《拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。》拝啓、❬大神父❭。深い絶が。

彼……❬大神父❭はとてもじゃないが噂ほど強そうには見えなかった。

見た目は普通の老人。だが、背筋は曲がっていないし、格もしっかりとしている。

纏う雰囲気は穏やかそのもので、今だって和な笑みを浮かべている。

しかし、明らかに常人とは異なる所がある。目の辺りに包帯を巻いているのだ。恐らく目を患っているのだろう。

……この人が、元兵士で❬法王❭の関係者?にわかには信じがたい。

「えっと、俺は教會に用があってここに來た訳じゃなくてですね、あなたに聞きたい事があって來たんです。❬大神父❭さん」

「ほう?じゃあ、君は私の話を聞きたい変わり者って事かな?」

❬大神父❭はからかうように聞き返す。俺は苦笑いを浮かべた。

「そうなるんですかね?」

「そうなるのさ。で?君はこの老いぼれから何を聞きたい?君が信徒でないのなら私が君に告げる事など何もないと思うのだがね?」

❬大神父❭の表から、俺をからかうような笑みが未だ消えない。

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「俺は……あなたに常人族の長、❬法王❭の正について聞きに來たんです」

ここでようやく、❬大神父❭の顔から笑みが消えた。優しく微笑んでいた表から一転、真顔へと変わった。

「❬法王❭の正?……君はそれを私から聞いてどうする気かね。まさか、楽しいお茶會を開きたいという訳でもないだろう?」

「俺は……ある人から正気を失っている❬法王❭を救ってしいと頼まれたんです。それに……どのみち俺自に課せられた使命を達するためには❬法王❭に會わなければならないんです」

場の空気が重くなる。

「……ふむ。❬法王❭についての報が今現在の君の人生において最も重要な報だというのは分かった。

だが……無料タダで報を渡すというのは、いささか面白みに欠ける。そこで、だ。私と手合わせをして一本取れたら君に噓偽りなく❬法王❭についての報を全て教えよう。なあに、老人との軽い運と思ってくれていい。どうかな?」

彼は変わった條件を提示してきた。運するだけで❬法王❭の報を手にできるのならける他ないだろう。

「分かりました。俺が一本とればいいんですね?武を使ってでも?」

「ああ。もちろんだ。じゃあ、私が投げたコインが落ちた瞬間に始めようか」

「それでいいですよ」

俺が了承すると彼は服のポケットからコインを取り出し、空高く放り投げた。

その瞬間。目の前に居る筈の❬大神父❭のの姿が消えた。違う。正確には彼の気配が跡形もなく消滅したのだ。まるで、この世界から存在そのものが消えたかのように……。

そして、俺の脳が視界から彼が消滅したと錯覚を起こしたのだ。確かに❬大神父❭はそこに居る。居ると理解する事はできる・・・・・・・・・のだ。しかし……まるで彼が空気と同化したかのような錯覚を覚えた。

何故だか歯が噛み合わずガタガタと音をたてている。冷や汗が止まらない。冷や汗だけではない。中の震えが止まらない。

相手は目を患っていて視界は封じられているし、なにより的アドバンテージもあり、こちらが圧倒的に有利のはず。でも……それでも……俺は❬大神父❭に勝てる気がしなかった・・・・・・・・・・。

気配は無い。だがとてつもない存在じる。確かに姿は見える。だが本當に彼はそこに居るのかと問われれば即答は出來ないだろう。コインは落ちていない。つまり一歩も彼はいていないはずなのに、心の底から不安と、恐怖と、絶が込み上げてくる。

なにもかもが矛盾していると思われるかもしれない。けれどそうとしか説明できない。人智を越えた超越存在・・・・がそこに居た。無理に例えるならば炎かげろうに近い。

今、俺の目の前に居る存在は確実に今まで俺が戦ってきた誰よりも強い。正に、次元が違う。本の神を見た事のある俺が、目前にした相手を神と錯覚するほどだった。

直前までの優しい神父はもはや、この瞬間には存在しなかった。

コインはまだ、落ちていない。

まだ勝負は始まってもいない。俺は雙剣を握ってすらいない。

それなのに俺の心の中に確かにあった使命やらグラハムさんの願い、それからそれら全てを遂行しようという強い覚悟は❬大神父❭がコインを投げてからのたった一瞬で見る影もなく吹き飛ばされた。

たった一瞬で俺の存在意義そのがこの世界から吹き飛ばされ、消え去ったような気がする。

その後の記憶は無い。コインが床に落ちた音すらも聴こえなかった。そもそも、俺の心は絶に支配され、ありとあらゆる覚が消滅していた。自分だけも、音も、時間すら無くなった世界に取り殘された覚。

俺はコインが落ちる前に敗北した。

「あーあ。コインが落ちる前に気を失っちゃったよ」

私は目が見えない。しかし、常人よりも世界を視・ることはできる。

私は一人で気を失っている彼に向けて言葉を紡ぐ。

「君の事は神のお告げで聞いていたよ。秤彼方。私は神々から君を鍛え上げるように言われた。この一週間、私を倒して❬法王❭の正を暴けるよう進するといい。まあ、多分無理だろうがね」

しかし、この年素質はある。さすがに一週間では無理だがもしかしたら、いつかは私も敗れてしまうかもしれない。

「レナ?そこにいるのだろう?この年を我が家まで連れてってあげてくれないか?」

教會の外に居る修道見習いのに聲をかける。

教會の中にってきたのは白金髪プラチナブロンドの

「はあ?おじいちゃん、なんで私がこんなへなちょこの看病しなきゃならないのよ?」

「まあ、そう言うな。彼はそれでも神々の使いだ。これから強くなるさ」

「ハッ!私はそうは思えないけどね」

「あ。そうだ彼、今日から一週間我が家に泊めるからね」

「はぁぁぁぁぁぁ!!!???あり得ないんですけど!おじいちゃん!?」

ふむ。やっぱり怒られるか。

「まあ、とりあえず彼が目を覚ますまでは面倒を見てあげておくれ?」

「はぁ………………。分かったわよ……」

すると彼は魔法を使い、彼のを空気中に浮かばせた。そして、家に向かった。

誰もいなくなった教會で、私はまた一人彼……秤彼方に言葉を紡いだ。

「運命の歯車に抗え、秤彼方。世界を救えるのは君だけだ。世界の崩壊を止みてみせろ。神に選ばれた唯一の人間ならな……!」

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