められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》81・異様な存在

邪蛇鬼の牙が、優希の腕をコートうの上から食らいつく。

痛みをじない優希にとって、今、この狀況は問題ではない。

邪蛇鬼の牙から破壊のある毒のマナが流し込まれ、魄脈を通って優希の魄籠を侵食する。

【神の諜報眼インテリジェンスエーガ】では、その最悪の事態に到達する時間は読み取れなかったが、なくとも長くはないだろう。

優希は噛み付いた邪蛇鬼を引きちぎって地面に投げ捨てると、グランドールをその赤眼で睥睨した。

「おかしい……」

グランドールの天恵は【魔獣一槌ビーストハンマー】。破壊したものを魔に変える能力。

“壊れたもの”ではなく“破壊したもの”ということは、あくまでグランドールが破壊したものに限るはず。

グランドールの厚底靴を破壊したのは優希だ。

グランドールの【強撃】による踏みつけ攻撃に対して、優希は【米利堅 破】で応戦。その結果グランドールの靴底が砕かれた。

なら優希がグランドールの靴を破壊したということになる。

それでも破壊された靴から邪蛇鬼が現れたことから、

――“破壊したもの”とは、誰が破壊したかではなく。使用者に破壊する意思があるかどうか。

グランドールの【強撃】による踏みつけは、優希を攻撃する為ではなく、優希に靴を破壊させるための攻撃。その意思があれば、グランドールが“破壊したもの”になる。

それに拳から伝わった覚。こういう時の為に靴底に木板でも仕込んでいたのだろう。

“破壊したもの”はグランドールが破壊する意思があるかどうか。現れる魔に変化が無いことから、出せる魔も限られている。

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「こんなじか……大読めてきたな」

袖を捲り上げて邪蛇鬼に噛まれた傷跡を確認する。

複數の邪蛇鬼に噛まれた為、斑點のように傷跡が殘り、そこからが流れている。

痛みをじない優希は、が腕を伝って地に落ちる覚のみ脳に伝わる。

その様子を見てグランドールは勝利を確信した笑みを浮かべた。

「フッ、落ち著いているようだが、もうすぐお前の魄籠を邪蛇鬼の毒が巡って破壊される。恩恵者にとって魄籠は心臓。この意味が分かるよな」

今も刻々と毒が巡り、優希の魄籠に目掛けて魄脈を伝っているのだろう。

一番手っ取り早いのが、自ら命を絶つ、もしくは毒を放置して一度絶命し、〖再起リブート〗で復活する。

最後に更新したの〖予備報バックアップ〗を〖読込ロード〗して上書きする為、邪蛇鬼の毒はに存在していないことになる。

だがその場合、十秒間は権能を使用できず、荷臺の中にいる皐月に素顔を曬してしまう可能がある。

それに〖再起リブート〗は自で行使され、死と同時に発する。

もし〖再起リブート〗までの時間があまりにも短く、現在発中の【対武】の効果が切れていなければ、違和を覚えたグランドールは確実に優希にもう一撃を加えるだろう。

そうなれば、権能の使えない優希は〖再起リブート〗を使えず、今度こそ確実に死んでしまう。

そこで優希は権能で試してみたい能力があった。

を〖走査スキャン〗――に異確認――〖解析アナリシス〗――完了。

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免疫――に〖機能追加インストール〗――〖機能向上アップデート〗完了。

「…………功か」

もう毒が巡って倒れてもおかしくない時間だ。

だが、未だに優希は不敵な笑みを浮かべて平然と立っている。

「毒が効いてない……のか。そういう天恵能力か」

グランドールの反応から、今まで邪蛇鬼の攻撃で死ななかった奴はいなかったのだろう。

毒の耐など魔導士の恵を使わない限り持っている人はない。

グランドールは優希が武闘家だと思っている。権能の力で免疫を作し、邪蛇鬼の毒の耐を持ったことには気づかないし、【神の諜報眼インテリジェンスエーガ】の能力がバレることはそうそうない。

結果、グランドールの中に生まれた仮説は、毒を無効化する、もしくはそれに類似した容の天恵を優希が使えるということだ。

グランドールにそう思わせたことはなからず意味がある。

邪蛇鬼以外に毒を持つ魔を生みだされれば、その度に〖機能向上アップデート〗を使うことになる。

優希の権能は無限に使えるものではない。

〖機能向上アップデート〗は自的に報を更新され、使いすぎれば能力を向上するために必要なメモリが一杯になり、いざという時に〖機能向上アップデート〗が使えなくなる。

優希に毒が効かないとなれば、グランドールは純粋な攻撃型の魔を生み出すことになる。

そうなれば優希にも対処は容易だ。

「んならこれならどうよッ!」

そう言ってグランドールは雄びと共に優希に襲い掛かる。

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大槌を抱えて突撃する姿は、威圧はあるが今までのような警戒心を抱くような姿ではなくて。

「――――ッ」

優希も一直線にグランドールに突っ込んだ。

速度は優希の方が上。大槌を躱し確実な一撃を叩き込む。

回避を〖行命令アクションプログラム〗に任せて、優希はカウンターに集中する。

だが、その集中力を全て阻害した覚が足にあった。

足が突然止まり、勢い余って上半だけ前のめりになりながら優希は足元を確認。

質な手が地面からびて優希の足首を摑んでいた。

足首の覚は圧迫。痛みをじるなら今頃骨を砕かれるような覚に斷末魔を響かせていただろう。

手しか見えない為【神の諜報眼インテリジェンスエーガ】で魔の正を特定することは出來ないが、モグラのような魔であることは予想がつく。

を生み出す天恵に気を取られ、グランドール自が最初から使役している魔に対する警戒を解いた優希のミス。

グランドールとの距離は近い。

最大限の【強撃】を鉄槌に纏って迫り橫薙ぎの構え。

足は微だにしない。このままでは優希のが鉄槌の一閃によって引きちぎられるだろう。

優希が【堅護】で守りにっても、足が固定されている今、衝撃を全てけることになり、が耐えられるとは思えない。

先に足を摑んでいるモグラ型の魔を倒して回避する方法もあるが、見た目からして質的な手は、優希の銀剣を弾くイメージを引き立て、一撃で仕留められなければ優希はやられるという事実に逡巡してしまう。

下半を固定され、優希の攻撃は踏ん張りが効かず攻撃力は小さい。

そんな狀態でこのモグラ型魔を倒せるとは思えず、カウンターも本來より鋭さが無くなることは目に見えている。

例え〖行命令アクションプログラム〗で回避できたとしても、二撃目、三撃目と躱しきれるとは思えない。

だが、目前の敵グランドールを倒せばこの戦いは収束する。

それなら――――。

「――なにっ――――」

グランドールはその異常に全に巡る寒気を抑えられなかった。

鉄槌の橫薙ぎは見事に空を切って一周する。

いつもなら、次の攻撃に踏み出している。

だが、グランドールはけない。

異質なものを目にして、が無意識に直してしまった。

――――自分の足を躊躇なく切斷して鉄槌を躱し、足からを吹き出しながら不敵な笑みを浮かべる年の姿に――――。

歪んだ笑みの年は、足を振り上げて自らのをグランドールに浴びせて視界を奪い、怯んだ一瞬の隙にグランドールの頭は――――

「ッ――――…………」

呆けた表を刻んだまま、という鎖から解き放たれた。

********************

宙を舞う優希は著地前に〖再起リブート〗を発する。

髪や瞳は黒くなり、切斷したはずの足は何事もなかったようにいていた。

権能が使えない能力も元に戻り、全を使ってしさのかけらもない著地。

自分の足がしっかりと脳の命令をけ取っていることを確認すると、グランドールの狀態を確認した。

頚椎の斷面がわになれ、滝のように流れる鮮

頭部はボールのように転がり、モグラ型の魔はグランドールの制から解放されて、摑んでいた優希の足を放して地面に潛った、

優希の足はいだ長靴のように倒れると、生々しい音を地面に響かせた。

自分の足がを流して地面に落ちている景を見ることなどそうそうないだろうが、その異様さに吐き気を催すようなが壊れた優希にとっては、地面に落ちた足など、そこらの石ころと何も変わらない。

十秒。

優希はジークの報に組み替える。

黒い髪は雪に染まり、絶に染まった瞳は緋に燃える。

グランドールの敗北の原因。

それは突発的且つ、異質な報を処理できなかったことだ。

まず一つ、優希は邪蛇鬼の毒が効かなかった。魔導士ではない優希が毒の耐を持っていることなど考えにくいが、現実、優希は立っていた。

それも慌てることなどなく、効かない事を理解しているような冷靜さにグランドールは異質なものを神的負荷がかかった。

だから、そういう天恵という一番確率が高く、思考を簡単に終わらせる仮説を立てて自分を無意識に安心させていた。

“今までの奴とは違う”から“毒以外は通用する奴”という分析結果になった。

だからこそ、自ら距離を詰めた。

目前の異質な存在を自分自で消す為と、経験則から必勝にまでの自信がある戦法を使うために。

毒が通用しないという報だけでは、天恵を絞ることが出來ない。

けた毒をれる天恵という可能も十分ある。

だが、異様な存在から逃れるための神的焦燥に駆られたグランドールは、その仮説を捨ててしまった。

毒をれるとすれば、放出して中距離攻撃も出來るかもしれない。

その狀態で距離を詰めるのは良い策とは言えない。

破壊したものを魔に変える天恵なら、魔を使って自分は距離を取って攻撃は魔に任せて、そこでモグラ型魔の自由を奪えばいい。

だが、考えることを途中で放棄したグランドールは、いつもの必勝策に頼ってしまった。

モグラ型魔で自由を奪い、自慢の鉄槌で止めを刺す。

最大限の力を生み出す振り下ろしではなく、橫薙ぎにしたのは下にいるモグラ型魔を巻き込まない為と、振り下ろしはいなされたら一度持ち上げないといけない為次の攻撃までの隙が大きいが、橫薙ぎならいなす、躱すなどされても、勢いを殺さずに次の攻撃に踏み出せる。

それを踏まえて優希は行した。

目の前の敵さえ殺せば遠慮なく〖再起リブート〗を使うことが出來る。モグラ型魔質そうな手を外すのは賭けだ。

もし攻撃が弾かれたらグランドールの猛攻に上半で対抗するのは難しい。

だが、確実に攻撃出來る場所は存在する。

優希自の足だ。

モグラ型魔が摑んでいるのは足首。それより上を切斷してしまえば、橫薙ぎで迫る鉄槌に手をついて腕の力のみで跳躍の要領で躱すことは可能だ。

自らの足を躊躇なく切り離し、痛みによるびどころか勝利を確信した笑みを刻む優希を、グランドールは同じ人間として認識する事が出來なくなった。

今相手にしているのは一何なのか。

無意識に湧き出た恐怖にグランドールの直した。

自分の足から噴き出るで視界を奪われて、外界からける報量を処理できなくなったグランドールのきは最早優希の敵ではなくて。

権能による毒の無効化や、モグラ型魔の登場などの偶然を利用した優希と、用意していた策を臨機応変に対応させることをしなかったグランドール。

よりも弱い神を持ってしまったが故の結果が、首を落とされるという末路。

哀れや追悼の意など優希には出てこない。

敵が死んだ。それが優希の中に存在するものだ。

「クソッ、兄貴がやられた!」

「にゃろッ、こうなりゃ――――」

まだ息があった盜賊の何人かが荷臺に乗り込んだ。

優希はここに來てようやく狼狽の片鱗を見せた。

【対武】の効力が切れていることに気付いていなかった優希は、盜賊が荷臺に乗り込むことを許してしまう。

中にいる皐月とメアリーの安否など心配する必要もない。

優希にやられて既にボロボロの相手だ。皐月だけでもなんとかなるだろう。

だが、問題はメアリーだ。

戦闘中、皐月が一切荷臺から顔を出さなかったのはメアリーが起きている証拠だ。

眠ってしまったら中々目を覚まさないメアリーだが、優希や自分の不利になる狀況下では話は別。

脳の覚醒と共に狀況を把握したメアリーは、皐月が外の様子を覗かせないように上手く説得していたのだろう。

その為に優希は、皐月にメアリーを起こすように言った。

皐月の眼を気にせず戦える狀況を作る為に。

まあ、見られて不利益になるようなら殺してしまえばいい話だが、ここで皐月を失うのは惜しいのも事実。

だからこそ、皐月にメアリーを起こさせた。

だが、そこで問題が一つ。

「ぐぁや!?」

「このアマッぐぶぇあッ」

荷臺に乗り込んだ數人の盜賊が、吹き飛ぶように荷臺から姿を現す。

その景に優希は頭を抱え、大きなため息をついて、

「……めんどくせぇ」

乗り込んだ盜賊が吹き飛んで荷臺から出ていき、それをやった張本人が姿を現した。

「ちょっと、メアリー?」

煌めく銀髪の髪、真珠のような黒い瞳。

盜賊の頭を摑んで地面に投げ捨てる彼の眼は鋭く尖っていて。

「私の眠りを妨げるに飽き足らず、あろうことか刃を向けるとは……そうとう死にたいらしいなお前達」

「何だこの!? ばか強ぇ」

「む、無理だッ。勝てねぇ!」

「に、逃げろッ」

の睥睨に震え上がったける盜賊達は全力で逃げる。

だが、彼はその盜賊を逃がさない。

メアリーを起點に風の障壁が展開され、盜賊達のに打ち付ける。

死なないように吹き飛ばして自由を奪うと、彼の鋭い眼が盜賊の眼に焼き付けられた。

「ひぃッ! 勘弁してください申しませんから!」

「どうか命だけはッ!?」

「なにとぞお慈悲を!!」

盜賊からけない命乞いの言葉が飛ぶ。

他人に睡眠を妨げられた時のメアリーの機嫌は頗る悪く、それは優希にも飛んでくる。

「ジーク……こいつらのお仕置きの後はお前の番だ。覚悟しておくんだな」

優希はもう一度ついた溜息と共に呟いた。

「マジでめんどくせぇ…………」

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