《竜神の加護を持つ年》91.孝太の結婚

朝食を食べた皆はいつものリビングで寛いで紅茶を飲んでいた。

「まぁまぁ、この世界のお茶は砂糖をれなくても甘いのね、とても味しいわ」

「これはプレヴァの実を潰して乾かしたものが混ざっているからね。ちなみにプレヴァの実は一般的には桃の味がするんでジュースとして売られているんだよ」

この世界に疎い郁に、コータが一々細かく説明してあげている。

コータにしてみれば、久しぶりの親子の會話に飢えていたのかも知れない。

「それにしてもこっちの空気は旨いなぁ。日本よりも自然がかで言う事無しだ」

聡も初めての異世界なのに、怯えた様子もなく自然に見えた。

きっと、家族が揃っているから安心出來るんだと思う。

コータも家族が一緒だと今までと違って気が張っていない分、楽な気分であった。

いくらクロやの子達と一緒に居ても、まだ家族になった訳ではない。

その差なのだろう。

「母さんも、父さんも後でレベル上げしなくちゃね!」

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流石に山が好きな夫婦に、今のレベルで楽しんで山に行って來てね。とは言えない。ここは日本とは違うのだ。

日本でも稀に熊が出たりする事はあるが、確率的にいったらこっちの世界ではほぼ100%魔獣に遭遇する。

その時に対処出來る様に、レベルを上げていてしいって思うのはコータの我侭ではないだろう。

それに、日本と比べて治安も良くは無い。

いつ強盜や盜賊に狙われるか、わからない世の中なのだ。

コータはもう二度と家族を失いたくない一心で、レベル上げを推奨した。

「レベル上げって孝太が良く遊んでいたゲームの中で強くなる為に、モンスターを倒すって事なんでしょ? お母さん、あんまり弱いを殺したりめたりするのは嫌だわ」

「父さんも、生きを殺すっていうのは出來れば避けたいんだが――」

「普通の考えの人なら皆そう言うと思うよ。それが地球ならね。俺もそんな事を好きでやっていた訳じゃないもん。でも強くなければ殺されるし、守るものも守れない。ここの世界は未だに奴隷だって居るくらいだよ……もし父さんと母さんが盜賊に捕まれば、男は殺され、は――言わなくてもわかるでしょ?」

「なんか凄い世界に來ちゃったのね……孝太はそんな世界で頑張って、の子達を守っているのね」

頑張って守っているのかは分らないけど、今の家の娘達はこの世界で勇者クラスの強さみたいだしね!

でも俺と違って、竜相手には大怪我もすれば死にもするから。強あながち間違いとは言えないのか。

「それで、二人の娘さんとはいつ結婚するんだい!」

「そうねぇ聡さん。わたしもそれが気になっていたのよ。もし子供が生まれたら私達、お爺さんとおばあちゃんになっちゃうわね! うふふ」

なんか二人して嬉しそうだな。

そんなに早く爺婆になりたいんですか!

この二人、年齢は父が38歳、母が34歳だ。その歳で爺婆談義ってどうなの?

それ!

「その若さで爺婆になりたいの? まだ早いんじゃ?」

「だって家族が増えるのって楽しいじゃない? まだ私達も可能はあるかもだけどね!」

「うわー俺の子と弟か妹が同じ歳ってそれどうなの? どうなのよ!」

孫と子が同じ歳って聞かないよ!

そんなの初めて聞いたわ!

「あらあら、でもきっと賑やかで楽しいわよ?」

「食卓が賑やかなのは父さんも嬉しいからな!」

「それでいつ結婚するの、お二人のご両親はご健在なんでしょ、一度、挨拶に行かなくちゃね」

「母君も父君も相変わらずよのぉ、がっはっは」

何一緒になってクロも和んでいる訳……。

クロが喋れる理由を説明しても今一つチンプンカンプンだったみたいで、

――わかった。喋れる竜だったんだな。で終わった。

うちの両親、諦めが早いのか順応が高いのか。

もう好きにしてしい。

「うーん、アルテッザのご両親はトーマズって街で商會を営んでいて、メテオラに関してはこの國の王家だからね。簡単に行くかな?」

「あら、私の父と母ならいつでも大丈夫だと思いますわよ。だって救國の英雄のご両親と會い出來るんですのよ」

「まぁまぁ、孝太が英雄だなんてお母さん耳が遠くなったのかしら?」

「お父さんも、耳がおかしくなったみたいだよ。母さん」

この二人は息子を揶揄して遊んでいるんだな。きっと!

「本當なのですわ。おでこの國は持ち直しましたもの」

「コータさんは本當に凄いんですから。後で正門にコータさんが倒した竜を見にいきませんか?」

アルテッザ、いきなり竜を見せるとか……大丈夫かな?

クロも竜だけど、まだ巨大化していないから平気なだけかも知れないのに。

「へぇ、本の竜がいるのか、ここは……。それは楽しみだな。父さん子供の頃は、恐竜とかに興味があったんだよ」

「あら聡さんも、私も學校で跡とか化石の本を読んだり海外の映畫を見たりして、興味があったのよ」

本當に……似たもの夫婦だった。

「それで結婚はいつするの?」

「忘れていなかったのかよ!」

「あたり前じゃない! こういう事は、はっきりさせないと行けないのよ。聡さんと結婚する時もちゃんと養護施設の院長先生に挨拶に行ってから結婚したんですからね」

「それでいつするんだ?」

まだ諦めていないらしい。

「こっちの人が15歳なんだよ。だからお互い15歳になってからになると思うよ?」

「今は何月なの?」

「日本で言ったら2月かな、こっちに來てもう半年は経ったから」

「じゃぁ孝太はもう15歳になっているわね。アルテッザさんは?」

「私は先月15になりました」

えっ?という事は……もしかして俺人しちゃっていた!

なんだ、あんな事や、こんな事をやっても問題無い歳になっていたんじゃん!

「メテオラちゃん17歳なんでしょ? 『年上の房は金の草鞋を履いてでも探せ』って昔から言うから良かったわね。アルテッザちゃんも可いお嬢さんだし両手に華ね!」

これで獣人のお嬢さんも貰っちゃえばハーレムね!とか言ってんなよ!

本當にうちの両親、この世界に俺より馴染んでいるんじゃないのか!

「それじゃ、レベル上げは後にして結婚を早くして貰わなくちゃね!」

あ、そういう――。

「母さん達には悪いとは思うけど……レベル上げだけは後回しに出來ないよ。この世界は本當に危険だから。アルテッザも、2度程死にそうになっているし」

「あらあら、そんなに危険な目に遭っているの? アルテッザちゃん?」

「はい。竜3匹に遭遇したのが1回。その時に怪我をしてしまって寢込んでいる時に拐されてその船が沈んで1回。コータさんと出會ったきっかけの盜賊に拐されて竜の生贄にされそうになったのを含めると3回は危険な目にあっていますね」

「まぁまぁ、そんな所でこれまでコータはクロちゃんと二人でやってきたのね」

実際は、こっちきて直ぐにアルテッザ達と出會っているから、二人ではないんだけどね。それは言わなくてもいいだろう。

「だから、こればかりは譲れないよ! 父さんも母さんも明日からパワーレベリングだから」

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