《竜神の加護を持つ年》92.數十年後・・・

ここはアイテール城の一室。小さなの子の枕元にはピクシーサイズのクロが寄り添い、寢る前の読み聞かせじゃなく話し相手になっていた。

「ねぇねぇ、アイテール。それでお爺様のお父様とお母様はパワーレベリングをやって強くなれたの?」

この子の名前は宮城里。アルテッザと孝太の孫である。

の最近のお気にりは、アイテールからお爺さんの昔話を聞く事であった。

「それがのぉ、郁も聡もいざ魔獣を前にしてや・っ・ぱ・り・殺・せ・な・い・わ・と言い出しての結局生涯レベル上げを行わなかったのじゃよ」

「えーそれじゃ、山に行けなかったんじゃ?」

「いや、孝太が両親が出かける時には厳重に護衛をつけておったからのぉ、元気に出歩いておったぞ」

「ふぅーん、そうなんだ? でも門の竜はちゃんと見せたんだよね?」

「うむ、二人とも目を大きく見開いておった、しばらく見つめて今度はりだしたりしての、こ・の・鱗・す・ご・い・固・い・わ・と言って大喜びじゃったわ」

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「びっくりして腰とか抜かさなかったの?」

「あの夫婦はのほほんとしておるからのぉ、腰を抜かす所かき・ゃ・ぁ・き・ゃ・ぁ・騒いで煩い位だったわ」

「里は始めて見て怖くて泣いちゃったのに?」

「あの夫婦は特別じゃな」

「それじゃぁ、お爺様とお婆様は何時結婚したの?」

「孝太の母君と父君が目を覚まして、パワーレベリングに行った翌日にはトーマズの街と王城に皆で顔を出しての。それから1月後にはアルテッザとメテオラの3人揃って王都で豪華な結婚式をしておったな」

「メテオラお婆様も一緒にしたんだ?」

「そうじゃ。孝太などは顔を真っ赤にしておってのぉ。二人から同時に頬っぺたにキスされて浮かれとったわ」

「へーなんか羨ましいな」

「里もいつかは結婚するんじゃろ? ならそれまでお預けじゃな、がはは」

は小さな頬っぺたを、ぷくーっと膨らませた。

「里は子供じゃないよ?」

「まだ12歳じゃろ! まだまだ早いぞ」

「だってもうパワーレベリングも覚えたのに?」

「孝太も15歳まで我慢しとったからな。里もそれまでの辛抱じゃな」

人かぁ、人したら何かかわるのかな?」

は首をかしげ問いかけた。

「孝太もアルテッザも人になったのを忘れておった位だからのぉ」

人したからって何が変わる訳じゃないんだね!」

「何にもかわらん。ただ結婚して子供を作れる事くらいじゃ」

「お父様はいつ生まれたの?」

「結婚した翌年にはアルテッザもメテオラも出産しておったからのぉ」

「メテオラお婆様の子供って今のこの國の王様なんでしょ?」

「そうじゃ、王家には直系の世継ぎが生まれなかったからのぉ」

「アレフお爺様とイアンお婆様には、子供出來なかったんだよね?」

「そうじゃ。々手は盡くしたらしいがの、恵まれなかったようじゃ」

「ローラお婆様は、ガルラード帝國にお嫁さんに行ったんでしょ?」

「うむ。現在のガルラード帝國の王がその息子じゃな」

「ポチお婆様、タマお婆様、ホロウお婆様は?」

「ポチはこの街の犬獣人の騎士と結婚してその孫が今の里の護衛騎士をしておるじゃろ?」

「あの犬獣人の騎士さんそうなんだ!」

「タマは王都の商會の犬獣人の若旦那と結婚して、今は隠居して平穏に暮らしておるのぉ」

「里は會った事あったっけ?」

「里が生まれて直ぐに、お祝いに駆けつけてくれたんじゃが覚えとらんわなぁ」

「うん。赤ちゃんじゃ分らないね」

「ホロウは獣人の王が魔獣と戦って死んでから王として召還されてのぉ、最近まで傑として名を馳せておったのぉ」

「それ聞いた事ある! あれでしょ神速の槍使いとか言われていたって」

「うむ、孝太のメンバーは皆強かったからのぉ」

「じゃぁ、お婆様とお爺様はお父様が生まれてからはどうしていたの?」

「アルテッザは出産後の靜養の為に、この城で郁と聡とメテオラとで味噌、醤油を使った料理を作って楽しんでおったな」

「あの調味料を伝えたのがお爺様のお母様なんでしょ?」

「うむ、あの味はこの世界では始めての味だったからのぉ、大量生産をしてこの街の特産になってから、街の規模が5倍に膨れ上がったのだ」

「お味噌おいしいもんね!」

「うむ!」

「お爺様は、その後は何をやっていたの?」

「孝太は我と一緒に4大陸を全て回ってあらゆる戦爭、紛爭、盜賊の討伐絶の旅に出とったぞ。ちょくちょく城に戻ってはアルテッザとメテオラとイチャついておったがな」

「それが有名な英雄の話になるんだね!」

「うむ、生涯、人を殺めずを貫き通し、それゆえに付いた名が慈悲の英雄コータじゃな」

「そんなに強かったの?」

「我の加護があった故に、対人では必ず無手で敵の懐にってから山嵐、背負い投げ、ローキックを炸裂させておったが、中々に見応えのある面白い戦い方であったぞ」

「でもお爺様の武は伝説の武だったんでしょ?」

「うむ、カラドボルグじゃな。あれは殺傷力が強すぎるよって、砦や城、城壁を壊すのによく用いておったわ」

「剣なのに?」

「うむ。剣なのにだ。がははは」

「この城の寶庫に今は仕舞ってあるんだよね?」

「うむ、あまりにも強力な武故に封印したのじゃ」

「お爺様、小さい頃にちょっとしか話した事無いけど、凄く優しくて強そうには見えなかったよ?」

「パワーレベリングでレベルを上げた弊害じゃな」

「じゃ里も弱く周りには見えるのかな?」

「我の加護があるからのぉ、もしかすると孝太よりも強くなるかもしれんのぉ。孝太は泣き蟲だったからな。がはははは」

「お爺様が泣き蟲って良く聞くけど、里は見た事ないよ?」

「爺になってまでは泣いてはおらんからのぉ」

「お父様の弟さんは外國に行ったんだっけ?」

「うむ、4大大陸でもっとも巨大な大國で今の國王じゃな」

「みんな偉くなったんだね!」

「里の父君は孝太の殘したこの街を守る為に、殘ったようなものじゃからのぉ、本來なら弟の代わりに王になっていてもおかしくは無かったのだがな」

「お父様ってお爺様っ子だったんだっけ?」

「うむ、孝太によく似ておるぞ」

「お父様も涙もろいもんね!」

宮城孝太は生涯をかけて世界各國を回り人が人を殺す事の無い平和な世界を築こうと活躍した。が、その生涯をかけても遂にし遂げる事は出來なかった。

だがその志は彼の殘した子供達が、今も引き継いでいる。

「やぁ、この語を読んでくれている皆、ごきげんよう! 結局、あの子は僕との約束を守った訳だけど……人間はまた同じ事を繰り返すよ。でもね、僕もあの子みたいに諦めないで見守ろうって気にはなったかな? せっかくやる気を出している人達もいるしね」

「お前、最後のさいごまで何か偉そうだな! そんな態度じゃ駄目なんだぞ!」

「僕は、この世界の創造神だよ? 偉いに決っているじゃないか!」

「お前なんか、兄様と比べたら粕みたいななんだからな!」

「あははははは!相変わらず辛辣だなぁヘメラは」

「それじゃ!またいつか會おうね! ばいばーい!」

番外編に続く――

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