《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》27・姫君の罪悪
――優希が亜梨沙達と合流すると同じ頃。
「今戻ったわ♡」
レクラム達の拠點はとある広場だ。そこまで広くはないが、數人が集まってき回るくらいには広い。
レクラムは広場の奧で座っていた。戻ってきたルミナスを卑屈そうな死んだ瞳が出迎える。
「で、なんか分かったのか?」
彼が求めているのは優希の報。彼にとって優希は異質の存在だった。ルイスの【共】をレクラム自にも使っていた為、監視の狀況を直に見ていた。
その為、優希の戦闘もいくつか見ていたのだ。そしてじた違和。能力は高いだろうが、攻撃は単調、恵を使った様子はなく、不意打ちを食らった時は、意識よりも先にがいていた。
戦い慣れしていないが、攻撃は當たらず、力は強い。明らかに異様。
「ウフフ♡分かったのは彼の恩恵、練度と今後の作戦♡彼はこれからあのお姫様と一緒にここに乗り込む気よ♡」
ルミナスが言った時、特に変化は無かった。つまり今言った事は真実という事。
それを確認したレクラムは目で合図し続きを話させる。
「彼の恩恵は剣士……ッ!」
その時、ルミナスの首元に赤黒い紋様が現れる。ルミナスは首に締め付けられるような覚を覚え微笑の表が変わるが、一瞬で元に戻り再び余裕の笑み。
「フフ♡どうやら噓つかれちゃったみたいね♡」
レクラムは何故そんな表が出來るのか不思議でならなかった。ルミナスはもうレクラムの奴隷になったのだ。なのになんで笑っているのか理解出來ない。まぁ彼が狂っているのは知っていたので、深くは考えないが。
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「奴の恩恵は?」
「分からない」
これは確認だ。ルミナスが本當の事を知っていて噓をついたのか、本當に噓の報を摑まされたのか。
ルミナスはもうレクラムに逆らえない。つまり彼は本當に噓の報を摑んだのだろう。
それに優希の事が分からなくても、レクラムは多大な利益を得た。ルミナスという恩恵者を。
「まぁ奴の恩恵とかは來た時に聞くとしよう。丁寧に向こうから來てくれるんだ。歓迎しようじゃないか」
レクラムは笑みを刻む。
そして、その笑みはすぐさま無に帰り、
「セフォント、もう十分だ。思う存分楽しんでこい」
「やっとか、よっこらせっと。んじゃ行ってくらぁ」
セフォントは広場と繋がっていた路地のに姿を消す。彼に與えられた指示は他験者の抹殺。
レクラムの天恵は強力だが、どんな能力か分かれば幾らでも対策できる。
レクラムは自分に関して一切の報を殘さない。何が命取りになるか分からないからだ。つまり、一度天恵を見たレクラムの奴隷達にはここで死んでもらう。
それに今はルミナスが奴隷となった。つまりレクラムの護衛も用意出來たわけだ。
優希達を迎える準備は整った。
「來るなら來いよ」
********************
優希とクラリスは敵チームの拠點に向けて走っていた。やはり周囲は靜かだが、亜梨沙達が派手にやっているようで、しは賑やかになっている。
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「なぁ普段あの黒貓ってどこにいるんだ?」
素早く前へ進む足を止めず優希はクラリスに質問した。
フォルテの居場所はレクラムと會う前に知っておきたいのだ。
優希の問いにクラリスは自らの元を指差して、
「フォルテは普段をマナに変換してわたくしの魄籠の中に住んでおります。外の様子も見えているので、いざとなれば助けてくれる頼りになる契約獣です」
フォルテは超級魔界に住まう超級魔族――死貓。
漆黒の並みと出逢えば恐怖をじるより先に生きる事を諦めると畏怖され、『死神の使い貓』の異名を持つ魔族だ。
クラリスの恩恵者としての実力が低いため、全力を出す事が出來ないが、それでもフォルテの能力は高い。
本來ならクラリス程度では契約することなど不可能だが、なんらかの事があったのだろう。フォルテのクラリスに対するは、契約者と契約獣のそれを遙かに凌駕している。
この黒貓の目がる間は、クラリスに危害を加える事は難しいだろう。
必要な事は知った。準備も抜かりない。
あとはレクラムと決著をつけるのみ。
「待っていたぜ。大帝國のお嬢様」
見下すような瞳と冷え切った聲が二人を迎える。広場にいたのは中央で腰掛けるレクラムとこの狀況を楽しむように微笑むルミナス。
クラリスは優希に従い真正面からレクラムと対面。それは優希にこんな無茶無謀危険極まりない狀況を打破する策があるからだ。あると信じているから。
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「よう、あんたがレクラムか? こっちの姫さんが話があるそうなんで聞いてやって下さいな」
迫する空気が漂う中、優希は進行役のような立ち位置で進める。これも策の一つだろうとクラリスは思う。だが、彼の言葉を組み立てるのは、この狀況ではなく、募らせていたレクラムへの怒り。
「あなたはこの試験中一何人の人を殺してきたのですか? あなたは何人の犠牲の上に過ごしているんですか?」
彼の明るく高い聲は、憎悪が染み込み同じ音聲でも全くの別にじられた。
レクラムは彼の質問に対して過去の記憶を辿る。彼を捉えていた瞳はし落ちて地面を見つめる。
そして彼の質問に対する答えを吐き出す。
「さぁな。あんたが何について怒っているのか知らないが、一つ言っておこう。この試験で悪いのは弱者だ。弱いくせに自分のの程もわきまえず、こんな所に來るから利用される。それだけだ」
レクラムの一言一句にクラリスの憤りは解消せず溜まり続ける。
「確かにここの験者は皆覚悟の上で試験をけています。命を落としてしまったとしても仕方ないのかもしれません。わたくしが怒っているのは、人を利用しているということです」
無理やり人を利用し、試験を続ける気がない人にも命をかけさせ利用する。その上本來出るはずのない犠牲を出し続けるレクラムに彼は怒っている。
「それが俺の天恵だ。俺は俺の持つ力を使っているだけ。なんら問題ないだろう」
「あなたが天恵を使うのは仕方がないのは分かっています。力を選ぶのはあなたではないのですから」
恩恵、天恵は自分で選べるものではない。天授の運命さだめに従うしかないのだ。
今回にいたってもそうだ。他者を奴隷化する天恵はレクラムがんで手にれたわけではない。
レクラムは変えることの出來ない天恵を使うしかないのだ。
「ですが、あなたは不必要に犠牲を出している。いつでも付會場に向かえたのに……あなたは何の目的があって、必要以上に能力を使っていたのですか」
彼の言葉にレクラムは深い溜息をつく。呆れるようなそんな表。
「あんた何にも知らないんだな」
レクラムの呟きが耳にり、クラリスは怒気の中に疑問を混じらせる。
「俺の目的はあんただよ。帝國皇帝」
クラリスのは怒気が消え、驚嘆と唖然のあまり言葉を失った。
クラリスはシルヴェール帝國皇帝グレゴワール・シルヴェールの一人娘。
大変可がられており、クラリスは帝國一と言ってもいいほどの箱り娘だった。王宮の外に出たのは今回が初めてで、名前は知られても彼の容姿までは知られていない。
今回も王宮には緒で試験をけている。そんな彼が自分の正を見破られた事に彼の思考が一度停止する。
その反応にレクラムは再び呆れ顔。それも先ほどより大きい。
「あんたはバカか? いくら一度も外の世界を見た事がない雛鳥でも、外見がバレていない理由にはならない。いつどんな奴がどんな力を使っているかも分からないんだ」
言葉を失ったまま立ち盡くすクラリス。
だが、言葉を失ったままの理由は、自分の正がバレたからではない。その事実を踏まえてレクラムの目的が何なのか、脳裏によぎったからだ。
そして、レクラムはそれを見抜いた上で言葉として実態を持たせる。
「どんな理由があってこの試験に參加したのか知らないが、自分の立場を弁えず勝手な行をした結果、俺の様な奴に目をつけられ関係のない奴が犠牲になった。あんたの言う無駄な犠牲はあんたが作り上げたものなんだよ」
クラリスは黙る。ただ黙ってレクラムの話をけれ、心の中で自らを卑下していた。
自分が自分の目的の為に行した結果、大切な民を間接的に殺していたのだから。
論戦はレクラムの勝利。そう見切りをつけた優希は行に出た。
「きゃぁッ!?」
クラリスの背後にいた優希は、クラリスの両腕を後ろに回して左手で摑んで固定し、右手を首に添える。
同時にフォルテが【変化】後の姿で瞬く間に現れ、優希が両腕を摑んだ頃には、背後に回ってその鋭い爪を優希の脳天目掛けて振り下ろす。
だが、その攻撃は優希の髪にれる寸前で停止する。
何故なら、他には見えずフォルテの位置から見えるのは、優希のコートの袖からびる銀龍ヴィートのオ白籠手シルヴェルの刃がクラリスの首に突き付けられていたからだ。
「ジークさん……何を」
クラリスの脳はますます困する。
さっきまでの味方だったのに、その味方に今刃を突きつけられている。
困するとクラリスを、優希は視界にれていない。その瞳に映るのは目前で座るレクラム。
「俺と取引しないか? あんたの目的はこいつで、俺の目的は試験の合格。俺はいつでもこの姫さんを殺せる。嫌ならプレート全部渡せ。あんたの目的は合格じゃないんだろ?」
レクラムの目的はクラリスを天恵にかけて奴隷化し、帝國の復讐に使う為。ここで殺されてはそれは葉わない。レクラムは合格に興味がない為、斷る理由も無い。
「ジークさんどういうつもりですか!」
この時初めてクラリスの聲が優希に屆く。優希は視線をクラリスに移した。彼を見る目は壊れた玩を見るような興味の消えた目。
「俺はお前らと組んだ方が良いと思ったから手を組んだ。今その相手がレクラムに変わっただけ」
「あなたの言っていた策というのは……」
「策? そんなもんあるわけないだろ。全部この狀況を作る為。利用されてるんだよお前は」
クラリスは何を信じていいか分からなくなっていた。怒り悲しみ驚嘆困、混沌としたをどこにぶつけていいか分からない。
「いいだろう。プレートは全部そこに置いてある。いるだけ持ってけ」
優希はレクラムが指差す方を確認。そこには山積みに放置されている木製プレートがあった。
「なんで……こんな事……」
弱々しい口調。これは自分が命の危機に曬されている事によるものではない。自分の行いが結果的に民を死に追いやったという罪悪だ。
先程まで優希の捕縛から逃れようと力を込めていたは、今では眠っているように貧弱だ。
諦観したように俯く彼の言葉は、優希とレクラムどちらに向けられているのか分からない。
彼の言葉をけ取り返答したのは、すぐ後ろで剣先を突きつけている優希ではなく、目前で座るレクラムだった。
「『エンドラの町』を知っているか?」
その時、クラリスの目はし見開く。心當たりはあるようで、良い思い出でもなさそうだ。
石の都『ストーンエッジ』の近くにひっそりと存在していた『エンドラの町』。別稱『忘れ去られた町』とも言われている。
裕福では斷じてなかったが、獨壇貧しかったわけでもない。とある事で二十五年前に無くなり、今では誰の記憶にも殘っていないそうだ。
優希が『エンドラの町』について知っているのはそのくらいだ。
町が消滅した理由が帝國への復讐心を生み出しているのだろうか。
「その町は俺の故郷でな、子供の頃は八大都市に住みたいとか思ってたけど、今ではあそこほど住みやすい環境は無かったと思う」
の頃を想起するレクラムの表は、和むような緩さなど微塵もじさせず、言葉を発するごとに暗く歪になっていく。
「『エンドラの町』は、『ストーンエッジ』の近くだったこともあって、石の都では公になって頼めない事を帝國から頼まれていた」
石の都『ストーンエッジ』は魔石を加工して魔道を作る技に特化しており、魔道に関しては生産量、品質、コストなど八大都市で隨一を誇る。
そんな都市では公になる為頼めない仕事となれば、容は限られてくる。
魔道でありながら、本來存在してはならないもの。
「死者の……蘇生」
クラリスが呟く。二十五年前というと彼はまだ生まれていない。だが、彼は知っていた。帝國の裏を。
「死者を蘇らせる……命を冒涜するそれを俺の故郷は魔石の研究と人実験を幾度も重ねて完させた。アルミナの神に匹敵する魔道だ」
神の力、権能でさえも忌とされている生命の干渉。その能は神などというものではない。
そして、そんなものを帝國側が作るよう指示したのが公になれば確かに國民から大反を買うだろう。
そんなリスクを冒しても帝國は『エンドラの町』に命令したのだ。
「王宮の連中は、完した途端、俺たちを呼び出して、死者を蘇生する魔道――冥界の扉を発させた」
冥界の扉を発させるのに必要なものは三つ、蘇らせたい人の骨、死後一日未満の人間の、そして蘇らせたい人の聖だ。
「王宮の連中が蘇生させたのは、恐らく最も蘇生させてはいけない人――初代勇者ライン・アルテミス」
アルカトラ最初の召喚者にして歴代勇者でも最強の力を持っていたとされるライン・アルテミス。
他の勇者は魔王討伐後行方不明になっているが、ライン・アルテミスは唯一生還した勇者。
それほどの人を蘇生したのなれば、魔族との戦いで大きなアドバンテージとなる。おそらく帝國はそれをんでいたのだろう。だがしかし、そう都合良く行かないのが世界の理だ。
「ライン・アルテミスは確かに蘇った。だが、魂だけはそうもいかず、そこにいたのはライン・アルテミスの姿をしたただの殺戮兵だった」
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