《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》21・共闘
「フォルテ、【変化へんげ】ッ!」
「ホイにゃっ――ッッ!」
フォルテと呼ばれたボンベイのような黒貓は、桃髪のの肩から降りる。そして、彼が恵を使った途端、フォルテは豹変した。鋭い目はさらに鋭利に、牙はび、格も徐々に大きくなる。それはもう、貓ではなく豹だ。前後の足と尾の部分には青い炎を纏い、その炎はマナで構しているのか、高度のマナがじ取れる。
「おいおい嬢ちゃん、こいつ俺まで敵視してない? さっきから凄ぇ睨んでんだけど」
隣にいたバンダナの青年は、苦笑いしながらフォルテを見る。フォルテが彼を見る目は、三人組同様に鋭い。
桃髪の彼は薄ら笑みを浮かべながら、
「大丈夫ですよ。フォルテはは優しいですから。【変化】前はですけど」
「ちょっと待て今まさに【変化】後だろ!? 貓ちゃ~ん、俺は味方だよぉ~」
チっチッチっとあやすバンダナの青年。だが、フォルテはそんな行をされると挑発されているようにしか思えない様で、
「フシャーーッッ!」
「のぉわっ、あぶねぇ! こいつ俺に襲い掛かって來た!」
フォルテは容赦なく前足を振り下ろす。紙一重でかわした青年は、驚きながらもまだどこか余裕そうだ。
その景を見て優希は、
「へぇ~、結構早い攻撃だったけど、かわせるんだな」
フォルテの攻撃速度も凄いが、それをかわすバンダナの青年の反神経も稱賛に値する。
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【変化】は獣使の専用恵で、魔獣の能力を完全に引き出すことができる。その間はマナを送り続けなければならないため、長期戦には向かない。【変化】を使った後のフォルテもまた、能力は解放されており、攻撃速度も凄まじい。だが、その攻撃をギリギリとはいえ、完全な不意打ちをかわすのだから、バンダナの青年は相當強い。
「おい何無視してくれてんだぁ!」
放置されていた三人組は怒號を上げる。
ようやく青年とは三人組を視界にれる。バンダナの青年は憤る三人組に片合唱して、
「おう悪ぃ悪ぃ忘れてた。さて、誰から始める? 何なら全員でかかってきても構わねぇぜ。どうせ結果は同じだからよ」
単純な挑発。だが、癇癪の三人にはとても効果的で。
「上等だぁ、後で後悔しても知らねぇかんなぁ!!」
最初に飛び出したのは剣士の男。バンダナの青年に向かって剣を縦に振り下ろす。もちろん青年はそれを難なく刀でけ止める。が、すかさず槍兵の男が死角を突くように斜め方向から槍を突く。剣士の男に視界を阻まれて、槍兵の男の攻撃の反応がし遅れたが、これもを傾けて回避する。
防戦一方かと思いきや、青年も負けてはいない。を傾けたのを利用して、剣士の脇腹に蹴りをれる。槍兵の攻撃がとどめの一撃と確信していたのか、その強烈な蹴りをよけることができず、視界を回転させながら剣士の男は吹き飛んで家屋に激突。
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そして蹴りに手ごたえをじながら、青年は突撃してきた槍兵と距離を取る。青年は次に槍兵を標的として認識し、呼吸を整えようとするも、
「ぬぉわぁ!?」
間髪れず降り注ぐ矢の雨。橫跳びでかわすが、立ち上がる隙も與えず、青年を無數の矢が襲う。
さすがの青年も表を曇らせる。槍兵と弓兵は勝機をじてニヤリと笑う。だがしかし、この場にいるのはバンダナの青年だけではない。
「フォルテ援護ッ!」
漆黒の化け貓は、青年の服をその口で摑んで、瞬く間に移する。
フォルテの移は素早く青年は目が回りそうになる。これが【変化】を使用した魔獣の力。
「あれだけ挑発しておきながら防戦一方なんて、面白いお方ですね」
「いやちょっと油斷ッ……うぉぇ」
桃髪のは、微笑を刻み気品のある言葉で青年をいじるも、青年はフォルテの移ですっかり酔ってしまい、真っ青になりながら餌付いているため、言い返す余裕がない。
調がよろしくない青年に変わり、次に前に出るのは桃髪のと化け貓。
「選手代といきましょう。今度はわたくしがお相手いたします」
鞭を引っ張り自分も戦えることをアピールする。その背後から威嚇するように咆哮を上げる黒貓。
「お前の推測は外れて以外に互角だぞ」
屋上から観戦していた優希とメアリー。
優希の憶測では、青年とが無傷で勝利すると思っていた。だが、現実は意外にも互角。
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じ取れるマナだけの判斷で正確でないのは確かだが、これほどまでに均衡狀態になるとは思わなかった。なぜこうなったか理由はもうわかっている。
一つは油斷だ。青年は相手が格下だと思い込み、戦闘に余裕を持っていた。だが、意外にも三人のチームワークは良く防戦に回された。特に打ち合わせもせず、速攻の連続攻撃を仕掛けられる。これはついさっきチームを組んだとは思えず、おそらく以前から仲間だったと予想がつく。
次に恩恵の相だ。青年の恩恵は剣士か武闘家、どちらにせよ近接向き。対するは近距離中距離遠距離の剣士、槍兵、弓兵。この時點でかなり分が悪い。圧倒的練度差がない限り、バランスが取れたこのチームに対抗するのは難しい。
加えて、青年の共闘相手の恩恵は獣使。獣使はる獣――契約獣によって相のいい恩恵が変わる。味方としての相は、攻撃重視の契約獣なら魔導士と弓兵、回復支援重視の契約獣なら剣士、槍兵、武闘家が味方の相として最も良い。
対して青年は近接系の恩恵、フォルテも見たじ攻撃特化。すなわちお互いが邪魔になるのだ。契約獣と契約主、つまりはフォルテと桃髪ののチームワークが良いのは當たり前だが、青年とフォルテのチームワークは良いわけがない。なぜなら彼らは今初めて共闘するのだから。フォルテの戦闘リズムと青年の戦闘リズムの波長が合わなければ、同士討ちの可能もある。
それを考慮して、青年は最初一人で戦おうとし、もまた最初は一切手を出さなかった。今フォルテを仕掛けても青年の邪魔になるのが分かっていたからだ。
つまり、この二人は一人でしか戦えない。対するは三位一の恩恵者。剣士の男は青年の攻撃が効いているだろうが、回復するのも時間の問題だろう。
「フォルテ、相手は槍兵と弓兵。オペレーションCで行くよ」
の問いかけにフォルテは唸って答える。
大人二人乗せれそうなほど大きい黒貓が、一歩ずつ敵との距離を詰める。
一人は槍を構え、もう一人は弓を引く。弓兵の狙いがフォルテの脳天を捉え、呼吸と鼓、相手のき、すべてのタイミングが揃った時、弓兵は矢を放す。弾力に従って矢は飛ばされ、マナが込められた矢は空を切り裂き、流星の如く駆け抜ける。
輝く矢先がフォルテの脳天を貫こうとしたその時、フォルテの姿が一瞬にして消滅した。
時間は晝、太は真上にあるため戦場は日向。そんな環境でフォルテの漆黒のは良く目立つ。にもかかわらずフォルテは姿を消した。明化など契約獣の力でない限りあり得ない。明化の恵は弓兵の専用恵だ。つまり、フォルテが姿を消した理由で最も可能が高いのは、
「とてつもなく速ぇぅッ!?」
最後まで言わせる間もなく、弓兵は何かに押しつぶされる。
弓兵のし前にいた槍兵は、仲間の言葉が不自然に途切れたことに疑問をじ、首だけで振り向いた。
そこにいたのは漆黒の悪魔。弓兵は潰されるように地面を這い、その上にいるのは今すぐにでも食い殺しそうな鋭い目で睥睨するフォルテ。
瞬間移ほどではないにしろ、相手の盲點に一瞬にり込み、姿を消したように見せかける技と、それを実行できるスピード。練度差がよっぽど開いていない限り、弓兵の覚と、鑑定士の観察眼、槍兵の速さが組み合わさって初めて出來る蕓當だろう。
だが、フォルテもまたミスディレクションの材料。一瞬にして仲間がやられたという事実と、それを実行した存在が近くにいる恐怖。この二つの要因がフォルテの方に注意を引き寄せる。それすなわち、本來警戒すべき相手を放置してしまうということ。
「ぐぅぁっ!」
槍兵のを縛る何か。革製のそれは桃髪のの元に延びている。が武として持っていた鞭が槍兵のを捉えたのだ。しっかりと縛られて、上半はきが取れない。しかし、槍兵も負けずと抵抗する。が力を籠めるも槍兵はかない。力勝負では互角、むしろし劣っている。だが、縛ってしまえばの勝利と言っても過言ではない。
「【痺調】ッ!」
「ぐぬぁあああ!!」
【痺調】は本來、魔をとらえて、マナを電撃に変換して送り込むことで調教する恵。電圧は変換するマナの量にもよるが、人間相手でも電死させることは可能だ。
優希の見たところ手加減はしている様だが、しばらくはけないだろう。
「あのはなかなかやるな。あれほど契約獣と息が合っている獣使はそういないぞ」
メアリーは薄ら笑みを浮かべて稱賛のセリフを吐く。
彼の言っていることに優希は心同意する。
獣使のタイプは三つ。契約獣一とコミュニケーションを取り、連攜を重視するタイプ。獣使本來の力を発揮できるが、契約獣が苦手とするタイプの相手が現れた場合、敗北に近い苦戦を強いられることになる。
二つ目は複數の契約獣を所有する獣使。一一の連攜は淺く脆いが、多種多様な契約獣を所有することで、幅広い狀況で戦うことができる汎用の獣使。その分マナの供給量も多く疲れやすいため、あまり強力な契約獣は持てない。
三つ目は契約獣を持たない獣使。カルメンのように、天恵と恩恵を組み合わせることによってその場で契約獣を作り出したりするタイプ。契約獣との連攜を駆使したトリッキーな戦闘ではなく、自らの戦闘技を優先する者。契約獣を持つのは割と大変だ。マナの供給、調管理など普段からしなければならないことが多い。
ならば普段はフリーで、戦闘になれば周囲の魔を調教して一時的に契約獣にすればいい。なお、このタイプの獣使は、なくとも練度5000は無いと厳しい。
「オペレーションCは、黒貓が視線を引き付けてその間に契約主が捕縛し倒す、もしくは隠れて効果が消えるのを待つってじか。対抗するなら先手必勝、貓を無視して契約主を叩くってじかな」
優希は自分ならどう戦うか、脳でシミュレーションしてみる。
もちろんそう簡単にいかないことは承知の上だが、いくつか対策を立て、知識として経験値を稼ぐ。戦闘慣れしていない優希は、こういった戦略戦はかなりの無知だ。しずつでも実戦経験が富な奴から吸収するしかない。
「おつかれフォルテ。まだまだ余力はありそうね」
「試験は始まったばかりにゃ。こんなところでマナ切れはごめんだにゃ」
フォルテは元の姿に戻りの肩に。お互いに労いながら、この爭いの発端である怪我人の元へと歩く。
「大丈夫ですか?」
「ぁあ、すまない。俺のプレートは持って行ってもらってくれ。俺は次また頑張る」
手負いの男は自分のプレートを取り返そうとは思わず、自らの意思で持っていてくれと言った。彼は一瞬拒もうかと考えたが、ここでけ取りを拒否した所で誰も得しない。ならば、ここはお言葉に甘えようと決め、
「ありがとうございます。あなたの分も頑張りますから」
手負いの男の意思をけ取るかのように、木製のプレートを握りしめる。
そのまま男はぐったりと気を失う。
とりあえずは一件落著かと、ふぅっと息を吐きだして、呼吸を整えた。
――その時、
「隙ありゃぁアアッぶればぇっ!!」
さっきまで戦闘から外れていた剣士の男が、に向かって襲い掛かる。
フォルテは【変化】を解き、も完全に張から解き放たれていた。もちろん油斷していたわけではないが、それでも張狀態から解放された瞬間は、一瞬とはいえ隙が出來る。剣士の男はそれをずっと狙ていたのだ。強烈な一撃を食らい、戦闘から外されたと思わせ、力を回復しながら機を待っていたのだ。
そして、その時は來たとばかりに飛びかかる。だが、目先の獲に眼が行き、周囲に気を配っていなかったのだ。
右の頬にきた衝撃。
口の中はの味が充満し、折れた歯が舌の上を転がる。何が起きたのか理解できないまま、剣士の男は再び家屋に激突。今度は気絶までに時間が掛からなかった。
「仮は返したぜ、嬢ちゃん」
突然のことで揺し目を見開く桃髪の。
そのの視界には切りかかって來た剣士ではなく若い青年。
赤みがかった黒い髪が風に揺れ、額のバンダナが男らしさを駆り立てる。鍔の無い刀を肩に乗せ、の付いた握りこぶしを見せつける。
「ありがとうございます。確かにこれで貸し借りなしですね」
バンダナの青年に窮地を救われたことを理解し、桃髪のはにっこりと笑って、謝意の言葉を述べた。
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