められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》1・召喚

寢起きのような心地よさとしぼやけた覚。

優希はゆっくりとを起こし、霞む視界が平常に戻るのを待ってから、辺りを見わたした。

優希よりも先に目覚めている生徒は結構おり、どちらかというと優希はクラスメイトの中ではし遅い目覚めだった。

「ここは一……」

誰もがそう思ったそこは、ちょうど教室程の広さがあるチェス盤のような床の上。壁は無く、床以外は全て漆黒に包まれた空間。

當然、その暗闇がどうなっているのか知りたい者もおり、白と黒で構されたチェック柄の床を歩き、床の下を覗いた。

そこに広がるのは他と同様暗闇のみ。つまり、どういうわけか真っ暗な空間に巨大化したチェス盤が浮いている空間。その中に優希達二年四組はいた。

そして、更に覗こうと外にを出した一人の生徒のポケットから攜帯がこぼれ落ち、その攜帯が音を返すことなく暗闇の底に吸い込まれていった。

その事実が生徒達をチェス盤のような床の中心に集まらせた。誤って下に落ちたら死ぬかもしれない。底があるかどうかもわからないため死ぬかどうかも定かではないが、確実に分かるのは落ちればを目にすることはないという事。

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この狀況で冷靜に狀況を分析しているのは數人。まずは中央に集まった生徒達のそばにいながら辺りを見回している薫。そして、落ちれば終わりというにも関わらず、下を覗き込み、深く考え込んでいる竜崎。

集まっている生徒の中に、特に探っている様子はないが、この狀況でも落ち著いいる藤枝海斗≪ふじえだかいと≫。彼は普段、薫達と一緒にいるメガネをかけた男子だ。推薦が來なくても神格高校に通うことは楽に出來るほど頭が良い。ただ、辺りを探るわけでも無く、ただ冷靜に立っている彼に優希はし違和じている。

もう一人は床の端を歩きながら、取り敢えず報収集に取り組む諏訪蓮二≪すわれんじ≫という男子。彼の印象を一言で言うならば、一匹狼といったじだ。クラスでも誰かと一緒に居るところを見た事が無く、優希も彼の聲をまともに聞いたことがない。この上、優希に対してはどこが嫌悪を出している。

そんな數人の冷靜さを不思議に思いながら、優希自も落ち著きを取り戻すまでの數分、無限にじたその數分で、この狀況にきを見せた。

生徒達を照らすの柱。真っ暗な空間でその明かりはより輝きを放ち、生徒達の視界を奪う。強いの中に存在する二人の人影。目が慣れる前には徐々に収まり、生徒達の前に現れた男二人。一人は七十近くのご老人。神父のような服裝をしているご老人は、腰が弱いのか、杖をついてそこに立っている。

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その隣で腕を組み仁王立ちしているのは、神話に出てきそうな白いキトンをに纏い、艶がある紫髪に白のメッシュを一部加えた髪をバックにかき上げている男。

今にも倒れそうな老人と違い、その偉そうな男は、服裝と髪型こそ違えど、とても見覚えがある顔で、その顔を見た生徒達は溜まっていた疑問を吐き出すようにその男に詰め寄った。

「おい先生ここはどこだよ!」

「夢じゃないよね? 私達帰れるの?」

「何とか言えやテメェ!」

ヒートアップする生徒達に目を見開いて驚く神鈴は、生徒達の疑問に答えるよりも先に、

「うるせぇ黙れシャラップ!! 元気なのはいいが……いや、それだけ威勢が良い方が有難いか」

そんな返事を返した。答えどころか余計に疑問を生み出す発言に、何人かは額に青筋を浮かべ、今にも毆りかかりそうだ。そんな生徒達の怒りをなだめる一人の生徒。

「まあみんな、一旦落ち著こう。熱くなっても解決するものもしなくなる」

たった一言で生徒達の冷靜さを取り戻させた薫。流石のカリスマに関心してしまう神鈴に、薫は一歩神鈴に詰め寄って、落ち著いたトーンで話した。

「聞きたいことはたくさんありますけど……まずはここはどこですか?」

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まず最初に投げかけたのは、優希達のいる場所。理法則を捻じ曲げたこの空間は、明らかに存在を知らない場所で。

「ここはどこか、ねぇ……えーここは簡易的に作った空間だ。お前らはこの後アルカトラって場所に行ってもらうわけなんだが、いきなり行っても騒がれそうだし、ここである程度説明をけさせるためにさっきちょちょいと創った」

「エンスベル様、皆さま困なさっているようなので、もっと端的にわかりやすく最初から説明して下され」

生徒達の表を読み取ったご老人は、隣の神鈴をエンスベルと呼び、説明不足を訴えた。そして、めんどくさそうに鼻をほじる神鈴ことエンスベルに、生徒達は諦めてその隣にいる老人に説明を求めた。老人はため息をついて、生徒達の要求に応えた。

「では代わりにわたくし、ドルトンが説明役を務めさせていただきます。皆様にもイメージしやすく説明するには々難しいのですが、簡単に言うと、二年四組の皆様にはこれからとある世界を救ってほしいのです」

そこからは生徒達の疑問をドルトンがしづつ解消していく形となった。優希も質問はしていないものの、気になっていたことは他が全部質問してくれたおかげで、今がどういう狀況なのか分かって來た。

ドルトンが言うには、優希達が住む世界とは別の次元に存在するアルカトラという世界。その世界はフィクションの世界でしか聞いたことのない魔が存在しているようで、魔族と言われるそれらは人間の生活を脅かしているらしい。もちろん向こうにも魔族と戦っている人達はいるのだが、人間側が劣勢のようだ。そこで別の世界から素質のある人を召喚し、魔族と戦ってもらおうという話らしい。何とも勝手な話だが、それだけ追い詰められているということだ。

「と言っても、いきなり連れて行っても戦い方など知らないあなた方ではすぐに死んでしまいます」

……ならなんで俺達を連れてきた。

そんなことを生徒全員思いながら、続けるドルトンの説明に耳を傾ける。

「皆様には最初に“力”と“資格”を與えさせてもらいます」

ドルトンが言う“力”というのは、『恩恵』と言われるものらしい。向こうの世界では神的、的に鍛錬されたものは、にマナというのを生み出すらしい。そこで手にれる力こそ恩恵。

恩恵にはいくつか種類がある。

剣の扱いに長け、攻守のバランスが良い恩恵『剣士』

槍の扱いに長け、さと俊敏さが特徴の恩恵『槍兵』

弓の扱いに長け、五の良さと隠が売りの恩恵『弓兵』

接近戦には向かないが、発的なマナ量と、後方支援が得意な恩恵『魔導士』

高い能力から生み出される攻撃が特徴の恩恵『武闘家』

魔族や神獣をり、変則的な攻撃が特徴の恩恵『獣使』

やアイテムの報を知ることができる恩恵『鑑定士』

地図や絵を高速で映し出すことができる恩恵『筆寫師』

目的地までの道だけでなく、未來や過去など占うことができる恩恵『易者』

「以上の九つが恩恵と言われる力です。どの恩恵が手にるかはその人の質によりますので、各々授かった恩恵に不満を持たぬようお願いいたします」

そして次に説明してくれたのは“資格”というもの。

アルカトラでは恩恵を授かった者を恩恵者と呼び、恩恵者は『眷屬』という資格を持たずにその力を使うことは出來ない。逆に眷屬の資格を持っていれば恩恵者は力を使えるだけでなく、いろいろな特権や立ち止區域に足を踏みれることができる。眷屬の資格を持つ者は特別な仕掛けがある金屬製のプレートが証明書としてもらえる。

「これがその眷屬資格保持者の証です」

ドルトンが懐から取り出したのは、銅に輝くネームプレートのようなものを同の鎖でネックレス狀にしたもの。ゆらゆらと揺れるそれは、この空間でもわずかなを反させ、存在を植え付ける。

「実際に見せた方が早いな。ドルトン、貸せ」

そう言って、さっきまで蚊帳の外だったエンスベルはドルトンからネームプレートをけ取り、薫の目の前へ。そして、薫の頭に手をやると、薫のは淡いで包まれた。當然生徒達は薫から目が離せないでいる。人がを放つなど見たことが無いからだ。薫自も、自らのに異変が起こっていることをじ、し不安な気持ちになっている。しかし、その不安は一瞬で取り除かれた。なぜなら、の奧底から得のしれない、それでいて落ち著く溫かい覚がじわじわと溢れ出るのが分かったからだ。さっきの説明を熱心に聞いていた薫が思うに、このから溢れる心地良いが、マナであることを理解する。

「お前たちは俺が選んだ素質ある者達だ。それゆえに目覚めた時の力はアルカトラでもトップクラスになるだろう。んじゃはいこれ」

そう言って、エンスベルは先ほどドルトンが取り出した銅のネームプレートを薫の手に乗せた。すると、プレートに紋様らしきものが浮き出てきている。文字のように配列されたそれは生徒達には見たことのないもので、一見柄にしか見えない。しかし、首を傾げる生徒達とは反対に、目を見開いてその文字を見つめる一人の生徒。

「逢沢薫、剣士……練度1?」

読み上げた薫は、練度という言葉に疑問を持っている。そして、再びドルトンが説明を始めてくれた。文字に関してはエンスベルが力を與えた際に分かるようにしてくれたらしい。そして、プレートに掛かれているのは三つ。名前と恩恵、そして練度だ。この練度というのはいわゆるレベルのようなものであり、魔族を倒すなどの実戦経験に応じて上がっていき、上がれば上がるほど、能力なども一緒に上がっていく。そして、一定の數値になるとプレート自も銅から銀、銀から金、最終的には黒になるそうだ。もちろん、そのによって與えられる特権も増えるようだ。そしてプレートが金になる練度5000になると、その人特有の力『天恵』が與えられる。この天恵を持っているかいないかではかなり大きな差が生まれるそうだ。

「以上が皆様に與えられる力です。皆さまは練度が一でも、アルカトラの恩恵者と比べれば練度100の恩恵者と変わりませぬ」

やはりそこら辺のアドバンテージはあるようで、優希を含め生徒達全員安堵の吐息。そして、話の一區切りがつき、薫が殘りの疑問を投げかけようとしたその時、

「おっともう時間だわ」

手をパンっと叩いて、薫の質問を無理やり止めるエンスベル。時間というのも、ここは落ち著かせるために簡易的に創った空間なせいで、それほど長時間空間維持が出來ないそうだ。それは揺れる空間と、欠け落ちるように真っ黒な空間に白い部分がひび割れて見えだしたことで実できた。落ち著いたと思えばまた未知の世界に行くのだ。生徒達に沈んでいた不安が再び浮かび上がって來る。そんな中、薫は最後の質問を投げかける。これは答えを聞くのは正直恐いのだが、もうエンスベルに會えるとは限らない。ならば、ここで聞かなければいけない質問。

「それで……僕たちは帰れるんですか?」

真剣な眼差しで問いかける薫に、エンスベルもふざけた表から真剣な顔つきに変わった。そして、はぐらかすことはなく、はっきりと言った。

「お前らは帰ることは出來ない。ただ、偶然というのは時に神の理解を超えることもある」

エンスベルがそう言っている間に、さっきまでの空間はほとんど原型をとどめておらず、漆黒の空は白銀の空に九割ほど変わり、そして――

「じゃ、健闘を祈る」

「「「「「「え、ちょ、うわぁああああああああ」」」」」」

フリーフォールのように、さっきまで経っていた床が落下した。エンスベルとドルトンは取り殘されたように宙に立ち、落ちていく生徒達を見下ろしている。その二人を見る余裕なく、絶と浮遊の中、優希達二年四組は、白銀に変わった奧底に落ちていった。

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