《能無し刻印使いの最強魔〜とある魔師は來世の世界を哀れみ生きる〜》EP.4 魔師は憐れむ

そこから2時間、集中力が続くだけ本を読み漁った。そこで分かったことが2つ。

1つ目、俺の星寶の刻印について。

魔導書に書いてあったことは以下の三つ。

・何の魔も覚えられない

・『星寶魔』という汎用のとても低い魔が存在する

・1億年に一人生れる能無し

と、言うことであった。そう、まだ刻印が下に見られるだけなら阿呆共に再認知させればいい、だが問題はもう1つ目だ。

人類はいつしか『魔』から『魔法』と言うものに変化した。それによって『魔法の詠唱』が必要となりそれを唱える事で作する、という仕組みらしいが、全く以て論外だ。魔なら詠唱なんてものを必要とせずに作するが、魔法の場合は一言一句逃さず読み上げなければ作しない。

例えば俺が今読んでいるこの本が典型的な見本だ。

長ったらしい詠唱の文句が書かれその下に解説やら理論やらが書いてある。だがその解説や理論さえも的をていない薄っぺらいものだ。このまま作したら暴発する危険もある。

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それにここに書かれてある魔法は転生前の年代では息をするように使われていたものばかりで、日常生活で子供が遊びに使う程度の魔法だ。それを「絶大な」とか「尋常ならざる」とか誇張して書かれている。

結果的に何が言いたいか、問題のもう1つ目、それは世界の魔法が大きく衰退してしまった、ということだ。

「はぁ.............マジか」

はっきり言ってこの書斎にあるのはせいぜい転生前の世界の宮廷魔道士が使うくらいの魔といい勝負だ。だがこの程度じゃ魔獣なんてものは倒せない。よほど近接に秀でた者かよほど魔力と魔法作に手馴れた者くらいしか。

正直読む気を無くした、これ以上無駄な知識を頭にれるのは時間の無駄だろう。

俺は大きく背びをして窓を開けて換気する。と、しだけ魔法を使ってみたくなる気にはなっていたので、初級魔法を使ってみることに。

「我が道の篝火となれ《燈火ライト》」

と、本に載っていた構文通りに詠唱を紡ぐと、あら不思議、掌にリンゴ一個分くらいの小さな火が出てきた。..........正直、中二病臭くて吐きそうになった。ついでに恥ずかしくて死にそうになった。今まで通り魔法より魔を使った方がよほど実用的で能がいい。第一に詠唱中に攻撃されればそれで終わりだろう、近接戦闘の奴にどうやって勝つつもりなのか。

そのまま時計を見てみると11時半、1階からいい匂いがしたので降りてみると、レオが臺所で料理をしていた。

「ああ、クルシュ。もうすぐできるからな」

「レオ、変なもの食べさせないでくれよ?」

「私、君にそこまで信用なかったか?」

「いや、見た目良くても味が最悪という前例があってだな.........」

「安心しろ、仮にも一人暮らしだ。自炊のくらい覚えている」

と、どうやらレオに火を付けてしまったようなので邪魔しないように再度2階にあがる。もう書籍は見たくないのでもうひとつの部屋のドアを開けた。そこは、1つの部屋、おそらくレオの寢室だろう。クローゼットに機に、ベッドに、日常生活をする上で必要なものは揃っている。と、そこにドレッサーもあった。騎士も化粧のひとつはするのかと心して俺は鏡面の前に立った。

「.........うん?待てよ、この顔は................」

違和に気づいた。鏡面を経て俺の顔はそこに映るが、それは10歳の俺の顔ではなかった。正確にするならば8歳と4ヶ月の顔だった。..........どうやら俺は転生に浮かれて々とミスをしてしまったらしい。まぁく還れたことは文句はないからこのままでいいか。

「クルシュ、出來たぞ!」

「分かった」

1階から呼ばれた聲に俺は階段を降りて向かった。

今日の晝食はアサリとホタテの海鮮スープパスタ、に似たもの。まぁ今の食事が2暦も離れた時代のものと一致するわけもないと思うが、とりあえず口に運ぶ。

「どうだ?」

「悪くない。想像以上だ」

「フフ、ありがとう。まだあるからどんどん食べるといい」

言葉に甘えて2回は完食した。どうやら胃袋は転生前のままらしい、というよりもただ単に腹が減りすぎていただけなのかもしれないが。

「なるほど、俺はこれからこんな料理を毎日食べられるわけか」

「年の割に世辭が上手いな」

「いいや、世辭じゃなくて本心だ。本當に味かったしな」

「君のような子供達は育ち盛りだからな、どんどん食べるといい」

「ところで一つ気になったんだがレオは今何歳なんだ?」

「私か?私は今20歳だ。そういえばクルシュの歳を聞いてなかったな、何歳なんだ?」

さっき見た自分の姿からしても10歳と言うにはやはりすぎる。ここはやはり見た目に年も合わせる方がいいだろう。

「8だ」

「そうか、まだまだこれからだな」

「レオ、これからどうするんだ?」

「そうだな、............暖爐の薪もなくなってきたし、向こうの森に丸太を切りに行くか」

「俺も行っていいか?」

「構わないが..........來るなら手伝うんだぞ?」

「ああ、分かってる」

言い方が子供をあやすそれだ。まぁ無理もない、俺は事実子供なんだから。

俺はレオと無駄に大きい丸太が群生する森へと足を運んでいた。俺がついてきたのには理由がある。レオので丸太を切るのはとても難しい、それどころか人男の、筋が十分に発達した男でも丸太を切る、という事はかなりの重労働だろう。そこで、絶対に魔法を使う、1度その魔法がどのように使われているのかを見てみたかったからだ。先程自分で使っていて恥ずかしくて死にそうになったが、第三者目線からするとどのように移るのか、し興味があった。

「よし、じゃあ私が丸太を薪に変えるから地面に落ちたものを拾ってくれ」

「分かった」

俺はし離れてレオの行を観察する。丸太を正面に見據えたレオは左手を水平に丸太に向かって上げた。

「風よ、我が意思に従い刃と化せ、風刃ウィンドカッター」

と、振り上げた腕を丸太に向かって振り下ろすと、風が発生しそのまま丸太を元から両斷した。倒れてきた丸太を再度腕を振って発生した風の刃が切り刻み薪となってい地面に落ちた。魔力コントロールは悪くない、だが如何せん痛い詠唱があるため評価しずらい。

「終わったぞ」

「ああ、ありがとう。今の魔法を見るのは初めてか?」

「初めてだな」

「そうか、今の魔法は...........」

どうでもいいことを教えられながらも著々と丸太を薪に変えて行った。..............はぁ、ここまで魔法が衰退していたなんて思わなかった。さらに痛い詠唱まで付いて、どれだけ不便なのか。この世界を生きるためには、々骨が折れそうだ。

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