《竜神の加護を持つ年》86.全ての真相

「コータさん臭いにゃ!」

「本當ですね、鼻が曲がりそうです!」

「コータは早く臭い落とさないと駄目なんだぞ!」

ご苦労様の一言も無いとは……流石はうちの娘達。

冷たい!

今の臺詞を普通に椅子に座りながら言われるならまだしも、ソファーに踏ん反り返って言われた俺の立場は?

「元々そんな立場、コータには無いであろうに!」

そーだったのか!

俺主役なのにクロにおんぶに抱っこ、頼りっきりだもんね!

あー自分で言ってけなくなってくる。糞

でもさ、一つだけ言わせてくれ!

もしなんでも出來る14歳がいたらそれは普通じゃないよね?

あくまで普通の14歳だから面白いんであって……スーパー中學生なんて誰もんでないから!

「ほれ、僻ひがんでないで早く風呂に行って臭い落として來い!」

さいですね……。

そんなじでいつもの日常が戻ってきたが、コータにはまだやるべき事が殘っている。

まずは帝國に行って、今回のエルフの決斷を伝えて皇帝からも了承を得なければいけないし、それが終わればいよいよダム造りが始まる。まぁこっちはこれだけのエルフの皆さんが揃っているんで心配はしていない。

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じゃぁ何をって?

またまた、みんなも興味津々の癖くせに無理しちゃって!

クロが言った俺の両親は死んでいるが消えていないって話ですよ。

日本で確かに両親だと聞かされて確認させられた

は見たけれど、やっぱりただのとしか思えなかったんだよね。だって一応綺麗にされて合もされているんだけど……限界ってものがあるでしょ?

それに一応、両親の死後に火葬場まで俺は付いていっいてた。もう骨と燃え滓しか殘ってないのに消えてないって言うのが引っ掛っているんだよね。今、それを聞いてクロが答えてくれるか分らないけど……今の俺はもう人間離れしちゃっているけどやっぱり會いたい訳ですよ。

孝太は今日も學校で友達とネットゲーム? ほどほどにしなさいよ。が母親の最後の言葉なんて悲しいじゃないですか。

そんな事を考えながら風呂から出てきたら気まずそうなクロと視線があった。が、目を逸らされた。

クロさん絶対、さっきの俺の心の聲聞こえていたよね……以心伝心じゃないか俺はクロの心の中まで読めないから。俺の心の中は読めるんだからさ。まぁ今聞いてショックな事だったら、これから皇帝に會うのに差し支える。やっぱり後にしよう。

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時間はもう夕方になっていた。

朝から火事で起されたから思ったよりもその件に時間を食っていたようだ。ネトゲやっている時は時間が経つのが早かったけど、まさか消火活でそれを実するとはね。

アルテッザとポチ、メテオラも俺とは別の場所でお風呂にってきたようだ。洗い立てのの髪ってなんかそそられるよね!

特にうなじとか、耳が!

誰です?

変態! とか言っているのは。それが男の本能なんですってば!

俺まだししか生えてないけどさ!

部屋に備え付けのリビングのソファーに皆で座りながら、明日の行を話し合う。とは言っても前日に話したんで再確認だけなんだけどね

もしもみんなで皇帝の居城に行ってめ事になったらとか、すんなり話がまとまったらとか、そんな話をしていた訳ですよ。若干一名、潰しちゃいませんか! なんて騒な事を言っている、わっち娘も居たりしましたが……。

簡単なおさらいを終えて各自の寢室にった。寢室に備え付けられているバルコニーで外を眺めていると、倒された木々を切って運んでいるドワーフ達の姿があった。あれ何に使うんだろうと、どうでもいい事を考えていると肩にクロが止まり唐突に粛々と語りだした。

「あの日、コータの両親が亡くなった日じゃが。我は二人の命の線が切れ掛かっていることに気づいた。それで騒いで止めたのじゃが……コータも知っている通りに二人は出かけてしまった。コータが學校へいっている間に、我は二人の後を追った――。じゃが、一歩遅く二人の乗った車はトラックと衝突した後だった。我は急いで二人を虛空魔法で現世から引き離し、回復魔法を施しておったが、我は攻撃に特化はしておるが回復系は苦手としておる為に、二人を完全に治すのに時間を要した。それでその間、我の持つ最大魔法の創造を使いコータも見た通りの二人のを偽裝した。後は、コータが見知っている通りじゃ」

「それじゃ、やっぱり二人は死んだんだね」

「そうじゃ。だが、日本では無理でもここでならコータは何が使える?」

「えっ、日本で使えなくてこっちでなら使えるって魔法でしょ?」

「うむ、そうじゃ。そして獣人達の母親を助ける為にお主は何をした?」

俺は恐る恐る確認するようにクロに答える。

「そ、蘇生魔法?」

「そうじゃ。それがあれば両親を生き返えらせる事が出來るやも知れん」

それは、コータお主次第じゃとクロは語った。まさか再び両親に會えるとは夢にも思わなかったんで、しばらく呆然としていたが。次の瞬間、瞳からぽたり。ぽたりと大粒の涙が零れ落ちた。夜の靜寂しじまに風の音とすすり泣く音が微かに聞こえていたが次の瞬間、突風と空間を引き裂くバシッ!っと、響く音が鳴る。コータは未だに無防備に泣いているままだ。

「やぁ、こんばんは。急だけどお邪魔するよ!」

「何しにきおった!」

「嫌だなぁ……せっかくの演目が駄目になりそうだからに決っているじゃないか!」

「一何を言っておる?」

「その年が今まで人を殺さなかったのは両親の死を見たからでしょ、なのにそれを話しちゃったら……次からは人を殺せるようになるんじゃないのかい?」

「コータに限ってそれは……」

「無いって言い切れるのかい?」

「無い! コータは人を殺めたりはしないわ!」

「コータくんだったね。どうなんだい? 両親が戻ってきて安心したら今度はそれを守る為に簡単に人を殺めるようになるんじゃないのかい?」

コータは流石に聲も出なかった。ただクロと突然目の前に現れた年の會話をなんとか耳でけ止めていたに過ぎない。

「オルナス、その威圧を弱めろ!」

「あーそっかぁ。これで話せるようになるかな――コータくん」

「えっと、あなたは……」

「あー僕は聞きたい事以外には答えないよ。それにね、話を途中で遮られるのも嫌いなんだ。勿論、無視されるのもね……今からそれを理解した上で話しなよ」

「えっと……僕は両親が生き返っても人を殺したりなんかしません」

「どうして言い切れるんだい? 君の技、あれは武のスキルだったか。シャイニングなんちゃらは殺傷の高い攻撃だよ? それを使うって事は、その可能もあるんじゃないのかな? 君は今まで自分が不幸だったから、人を同じ目に合わせたくないって思って殺したりはしなかっただけじゃないのかい?」

「違います。確かに両親のを見てショックをけました。それは認めます。けど、人を殺さないのは母さんとの約束だからです。弱い人を守りなさい。悪い事はしてはいけませんと」

「その教えは立派なんだけどね……誰しもがそうやって育てられた挙句に犯罪を行い、人をも殺めてきた歴史があるもんでね。僕には信じられないんだよ」

「本當に、俺は、人を殺しません」

「そこまで言うなら賭けをしようか? もし君が人を殺さなかったら見逃す。しかし――もし約束を破って人を殺したら……君の大事な人達全員、僕が殺す! 分ったかな? それでよければ両親を復活でも蘇生でもなんでもするといいよ」

「オルナス何を……」

「仕方が無じゃないか? アイテール君が甘過ぎるんだから。言ったじゃないか! つまらなかったら殺すって。まさか聞いて無かったのかい?」

信じられないなぁとおどけて言う。

「分りました。あなたのいう事に従います。それでも俺は人は殺さない!」

「自信満々だねぇ、でもそれが失敗しちゃった時に君はどれ位絶するんだろうね。僕達が君たち人間を生み出した程には絶しないとは思うけどね。おっと、もう時間だ。じゃ楽しみにしているよ。まったねぇ」

ふっとコータを縛り付けている様な威圧が消え安堵からか膝をつく。今までじたことが無いほどの圧力を中で浴びたのだ、無理も無い。

「コータ、すまぬ。コータを神の爭いに巻き込むつもりはなかったのだ」

「やっぱりあれも神なんだ……なんだ? あの圧力は? 中を上から一気に押さえ付けられた様な覚は流石に始めてだよ」

「あれこそこの世界の神の代表、この世界の人間達はやつを――オルナス、と呼ぶ」

「前から気になっていたんだけど、クロもあいつと同じなんだろ?」

「同じとは?」

「超越した力というか、天地創造するような神かって事だよ」

クロはしばらく思案していたがぽつり、ぽつりと語りだした。今日2度目じゃん!

隠し事多いな!

「我はむかしある星を創造し、そこに海を造り。山を造り。木を造り。川を造り……。最後に我は人を作った。だが數千年も経たないうちに人は、自らの同類を意味も無く殺すようになった。最初は過ちからだったが、次第にそれは己のの為になり。快楽の為になった。初めの頃は失敗したのは、たまたまだと思い天災で人類を滅ぼした。新たに造ればいいと……だが何度造っても人はまた殺しあう。今ではその世界には本當の意味での神は居ない。神の眷屬である妖が多殘っただけだ。我等神はその世界を捨てたのだ。何度造っても、何度やり直させても同じ過ちを犯す。そんな自分の子らが殺しあう姿を見るのが辛くなったのもある。そうしてその世界を捨て、ここに新たに世界を創造したのがさっきのオルナスじゃ。だが、あやつがやってもやはり結果は同じだった。今のあやつは我が子を憎んでおる。他の神々も同じだ。こんな事の為に我等神は人を創造した訳ではないのに。と……」

「それで俺が殺すかどうかの賭けを申し出てきたわけね」

「うむ。やつは演目などと――まるで他人事のように言っておったが、本心では人は人を助け合い。労わり合い、支え合える存在であってしいと願っておる筈なんじゃ」

「はぁ、なんかスケールが大きすぎて自信が無くなっちゃいそうだけど、俺は殺さない。間違っても殺さないように気をつけるよ。そうしないと大切な人達がみんなあの神様に殺されちゃうんでしょ?」

「あやつはやると言ったらやるからのぉ」

困ったものだとクロがぼやいた。

「俺がしっかりすればいい問題だもん、何とかするよ。じゃないと母さん達を生き返らせてもまた殺しちゃう羽目になっちゃうもんね」

「我もそれには協力しよう。我とて人が殺し合う姿を見るのは沢山なのじゃ」

「わかったよ。々話してくれてありがとうクロ」

「気にするな。我が勝手にやっておる事じゃ」

両親の事は帝國にダムを作ってから何とかする事にして、オルナスが現れたのが深夜だった事もありコータはベッドにるとすぐに深い眠りに付いた。

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