《自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十數年酷使したはいつのまにか最強になっていたようです〜》番外編②:王國と王①
「なぁ、あの噂知ってるか?」
「あぁ知ってるぜ。ザブラ達が魔王を倒してそのまま相討ちになったんだろ?」
「いやどうやらそれは間違ってるらしいんだよ」
「は?まさか!ザブラ達ぐらい強い奴なんていねーぞ?」
「それがな、あの子持ちおっさんーー」
◇
ダブアン王國。
ここは東の魔族領と違い、人間ばかりが暮らしている。
城を中心に周りに點在する街は、商業や冒険者などにより栄えていた。
大陸のほぼ真ん中に構えている堅固な城は、建築當時から落とされた事はない。
人間たちの技の結晶であり、魔法による結界も展開されている。
その城では王が王族や貴族を迎え會議に勤しんでいた。
「本當に見捨てるのですか」
王國の第三王、サラ・ワードクリフが口を開いた。
今の會議容は周辺にある街のスタンピートに対してだ。
ダンジョンから溢れ出た魔が街を襲うと報告が來ていた。
しかし國としてその場所まで兵を派遣するとなると、莫大な食料と維持費用がかかる。
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幸いにも王都には影響が出ない場所にあるため、國としてその街を見捨てようとしていた。
「サラ様。見捨てるのではなく、戦略的で合理的な判斷ですぞ」
貴族の最大派閥を持つ男が口を開いた。
サラにはこの男の口から出る言葉は信用していない。
どうせ自分の懐の事だけを考えているのだろうと。
「これ以上に素晴らしい案があるのでしたら、ぜひご教授願いたいものですねぇ?」
さらに男がいやらしい笑みを浮かべてサラを追撃した。
確かに今の現狀を考えれば兵を派遣せず違う街で撃退するのがいいだろう。
だがそれではーー
「民を見捨てるおつもりですか」
「民には避難勧告も出しておりますし、何より冒険者がいますので」
男がそう発すると、貴族から笑いがれた。
ザブラのイメージが強い冒険者。
野蠻で暴な薄汚い冒険者といったイメージがついている。
そのザブラも魔王討伐に向かってからは音沙汰がない。
元々王國でも問題ばかり起こしていたパーティだ。
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もしこの場にいたら、恐ろしい金額を吹っかけられていたかもしれない。
「まぁ冒険者もしは役に立ちましょうぞ」
「餌になって増えたら困りますけどなぁ」
「はっはっは!それならまた別の冒険者を使えばよいのですぞ」
貴族たちが冒険者の話で盛り上がる。
元々冒険者に良くないイメージしかないので、使い捨ての駒ぐらいにしか思っていないのだろう。
ザブラ達を追い出すように王へ詰め寄ったのも彼らだ。
さらに襲われる街は王族の管理する領土。
心底どうでもいいのだろう。
「それで、このままでよろしいですね?」
「ぐっ……はい……」
自分にはなんて力が無いのだろうか。
敵を滅ぼす力も、相手を屈服させるカードもない。
自の父である王に目線を送るが、傀儡となった王からは何もじない。
第一王子、第二王子もまったく同じだ。
「では。スタンピートが周辺に來ないよう警戒するように」
王の一言で會議は終了を迎えた。
サラが部屋に戻ると、ベットの上へを投げ出した。
そして手足をバタバタとかす。
完全に敗北だ。
王は貴族の言いなり、貴族は力の強さを誇示。
これでは民を守ることなど出來ない。
「あのデブ野郎め……私をなんだと思って……!」
より高くあげた拳をふかふかのベットに叩きつける。
ぽぷん!と可い音を立てているが、サラの心は可くない。
あの貴族どもをどうやって黙らせるかを考え続けていた。
しかし考えても解決策はない。
もし冒険者がスタンピートを鎮圧でもすれば多評価は変わるかもしれないが、魔の量を考えても不可能だろう。
ザブラがいれば……あの恐ろしく強い冒険者がいれば狀況は変わったかもしれない。
だが、魔王討伐に出たっきり姿を見たものはいない。
むしろ死んだ噂まで流れているありさまだ。
「私にもっと力があればなぁ……」
「お嬢様、考えすぎはよくありませんぞ」
「じぃ!」
そこにドアから1人の老紳士がってきた。
じぃと呼ばれた男は慣れた手つきで紅茶をれている。
砂糖は2つ。し甘い方が頭も回るだろう。
「私は民を守りたいのです。でもーー」
「事を焦ってはいけません。お嬢様はその才能をしっかり使えるタイミングまで我慢するのです」
じぃから差し出された紅茶を一口啜る。
鼻を通る心地よい香りと舌を転がる甘みがサラの心を癒していく。
サラはじぃの淹れた紅茶が一番好きだ。
この國では珍しいぐらいにサラは頭がいい。
いや、元々はいつもの王族と変わらないぐらい踏ん反り返ったわがまま娘であったが、馬車襲撃事件以來人が変わった。
目の前で人が死に、自分のわがままだけで民の人生を終わらせた事を悔やんでいた。
それは貴族の間でも気付かれていた。
今まで通りりやすい王とは違い、自分の意見や考えを述べてくる。
バカであればあるほどりやすかったが、しやりにくそうだ。
暗殺まではいかないが、サラを會議から追い出そうとするきもある。
じぃはそれを心配していた。
「私もまだまだなんですね。もっとこう……しっかり地力をつけないと」
「お嬢様はまだお若いのです。じぃも出來る限り力になりますぞ」
「……ふふっ。ありがと」
事態は急変した。
スタンピートは予定よりも遅く街を襲撃するスピードで向かってきているらしい。
それなら兵が間に合いそうなため、サラはもう一度王に派兵を進言していた時だ。
貴族達は「やれやれ、またか」といった反応を示している。
王も遠く離れた街には興味もないのか、あまり乗り気ではない。
むしろ実の娘を厄介扱いしているような顔だ。
最低な國。
そうサラは思ってしまった。
それと同時に、自分がこの國を変えたいとも思った。
だがそれは葉わないかもしれない。
「ならばサラ様自ら兵を率いてくればよろしいのでは?」
「なっ……」
大貴族のデブがまた橫槍をれてきた。
しかもそれに同調するように周りの貴族も頷いている。
王へ振り返ると、し悩むような顔をしていた。
サラは兵を率いた事などない。
魔とはいえ、力と力がぶつかる戦爭だ。
自分の指揮で人が死ぬのかもしれない。
それにはし恐怖を覚えてしまった。
そして王の脳裏には、娘を戦場に出す利點と他國との政略結婚が天秤にかかっている。
どんなに國が強くても、同盟國としてあれば尚更いい。
そして隣國とは第二王子と第四王が婚姻を結んでいる。
つまりサラは必要なくなっていた。
一度隣國へ向かわせたが、橫暴な振る舞いと心ここに在らずといった対応で破斷し、仕方なく王都へ置いている。
それなら口うるさく貴族からもいいイメージがないサラは必要ないのではないか、と。
「ではーー」
「い、いいでしょう!もし私が鎮圧出來たら、二度と私に逆らわないと約束してください」
王が口を開いた瞬間にサラが被せてきた。
その顔はし興しているのか赤く染まっている。
貴族達からは下卑た笑い聲が微かに上がっていた。
「ふん。まぁそれは考えるとしましょうか。では今から兵をーー」
「いえ、必ず約束してください」
大貴族のデブにサラが詰め寄る。
不可能に近い遠征討伐。だがここで言質を取っておけば、奇跡が起きた時に有利になる。
一度口にしてしまった手前、引けなくもなっていた。
大貴族のデブはサラの迫力にし圧倒された。
もう20歳ぐらいになる第三王は、そのらしいを持ちしい顔をしている。
そんなに詰め寄られては目のやり場にも困るのだろう。
「い、いいでしょう。萬が一サラ様が鎮圧されましたら、私からは何も申しません」
「……言質は取りましたからね」
サラはそれだけを言うと部屋から出ていった。
これからすぐに準備をして向かわなければならない。
兵士も1000、いや3000はしい所だ。
総力戦になり、でを洗う戦いになるだろう。
サラの後ろを心配そうな顔をしながらじぃが付いていく。
サラがいなくなった後の會議室。
王達はすでに部屋を出て、殘されたのは一部の貴族達だけ。
そこに大貴族のデブもいた。
「いいのか?あんな約束をして」
しヒョロイの男がデブに話しかけた。
彼も大貴族の一員であり、デブとも格差はほとんどない。
そして話しかけられたデブが顔を歪めながら口を開いた。
「スタンピートは鎮圧不可能だ。それに向こうがあんな約束をしてきたのだ。鎮圧できなければ、今度はあの煩い口を閉じるいい機會でもある」
そこで何かを思い出すような顔をするデブ。
いや、脳にはサラを凌辱する絵面が浮かんでいた。
「そうか。スタンピートのゴタゴタと同時に彼を攫うのもいいだろうな」
「……ほう。それならうちの兵隊も部隊にれておくか」
「そ、それなら吾輩のぶぶぶ部隊も!!」
何人かの貴族が聲を上げる。
あんな妖艶なを持ったを攫い、貴族で回すのが楽しみなようだ。
バレれば死刑になるかもしれない。
だがスタンピートだ。
大量の魔で飲み込まれれば行方不明で片付けられる。
萬が一バレたとしても、それまでの間に神を破壊しておけばいい。
嫌がる泣きぶ姿が見れなくなるのは殘念だが、バレるよりはマシだ。
それにバレるような監査がるときには、必ずデブに連絡が來るようになっている。
「さっそく手配しないとな。スタンピートとは……まったく素晴らしいものだ」
その場にいた貴族全員の顔が下卑た笑いを浮かべていた。
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