《金髪、青目の人エルフに転生!》第五十五話 天使と悪魔

次の日。ジェイドがそりゃあもう住民が全員驚くくらいおとなしかった。そして私のやろうとすることすべて先回りしてやった。

「あのさぁ。今日のこれは一なぁに?」

「! なんでも、ないですよ?」

いやいやいやいや。絶対違うから。あれか。償いのつもりか。

でも、そこまでするほどじゃないし、代償といっても昨日の午後と練習用に作ったローブだけだ。大したことではない。……よね?

「あのね? 私もう治ったの。そんなに付きまとわなくても……」

「いいえ! 絶対にダメです」

なぜここだけ譲らないの? どういうことでしょうか?

歩いていて、ふと、黒髪が目にった。この國にいる黒髪の人は、限られている。その中でも、貓耳があるのは。

「マリン! ちょっといい?」

「お姉ちゃん。どうしたの?」

「この前ね、マリン召喚しちゃった村行ったの。だから、ちょっと言っておこうかと思って」

「ミーシャちゃんにも會った?」

「會ったよ」

マリンは顔を輝かせた。ミーシャって、村長の孫だよね? 仲良さそうだけど、どうして?

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聞けば、どうやらミーシャはマリンに懐いたらしい。マリンの戦いのはすべてミーシャから教えてもらったのだそうだ。

「そっか。お姉ちゃんが助けてくれたんだ。ありがと」

マリンは嬉しそうだ。こんなことなら、連れてけばよかったか? うーん……。

あ、マリンは行かなくて良かったかもしれないな。ユリアナのこともあるし。

って、あ、今更思い出した。サークレット。忘れてたや。付けてみよう。じゃあ、急いで部屋に戻らないと!

「ソ、ソフィア様?! 一どこに?!」

あ、ジェイド。忘れてた。ごめん。今日は隨分おとなしいからさ。

「おぉ! お綺麗です! 神のようです!」

神のだからね。知る由もないだろうけど。でも、ホント綺麗。

「うーん、これ、本當に綺麗ね。何で出來てるのかな?」

金とは、ちょっと違う? なんだろう。

ああ、綺麗だけど、金髪だから、ちょっと目立たない。寶石は目立つけど。

とにかく。後でこれつけて魔法撃ってみよう。どんなじになるかな? 楽しみだ。

「ところで、それ、どこで手にれたんです?」

「あぁ、この前、マリンのいた村にに行ったの。そこで、ちょっといろいろあって」

「じゃあ、これ、獣人が作ったんですか?」

あぁ、それは違う。トレアのだ。そう言ってから、気がついた。トレアのこと、まだ言ってないのに。

「トレアって、誰ですか?」

ど、どうしよう! 言っていいのかな。大丈夫、だよね……?

「私と関わってる神様、だよ……」

あらら、もしかして、これ、まずかった……?

「ソフィア様ぁー?」

天使エンジェル! このタイミングで現れるなんて……。今のが駄目だったとしか思えない。

私が青い顔でうつむいていると、ジェイドは私をその天使からかばうように抱いた。

「なあんて、冗談です。私はそんなこと言いに來たんじゃないんですよ。用があって」

え、あ、そうなの? びっくりしたじゃないか。こんなタイミングで來ないでよ。

「そのサークレットがあなたに回ったってことは、やっぱり悪は存在するのですね……。ということで」

「……? え、どういうことだって?」

「そのサークレットの使命は『悪を滅ぼすこと』です。今、サークレットが発しているということは、悪は、今、存在します」

それって、つまり、魔王が復活したって事だよね。間違いないの……?

「ああ、でも、悪が魔王かどうかはわかりませんので。とにかく、悪であることは間違いないですが……」

天使エンジェルがこちらに笑いかけると、ジェイドがビクッとして怯えたように天使エンジェルを見た。

「では、頑張ってください。悪を滅ぼす者に認定された方。さようなら」

ちょっと、なんて言った? 私、悪を滅ぼすものになっちゃったの?

それはともかく、ジェイドの怖がりようが異常だから、なんとかしよう。

「大丈夫? 一回どっか座ろうか」

私の國だ。ベンチはたくさん作ったことくらい知っている。一番近いところに座らせる。

「天使エンジェル、そんなに嫌い?」

「いいえ、そういうわけでは……。いや、そうですね。どちらかといえば、苦手ですが」

まあ、天使と悪魔は真逆だし、それもわかるけど。

「昔、天使エンジェルと戦ったことがあるんです。天使は、勝手に悪魔を悪としてしまったから、いつも悪魔を狙ってるんです。一人狩れば富豪ですから」

そんな、理不盡な。悪魔は、何もしてないのに、って事?

「ずいぶん昔のことですけれど、インディゴが小さな悪魔と遊んでいた時です」

「それは、アンカさんと結婚する前? 後?」

「知っていましたか。後です。もっと言えば、なくなって三年後です」

三年後……。一年ちょっとでめたって言ってたっけ。そのあとね。

「小さな悪魔……、ああ、これも知っているんですよね。ブランシュが18のときです。買いをしていたんですね。その帰り。

二人がうっかり天使に見つかって。その天使は、大天使アークエンジェルでした。インディゴは、ブランシュを守ろうと抱きしめて走って。でも、運悪く途中で転んじゃって」

! 大天使アークエンジェル。天使エンジェルよりも強い天使。インディゴは、そんなのと當たったんだ。

「ちょうどそこに私が通りかかりまして。防魔法を思い切り張ってその場は助けました。でも、インディゴはブランシュを守るのに必死でまともに戦えないし、私にひとりではなんとかなるものではなかったんです」

その時は、もっと弱かったんだろうな。しかも、怯える小さな子供をかばいながら……。

「私の魔力もなかったし……。私が疲れて手に負えなくなった時、インディゴが……。ブランシュをかばって、目の傷を……。戦いの途中インディゴが呼んだスカーレットがそこを助けてくれたんですけどね」

その時は、怖かっただろうな。生きるか死ぬかの瀬戸際で。必死に戦って。でも、手に負えなくて。もうどうしようもなくなっちゃって。

「あの時のスカーレット、それは救世主に見えましたね……。私、そのあと気を失っちゃってあまり覚えてないんですけれど」

だから、天使が怖いんだ。じゃあ、インディゴも……。絶対に、言えないな。天使と流がある、なんて……。

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