《められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》77・危機
「カオル様、ウィリアム!」
「無事なようで何より……っていう狀況ではないようだね。オレ達の到著はし遅かったかもしれない」
ウィリアムが注視したのは、クラリスの首に浮かぶ薔薇の刻印。
それに加えてフォルテは今にも飛び掛かりそうな剣幕でガントロイトを睨みつけて、いるが一向にく気配はない。
「安心しろ。おれの目的はクラリスじゃない。こいつはお前らをい出す餌に過ぎん。だが、いくらおれでも超級魔獣とお前らを同時に相手するのは厳しいからな。これは保険だ。そこの貓がいたらクラリスは殺す。こんな風にな」
ガントロイトはかなり大きい瓦礫を指差した。そこにはクラリスの首にあるものと同じ薔薇の刻印。
數秒後、その瓦礫は部から音と衝撃を生み出して破裂した。まるで、瓦礫の中に弾でも仕込んであったように。
それを見たウィリアムは警戒し、薫はし、ガントロイトの言に違和を覚えた。
「これがシュレイド彼の言っていた破の能力。要注意だな」
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「そう……だね」
二人の反応を確認し、ガントロイトはの前で手を組んだ。
その行にウィリアムは二本のの片方の剣を抜き、薫も表を曇らせたまま抜剣する。
「始めようか」
組んだ両手からがれる。
手を広げていくにはその場にいる全員の視界を奪っていき、一秒にも満たない。
だが、ガントロイトの手にはしっかりと剣が握られていた。
「武の生。無から有を生み出す能力。ここまで報通りいくとこいつが堂々とオレ達を待っていたのも頷けるってものだ」
まず先制攻撃を仕掛けたのはウィリアムだ。
振り下ろされた一閃を、ガントロイトは難なくけ止めて、下に流すと地面と衝突したウィリアムの剣から火花が散る。
その剣を踏みつけて自由を奪うと、ウィリアムの額目掛けて剣先を突き出す。
紙一重で躱した。はずだが、ウィリアムの頬に傷が殘った。
一旦距離を置き、頬から伝うを拭う。
「おかしいな。躱したはずなんだけど……これもアンタの能力かい?」
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「これはおれの力の一つでな。攻撃範囲拡張の能力だ。おれの一撃は完全に躱したとしても僅かな距離なら剣戟を拡張できる」
「ガントロイトの剣幅は三、四センチ程。傷の覚から拡張できるのは二センチってことかな」
「つまり剣の長さと幅は二センチ大きく見積もった方がいいってことかな」
今、ガントロイトが見せた能力は三つ。そのどれも數ある恵にも該當しない。
複數の天恵があるという報は正しい。だが、何か引っかかる。
浮かない表のまま、今度は薫がき出した。
激しい剣戟。
剎那の時の中で數十もの火花が散る。
マナ量に関しては問題ない。だが、シュレイドとの戦いで、は失い、傷は痛み、は疲弊している。
コンディションは萬全とは言えない薫は、純粋な剣戟においてウィリアムにかすり傷だが與えたガントロイトに食らいつく。
だが、先にを上げたのは二人ではなく、ガントロイトの剣だ。
薫の持つ聖剣“デュランダル”はこの世に斬れないものは無いという逸話がある神。
防ぐにはマナで武を覆いけ止めるしかないが、そのマナさえ斬り裂いていくので、さらにマナで覆いなおす必要があり、け止めた時のマナの消費は凄まじい。
シュレイドの仲間であるガントロイトは聖剣の特徴も知っている為、躱せる攻撃は躱していたが、薫のきにけ止めざるを得ない攻撃が増え、遂に聖剣がガントロイトの剣に屆いたのだ。
ガントロイトはを引く。
呼吸する時間さえも奪われる攻防に、薫も一呼吸置いて高鳴る鼓を鎮める。
ガントロイトはヒビのった剣を捨てて、再び両手を組んだ。
その時、ガントロイトの表に僅かだがれがじ取れた。だが、それは意識していなければ気付かないほどの僅かな時間で、すぐに元に戻り、薫を睨む。
「流石だな異世界の勇者。ぎこちなさが目立つが、その足りない経験値を埋めるほどの能力や鋭い勘。おれからしたら羨ましい限りだ」
「あなたこそ、ウィリアムにも警戒をしつつ僕と戦っている。意識がウィリアムに向いた時を突いても攻め切れない。これが経験の差ってやつなのかな」
戦場に似合わない笑みを浮かべる薫とガントロイト。
「カオル、次はオレも參加しようか? 共闘経験は無いが、オレが合わせるから問題ない」
「そうだね。僕一人では勝つのは難しいみたいだし」
ガントロイトを挾むように薫とウィリアムは移する。
どちらにも警戒しつつ、視線を薫とウィリアム互に寄せる。
そして、ガントロイトは組んだ両手を一度放して両手を握る。
がれて、全員の視界を瞬時に奪った後、ガントロイトの手には二本の剣。
「いいだろう。二人同時に相手してやる」
薫とウィリアムのき出しは同時だった。
ガントロイトを挾んで迫り、ガントロイトの手前でサイドに曲がる。
勢いを殺さないように、互いに右に回り込むようにして、ガントロイトの意識を外す。
薫とウィリアムはを捻り鋭い橫薙ぎ。
ガントロイトは薫の剣をけ、ウィリアムの一閃はしゃがんで躱す。
け止めた剣を強く押しのけて薫の勢を崩す。
そんな薫をフォローするためにウィリアムは行を抑止する一撃を振り下ろす。
だが、ガントロイトは片方の剣をウィリアムに投げつけて、その攻撃を事前に防いだ。
を捻り躱した剣は勢いよく壁に突き刺さる。
「――ッ今だ!」
ウィリアムの聲に反応した薫は聖剣にマナを込める。
大気を纏う風の刃【竜風閃】で斬りつける。
だが、何かに気付いた薫は咄嗟に頭を後ろに引いた。
「何っ!?」
目前を通り抜ける小さなナイフ。
飛んできた方向に視線を送ると、そこにはもう一人のガントロイトがいた。
ボロボロの修道服をに纏い、ナイフを投げた態勢のガントロイトが睨みを利かせている。
――分能力!?
それはシュレイドと同じようなものだった。
薫がそれを認識した瞬間、本であろうガントロイトは凄まじい速度で薫に襲い掛かる。
薫に睨みを利かすガントロイトから、襲い掛かるガントロイトに眼が移る。
それと同時に、薫は羽い絞めされていた。
後ろに視線を流すと、その正はガントロイトだ。
もう一度、ナイフを投げてきたガントロイトのいた方向に視線をやるが、そこには誰もいなかった。
「瞬間移までッ!」
薫は迫りくるガントロイトの一突きを、刀を蹴り上げて軌道をずらす。
その瞬間、目前のガントロイトは姿を消した。
大気に吸い込まれたように気配が消え、その気配は薫の背後に変わる。
シュレイドを相手に瞬間移の覚はまだに染み込んでいる。
瞬間移が使えるとなっても対応は可能だ。だが、
「ぐぁっ!」
「カオル!?」
羽い絞めにしていたガントロイトは、薫ごと瞬間移で背後に移したガントロイトの前に移する。
本のガントロイトは目前に來た薫の腹に剣を突き刺した。
反吐を吐き出して、薫は地面にを打ち付ける。
シュレイドとの戦いでついた傷をさらに深く抉られて、薫は全に走る悪寒を、死の恐怖として認識する。
流石にまずいとじたウィリアムは、洗練された剣戟で二人のガントロイトを払いのけて、薫の元に駆け寄った。
傷口からが流れ出て、相當出しているのか薫のは青白く変している。
「今すぐ傷を塞ぐ! 【治癒】」
“英雄の素質”により全ての恩恵を使えるウィリアムは、魔導士の恩恵である【治癒】も使用できる。
マナの輝きに照らされて、薫の傷はしずつだが塞がっていく。だが、やはり遅い。
「クソッ、こんな事なら魔導士の練度も上げておけばよかったな」
ウィリアムの練度では、魔導士の回復恵は【治癒】しか使えない。
【治癒】は傷こそ塞げるが、失ったは戻ってこない。例え傷が塞がっても、薫が戦線に復帰することは難しいだろう。
だがその前に、薫の傷を塞ぐことすらままならない。何故なら、
「クッ!?」
ガントロイトの刀が、ウィリアムの前髪を掠る。
薫の傷を治すことに集中したいが、二人のガントロイトがそうはさせない。
武を破壊しても即座に作られ、瞬間移と分の力で戦力は上がり、破の能力を警戒して上手く攻め切れない。
こうしている間にも、薫の狀態は悪化していく。
クラリスの必死に呼びかけも、薫の耳に屆いているか分からない。
「どうした? かの英雄様も所詮はこんなものか。その腰にぶら下げたものを使わなければおれは倒せんぞ」
ウィリアムの腰に攜えた神。
ガントロイトが警戒しているその神を、ウィリアムは未だ抜いていない。
「君を殺すだけならそうするんだけど、生憎これを使えば薫達も巻き込むからね。使い勝手の悪い神だよ」
「自分が死んでは意味がないだろうに……その甘さがを亡ぼすぞ」
襲い掛かるガントロイトの剣戟は、攻め倦ねるウィリアムにしずつ傷を増やしていく。
苛立ちと焦りをじて、ウィリアムの攻撃が単調になっていく。
ガントロイトの天恵の。これが分からないと倒すことは出來ない。
倒すことが出來ないと、薫を助けることが出來ない。
非常にまずい。多回復させることが出來たとはいえ、それは薫の狀態悪化を遅くしただけに過ぎない。
やはり神を使うしかないのだろうか。
ウィリアムは薫に視線を移す。一刻を爭うことに変わりはない。
迷ってはいられない。
「んッ!?」
ガントロイトの剣は弾き飛ばされて、腹部に蹴りをれられる。
きの変化に、もう一人のガントロイトも警戒する。
抜かれた神は異様な気配を出していて、金の鬣と、鋭い眼はまさしく獅子。
「一刻を爭う。とっとと貴様を殺して薫を助けるとしよう」
その威圧に、ガントロイトだけでなくクラリスでさえ恐怖を覚えさせた。
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