《と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について》26話目 三人の冒険者
「なあデビー、ここがその噂の村か?」
大柄な男が噂の開拓村に到著するなり仲間にそう尋ねる。男は筋骨隆々としており、自慢の大盾と長槍を背負っているという見るからに前衛とした風であった。
「ああ、そうらしいな。見たところどこにでもある開拓村ってじだが……」
デビーと呼ばれた男が大柄な男の質問にそう答えた。を守るための最低限の裝備しかしておらず、役割は斥候か後衛のようにも見える。
「まあ噂になってるのは村そのものよりも森に棲んでるっていう男だろ? 村が普通ってのは別に変なことじゃねーだろ。それより俺は酒場に行ってくるぜ!」
そしてそんな二人とは別の男はそう言うと二人に先駆けて村の酒場へと向かっていった。
 三人の名前はそれぞれライオル、デイビス、ジルといい、かなり名の売れた冒険者である。普段は別の場所で魔の討伐の依頼をけているのだが、噂の真偽を確かめるよう彼らを名指して直々に依頼がったのだ。
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三人にはある夢があった。それは冒険者になりたての頃ならば誰でも持っている夢であり、多くの者が捨てていった夢、いつか英雄になってみせる、という夢。ただ、それでも魔の森に向かうという無謀さは持ち合わせていなかったが。
そのため噂を確かめる、などという訳の分からない仕事など本來はいくら金を積まれても三人はやりたくなかったのだが、冒険者達の互助組織たる冒険者ギルドが依頼の背後に國王がいることを匂わせたためけざるを得なかったのだ。
國王が自分たちを指名してきたということは、自分たちの腕が見込まれたということである。ここで斷れば國王の心証が悪くなり國で過ごしにくくなるうえに三人の夢が遠ざかってしまう。
依頼をけると答えた時、対応していた付嬢がほっとした表と申し訳なさそうな表を同時にしていたことに下っ端の哀愁をじて三人は苦笑いし、仕事が終わったら彼を食事にでもおうと考えるのであった。
そうこうして村につくなりジルが足早に酒場へと向かってしまったため、殘されたデイビスは深々とため息を吐いて愚癡をこぼす。
「あの野郎、一番おいしい所を真っ先に持っていきやがった……」
「まあまあ、酒場はあいつが一番適任なんだししょうがねえじゃねえか」
今回の目的は魔の討伐ではなく噂の真偽を確かめることであるため、普段よりも報収集が重要となる。そのため三人が各自報を集めることになっていたのだが、その中でも一番楽しめる酒場をジルが持って行ってしまったというわけだ。
ライオルは言うまでもなく、デイビスもまた話しかけやすい人とは言えなかった。常に表が張りつめているため酒場で彼が飲んでいても誰も話しかけてこないことは請け合いであり、本人もまた、積極的に人に話しかける格ではないのだ。
ジルは三人の中では一番人懐っこい格と話しかけやすい見かけであるため、いつもどこからか報を仕れてくるくらいであり、最も人の集まる酒場は彼にとっては格好の場所と言えるのだ。
「じゃあ俺らは俺らで報収集するとしますかね」
「ああ。とりあえずギルド支店でも探すか」
ライオルの提案にデイビスがそう答え、噂の男に助けられたという冒険者達から報を集めるべくくことにする。それからしばらく二人は冒険者達や村の住人などに聞き込みを行っていたが、結果は芳しくなく、気付けば辺りはすっかりと暗くなってしまい、村からは人気ひとけが無くなっていく。
思っていたよりも収穫が無かったことに落膽し、デイビスはガリガリと頭を掻きながら手元のメモを見やった。
「結局、聞いてた噂以上のことは聞けなかったな」
この村に設置された冒険者ギルド支店や鍛冶屋、その他の店等で聞き込みをして回ったが、彼らが冒険者ギルドから聞かされた報以上のことを得ることは出來なかった。誰に聞いても噂の男の容姿はハッキリとせず、男の素について知っている者もまるでいなかった。男がこの村の近くで活していることから、何らかの関係者がいるのではないかと考えていただけに空振りしたのは中々痛かった。
「まるで収穫が無かったってわけでも無いさ。森でどういう罠を仕掛けりゃいいかとかの報は現地ならではだろ?」
ライオルがめの言葉をかけるが、デイビスはその言葉に反応してジロリとライオルを睨むと何のめにもならないとばかりに言葉を吐き捨てた。
「はんっ! どいつもこいつも失敗したばっかりじゃねえか。それで作戦立てようにも『何で失敗したか』わかんなきゃどうしようもねえぜ」
罠に失敗して逃げ帰って來た冒険者らは誰もかれもが逃げるのに必死で狀況分析など出來ていなかった。『突然後ろから襲われた』『罠が全然効かなかった』などの証言では失敗の原因は摑みようもない。その上彼らが混の極みにいたことを考慮すればそれらの証言が正しいのかすらも怪しかった。
それらのことはライオルとて言われずともわかっているので、デイビスの言葉を笑ってごまかすことしかできなかった。
「まあ何にせよジルに期待だな」
結局報収集において二人にできることは補助以上の事は無い。ライオルの言葉に同意もせず、否定もせずにデイビスは『はぁ』とため息を一つつくと酒場へと足を向けるのであった。
「冒険者ジル! 男を魅せます!」
「一気! 一気!」
二人が村で唯一の酒場の扉を開くなり、むさくるしい男たちで満たされた店でジルの聲が響く。その直後『うおー!』という喧しい歓聲があがり、盃を掲げるジルの姿が目にった。
ある程度予想はしていたこととはいえ、何ともやるせない気分になった二人はややげんなりとした顔をしてジルへと向かう。
「おう! デビー! この村の酒は中々いけるぞ! 飯も量が多いし、この村に住むのも悪くねえかもしれねぇな!」
二人に気付いたジルが酷く酒臭い息を吐きながらそう聲をかけた。自分たちが働いている間只管飲んでいたのかと思える程にジルの顔は赤く、正気を保っているのかさえ定かではない。そうしたジルの様子に嫌な予を覚えつつもデイビスは報収集の果を確認する。
「酒が味いのは結構だが、噂の方だどうなんだ。何か無かったのか」
「噂……?」
デイビスの問いを聞いたジルは一瞬呆けた顔をすると何かを思い出した様子を見せ、視線を泳がせながら『あー』『うー』と意味の無い言葉を発する。
それを見たデイビスは予が正しかったことを確信し、眉間に深い皺を刻みながらジルを問い詰めた。
「おい、ジル。まさかとは思うがてめえ、俺らが必死こいて報集めてる間ただ飲んでただけなんじゃあねえだろうなあ?」
デイビスはジルが逃げられないよう、倉をぐいと摑む。そしてやがて観念したのか、はたまた開き直ったのかジルは『へらっ』と笑ってデイビスの問いに答えた。
「……すまん!」
「このボケナスが!」
『ガスン!』と景気の良い音を立てながらデイビスはジルに拳骨を食らわせ、その後ろでライオルは人知れずため息を吐くのであった。
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