《私は綺麗じゃありません。》

「そう」

をここまで卑屈にさせたあの國に対する怒りで思った以上に低くなった聲に心で舌打ちしながら、笑みを深める。

「貴は今、何をやりたい?してほしい?俺ができるのは、それを手助けする事くらいで、それなのに貴が卑屈になっていては意味がない。國の飼い犬になるのなら構わないが、そんな貴は助けるに値しない。全力で抗ってみて。いつかの貴の様に」

「っ!?」

弾かれたように顔を上げ、朝焼けの様な瞳を見開く。

「何をしてほしい?」

最後の一押し。これが駄目なら諦めようと思いつつも質問を重ねる。

この時、何故か彼がこの手を取るような確証のない自だけがあった。

「私に、剣を一本下さい。鈍らで良いので、それだけあればのし上がれます」

はそう言って白い。しかし剣だこのある武人の手をしっかりと重ねて微笑む。

昔見た、あの微笑みとは重ならない。心から溢れたような微笑みに、あの頃重ならなかった手のに、心が確かに震えるのをじる。

「用意されなくとも、貴方の婚約者に著くに相応しい位も、この國での居場所も、剣一本で手にれてみせます。リドル様」

「國でも落とすか?」

「いえ、売り込みをするだけです」

重ねた手をしっかりと握り、視線をわす。

悲しい『イロ』が無くなった訳ではないが、希の『イロ』がしでも現れたのはいい傾向だ。

「名前は?」

「…アザレア…です」

し躊躇したあと、消えそうな聲で呟く様に答える。

「よろしくお願いします。アザレア」

ほんの一時、彼は俺の服に顔を埋めていた。

✢✢✢✢✢

ネニュファールの王宮で、ガシャンとティーカップの割れる音が響く。

「あいつ!まだ帰ってこないのか!バケモノの癖に俺に使ってもらった恩も忘れて、いったい何処ほっつき歩いてんだ!」

つい先日のパーティーで國外追放にした元婚約者に対し毒を吐きながら、革張りの椅子へドカリと腰掛ける。

『殿下!助けて下さい!隣國との國境沿いに兵が集まりつつあります!もうこれは、『英雄』の貴方様にお任せするしか無いのです!また數年前の様に追い払って下さい!』

そう言って大臣が泣きついてきたのは三日ほど前のこと。傍らにいたしいに「すごいわ!」的なことを言われ、調子に乗って承諾したは良いものの、あのバケモノが居ないのはどうも心許ない。あの圧倒的戦力はアイツの唯一の取り柄とも言えるのに、重要な時に帰ってこないとは何事かと思いつつも、兵を使い潰せばいいとも考えていた。

「殿下!あのですね、私、殿下の瞳とお揃いのアクセサリーがしいです!それがあれば、ずっと殿下と居られる気がして…駄目ですか?」

執務室に飛び込んで來た可らしい人の可らしいおねだりに笑みを浮かべ侍従を呼ぶ為の鈴を鳴らす。

「すぐに最高級のものを用意させよう」

「ありがとう座います!殿下!」

兎のように可らしく飛び跳ねながら喜ぶ人をでるのに夢中な彼は気付いていなかった。國庫の狀態も。彼の策略も。

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