(屆けッ！とどけぇぇぇっ！)

俺が放った斬撃は……

グラハムさんに、屆いた。

「ぐあっっっ！」

グラハムさんのからが吹き出す。

「よしっ！」

グラハムさんが俺から距離を取ろうとするが、その隙を逃すはずがない。

「らぁぁぁぁッ！！！」

一方的なラッシュ。相手に防や治癒をする隙すらも與えない速度。グラハムさんのに傷痕が次々に刻まれていく。

「これで……どうだッ！」

最後に全重を剣に乗せ振り下ろす。會心の手応え。グラハムさんが後ずさり、仰向けに倒れる。

「俺の……勝ちだ……」

俺が靜かに己の勝利を宣言すると、

「……いいや、まだだ……」

思わぬ方向から反論が返ってくる。

「まだ……倒れないのかよ……グラハムさん……」

どうやら自分のを神によって治癒したらしい。しかし、全ての傷を癒せた訳ではないらしくまだのいたる所から出している。

「ああ、まだ……倒れられない……この國の民……それに、王のために！」

半ば狂気じみている。そう思った。

「……『質同化・支配マテリアル・アロンダイト』！！！」

グラハムさんの剣の形狀がみるみる変化する。やがて紅の剣は、彼のを覆う紅の鎧となる。

「……元の姿が剣とはいえ神だ。この鎧のさは尋常じゃないぞ」

自らの國への國心、自らの王への忠誠心、それらだけで瀕死ので立ち向かってくるその姿勢に、もはや、畏怖すら覚えた。

……でも、こっちだってグラハムさんのそれらと同じ位の信念を持っている。もちろん、この勝負で勝利を勝ち取ってやる。

「さんざんそっちの神の能力を披してくれたんだ。こっちも神の能力を使って……あなたに勝ってやる」

そして宣言する。

「一手だ。あと一手でこの勝負に終止符を打ってみせる」

「やってみろ。ハカリ！」

そして、俺は最の鎧を裝備して構えるグラハムさんに向けて一歩、踏み出した。

……俺の使う神❬聖銀の雙剣❭には“使用者の保持魔力に応じて鋭さを増す„、という能力がある。これは自らのに存在する魔力回路(魔力が流れる道)と神が接続され神を流れる魔力が多ければその分鋭くなる、という事なのだが、その能力を利用しの魔力を一気に雙剣に流し込む事でこの雙剣は……

他の武の追隨を許さない切れ味を誇り、萬を斷絶する・・・・・・・神となる。

……一歩踏み出し、そして今持てる全ての力を込めて床を蹴る。そして一瞬にしてグラハムさんに接近する。

「らぁぁぁぁぁッ！！！」

の魔力をありったけ雙剣に流す。すると❬聖銀の雙剣❭のしい銀がよりしく輝きだした。そして橫一文字に剣を振り抜く。輝く銀の一閃が走る。この狀態の❬聖銀の雙剣❭は全てを斷つ。

もちろん、それは神とて例外ではない。

銀の一閃は紅の鎧を切り裂き……グラハムさんのにも深い傷を負わせた。

もう既にグラハムさんに戦える程の力は無かったはずなのだ。それなのにこの人は何度も立ち上がってきた。

しかし、ついに俺の放った最後の一撃でグラハムさんは倒れた。

「俺達の……勝ちだ……！」

……そう、思った矢先だった。

グラハムさんの額に紫紺に輝く魔法陣が現れたのは。

「なんだ……？これ……？」

俺が呟くと魔法陣が不快な騒音をたて始めた。だが、その數秒後に魔法陣はガラスが割れたような音と共に消えていった。

「どうした！？秤！」

神崎が駆け寄ってくる。

「い、いや……。今グラハムさんの額に魔法陣が……」

「はぁ？何を言って……ッ！？」

神崎の言葉が詰まる。それもそうだ。

今まで完全に気を失っていたはずのグラハムさんがその瞼を開いたのだから。

(……まだ……倒れないのか……！？)

背筋に冷たい汗が流れる。全のの気が引いていく。

しかし、グラハムさんの放った言葉は俺達の予想の斜め上を行っていた。

「俺は……何を……？」

「「なっ……！？」」

二人の困の聲が重なる。

「ああ、俺は……王への忠誠を……果たせたのかな……？」

グラハムさんが何かを悟ったように言葉を紡ぐ。

「何を言ってるんだ！？グラハムさん！」

神崎がぶように問う。

「ああ……お前達か……。直に俺は死ぬだろう……この怪我じゃもう治癒のしようもないからな。でも……その前にお前達に伝えておきたい事がある……」

「そんな！まだ……まだ何か手がある筈……」

「やめろ、無意味だ。……いいから、俺の言う事を黙って聞いててくれ……」

グラハムさんが自ら神崎からの救いを拒んだ。

「神崎……。話を聞こう。……なんですかグラハムさん？」

「ああ、謝するよ……。単刀直に言う。今まで俺は何者かにられていた・・・・・・。恐らく俺だけじゃないだろう。ほぼ確実に……❬法王❭は正気を失っている。頼む、彼を……救ってやってくれ」

「で、でも俺達は❬法王❭の正なんて知らないですよ！？それにっている奴も分からないってのに！」

「……そうだ。それをお前達に伝えたかった。❬法王❭の正と……裏で俺達を、この世界をっている者の名を。……❬法王❭の正は……」

その剎那。

どこからか線が放たれ、グラハムさんの下半を消し飛ばした。

「え……！？」

あまりにも唐突な事に呆然とする。

「奇襲！？どこからだ！」

「……時間切れか。奴ら・・が俺を消しに來たんだ。このままだとお前達も巻き込まれかねない。今すぐ逃げろ……」

「そんな！そんな事できるわけ……」

神崎がグラハムさんを救助しようとするが

「……いいから早く逃げろぉッ！！」

グラハムさんの一喝。彼は自分の命よりも、俺達二人の命を優先してくれたのだ。

「……神崎。逃げるぞ」

冷靜に神崎に次の行を伝える。

「でも、グラハムさんが！」

「……グラハムさんを助けるのは諦めろ」

「ふざけるな！グラハムさんを見殺しにできるわけないだろ！」

「お前はグラハムさんの思いを無駄にする気か！？彼は自分の命をよりも俺達の命を助けようとしているんだ！今！ここで！俺達も死んでしまったら、❬法王❭を倒すことも、ましてや世界を救うことだってできなくなる！俺達はなんとしても生き延びるんだ！彼の最後の願いを葉えるために！己の信念を貫くために！」

最後まで冷靜を裝う気だったのに聲を荒げてしまった。

「……分かったよ」

神崎が了承してくれる。しかしその表は苦痛に溢れていて、強く噛みしめた下からが一筋流れていた。

そして、俺達は出用の扉に向けて走った。

かくして、俺達二人と気高き鋭との闘いは終わりを迎えたのだった。