《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》71・コロしますよ
メリィがクラリス捜索に出てから約一時間が経過した。
「敵は石の都の犯罪ギルド『ラピスラズリ』。幻魔教ではありませんが、それでも帝國中に名をはせる犯罪者の集まりであります。目的は分からないでありますが、姫様は東區のアジトで監しているようでありますな」
「いや短時間で分かりすぎじゃない?」
すました顔で得た報を述べるメリィに、その場にいた上垣茅原が呟いた。
その場にいたのは、薫の馴染である上垣、騎士団からウィリアムとティファ。
加えて――
「それじゃあすぐにでも乗り込もう!」
「こらマリン勝手にくんじゃない」
「いっっったぁぁぁい!!」
今すぎにでも東區へ向かう『紅の貓ロートキャッツ』のマリンと、それを止めるべく力強い拳骨を與えるウルド。狀況を聞いて駆けつけてくれたようだ。だが、その二人と共に來たのは見知らぬ顔の三人。
「君がカオル君か。若いのに大変だねぇ~。こんな事にも巻き込まれて」
オールバックの茶髪と顎髭がワイルドさを引き立たせて、うまそうに煙を吹き出した灑落た男。
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鋭い目つきとは裏腹に優しい瞳が大人の落ち著きをじさせている。
「彼はブラウン。『紅の貓ロートキャッツ』のメンバーで、まぁマスター代理をしてもらっている。以前カオル君が來た時は丁度仕事でね。他の二人もメンバーなんだ。こちらの酔人はカーリーで、その隣にいるのがフック」
「よろしくカオルちゃん♡」
「よ、よろっ、よろしく……お願いします」
黒髪の挑発が風に揺られるはカーリー。眼鏡をかけてかなの谷間には黒子があり、々っぽいだ。酔人と言っているが、あまり酔っているようには思えない。そんな彼が挨拶と共に上目遣いで迫りよるが、何故だろう。あまりドキドキしない。
その隣にいるフックは、話し方や振舞から気弱そうなイメージがうかがえる。
緑の髪で左目が隠されて、垂れた右目が余計に気弱そうにじさせている。服裝もゆったりとしていて、肩掛けカバンを大事に抱えている。
「挨拶も済んだし、作戦會議を始めよう」
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ウィリアムがこれから戦闘にるとは思えないほどの笑顔で切り出した。
メリィが地図を広げて、それを囲うように十人が集まる。
「敵のアジトは東區のアスカルド大通り付近にある元帝國武庫だった場所であります」
東區のアスカルド大通りは東區を雲上街から帝國の外に向けて縦に分斷するように向けてびる大通りで、そこにある帝國武庫は戦時中に使用されていたが、今では武はすべて回収されている。
「確かここはカルトナージュ家が商品の在庫管理の為に購していたはずですね。念のため『ラピスラズリ』との関係を調べておきますか?」
「よろしく頼むよティファ。メリィはティファの補佐を頼む。オレ達は武庫へと向かう。あくまでも姫様の命が優先。姫様を無事に保護したら『ラピスラズリ』を殲滅する。確保がましいけど、最悪命の有無は問わない。騎士団団長ウィリアム・アスラーンが許可しよう」
「的な作戦は? 姫が武庫に隔離されているとして、どうやって潛するつもり?」
薫が尋ねるとウィリアムは地図をなぞりながら、
「メリィによると武庫から姫様の存在は確認できているがマナはじられなかったらしい。つまり封魄石を使用されていることになる。敵が護衛するとすればその効果範囲外、丁度武庫から出たくらいか。武庫はマナが使えないから中で戦闘になればなくともオレは負けない」
「なら僕は外で注意を集めるよ。中にるのは実戦経験が富な方がいいから」
そう言った理由で振り分けていくと、武庫に潛し、クラリスを奪回するのはウィリアムとウルド、そして弓兵であるブラウンとなり、それ以外の薫、茅原、マリン、カーリー、フックは外で注意を引く役割となった。
「でも住民の避難はどうするの? 騒ぎにならないよう上手く導しないと」
茅原がウィリアムに尋ねると、彼は顎に手をやって數秒考えると、
「フックの恩恵は確か魔導士だったよね。例えばなんだけど、【標転】で周囲の住人約三千人を移させることは可能かい?」
「いや、あのっその……流石に、ぼ、ぼく一人では……無理かと思います。他の魔道士にも協力してもらわないと……」
「は、はい! 私も微力ながら協力します!」
魔道士である茅原も手を上げる。だが、彼の練度では移できても三千人が限度。それも使用後はおそらく魄籠が枯渇してけなくなるだろう。
殘りをフックが補うとなると、彼も茅原と同じように倒れてしまう上に、時間がそれなりに掛かるのもある。逆に【移空】で空間事移すれば手っ取り早いが、それだと『ラピスラズリ』のメンバーも一緒に移してしまう可能がある。
それと同時に起こる問題が、騒ぎにならないことという本原因は解決しない事。
たとえ東區から恵で全員避難したとしても、何も知らない住人はいきなり場所が移するとなると困するだろう。
「あ、それについては問題ない。一時間はパニックにならないようオレが何とかしよう。ちょっと荒っぽいやり方だけどね」
不敵に笑うウィリアムは一どんな方法をとるつもりなんだと全員が思った。
作戦をまとめると、魔導士である茅原とフックが周囲の住民を【標転】で移させ、見張りを薫達が足止めする。それと同時にウィリアム達が中のクラリスの安全を確保すると言ったところだ。
作戦が決まれば行あるのみ。
相手が行を起こし、クラリスが攫われたことが公になる前に事態を納めなければならない。
********************
埃臭い場所が鼻腔をくすぐる。
縄で手足を縛られ、口は覆われている為喋ることは出來ない。椅子に固定されているクラリスは、おもむろに瞼を上げて、意識の覚醒と共に狀況を理解しようと思考を巡らせる。
彼に混はあれど焦りの態度は無い。目が覚めた途端拘束されているというのにだ。
それは彼の心の強さの表れか、それとも焦りなど生じない何かがあるのか。
……ここは一。
「なぁほんとにこんなことして大丈夫なんだろうな? 一応あんたの言う通りしたら上手くいってっけどさぁ」
……男の聲、後ろ?
「コホッ、同じ説明を、はぁ……何度もさせないで。コホッ、あなた達は……はぁはぁ私の言う通りにすればいい……はぁはぁ、それよりコホッ、目が覚めたみたい」
會話をしているのは調が悪いのか、咳と息切れの激しい若い聲。聲だけから判斷すると小さなだろうか。
そんな憶測をしながら、クラリスは目が覚めたことがバレたので、後ろを睨みつけようと首だけで振り返った。
「おぅおぅ隨分逞しい目つきなこった。お前さんほんとに姫か?」
「間違い……ない、コホッ」
視界に映るのは會話をしていた二人。
明るい髪が目立つ青年と、目の下にクマがある、人形を抱えた。
男は片手にナイフを遊ばせて、木箱の上に片膝を立てて座っている。
の白い髪は痛んでおり、抱える兎の人形はとても汚れている。見た目は十二歳くらいだろうか。
彼は同じように拐されたという訳ではなさそうな上に、先ほどの會話から彼が首謀者と考えてしまう。
一何が目的なのか、問いかけたいが猿轡さるぐつわのせいで話すことが出來ない。
「でぇこれからどうすっよ。拐したはいいが、いつここに乗り込まれるか分かったもんじゃねえぞ」
「コホッ、心配なのは、はぁ……分かる。けどコホッ、貴方も目的を果たしたいなら、はぁ黙ってて」
「チッ……あぁもう分ぁったよ。ったく、作戦の概要くらいは聞かせろよ。これだからガキは嫌いだ」
苛立ちを覚える男は、ナイフを壁に投げつける。
真っすぐとんだナイフは壁に張り付いた蟲を切り裂いた。
「ガキは心外、コホッ。次言ったら…………コロしますよ」
「ーーーーッ!?」
それは見た目のさからはじられないほどのどす黒い殺気。
殺気を向けられたわけでもないクラリスにも全から冷や汗を掻く程の圧倒的な殺意に、男から苛立ちを消し去り、焦りのようなを浮き上がらせる。
「……わ、悪かった。もう言わねぇよ。だから落ち著けよ、なぁ?」
「コホッ、分かれば……いい。はぁはぁ、こういうのは疲れる……」
彼は重々しい殺気を落ち著けるように溜息をしながら、クラリスの前に歩き出す。
顔に収まる人もは、暗いを抱いていて、そんな瞳に映された途端、全の細胞が畏怖するのをクラリスはじた。
「コホッ、今からその布取るけど……はぁ、んだり、助けを呼んだりしたら、はぁはぁ……ダメ」
からの殺意はない。
だがそれでも、クラリスは首を縦に振り、その約束を破ることは本能が拒否していた。
彼の小さな手が、クラリスの猿轡を外す。
「……貴方達の目的は何ですか? わたくしを拐して何がしたいのですか?」
「コホッ、私があなたを話せるようにしたのは、はぁ……質問に答えてもらう為。はぁはぁ……勘違いしちゃダメ」
彼はクラリスの瞳を覗き込む。
小さなが、その圧倒的な存在に自分よりも大きいと錯覚する。
「何が……知りたいのですか?」
「はぁコホコホッ……私が聞きたいのは逢沢薫の事……」
「カオル様の? と言うことでしたら協力出來ませんね。殘念ですけれど、わたくしはまだカオル様の事は詳しくありませんので――――ッ!?」
してやったりと笑うクラリスに、は小さな中指でクラリスの頭を小突く。
軽い一撃。それなのにクラリスには脳は意識を朦朧とさせる振をじていた。
揺れく意識は、記憶を明瞭に呼び起こす。まるで過去の記憶が今験しているかのような気分だ。
クラリスが今辿っているのは、薫と話した時の記憶。
「これがコホッ、逢沢薫。確かに……強い、いや、はぁはぁ強くなる」
クラリスの意識が現実に戻った時、激しい倦怠が中を苦しめる。
息を切らし、思考する為のエネルギーを奪われて、一何をされたのかを理解することが出來ない。
これが何かの天恵なら、何故彼はマナを使える?
封魄石は特定の人ではなく一定の範囲に効果を発揮する。
マナが使えないクラリスとこれほど接近している彼が天恵を扱えるわけがない。
神すらただの玩となり果てるこの空間で、彼は異様な力をクラリスに行使した。
「コホッ、大分かった……」
「わたくしに何を……」
「知る必要はコホッ、ない。これはこの世界の……はぁ、人が扱えるものじゃない」
「この世界の人……」
その言葉に疑問を抱くクラリスを放置して、は近くの木箱に座る。
地面に屆かない足をぷらつかせながら、は人形をいじり始めた。
汚れや顔が目立つが、今の姿は普通のらしいだ。だが、その姿にクラリスは恐怖以外のは出てこなかった。
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