《竜神の加護を持つ年》90.郁

コータが目を覚まし顔を左に向けると――。

まだ聡が眠りに付いたままだった。

次に顔を右に向けると……郁がコータを見つめニコニコしているのに気が付いた。

思わず気恥ずかしくなり目を閉じてしまった。

隣からは郁の笑い聲が聞こえる。

「ふふふ、孝太はいくつになっても甘えん坊なのね!」

その懐かしい聲を聞いて思わず赤面し、母のに顔を埋めてしまった。

「あらあら、本當にどうしちゃったのかしら?」

恐らく郁は自分がどんな境遇に合い、どうしてここに居るのかもまだ知らないからこんなにのほほんとしていられるのだろう。

でもその溫かい聲を聞いてコータの涙腺は怒濤の様に破裂した。

「う゛っぐ。母さん。母さん……」

「孝太ったらどうしちゃったの? そんなに泣いちゃって。お母さんが聞いてあげるから話してみなさい」

コータは今までに合った事を話せずに、ただただ泣きじゃくっていた。

流石に郁も孝太の様子が変な事に気づき、次に部屋を見渡し――。

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「そういえば、ここは何処かしらねぇ? お母さん、聡さんと車で山に、向った筈なんだけど……孝太は何か知っている?」

それでも孝太には何て説明していいのか、気が転していて分らなかった。

そこへ扉をノックして、アルテッザとクロがってきた。

「あっ、起きられた様ですね。良かった」

は目の前にいる茶髪をポニーテールにして、小顔のうえに、二重で目が大きく、琥珀の瞳をした自分よりも背の高いを見て誰でしょう、と首を傾げるばかりであった。

そしてそのの隣には飛んでいるというよりも、浮いていると表現した方が正しいと思われる竜の姿を見て。

「まぁクロちゃんね! クロちゃんったら、また変な悪戯していたんでしょう?」

と……一瞬でクロだと見抜いたのであった。

「母君は我の姿を見て、オウムのクロだと分るのか?」

「まぁまぁ、クロちゃんが言葉を話しているわ。これは夢なのかしら……孝太が甘えん坊に戻っているからきっとそうなのね!」

などと……現実逃避に走っていた。

泣きじゃくっていたコータがそれに気づき、現狀を説明し始めた。

「母さん達は、山に行く途中でトラックに衝突されて意識不明になっていたんだ。そしてそれを助けるには地球の醫療では不可能で――俺が困っていたらクロがこの世界を、ここは地球じゃなく別の世界なんだけど、ここなら母さん達を治せるからって言われてこの世界にやってきたんだ。それからはクロと々あって盜賊退治したり、悪人を退治したりしてこの國の王様にこの領地を賜って……だからここは俺の家というか、城なんだ。そして盜賊退治の時に助けたと海洋國家の謀で病床についていて俺が助けた王様と俺が婚約している」

まぁまぁ、何をいっているのかしら。そんな顔でしばらく郁は聞いていたが……。

「その盜賊退治の折に助けられたのが私で、アルテッザと申します。お母様」

そうアルテッザから言われて、郁の表が華やかになる。

「まぁ、それじゃ貴が孝太のお嫁さんなのね! まぁまぁ、私も娘がしかったの。よろしくね、アルテッザさん」

そう言ってアルテッザを抱きしめた。

そんな風に隣で騒がれれば煩くて寢ていられなかったのだろう。

父の聡も目を覚まして――。

「ん、なんか騒がしいけど何があったんだい? それにしても此処はいったい……」

「まぁまぁ、聡さんったらまだ寢ぼけているのね、うふふ」

似たもの夫婦であった。

「それじゃ、僕達は通事故で地球の醫療技では治らないからこの世界に來たというんだね。日本に殘した貯金や、保険、仕事はどうなったんだろう?」

「ごめん、父さん。日本ではもう父さんも母さんも死んだ事になっているんだ。それで俺一人になっちゃったから、クロと共に……」

そこまで言われれば聡にも理解できた。

自分は地球では死んでしまっているが、この世界なら生きていけるのだと。

「それじゃ、また家族揃ってこっちで生活すればいいじゃないか。お父さんはこれでも、転勤が多かったから何処で生活しても生きていけるんだぞ。それに郁だって、これだけの自然に囲まれていた方が嬉しいだろう、きっと楽しいよ」

「そうね! 私もさっきしだけ外を見たけど、大きな山脈が近くに見えてわくわくしちゃった!」

でも、その山脈には魔獣がいて危険なんだけどね!

「それでその子が孝太の婚約者のアルテッザさんなんだね。こんな泣き蟲な息子ですがよろしくお願いします」

アルテッザも笑顔で、はい! とか同意してないでよ。俺、泣き蟲じゃ……泣いてばかりだった。

「それで、もう一人の王様はどちらにいらっしゃるのかしら?」

が孝太にメテオラの事を聞いていると、再びドアがノックされ娘達全員が室してきた。

母さんも、父さんも流石に話には聞いていたが、獣人の娘達を見て驚いていた。

「はじめまして、お母様、お父様、アルステッド國の國王アーノルドが長でメテオラ・アルステッドと申しますわ。末永くよろしくおねがいしますわ」

まぁまぁ、金髪で瞳が綺麗なブルーだわ、聡さん、鼻の下ばしちゃ駄目よ! とか言ってふざけ合う夫婦であった。

「こちらこそ、メテオラさんも、アルテッザさんも孝太共々よろしくね!」

「そちらのお犬ちゃんと、貓ちゃん、狼ちゃんもよろしくお願いしますね。うふふ」

孝太の周りがだらけなのを、とても微笑ましく見つめる郁であった。

――そしてお晝時。

皆で揃っての晝食となったのだが……。

さっきまで寢室しか見てなかった夫婦が城の中を歩いて食堂まで來たのだ。

この城の大きさ、広さ、豪華さに目を止め食堂までの道のりで一々、あれ凄いわね! あっちもまるでドイツのお城の様とか、観気分で歩いていた。

気持はわかる。

俺もここが元オワルスターの居城でなければ、もっと普通に楽しめたかも知れない。

そんな事を知らない二人は本當に楽しそうだ。

二人の笑顔を見ていると、俺まで嬉しくなってくる。

そして食堂に到著し、出された食事を見て――。

「まぁ凄いわね、授業で見た貴族のお食事みたい」

「胡椒とか砂糖も富に使っているんだよ!」

俺が自慢げに言うと――あら、地球でも13世紀頃の胡椒はしょうがと同じ位安い調味料で貴族とかは庶民の味だからと言って食べなかったのよ?

砂糖も1500年頃になると各地で大量に生産されて価格も安かったと學校の資料で読んだわ!

……え?

そうなの?

俺のラノベの知識は5世紀頃の知識らしかった。

流石に俺よりも學のある、母さんらしい知識全開で話してくれた。

これならもしかして醤油とか味噌とかも作れるのかな?

聞いて見たら麹作りと諸味に時間がかかるけど、3年もすれば食べられるものが出來るようになるとかなんとか。

すげーうちの母さん、まじすげぇ!

そんな會話を楽しみながら、これから先の領地での特産も決っていったのであった。

この語……第二部からは郁の異世界領地運営とか、家族で過ごす異世界生活にタイトル変わるかもしれん。

勿論、噓です……。

多分。

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