所まで火が屆いてないのは上からでも見て分ったが、近くまで走っていくと、いつ結界が壊れてもおかしく無いように見えた。轟々と音を立て勢い良く燃える木々、高さが200mはある木が燃えているのだ。その激しさもわかるというものだろう。

結界の傍まで行くと、水魔法を使えるエルフが必死に魔法で水を木々へとかけて回っていた。

コータの防が絶対だとしても燃え盛る木々の近くに居れば熱いし、焼けども負う。

今までは魔法で攻撃されていなかったから分らなかったが、コータの防は完全理防であって魔法や火などには効果が無い事に今更ながら気づいた。

「ちっ、魔法には効果無いのかよ! クロ!」

「呼んだか?」

「俺ではこの火の中を飛び込んで、火を付けている奴らの所までは行けないから。乗せて行って!」

「承知した!」

クロは人目もはばからず小型のサイズに変化し俺を乗せて飛び立った。

この木が高さ200mとしても燃え上がる炎の熱は上空まで達している。俺に害が無い様に更に高度を上げ、ヒンヤリとした風が頬を付く頃には地上はだいぶ下に見える程だ。これを消すのはどうすりゃいんだ?

水をかけてもこの規模じゃまず消化まで何日かかるか分らない。やっぱあれで一気に消し飛ばすしかないのか?

そう考えていたらクロから聲をかけられた。

「あそこに火付けの犯人がおるようじゃぞ!」

俺もクロの指し示した方向を見ると、周りを兵隊で囲んだ恐らく帝國軍が馬車に積んである大きな箱に數人がかりで手を差し出し、しすると真っ赤に輝いたと思った瞬間に木々に向って熱のブレスに酷似したものが噴出された。

「やめろぉぉぉー!」

俺がぶがこの高度から聞こえるはずがない。そもそも人間の聲は大聲で怒鳴っても直線距離で100mも飛ばない。普通の人で70m位がいい所だろう。

コータのこの聲の知識は、父である聡が働いていた飲食業の研修カリキュラムの中にある発聲練習の容を教えてもらったときのものだ。尚、山彥は聲が反響しているのでまた別の話になる。

「クロあいつらの所まで飛べる?」

「仕方ないのぉ」

呆れ口調ながらもやってくれる所は、相変わらず甘いパパさんである。

クロが急降下で兵隊の中心、馬車に突っ込んで行くが誰も上空など気にもしてなかった為にコータの接近に気づけ無かった。

クロが馬車よりも10m程度手前で止まり、ホバリングの狀態になるとコータが馬車に向って飛び降りた。

馬車で次の魔砲の準備をしていた魔師らしき數人は突然上空から人が振ってきて一瞬呆気に取られる。それもそうだろう、人間が何も無い上空から落ちてくるなんてありえないのだから。地球でならまれにビルから飛び降りた人に遭遇する人も居るかもしれないが、ここは森の中でもこの兵の居る傍には木々も無い。そんな所から人が振ってきたのだ。

「たぁ!」

コータが掛け聲と同時に倉を摑んで周りの魔法師に向け投げつける。當然投げつけられた魔法師達は投げられた男の重以上の力を食らうわけで、あっという間に全員馬車から叩き落された。馬車の上にあるのは例の魔道

その魔道を、一瞬のうちに虛空倉庫へと仕舞う。

周りの兵達も最初は呆気にとられていたが、馬車に上がろうとした所に魔法師達が吹き飛ばされて來たので一緒になって餅をついている者もいたが、魔法師が飛ばされたのは一方向だけで馬車の周りを兵達が囲んでいたのだ。

當然馬車に乗り込んだ兵もいた。だが、コータが虛空倉庫に馬車ごと仕舞った為にバランスを崩し落下していった。

「何者だ! 作戦の邪魔はさせんぞ!」

怒鳴りながら指揮らしき人が他の兵達にコータを倒せと命令するが、コータは無手のまま、兵達の間合いにり先程の魔法師達にやったように兵を投げつけて、投げたらまた間合いを取り――相手がかかってきたらカウンターで鳩尾に蹴りを食らわせ、大人數に一気に攻められれば一番近い兵士の懐にり込み再度その兵士を投げつける攻撃を繰り返した。

そしてコータの周りで立っている者は、指揮らしき者だけになっていた。

    人が読んでいる<竜神の加護を持つ少年>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください