《竜神の加護を持つ年》85.鎮火と裁定
「貴方達はいったい何処に火を付けているのか、分っているのですか!」
「何を小僧が偉そうに! エルフの味方をするのなら容赦はしないぞ!」
指揮らしき男は懐に隠し持っていたレイピアを抜いてコータへと突き刺す。が、完全理防のコータに攻撃が効くわけも無く、まるで刺さっても問題無いとばかりに、ゆったりと指揮の男の懐にった。
指揮の男も何故この小僧は刃向かってくる――當ったら死ぬというのに恐れを知らない突貫の様にも見えたが、剣先がコータに當る事は無く紙一重で見切られ攻撃を躱された。
「なっ!」
攻撃が當らず尚も前に出てくるコータを異様なを見るような視線で見ながら指揮は後ろに下がり、今度はレイピアを振りかざした。が、今度は速度を上げ懐にられる。気づいた時には自分のは宙を舞っていた。
コータの十八番、山嵐が発した瞬間だった。
コータの周りには50人位の兵士達が倒れていて直ぐに立ち上がれるような軽癥のものは居ない。コータは再度クロに乗り込みエルフの結界へと上空からり込むと結界の中から外側の延焼している木々に向かい、中腰の制でカラドボルグの剣先を向け、魔素を練りこむ。
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「シャイニングブラスター!」
撃ち出されたの本流は轟々と燃える木々の元に當るとそれを砕し更に後ろの木々へと突き刺さる。突き刺さったはそのまま貫通し更に後ろへ……の本流が収まった後に殘るのは延焼していた木々が結界の外に向け一気に倒れていく景だった。
コータはさらに中腰になり、延焼している木々に向け再度の攻撃を打ち込む。
「シャイニングブラスター!」
先程と同じように轟々と燃える木々はやはり結界の外へと倒れていった。シャイニングブラスターを撃ち込む事、実に13回。漸く結界の外で延焼していた木々は全て倒木した。
それでも燃え広がらないだけで未だに木々は燃えている。そこへフロストを伴ってアルテッザ達がやってきた。
「私達もお手伝いします!」
「わたくしもやってみますわ!」
「お手伝いするだに!」
「GAOGAO!!」
アルテッザ、ポチ、メテオラとフロストさんが掛け聲をあげ一斉に魔法の発にった。
アルテッザは水の魔法で消防車の放水の様に水を撃ち出し、ポチは水蒸気発させる時の氷結を範囲攻撃で、メテオラはバケツ數杯分の水の雨を、フロストさんはブリザードを燃え盛る木々にかけていった。
俺も真似してみようとするが、どうしても発する事は無かった。
そこへエルフ達數十人が集まり一斉に魔法を行使し出した為に、あれほど轟々と燃えていたのが不思議な位、一気に消火出來た。
直徑200mの木々が燃えていたのを數十人の魔法だけで鎮火させたのだから地球のどの消火設備よりも優れていたと言えるだろう。
火が完全に鎮火したのを見計らって、今回の首謀者とみられる指揮をエルフ達の前へ突き出す。先程までびていたこの男もさすがに気を取り戻し、現狀を再認識し目の前のエルフ達を見て驚愕する。何故ここにエルフがいるのか?
先程まで人間を相手にしていたのに。今は大勢のエルフに囲まれ睨まれているのだから怯えるのも無理はない。自分達がした事は森の民と稱されるエルフにとっては許されざる蠻行なのだから。
「た・たすけてくれ! 私は皇帝の命に従っただけなんだ」
そう言い逃れをするが助けるかどうかを決めるのはエルフ達だ。コータも人が死ぬ所は見たくは無いが、ここまで延焼させた罪を見逃せるか?
そう問われれば、否と答えただろう。
「皇帝の命令でも、あなたが兵に指示を出しこの森を延焼させたのには変わらない。今日の夕方、私達エルフは貴方達の國を救う計畫を、統括理事の皆様が承認されたと言うのに……」
「ガルラード帝國はまたも私達エルフを貶めた。この責任は取ってもらわねばならない」
せっかくクロに盡力してもらって漸くエルフの協力を得る事が決ったのにと、うちのの子達も一様にガッカリした表を浮かべている。
俺もそうだ、今回あれだけ悩んで考えて、それでも答えが出なくて、クロに頼んでやっと協力を取り付けたというのに……これでは浮かばれない。
焼け焦げた匂いが未だに鼻を付く中、巨大樹から統括理事の面々が歩いてきた。いよいよ裁定がくだるのか? と思われたが、その口から語られたのは間逆の事だった。
「私達エルフは數百年前のガルラード帝國による侵略を未だに忘れる事が出來ずに、ずっと憎み、恨んでおりました。そして私達はガルラード帝國に対し一切のけを向けず――その當事者が亡くなっても延々と嫌い禍を彼方達の代まで引きずって……。その結果ガルラード帝國は衰退し民をも苦しめる事に繋がってまいりました。今回のこの暴挙も私達がこれから禍を殘せば、さらに數百年という人間の年月では永い年月としつきをガルラード帝國のあった場所に住む者達に向ける事になるでしょう。それを私達エルフの主神がむとは思えません。よって彼方を許しましょう。そしてガルラード帝國も許しましょう。木々は植林すれば數百年もすれば元に戻ります。ですが禍は簡単には消えません。まわりの同胞の皆さんもいいですね? 今回の事は、一切の慈悲を向けずにいた私達エルフが起させたとも言えるのです。私達の未來は人間との共存関係であると主神様もおっしゃっておられました。その事を心に重く留め置くよう各自に言い渡します」
先程まで張で死にそうな顔をしていた指揮もさすがに、統括理事の言葉に自分のの安全を安堵した為か、それともガルラード帝國の今後はまだ終わってない事に安堵したのか屑折れて咽び泣きはじめた。
「さて、今回もクロ様、コータ殿達には助けられましたね。本當に何とお禮を伝えたらいいか謝に堪えません。この後始末は私達で行いますので後はみなさんゆっくり休んでいて下さいませ」
深くお辭儀をしながらそう言われ、俺達はそれに従い一旦巨大樹に戻る事にした。
辺りには未だに焼け焦げた臭いが充満し木々からは白い煙が立ち込めていたが、火は完全に消えている。後は本當にエルフ達だけで十分だろう。
早いうちにガルラード帝國の皇帝に會いに行かなければいけないが、まずは服やに付いた臭いを落としたい。
今回、消火に參加したアルテッザ、ポチ、メテオラ、クロ、フロストさんで巨大樹へと笑顔で戻っていった。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
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