《拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。》拝啓、❬大神父❭。俺、気を失いすぎでは?

❬大神父❭がコインを投げた瞬間、俺はレナに勝利するための方法を頭の中で模索していた。

まず、普通に斬りかかったら確実に負ける。だったら、どうする?

魔法を一つ一つ雙剣で斬っていく?ダメだ。❬大神父❭はレナをかなり強い魔法使いと言った。恐らく、俺よりも上手だろう。そんな相手に突っ込んだら、レナの思い通り簡単に負ける。

ならば、上手の相手を倒すには相手の不意を突くしかない。俺がグラハムさんとの戦いであえて《星帝聖域エクスフィールド》を出て油斷させたように。

(なら……自分自が不意を突かれた方法を試す!)

次の瞬間、俺は気配を、自らの存在を消した。

❬大神父❭がやったように。大気と同化するかの如く。

「え……!?」

レナが困を含んだ聲を洩らす。

そして、その直後コインが落ちた。

その瞬間に、疾走を始める。困によってレナに隙が生まれていた。その隙を見逃すはずが無い。即座にレナの後ろに回り込み、剣をレナの首筋に當てる。

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「そこまで!」

❬大神父❭の靜止の聲が響く。

「……噓でしょ?」

レナが靜かに呟く。未だに自分が負けたことを信じられないようだ。

「……殘念だけど、本當だよ」

こちらも靜かに、呟くようにして返す。

「いやぁ、凄いな。まさかレナに勝っちゃうなんて」

❬大神父❭が嘆したように言う。

無事、レナに勝利した俺はレナに向かって満面の笑みを浮かべ一つ質問を投げ掛けた。

「どう?もやしに負けた気分は?」

「~~~~~ッ!!!」

レナは顔を真っ赤にしてその場から走っていってしまった。

「まあ確かにあれだけ下に見てた相手に瞬殺されたらそりゃ恥ずかしいし、何より悔しいよね」

愉快そうに笑いながら❬大神父❭がこちらに歩いてくる。

「で、どうですか?これでも実力不足ですか?」

「ああ、もちろんさ。今のはただのまぐれだよ?一度の勝利であまり浮かれない方が良い」

その言われようにしムッとしたが

「……そうですか」

と、苦笑いで返す事しかできなかった。

「さて、次は私と手合わせ願おうか!」

「は?無理です!絶対ムリ!」

この人さっきまで俺と戦う気無かったじゃん!

「え、だってレナとの手合わせ中に君の長所、短所を見極めようとしたのに君、一瞬で片付けちゃったじゃん」

……あれはそんな意味があったのかよ!!!

そんな俺の心のびが❬大神父❭に屆くはずもなく、❬大神父❭は次々言葉を投げ掛けてくる。

「大丈夫だよ。ちゃんと手加減してあげるから」

しかし……これを拒否したら強くはなれない。特訓のしようがないのだから。

「分かりましたよ……」

俺は渋々❬大神父❭のいをけた。

「じゃあ……行くよ」

「え?」

俺が反応したその時には既に❬大神父❭は槍を手にし、接近していた。

人を貫くには十分過ぎる程の勢いを持った槍が突き出される。

「うぉっ!?」

さっきのレナとの手合わせからずっと持っていた❬聖銀の雙剣❭の一振りで咄嗟に弾く。

だが、❬大神父❭の猛攻は終わらない。むしろ加速していっている。

迫ってくる槍を避けるか、弾く事しか出來ない。このままでは押し負ける、と焦りが心に生じたその剎那。❬大神父❭の猛攻が止み、一瞬だけ隙ができた。待ちんでいた反撃のチャンスにすぐさま喰らいつく。

……それが罠だと気付いたのは一歩踏み出して、重心を前に置いた後だった。

❬大神父❭は一歩下がって俺の雙剣の間合いから逃れていた。

❬大神父❭の隙は偶然できたのではなく、❬大神父❭が作り出したもの。普段ならば、冷靜ならばこんな簡単なフェイントに引っ掛かる事はない。だが……❬大神父❭は見抜いていた。俺の剣だけではない。俺の心すらも。

焦ったが故に犯した小さなミス。踏み出した一歩は大きく踏み外し、その先にあったのは崖だった。

「やっぱり、まだまだかな」

❬大神父❭はそう軽く告げ、槍を回し俺の頭に石突の辺りをうち下ろした。

……頭に強い衝撃をけ、視界が暗転し……そのまま気を失った。

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