《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》57・不確定な存在
上を向いても、下を向いても、右も左も、続くのは永遠の白。
足裏に存在する地面の確かな覚と、視覚では確認できない地面との覚的誤差に違和をじながら、優希は目前に佇むに目を向ける。
銀髪の髪は腰あたりまでびて、黒く澄んだ瞳は白いと相まってより綺麗に映る。
「で、話したい事とはなんだ? 言っとくが何度聞かれても奴らの事は……」
「それはいい。いや、よくはないが取り合えず第三勢力については置いておく」
優希の言葉に彼は面倒そうに「ではなんだ?」と返す。
わざわざ〖純白の園ヴァイスガルテン〗で話したいということは、他の連中に聞かれたくない上、今すぐに聞きたいこと。
その條件でメアリーが思いつくのは不確定要素が多い第三勢力について。
「ぶっちゃけた話、今回は不確定要素が多すぎる。超級魔界、第三勢力、皐月の存在」
「そうだろうな。お前の考えたプランは十中八九思い通りにはいかないだろうな」
「だから、出來るだけ疑問は抱えたくない。お前が知っていること話せること今ここで全部話せ。詳しいことが言えないなら何故言えないかを話せ。はっきり言う。一番の不確定要素はお前だメアリー……いや、パンドラ」
優希の睥睨にメアリーは軽く溜息。
その本気で相手にしないような反応にイラつきを覚え始め、優希の眼がさらに睨みを効かせる為に、彼も真剣に相手にしなければならないと向き直った。
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彼としても優希と仲違いする結果は求めていない。
「お前は私に恐怖心、涙、痛み、躊躇、け、悲しみの六つを捧げ、お前は報作の権能を手にれた。そして、私はお前のみを葉える為に協力し、お前は私のみを葉える為にく。そこまでは言ったな」
「あぁ、確か世界を滅ぼすって言っていたな」
「そうだ。その為にはお前の存在が必要不可欠で、お前のみを葉えることは私のみを葉える為でもあるんだ」
彼は視認できない地面に腰を據えて、
「私は……神という存在は、アルカトラの唯一神、エンスベルによって言を縛られている。詳しいことを話せないとはそういうことだ」
「それはこの世界でも適応されるのか?」
メアリーが保有し、支配し、管理している空間である〖純白の園ヴァイスガルテン〗でも、その束縛は適応されるのか。
その疑問についてメアリーは首を縦に振る。
「お前とこの世界で出會ったとき、正直の話記憶が殆どなかったんだ。いや、記憶を思い出すことを束縛されていたんだ」
「記憶が縛られていた? 何故だ?」
「その理由は話せない。話を続けるが、神とエンスベルとの関係は、神と契約者の関係と同じだ。神が人間と契約した時、二人の間には繋がりリンクが生まれる。その繋がりリンクはエンスベルと神との間にもあるわけだ」
「繋がりリンク……何故エンスベルとの間にそんなものが?」
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「その理由も話せない。それで、記憶がない私がどうやって記憶を取り戻したと思う?」
その時ふと思ったことがある。優希は権能を得るために等を捧げた。なら、その捧げたものは彼の何に還元されたのか。
「俺が捧げたものがその縛りから解放させた」
「そうだ……契約者との繋がりリンクが強くなればなるほど、神はエンスベルの縛りから解放される。今回の場合、お前と契約したことで繋がりリンクが生まれ、記憶を思い出す縛りが消えた」
「つまり、今お前が縛られているのはその記憶をらす行為。その縛りからお前を解放するには、俺はさらにお前に何かを捧げないといけないわけか」
優希の憶測をメアリーは首を振って否定した。
「そうではない。エンスベルの束縛から解放されるということは、お前との繋がりリンクが強くなったためにエンスベルとの繋がりリンクが薄れたということだ。そして、私は私のみを葉える為にお前のみに手を貸していると言った」
「即ち、俺のみに近づけば近づく程お前との繋がりリンクが強くなって、お前とエンスベルとの繋がりリンクが失われていくということか?」
「そうだ。だから、今は何も聞くな。現時點で話せることは何もない」
メアリーの懇願に優希は納得する。
そして、メアリーは立ち上がり、この純白の世界から優希を解放しようとした時、
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「一ついいか?」
その問いかけに彼は優希の方を見てきを止める。
今にも薄れていきそうな意識の中で優希は、
「今話せることはそれで全てか?」
「…………あぁ。これ以上はこれからの頑張り次第だな」
その時の彼の不敵な笑みを目に焼き付けて、優希の意識は外界からの呼びかけに応じるように純白の世界から抜け出していった。
********************
それから、順調に移は済み、一行は目的地の手前まで來ていた。
山脈が壁のように立ちふさがる中、一つだけトンネルのように巨大な空が待ちける。
淡いが外にれ、高度の瘴気が周辺の鬱蒼とした大地を禍々しいに変え、元の自然とのグラデーションが鮮やかではあるものの、綺麗、しいとを呼ぶものではない。
魔族である風竜種も慣れない瘴気に鼻をまげて進むことを拒み、ここからは徒歩を強いられる。
――超級魔界『コルンケイプ』。流石というべきか、低級魔界である『ノマルド』との差をり口ですでに見せつけている。
「準備はいいな?」
鬼一の呼びかけに全員が答えた。
鬼一の呼びかけも、それに答えたみんなの返事も、逞しく良い返事だ。だが、正直のところ不安もある。鬼一自信低級魔界には何度も行っているものの、超級魔界は初めてだからだ。
鬼一の現練度は5600。超級魔界で立する練度としては低い方だ。
だが、一人ならともかく同じレベルのメンバーが分かっているだけでも五人。完全攻略ではなく、水蓮石を集めるだけなら十分な戦力だ。
「じゃあ、行くぞ」
鬼一が一歩踏み込んだ地面は、ぐっちょりと音を立てて足跡を刻み込む。
溶けた地面のらかいが靴底から伝わり、歩きやすさは皆無。
「うわぁ~なにここ気持ち悪~い」
「瘴気で地面が腐ってるのね。まぁでもそれは一部だけみたい。ほら」
ぼやく布谷に花江は進む先を指さした。
窟までの地面は腐っているが、窟、水蓮石で構築されたコルンケイブ自は高濃度瘴気でもそのしい形態を殘している。
そこまでの五十メートルほど、泥濘に足を取られながら著実に進んだ。
足を上げる度に泥狀になった地面が飛び散って服を汚す。魔界に挑むのだからの綺麗さなど気にしていられる立場ではないが、それでも気分を害する覚なのは変わらない。
「ようやく著いたな。こんだけの距離に思ったより時間と力削がれたな。ジークは大丈夫か?」
この場での優希の立場は主に荷持ちだ。
魔界に何日も滯在するのはざらだ。當然戦闘する眷屬のほかに資を運ぶ人員も必要となる。
パンパンに詰められたバッグには主に食料とその調理。包帯や薬といった治療。後は、砥石や裁道等だ。
「問題ないです。さぁ先へ進みましょう」
優希のまだ覇気のある聲に全員足を進めた。
水蓮石の地面は腐った地面の泥を落としていく。
外界のが閉ざされていくも、水蓮石が発するがコルンケイブを蒼く彩る。
全的な雰囲気は鍾、それもあぶくまに近い。
氷柱上に垂れ下がる水蓮石や、その合いから氷の世界を彷彿とさせる。
「なぁ今回の目的は水蓮石の収集だろ? なんで集めないんだ?」
しばらく歩いていると一夏がふとした疑問を特に誰にという訳でなく呟いた。
それに答えたのは真ん中で水蓮晶石を辿って“蒼月”へと道を案していた優希だ。
「コルンケイブを構する外側の水蓮石は途轍もない度で採掘できないんですよ。それに無理やり奪い取るとそこから亀裂が生まれて窟全が崩壊してしまうので、もっと奧の中心部から採掘しないと」
優希の説明に一夏はなるほどと地面をノック覚で叩いて確かめる。確かにい。
コルンケイブの魔族がり口付近にいないのは、この場所で暴れることは自らの住処を壊しかねないからだ。當然中心部に行けば行くほど強い魔族が現れる。
いくつかの分岐點を優希の【鑑定】で地面に隠れ〇ッキーのように存在する水蓮晶石を見分けて進んでいく。
魔族の聲などなく、靴音と雑談しか聞こえない靜寂の空間。
「お、広くなったな。とりあえずここで休憩すっか」
一行がたどり著いたその場所は、野球やサッカーは十分に出來る広さの広間で、端の方は二段構えの崖となっており、底の方には微かだが魔族のき聲が反響している。上を見上げると氷柱がその先端をこちらに向けている。
「そろそろ魔族が姿を現しだすな。ここからは気引き締めていくぞ」
「翠人、それは出発した時に言おうぜ。せっかくの休憩なんだから」
崖の底に確かにいる魔族を確認する鬼一に、まったりと水蓮石の窪みを椅子代わりにしている一夏がお前も來いよと促す。
もう一度崖下を覗き込んでから、鬼一は休む皆の元へ行った。
「ふぅ、大丈夫ですかジークさん。ノマルドより瘴気が濃いですから辛くなったら言ってくださいね」
「ありがとう。今のところ大丈夫かな」
気遣う皐月の言葉に禮を述べる。
十分ぐらいの休憩は軽い雑談に興じていたせいか、思いのほか早くじた。
全員支度して、鬼一の掛け聲で軽く鼓舞した後、出発しようと足を進めた。
その瞬間だ。
「――みんな伏せろッ!」
咄嗟に屈む鬼一の行と聲に反応して、後ろにいた全員が狀況判斷よりも先に言われるがままそのを伏せる。
その反応がコンマ數秒差だが一番遅れたのは皐月だ。彼が屈んだ瞬間、頭部に何かが通り過ぎた覚を、一気に屈んで上に靡いた短い髪のがじ取った。
彼の前にふわりと落ちる數本の。それが自分のであると瞬時に理解し、彼の脳は狀況を判斷するためにく。
「一何今の? 風の刃?」
視認出來なかったが鋭利な何かが飛んできたことは理解できた。花江は自分の後ろに何も転がっていないことから何かを投擲したという考えを捨てる。
だが一人、自らの髪をって攻撃した何かを理解する。
「水……」
皐月が自らの髪の水気と自分の後ろの壁に弾かれて背中に付著した飛沫。
飛んできたのは広間にある奧へと続く道。
水の弾丸が再び、同じ方角から襲い掛かる。
全員武を構えながらも回避の勢を取る。
だが、先頭に立つ鬼一は腰に攜えた刀の柄に手を置いたまま、今度は立ったまま回避行は一切取らない。
「……凄い」
目を凝らせば難なく見える水弾は、鬼一の目前で霧散する。
水弾の著弾間隔はコンマ五秒程。間隔の短い連される弾は斬られたように真っ二つになり勢いが消えて鬼一の服を軽く濡らす。
刀を一切見せずとも水弾を斬り捨てる鬼一に、皐月は純粋に心してしまう。
水弾の掃が止む。同時に花江が弓兵の恵【遠視】を使って、水弾が飛ばされてきた方向を確認。
水蓮石ので、【夜視】を使わずとも奧までしっかりと見ることが出來るだ。
だが、どれだけ視界を奧に広げようと、一向にその正は拝めない。
「どうだ、確認できたか?」
「いいや、もういない。逃げたのかも」
花江が【遠視】で確認できる範囲には何もいない。だが、彼が魔族の逃亡を判斷し、【遠視】を止めたその時、
「……下よッ!」
魔道士である皐月の広い【索】が、地面に潛る何かをじ取り、それは凄まじい速さで浮上してくるのを読み取った。
皐月の聲に反応し、全員それぞれ四方に飛び退くと、い水蓮石を生みのように泳ぐ魔が、頭から浮き上がる。
「ようやく魔界の魔のお出ましか」
一夏が二本の木刀を構えて腕が鳴ると挑戦的な笑み。
四方に避けたせいで魔を囲うように散らばった優希達は、それぞれの方向から突如現れた魔を確認する。
巻貝狀の貝殻にを預け、外に飛び出す青い紋様を刻む黒い腕には無數の吸盤。
「アオイガイみてぇだな」
優希達の何十倍もある巨軀の魔族は自分を囲む眷屬を敵として認識して、その鋭い目を目前にいる鬼一に向けた。
超級魔界『コルンケイブ』高練度魔族の一角――蛸殻獣オクトフォスルが牙をむく。
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