《拝啓、世界の神々。俺達は変わらず異世界で最強無敵に暮らしてます。》拝啓、クラスメート。の回りにはご注意を。

「おかしい……おかしい!」

生徒の一人が言った。まるであり得ないものを目の當たりにしたかの様に。

「なんなんだよ!俺達は神崎の敵かたきを取ろうとしただけなのに!」

半狂で男子生徒はぶ。

「どうしてだよ!なんで反逆者の……悪者のお前の方が強いんだよ!」

……そういえばこの生徒は特撮モノのオタクだったな。もしかしたら、以前の俺と同じく勧善懲悪の世界に行ってみたいという願があったのかもしれない。

だけど……もう、何が善で、何が悪かも分かっていないこの世界でその願は愚者の象徴とも呼べてしまうのではないだろうか?

「あぁぁ……」

既に仲間の酷い姿を見て、戦意を失くしている者も居る。

まあ、逆に怒りに燃えている生徒も何人か殘っているがここで突撃するほど頭が弱い奴はいないだろう。

「秤君!なんで……クラスメートにこんな事が出來るの!?」

細剣レイピアを持った子生徒がそう聞いてくる。

「俺は……お前らと戦う気なんて無かった。戦闘せずに上に進めれば、それで良かったのに……」

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俺は返答を続けざまに言う。

「俺との戦闘をんだのはお前らだ。相手の命を奪おうと、お前ら全員がそうんだんだ。

……そっちは俺を殺そうとしてるのに、自分達が殺されるのはおかしいなんて言うのは、それこそ『おかしい』んじゃないか」

「……!!!」

クラスメートが悔しそうな顔を浮かべ、歯をくいしばる。

もう、これ以上責める聲はないらしい。戦いも終わったしここに居続ける意味は無いだろう。

しかし……流石に、大怪我を負ったクラスメートをそのままにして立ち去るのは人としてどうかと思う。

ここでクラスメートを回復させたとしても、俺との差はもう目に見えてる訳だし反撃はしてこないのではないか。

なら問題ないと思い、《アイテムボックス》を開く。

ルナからもらった魔導に回復する奴があったような……。お、あった。

それを手の上に現化させる。

その魔導はちょうど手の平サイズの立方でまわりが半明で、その部の中心には魔力のが燈っていた。

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「たしか……《ヒール》」

その魔導に回復魔法の《ヒール》をかける。すると、中のが薄い緑に変わった。

その後に魔力を注ぎ込む。魔力を注げば注ぐほど、中のは強く、大きくなっていく。今回はかなり大量の魔力を注いだ。

この魔導は❬キューブ❭と呼ばれるで、これに魔法を掛けて割ると、そこを中心に掛けた魔法の効果を範囲指定で発できるという道だ。

即席で軽めの結界を張れる道だと考えれば分かりやすい。

これに注ぐ魔力が多いほど範囲が広く、また魔法の効果も強くなる。

まあ、実際は効果をしでも強くするため複數人の魔力を集めて使う魔導らしいが……俺の魔力量は化けじみているらしいので特に問題は無いだろう。

「ほら、使うと良い」

まだ傷を負っていないクラスメートへ魔力を限界まで注いだ❬キューブ❭を放り投げる。

「裏切り者から渡されたなんて使えるか!」

まあ、こんな風な反応を取られるのは當たり前か。なんなら俺、今この慘狀を招いた張本人だし。

だけど……

「それ使わないと、そいつら死ぬぞ」

ただ一言。怪我人に視線を向けながら、聲を出來るだけ平坦に、冷たく聞こえるように言う。

「……クソッ!」

❬キューブ❭を持っている生徒が他にクラスメートを助ける手段が無いと分かったのか魔法のが燈る立方を、手の平の上で握り潰した。

その瞬間、その生徒の足元を中心に緑の魔法陣が展開された。

ただし、その輝きは並の魔法陣のそれではない。やはり注いだ魔力量が桁違いだからだろうか?

やがて、魔法陣の中の怪我がとてつもない速度で回復を始まる。

に火傷を負っている者は時が巻き戻るかの如く、五満足でない者は欠損した部分が魔力により再構築されていっている。

銃弾がに殘っていても自で取り除かれるし、付與魔法によってかけられた呪いも勝手に解呪ディスペルされる。

「うわ、すっご……」

正直、想像以上。普通《ヒール》はここまで便利な魔法じゃない。❬キューブ❭の副効果で魔法の能力が強化されているのだろうか。

だとしたら、これを作ったルナはとんでもない腕前なのでは?

などと、心しているとクラスメートの回復が終わりつつあった。

全員の回復が終わったかと思ったその時。

クラスメート全員の額に小さめの紫紺の魔法陣が現れた。

次の瞬間にはそれら全てが不快な音を響かせた。聞いているだけで狂いそうになる不協和音。

とっさに耳を塞ぐと、次はガラスが割れたような音をたてて魔法陣が消えた。

強化された《ヒール》によって付與されていた弱化するタイプの魔法も解除されたのだろう。

そのことよりも気がかりな事がある。それは、俺がこの景を知っていること。忘れられるはずがない。

あの紫紺の魔法陣は……そしてこの景は……

俺がグラハムさんを倒した時に見た景だ。

たしか、あの時はこの魔法陣が消滅した途端にグラハムさんが正気を取り戻していた。

つまり……俺のクラスメート達もられていた、という事になる。

「❬法王❭か……?いやでも、それじゃあ辻褄が合わない」

そう。グラハムさん曰く、❬法王❭自信もこの魔法を掛けられているのだ。

神異常を起こす魔法を自らにかけるだろうか?

となると……もう、心當たりは一つしか無い。俺が敵対している、この世界を裏からっているという者達だ。

まさか、勇者達にも接してその上魔法を掛けていくとは。やはり油斷ならない相手だ。

クラスメート達は全員失神している。神異常系の魔法を突然解除されるとこうなるらしい。

そうなると、いよいよグラハムさんの異常さが良く分かる。あの人すぐに気を取り戻してたし。

「今のに行くか」

クラスメートが気を失っている今のに行ってしまった方が良いだろう。

足を転移魔法陣の方に向ける。

しかし転移魔法陣を見ると、おかしな點に気づいた。魔力のが燈っていない。

「なんでだ?」

この部屋にって來た時は確かにっていたのだが。

「そこまでだ!」

背後から聲がかかる。そちらに視線を向けると聲の主は宮廷魔導士達と、グラハムさんの部下である鋭隊であった。

「……マジかよ」

もはや、苦笑いを浮かべるしかない。

きっとあの魔導士達が転移魔法を消したのだろう。

というか、かなりまずい狀況では?この人達、実力と実戦経験が勇者達と比べにならなかったはず。

連攜の取り方が既に違う。……どうしたものか。

「お前か……グラハム隊長を殺したというのは!!」

またもや、敵討ちの予

俺、んな所から恨みを買いすぎでは?

ただ、グラハムさんの事に関しては実際致命傷とも言える傷を與えたのは俺だ。

「別にその誤解を解く気はない。実際グラハムさんを斬ったのは俺だ」

「ふっ。無駄な弁明はしないとは潔い。そこだけは譽めてやろう」

鋭隊の一人が剣の切っ先をこちらに向けた。 それが合図だったのか魔導士達が魔法の詠唱を始める。

さっきの魔眼の力は使えない。あの力を連続で使うと、魔眼が焼ききれて確実に失明する。

これこそ、絶絶命。相手は手練れの魔法使い達に戦士數人。しかも連攜は抜群。

かなりムズくね?

だがもう逃げ道は無い。この人達を相手取るしかないのか。

意を決して、雙剣を握り直したその時だった。俺の目の前に、二つの転移魔法陣が現れたのは。

転移魔法陣の上に二人、人が現れる。

その二人とは……。

レナとルナだった。

「は~あ。結局あんたやらかすじゃないの」

「秤君、助けに來ちゃいました」

二人とも、この狀況にも関わらず笑みを浮かべていた。

「なんで二人とも……?」

驚きで、目を丸くする。

「それよりも!ほら転移魔法陣、復活させといたわよ」

「え?」

後ろを振り返ってみると、さっきまで魔力のを失っていた魔力陣が復活していた。

「い、いつの間に?」

「いいから、行ってください。秤君」

「でも!」

さっきの橘の笑顔がフラッシュバックする。ここで逃げたら、ただ後悔を繰り返すだけじゃないのか。

「だーかーらー!私達は良いの!どうせ攻撃すらされないんだから!」

「え?それってどういう……」

向こうを見ると、向こうもまた今の俺と同じく顔を驚愕に染めていた。

「レナ第一王様に、ルナ第二王様!?なぜその男を庇うのです!?」

ん????

唐突にもたらされた報に一瞬、反応が遅れる。

「えぇっ!?!?レナとルナが王!?」

「そういうこと。だから前に言ったでしょ?家名はワケアリで名乗れないって」

「今まで隠しててごめんなさい。実は私達、❬法王❭の実の娘なんです」

まさかの事実。この迫した狀況にも関わらず、俺はなんともまあ間抜けな顔をさらしているだろう。

「あー、もう!グズグズすんなっ!」

「うわっ!」

レナが無詠唱で放った衝撃魔法で奧の転移魔法陣まで吹き飛ばされた。

俺が魔法陣にった瞬間に魔法陣が起した。もはや進む以外に選択肢はない。

「レナ!ルナ!ありがとう!」

伝えられたのは、そのただ一言のみだった。

次の瞬間に視界が白く染まった。

一方、その頃。

「やあ、久しぶりだね。❬教皇❭さん」

目を包帯で覆った初老の神父……❬大神父❭が、荘厳な禮拝堂でもう一人の聖者に対し話しかけた所であった。

「よくもまあ、ここに軽々しく顔を出せるものだな。この神父もどきが」

今、舊ふるき王どうしの戦いが開かれようとしていた。

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