《金髪、青目の人エルフに転生!》第三十二話 母と街に住む人々

にっこりと笑うジェイドを見た途端、私は驚いて近くのコップを落としてしまった。

「ソフィアお嬢様、落ちましたよ? そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」

「だ、だって! いつからいたのよ!」

「いつからって……? あぁ、姿隠し、うまくいってました?」

私はキッと睨んで「えぇ、見えなかったわ」と言って、いつもどおり毆ろうと……して母達のことを思い出した。

「ん、すみません。えぇと、ジェイドです。私の使い魔一號です」

「へえ、かっこいいじゃない。いっつもそんなじなの?」

「ふふっ、お嬢様はいつも私のそばに……」

「そういうことじゃないでしょ!」

今度こそ思い切り毆ってやった。悪魔は泣かないし、何よりジェイドに私ごときの拳じゃ対抗できない。大して痛がってないようだし。

というか、私のほうが痛いくらいっていうか……。あれ? これじゃ、何がしたいんだかわからない。

「はぁ、ジェイド、あなた、どういうつもり?」

「さぁ? 私はそのままのことを伝えたつもりですが……」

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いつも毆ってばかりなので、思い切り足を踏んでやった。ヒールで。

「あ、痛い痛い。お嬢様、そりゃないですよ」

「バァカ。おみ通りでしょう?」

は! また忘れてた! これはさすがにまずい。いくらなんでもこれは……。

「ソフィアの前世ではみんなこんなじだったの?」

「えっと、使用人なんかいませんが……」

「あ、そりゃそうね。いつものソフィアらしくはないけど、これがソフィアかな?」

「ふふっ、私のお嬢様はこんなじですよ?」

ま、また馬鹿な奴……。なんてことを言ってくれるんだ。いつもいつも、問題が起きるときはジェイドのせいだ。本當に、止めてしい。

「あ、あの! お姉ちゃん、いや、ソフィア様のご両親ですか?」

ジェイドと父が、スカーレットと母が話していると、マリンが顔を真っ赤にしながらってきた。

「? そうよ。ナディア=レルフ。あなたは?」

「え、えと、その……。前世のソフィア様、の妹、です」

母はし驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になって話しかけようと、した。

「おお! ソフィアの妹! 可いな。黒髪黒目の獣人か」

「えへへ、耳も尾もなかったんですけど。こっち來てから、です」

父がそれより早くマリンの前に立った。あ、変態か。獣人好きの。

ジェイドが「ソフィアお嬢様の方が可いのに……」といった気がしたが、気のせいだろう!

スカーレットが困った顔をして私の袖を引っ張った。ああ、まずい。母が怒ってるよ!

「スチュアート! あなた、一どう言うつもり?!」

あのあと、大騒ぎになった。母が父の頭を毆って父が涙目になっているにもかかわらず更に。

私は仕方ないので二人を外に放り出しておいた。ここでやられるのは困る。

「あの人の娘なら納得だ」という空気が流れていたが、なんのことだろ? えっと、なんかした?

「ごめん、ソフィア、ちょっと暴れちゃったわね」

「……、お母様、いくつなんです……?」

「年? 百二十いくつか、ね」

そういうことを聞いたんじゃ、って、ああ、まだ若いな。大人だけど、にしか見えないのはエルフだから仕方がない。

とりあえず、宴は始まった。まず、桃魔法ピンクローブの一人、紫の髪を持つメロディが綺麗な歌を歌う。

「綺麗ね……。癒しの歌」

「おや、知っていたのですか? 流石ですね」

ジェイドは軽く無視して、私はその歌に聞きった。學校で習った『歌』の魔法。

ただでさえ、歌には魔力がある。魔法使いが魔法の歌を歌うことで強い威力を発揮するのだ。

あの綺麗な、溫かい歌聲を聞くと、なんとなくそれが実できる気がした。

「ねぇ、ジェイド。メロディって確か、有名な家の子よね?」

「ん、えっと、ああ! そうですね。魔法歌で有名な家ですね」

メロディは歌い終わると、口をそっと閉じて四方に禮をすると、仲間のもとに戻っていった。

こんな子までダークエルフにされちゃったんだ、って考えると、本當に魔王は許せない。

そのあとは、まぁ、特に決まったことをするわけではなく、自由に食べたり、喋ったり。

いや、母はだいぶ恐れられてしまったようだ。話してはいるけど、態度がおかしかったりする。レルフ家の當主だから、というわけではなさそうに見える。

「ソフィア嬢、お疲れ? 大丈夫ですかぁ?」

ルアンナが心配そうな顔で私の顔を覗き込んだ。それにつられるようにクララも私の顔を見る。

「さっき、大將倒してくださったんですよね? あの人が倒れたから戦意喪失したらしいですよ?」

「でも……。これで、いいのかな。あの人たち……」

確かにし疲れてはいるかもしれない。でも、さっき寢ちゃったしなぁ。それにしても、彼らってほんとにこれでよかったのかな? なんか、可哀想な気がする。

「あ、知ってます? せめてきた村、どうやら危ない狀況だったらしいですよ? 一発逆転狙ったみたいですよ?」

あぁ、だからあんなに馬鹿みたいだったんだ。だって、考え無しっていうか、なんか準備が足りないじがしたんだ。なんっていうか……。才能を潰しちゃってるっていうか……。

「ルース、か。あの子も、ほかの道のほうがいい気がするな……」

「ルース? まあいいか。でも、彼らはここの街の方がいい気がするんです」

クララとルアンナが言うので、私も安心してそのことを考えるのはやめた。

「ふぅ。そういえば、今日、ハナってお母様たちの家に行ったんじゃなかったっけ?」

「あ。そっか、ソフィア嬢聞いてない? ハナは予定変更してけが人の手當してますよ」

「! 噓、知らなかった。あ、じゃあ、様子見てあげないと……」

すると、スカーレットがコツコツとこちらに歩いてきた。

「ハナ様が、ソフィア様に心配ないと伝えろと」

「あ、そう。ありがと。インディゴにシナモン連れてくるよう言える?」

「わかりました。……ジェイドじゃダメですか?」

「あ、いいんだけ、ど。あ、いや、ダメだ。ジェイドはまずい」

スカーレットはちょっと不思議そうだったが、そのままインディゴのもとへと飛んでいった。

スカーレットがいなくなってから、クララとルアンナが不思議そうに聞いてきた。

「ねね、どーしてジェイドさんじゃダメなんですか?」

「いまね、フェリとかレオンとか、男の子達に猛攻けてるの。なんでかまでは知らないけど」

「ソフィア嬢絡みなのは確かでしょうね」

ああ、やっぱそうだろうな。いや、怖いよ……。朝起きたらジェイドの処刑です、なんてことになったら本當に困るんだけど……。

これ以上こじれないことを願うばかりだ。

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