《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》14・変裝
「もういいぞ。魔境からシレンとかいう奴が戻ってくる前にとっとと行くぞ」
優希の言葉に反応し、パンドラが魔境から姿を現した。
パンドラはれた髪を整えると、ふたつの死のそばに寄る。
「えげつないな、躊躇なく頸椎部をひねってるし、もう一人は……こいつは生きてるのか?」
死んでることは一目瞭然のガノンに比べて、倒れているジークは無傷。それどころか服に汚れすらない。
「いや死んでる。ま、こいつの服をもらうわけだから、なるべく汚さないようにした」
言われてみるとジークの元は元からとは思えないほど凹んでいる。心臓にかなりの衝撃を與えたようだ。
「服だけなら殺す必要は無かったんじゃないのか?」
「こいつには俺の死替わりになってもらう。行する上で俺は死んだことにしといたほうが都合がいいからな」
優希がジークのを持ち上げてぐるみをはがす。格的、長的にもピッタリで、実によい著心地。
パンドラもまた荷臺に乗り込んで商品を。どうやらジークは魔道以外にもいろいろ扱っているようで、
「ふむ、なかなかいい生地だ。サイズもいいじだし私はこれにしよう」
パンドラが漁っていたのは服、白を基調に、黒いラインがった服。當てや靴も備わっており、ワンセットで冒険に出られるような用服。
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基本的に白が似合う彼は結構気にったようで、優希もジークの服とれ替わる。
「この世界にも寫真ってあんだな。こいつに扮裝できると思ってたんだが、分証にバッチリ顔寫真が――」
「出來るぞ。扮裝」
遮るように銀髪のは言う。
優希がジークと服をれ替えたのは、れ替わった後、ジークの顔を潰して優希が死んだと思わせるため。顔が分からなくても誰が死んだか分かるほど、アルカトラは発展していない。
だが、実際は分証にジークの顔が記載してあった。つまりジークの名前を借りることは無理だと斷念。だと思っていたが、彼は変裝できると言った。顔の皮を作る技でもあるんだろうかと思ったが、表を見る限りそうでもなさそうだ。
「今は時間がないんだろ? その男の死を乗せてとっとと移しよう。なぁに死は別の場所で処理すればいい」
「……そうだな。よっこらせっと」
優希の濡れた服を著せたジークを荷臺に乗せる。
ただその時の優希の表が引っかかったパンドラは、
「なんだその目は?」
「いや、俺もだけど、お前も大概イカれてんなと思ってな」
「私は私のためにくだけだ。どんな手を使っても」
その時浮かべた彼の表は、覚悟を決めているが何故か哀しそうで。
しかし、今それを詳しく聞いている時間は無く、優希は違和を抱きながらも、馬車に乗り、オルニトミムスのような生を繋ぐ手綱を握る。
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「……これってどうやってるんだ?」
當然り方など知らない。何せ元の世界でも馬など乗ったこと無い優希。騎乗スキル皆無の優希が、今回のような未知の生をるとなればさらに混。そんな優希に溜息をつくパンドラは優希の元に歩み寄り、
「竜の一匹や二匹れるようになれ。私が縦するから替われ」
言い訳が出來る分、その言い方にイラっと來るが、優希は素直に手綱を渡す。
パンドラは手綱で竜に指示を怒るようにかすと、それに応じて竜はしっかりと前進する。
なぜか敗北が滲み出る優希は、心を落ち著かせるため荷臺に座り込んで、積み荷を確認する。
積んであったのはいろいろな魔道や服、武、寶石など多ジャンルだ。
主に武をする優希。今のところ能力で底上げした能力による力業で何とかなっているが、それも限界がある。弾丸鼠ガンガル―は攻撃に隙があったし、ガノンに関しては完全に不意打ち。シレンが戻ってくる前に移したのは、敵意を持たれて戦闘した際に勝てる確証がないため。
〖予備報バックアップ〗による瞬間治癒も、それほど便利なものに弱點が無いとは考えにくいため、しっかり理解するまではなるべく使用は避けたい。
だが、今のダガーで応戦するなら普通に素手でやった方が勝率はある。
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つまり、今の優希には良い武が必要なのだ。
「なんだこれ?」
優希が見つけたのは変わった籠手。白銀に輝き、紋様のようなものが刻まれている。
優希は【鑑定】を使い、その武を調べる。
魄籠から魄脈を通り、マナが目に送られる。久しく広がる赤い視界が、腕に裝備された暗を捉え、報が脳に直接送り込まれる。脳みそを指でなぞられる様な覚と共に、脳裏に流れる報の羅列。苦手だったそれが、今では特に気にならない。
神:銀龍ヴィートのオ白籠手シルヴェル
寶魔龍イルガルドの牙で作られた籠手。
脳から送られる信號を信できるため、裝著者の手足のように籠手の形狀を変化できる。マナの伝導率も非常に高く、剣のように尖らせれば、アダマンタイトをも切斷できる度と切れ味を誇る。しかし、裝著時は槍で刺される様な激痛が腕に走る。
神は、天才魔道技師アルミナによって製作された、道そのものに力が込められている道。そのころから魔道は作られていたが、彼の作る魔道の能は群を抜き、神と呼稱されるようになった。しかし、神は強力すぎる能の代わりに、使用者は不幸な死を遂げていることが多く、使用すれば神を使いこなすか、神に使われ死ぬかの二択だ。製作者であるアルミナが亡くなってから神を作れる者はおらず、帝國にも四十種類程しかない。
「これが神か。イルガルドの牙つったら売れば金貨四千枚ぐらいするレア素材じゃねえか。このジークって奴結構良いもん扱ってんだな」
寶魔龍イルガルドは、背中に數百種類もの鉱石を纏う魔界の龍だ。大陸の中心に位置する帝都から、北方にある超級魔界『ヒエラルド』に生息している。
その牙は白銀に輝き、縄張りを守るために、他の魔を容赦なく捕食することで知られ、イルガルドに遭遇した場合まずを隠すことが鉄則とされている。
優希はその籠手を裝著する。これほどまでに優希向きな武があるだろうか。切れ味や度は一級品、唯一のデメリットである裝著時の激痛は、痛覚を失っている優希には無いに等しい。破壊力や派手さは無いものの、一撃の強さより手數の多さを好む優希としては全く問題ない。何より、コートで存在すらも分からない。まさに暗。
優希は裝著し、一度形狀を変化させてみる。
白銀に輝く籠手は、優希の思うように形狀を変え、籠手に小剣が取り付けられた、パタのような形狀に変わる。刀約三十センチの小剣が優希の掌すれすれで現れる。
周りからはコートの袖口からいきなり刃が出て來たように思うだろう。
特に仕掛けは無い。いちいち念じる必要もない。閉じている手を開くとき、わざわざ脳で開けと念じるだろうか。特に何も考えずとも開くことができる。
それと同じような覚、優希の好きなように、小剣を出現させる。弾丸のように早く出すこともできれば、ゆっくり出すことも可能。
優希が気を付けるとすれば、小剣出時は、形狀変化時に剣に手が當たらないようにすること。でないと鋭利な小剣は簡単に指を切斷する。
「他は……」
地が見えているだけの道を行く馬車ならぬ竜車は、地形の凸凹に強く反応し、荷臺はよく揺れている。そんな居心地の悪い荷臺で、優希は武を漁る。
だが、特に目を引くものは無かった。さすがに神とクラスのものはそうそうないらしい。
「そういえば……」
武漁りに気を回していたため忘れていたが、そろそろ聞いても良い頃だろう。優希が飛び出した魔境はもうすっかり見えない。
者をしているパンドラは、車の音や、荷が荷臺にぶつかる音など、結構な騒音にも関わらず、優希の落ち著いた、靜かな聲にも反応した。
手綱を握って耳を傾けるパンドラ。その反応を確認し、
「お前こいつに化けれるって言ってたけどどうすんだ? 変裝技なんかアルカトラにないだろ」
変裝道を作れるとすれば三か所。一つは帝都、ただ帝都の場合は作るというよりは変裝道をそろえるという形になる。もう一か所は石の都『ストーンエッジ』、魔石を素材に作られる魔道は『ストーンエッジ』が一番盛んに製造されている。魔石の加工技は八大都市で最も発達しているからだ。もしかしたら変裝できる魔道があるかもしれない。
最後の一か所は鋼の都『メタリカ』。『ストーンエッジ』と違い、こちらは鉄鋼業がとても盛んな都市だ。変裝用の道を作れる技力があるかもしれない。
「確かにその三都市なら可能はあるかもしれないが、わざわざそんなことしなくても今ここで変裝できる。変裝と言うよりは変貌に近いがな」
「というと?」
パンドラの言っていることが理解できず、優希は詳しい説明を求めた。パンドラは、手綱を使って力強い腳運びで荷臺を引く竜を止める。
そして、者席から離れ、荷臺にいる優希の方へ。
「まず、お前が得た力は〖権能〗というものだ。私と契約したお前は恩恵よりもはるかに強力な力を得ているわけだ」
「的にその〖権能〗ってのはどんな力なんだ?」
「〖権能〗はお前が代償を払って得た力。お前のみは復讐、そのみを葉えるためお前は私に代償を払ってみを葉える力を得た。例えばパン屋の店員が私、お前は客だとしよう。お前は腹が減っているため何か食べたい、これがお前のみ。そして、そのみを葉えるため、お前は私に金を払ってパンを買う。この時の金が代償、パンが〖権能〗だ」
「で〖権能〗ってのは恩恵と何が違うんだ?」
「そうだなぁ」
パンドラは優希の問いに答えようと説明文を脳で組み立てながら、座って目にかかりそうな髪を掻きあげる。
「恩恵者になったころは練度1。つまり、一般人の練度は0だ。的神的にその域に達した、0から1になった者が、にマナ生、魄籠を生み出せる。そして、練度5000になれば天恵を手にれられる。ここまでは知ってるな?」
パンドラの確認に、優希は無言で頷く。
「天恵は基本的に恩恵を活かせる能力になる。例えば、高い五と隠系の恵が特徴の弓兵が、近距離且派手な天恵を得ることは無い。そして、天恵はかなりのマナを使う」
確認するように彼は言い、優希も無言で頷く。
「対して〖権能〗はマナを使わない。さらに恩恵、天恵の能力に干渉されないのが最大のメリットだ」
彼は説明を続け、優希も自分なりに彼の説明を噛み砕く。
例えば、天恵で相手の恩恵を無効化する天恵を持っていても、〖権能〗には効かず、発することができる。そして、マナを使わない〖権能〗は、マナ知に引っかからず、隠活にも適している。そして何より、払った代償次第では凄まじい威力を発揮できる。
「お前の〖権能〗は〖報作〗つまり、報の上書きだ」
「報の、上書き?」
「お前の世界ならイメージしやすいだろう。能力、記憶や神経の信號……この世界は報で満ちている。お前はそれを上書きが出來る。お前が無意識に使った〖機能向上アップデート〗は、言うなればの報を上書きしたんだ」
數値的に言えば、もともとの速さが50とすれば、普通なら走る特訓で51、52と上がっていくが、優希の〖権能〗は訓練せずともいとも簡単に100や200まで自由に引き上げられる。
優希の記憶を覗いたパンドラは、この世界にないコンピューターの存在も認知し、優希に理解しやすいように話す。
「なるほどね。つまり俺はコンピューター人間になったわけか。しかも、それを作するのも俺ってか」
「理解したか。ただし、お前がれる報は自分だけ」
そこまで言った時、優希は思った。
これが彼の言う変裝の方法だとすれば。
「俺の報をいじって、あいつにり済ますってか。確かにそれなら道を使わないし、何より記憶以外は本になれるってわけか」
優希の憶測を目の前で微笑むは肯定の意味を込めて首を振る。
「まぁそれでも、完全にり済ますことは出來ない。お前がこの男で知っていることはあくまでも外見のみ。型、骨格、視力や聴力、知らなければならないのはいろいろある。そこでだ――」
パンドラは濡れた優希の服を著たジークのに手を置き、
「お前がカルメンを逆探知したときに使った〖接続アクセス〗を使う」
〖権能〗の能力は、優希にとって相が良く、彼の言いたいことが何となくだが予想できた。
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