《自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十數年酷使したはいつのまにか最強になっていたようです〜》番外編②:王國と王⑥
約束の日。
サラはその場所に向かっていた。
城からし離れた場所の、王都にある古屋。
念のため護衛を1人つけて向かう。
誰にも知られたくないと言われているので、必要最低限だけ。
しかし會う相手は第1王子だ。
本來なら護衛すらいらないのかもしれない。
しかし道中で何が起きるかわからない。
もしかすると、あのデブが刺客を差し向けてくる可能もある。
念には念をれて。
サラは警戒しながら古屋まで向かっていた。
指定された場所に著くと、王子が出迎えてくれた。
周りをキョロキョロと見て誰もいないか確認している。
誰にも見つからないように2人は家の中へとった。
サラはし気になっていることがあった。
それは王子の行だ。
前回部屋まで行った後、しサラに対してよそよそしくなっている。
今の周りを確認する仕草もそうだ。
しオーバーリアクションな気もする。
古家は薄暗く、窓が1箇所だけある廃家のようだ。
り口からすでに部屋へ繋がっている。
部屋の真ん中に簡単な木椅子が置いてあり、2人してそこに座った。
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暗いせいか、周りを見ても何が置いてあるかあまりよく見えない。
サラが気にするように周りを見ていると、王子が口を開いた。
「さてと。まずはサラの話を聞きたい」
「お兄様。貴族達を一緒に倒しましょう」
「あぁ……それについての話なんだけどさ」
王子に話を振るサラ。
だが部屋に行った時の目と違う。
話をはぐらかされるのだ。
むしろ大貴族に取りって、自分達の暮らしを充実させたいとも。
何かおかしい。
サラは話していて疑念が生まれてきた。
王子が言うことはまるで貴族と同じ。
自分達がかになれば國民も喜ぶ。
そしてもっと國をよくしようとまで言われた。
貴族達が國を裏からっているのは知っている筈だ。
それなら王族がしっかりしなければ國ごと乗っ取られてしまうかもしれない。
王子の矛盾を突いてもやはりはぐらかされる。
サラと王子の話し合いは平行線になっていった。
王子は味方のはずだ。
でなければあんな手紙を寄越す訳がない。
しかし目の前の王子は信じられないことばかり言っている。
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なぜここまで貴族の肩を持つのか。
それはすぐにわかることになった。
「もういいでしょう」
サラと王子の會話に聲がかけられた。
いつの間にか……いやずっと前から部屋にいて気配を消していたのだろうか。
薄暗い部屋を隅々まで調べなかったサラの落ち度だ。
その聲の持ち主は大貴族のデブ。
サラ達の近くに歩いてきた。
「彼は協力する気はありません。殘念ですがーー」
「待ってくれ。頼む……サラを殺さないでくれ……」
サラはその瞬間理解した。
第1王子とデブはグルだったのだ。
ハメられた。王子は最初から貴族の報を渡す気はなかったのだ。
城部の人間も何人か息がかかっているとは知っていたが、まさか王子まで取り込まれているとは思っていなかった。
これでは第2王子も、下手したら國王まで……。
サラは嫌な汗をかいた。
デブと王子が何か話しているが、それは聞こえてこない。
脳が思考を優先し、言葉を理解していないのだ。
いや、一つだけ理解していた。
王子の放った言葉だ。
そしてここでサラの気が変わらなければーー
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「私を……殺すのですか……」
「これも國の為ですから」
「噓つき。自分のためでしょ?」
一杯言葉を返すが、その聲は震えている。
気付くとその部屋にもう2人いるのがわかった。
師団長を殺した犯人達だろう。
腰のあたりに短剣がしまわれている。
その目はギラギラとしており、命令があれば誰でも殺すような目だ。
これでは行者と護衛は貴族に買収されているのだろう。
この場所で話し合うことも伝わっていた。
そして……サラは殺され、行方不明として扱われる。
王都で事件にはなるが、そこは貴族がみ消しに來るだろう。
勝手に犯人をでっち上げて。
「王子。これは必要な犠牲なのです。殘念ですが、サラ様は私たちと分かりあえません」
デブが作ったような聲で王子に話しかける。
「気持ち悪い」ーーサラは思った言葉を口にしてしまった。
その聲がデブに聞こえたのだろう。
デブがサラを思いっきり毆った。
「言葉に気をつけたまえ。君の生死は私が握っているのだ」
「…………」
「さて、もう一度だけ言おう。我々に協力ししなさい。そうすれば死ぬ事はない」
「誰が……私腹をやすだけの豚に従うものですか!」
サラが睨みつける。
出口は男に抑えられ、窓にももう1人。
逃げる隙間は見當たらない。
王子は椅子に座ったまま下を向いている。
豚と言われたデブがサラを睨みつけた。
「豚……ですか。私に向かってそれを言った人間は生きていませんよ」
「ふん。言葉を喋る豚なんてとっとと出荷されればいいのよ」
「……殺せ」
デブがそう言うと、男達が短剣を抜きサラに近づいて行く。
ジリジリと間合いを詰められる。
窓とドアには近付けさせないように。
だが、ドアの近くにいた男が橫に吹き飛んだ。
「サラ!逃げろ!」
「お兄様!!」
王子が男に飛びついたのだ。
いくら貴族に肩れされてるとはいえ、実の妹が殺されるところは見たくない。
咄嗟にしたら行だ。
橫から當たりされた男が一瞬ふらつく。
「クソガキが!」
「ぐあっ!」
しかしすぐに男が王子を剝がして蹴り飛ばす。
王子はサラにぶつかり2人して転んでしまった。
もう逃げ道はない。
王子がサラを守るように立ちふさがる。
そこへデブがゆっくりと近付いてきた。
「こっちとしては……まぁ第2王子がいるからいいでしょう。2人とも消しなさい」
デブが男達に命令する。
短剣を持った男達が王子とサラを殺そうと近付いてきた。
絶絶命。
王子はサラを守ろうと睨み続けている。
「いやぁ、若い芽は摘むんじゃなくて育てるもんだろ?」
その時、ドアが開いて男の聲がした。
この場所は王都でも外れの場所。
人など滅多に來ない筈だ。
その聲の主は軽いじで聲をかけてきた。
デブがゆっくりとそちらの方へ向くと、1人の男と小さいの子がいる。
短剣を持った男達も、ドアの前にいた男に注目した。
「ケイドー。あの人たち悪い人?」
「そうだな。すっごく悪い人だ」
まるで小さいの子に何かを言い聞かせるような言い方だ。
その聲に瞑っていた目を開けるサラ。
2度ならず3度目まで……。
「ちっ。先にあいつらを殺せ」
短剣を持った男がケイドを警戒するように構える。
王子とサラはいつでも殺せると判斷したのだろう。
デブは王子達が逃げないように監視するつもりだ。
ケイドを見ていた目線を外し、王子達を見る。
その瞬間男達がケイドへ飛びかかる音がした。
デブは王子達を見ると、そこにはの子がいた。
おかしい。
このの子は先程向こう側にいた筈だ。
だが今は王子のさらに前で両手を広げている。
「おじさん悪い人なんでしょ?ダメだよ!」
「リムちゃん!!」
「なんだこのガキーー」
デブがリムをどかそうと手をばす。
サラが危険を発しようと聲を出したが、すぐに杞憂となった。
「おい」
「えっ?」
次の瞬間デブが家の壁に叩きつけられる。
床には襲いかかったであろう男が全員びていた。
ほんのわずかな間に全員だ。
「き、貴様ぁぁぁ!私を誰だと思っている!大貴族頭取である『デヴリス・タン・ファルサージ』だぞ!」
デブの脂肪で衝撃が吸収されたのか。
ケイドの一撃を食らって気絶しないとは、かなりのタフだ。
しかし頭から壁に突っ込んだのだろう。
若干流が見える。
「いや、お前なんか知らねーー」
「死罪だ!貴様は大貴族である私を毆った事を、後悔しながら死刑とーー」
「……めんどくせぇな」
ケイドがデブに近付いていく。
その間も必死に聲を荒げながらデブが汚い言葉でケイドを罵り続けた。
その姿に恐怖を覚えたのか、小さく「ひっ」と聲を出す。
しかしデブを助けようとする人間はいない。
「ママに教わらなかったのか?男はに優しくしなければいけないと」
ケイドが拳骨を作り、大きく息を吹きかけた。
デブが必死にびている男に聲をかけるがピクリともしない。
「ま、まて!死罪は回避させてやろう!だ、だからその拳をーー」
「しっかり反省……するんだな!!」
バゴッ!!
「ブヒッ!!」
ケイドの拳がデブの頭に振り下ろされる。
デブの今は勢いよく床に叩きつけられ、そのままかなくなった。
その姿に王子の目が丸くなる。
サラは……うっとり顔だ。
「ケイド様!!」
「おっと。まったく、お嬢さんはトラブルに巻き込まれやすいな」
抱きついてきたサラを剝がし、何度か頭をポンポンと叩く。
リムがし怖い顔で睨んでいるのは気のせいか。
正気を取り戻した王子がケイドにお禮を言った。
「助けていただき、ありがとうございます」
「なぁに。たまたまだよ」
ケイドが手際よくびている人間を縛って行く。
予知夢で見たのはサラが殺される瞬間だ。
王都、廃家ぐらいしかヒントはなかったが気よく探して場所を特定した。
そしてサラ達が來るのを待ち続けていたのだ。
これで最悪な予知夢は回避。
あとはサラに任せておけばいいだろう。
「サラ……すまなかった……」
王子が下を向きながら言葉を発した。
今まで自分がして來たこと、されたこと。
今回の件も貴族に流したのは自分だ。
許してしいわけではない。
むしろ許されない行為だろう。
実の妹を命の危機に追い込む。
兄としても最低だとわかり、その言葉が自然と出て來た。
「……でもそれのおかげで貴族達は一掃できますから」
「……サラ」
「でも自分自が犯して來たことは、しっかりと拭ってください」
サラも兄が染まっているとは考えたくなかった。
しかし実際は染まっていたのだ。
デブのことばからしても、第2王子も同じだろう。
サラは貴族を一掃するときに、にも被害が出るだろうと予測していた。
サラは改めてケイドにお禮を言った。
そしてもう一度、自分の専屬の騎士になってしいとも。
ケイドには々と話をしてある。
今回助けてくれたのだって偶然ではないだろう。
しかしケイドは首を縦に振らなかった。
自分は國のことを考えられるほど量はない。
リムを幸せにすることでいっぱいいっぱいなんだ、と。
その答えが予想通りだったのか、サラは寂しいを隠して笑顔を作る。
ケイドが馬車に捉えた人を詰め込んだ。
行者と護衛を脅し、帰路へ著く。
ケイドと別れるとき、ケイドからサラに提案があった。
「お嬢さん、何かあったらいつでも呼んでくれな」
「ふふっ。それでしたらあの街に使者を住まわせないとですね」
「王都からか?田舎すぎてし可哀想だな」
2人して笑い合う。
ケイドがサラを助けたかったのは本心からだ。
決して下心があったわけでない。
自分の関わった人間を助けたい気持ちが予知夢を見せたのだろう。
そしてもう一つの予知夢を思い出したケイドが、去りゆく馬車に聲をかけた。
「サラ!いい國を作ってくれよな!」
「……はい!」
◇
後日。
大貴族は王族殺害未遂の罪で処刑される。
その時に々と王族や他の貴族との繋がりなどが出てきた。
芋づる式に不正が発覚し、貴族達もどんどん処分されていく。
さらには第1王子・第2王子共に失腳し、王位継承権は放棄された。
國王はそのショックから寢込んでしまい、一時的に國のTOPがいなくなる事態に。
國王は良くも悪くも何も知らなかった。
しかしすぐに次の國王が誕生した。
サラ・ワードクリフ。
スタンピート事件や、貴族達の汚職などを一掃した人。
國民からも信用が厚く、王族であることもあり即位。
すぐに他國への通達と王位継承式も執り行われた。
彼の政策は、今まで苦しかった國民一人一人と向き合っていく。
もちろん不可能である難題も出てくるが、彼は諦めることをしなかった。
類稀なる貌と明晰な頭脳を持ち合わせた國王サラ。
彼が危機に瀕すると、何処からともなく救援が現れる。
その人はサラを助け、國を導く英雄として扱われた。
だが誰も正を知らない。
一度側近が英雄の正を國王に聞いた事がある。
その時は「私の王子様よ」とはぐらかされたそうだ。
彼は生涯伴を伴うことはなく、國中から集めた有能な人材育に力を込めた。
そして一番信頼できる人に王位を継承してこの世を去っていった。
英雄の噂もあり、葉わぬにずっとを焦がし続けたとも言われている。
ーー偉大なる國王
       『サラ・ワードクリフの生涯』より抜粋。
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