《拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。》拝啓、王様。こんなに祝わなくても……休ませてください!

……俺が❬魔君主❭を誤って倒してしまい、対魔族戦が終わった後……

「なあ、秤?何をそんな落ち込んでるんだ?魔族に、しかもあの高位種に勝てたんだぞ?」

「いや、だって❬法王❭について聞き出せなかったし……」

ここでハッとする。❬法王❭の報をしがっているなんて神の使いとはいかなくても何かしら怪しまれるかもしれない。

しかし、神崎は怪しむ素振りなどなにもみせなかった。

「なんだお前、❬法王❭について知りたいのか?」

「なにか知ってるのか!?」

「ああ。この1ヶ月間にこの世界については學んだよ。❬法王❭は人間達のトップの人だろ?で、俺達は人間を滅ぼそうとする他種族を倒すためにこの世界に召喚されたって聞いたぞ?」

なんだって?王様はこいつらにそんな間違った……いや、自分達の利益のために利用する理由を吹き込んだのか?

それは、よくない。この世界の間違った報が常識となってに付いてしまったら取り返しがつかなくなる。もう、種族間の爭いを皆で止めるのは難しくなるだろう。

もしかしたら……神崎になら俺が神の使いだと……この世界の実態を話しても良いのかもしれない。

「なあ、神崎……。実は、俺は……」

そこで言葉が遮られる。

橘が遠くから、こちらに向かってんでいた。

「おーい!秤くーん!神崎くーん!だいじょーぶ?」

「橘!お前今までどこにいたんだ?」

橘は數ない神保有者だ。戦闘の前線にいなかったのは不自然だった。

「ごめんね……。私の能力って後方支援向けだったからずっと後ろの方にいたの」

「そうだったのか。まあ、無事なら良かったよ。なあ!秤!」

「……ん?ああ」

何故だろうか?なにかひっかかるような?

「よーし!じゃあ帰って皆で打ち上げしよー!ね?秤君!」

橘が急に近づいて來た。今までぼっちだった俺にこれは堪える……。

「そ、そうだな!」

この、橘の行によって俺の疑問はどこかに吹き飛んでしまった。

「いやー!勇者諸君!よくあの魔族の軍勢に勝利してきてくれた!さらにあの❬魔君主❭も倒してしまうなんてね!」

戦場から帰ってきた俺達は王國の城で盛大に祝われていた。

転移魔法で國に帰ってきた瞬間に凱旋パレードが始まり、城に著いたらすぐにパーティー……。正直、が持たない。

「特に、この二人はよくやってくれた!魔族の大半を二人で倒して、その上❬魔君主❭すら討伐したのだからね!皆盛大な拍手を送ってあげたまえ!」

……そう。俺は疲れているのにこんな大きなパーティーの主役の一人となってしまったのである。

「秤!お前すげーじゃん!」

「あの剣なんだよ!1ヶ月間何してたんだよ!」

「これからも頼りにしてるぜー!」

と、周りから多くの賛辭の聲が飛んできた。

しかし、あろうことかこんなに譽められる事に慣れていない俺は耐えきれずその場から逃げ出してしまった。

城のバルコニーに出て夜風に當たっていると橘が話しかけてきた。

「秤君!こんな所にいたの?皆探してたよー?」

「ん?ああ。悪かったな、橘。迷をかけちゃったな」

「べ、別に迷なんかじゃないよ!……それよりも秤君と話しかったんだよ」

「そうなのか?俺なんかと?」

「そう!秤君と!いやー、戦ってる時すごいかっこ良かったよ!本當にすごかった!魔族の大群に突っ込んだと思ったらその周りの魔族がどんどん倒れていっちゃうんだもん」

……譽められるのに耐えきれずにここに逃げてきたのにここでも譽められるとは思わなかった。しかも相手はあの、橘だ。やはり張するというか、なんというか。

「あ、ありがとう」

張して気の聞いた臺詞も言えずに返せたのはそんな一言のみだった。

「ふふっ。秤君は変わらないね。あ!そういえば王様が呼んでたよ。❬魔君主❭を倒した秤君と神崎君と話したいんだって!」

「そうなのか。じゃあ早めに向かわないとな」

「王の間で待ってるって!」

「ああ、ありがとな!橘!」

そして俺は王様の待つ王の間に向かった。

「……本當に変わらないね。秤君……」

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