められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》82・盜賊の頭

優希達を襲った盜賊は気に縛り付けられていた。

子ウサギのように震えているのは、湧き出る恐怖心の表れ。

腕を組み、眉間に皺を寄せるは、その玉貌に怒気を刻み付けていて、

「よくも人が気持ちよく眠っているところを邪魔してくれたな。お前達のおかげで黃金兎コガネウサギのステーキを食い逃した。その罪を詫びて死ね」

本當に殺すわけではないと思うが、片手をあげて何かをしようとする素振りをするメアリーを優希は後ろから止める。

「皐月の前で騒な力を使うのはよせ。それにお前が夢の中で何を食おうが俺もこいつらも知ったこっちゃねぇんだよ。分かったら皐月の方を手伝ってこい」

上げた腕を摑む優希の手を振り払い、彼は不機嫌そうにしながらも皐月の方へ。

皐月は、両手両足を拘束したうえでだが、怪我をしている盜賊達の手當てにあたっている。

死んでしまった者に対しては、せめてもの供養として死を綺麗な狀態にしてやり土に埋めている。

まだ命が消える時に慣れていないということを、皐月の悲しげな顔が語っている。

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低級魔界に行けるだけの実力をジークが持っていることは皐月も知っている。だが、普段の溫厚さを考えると死累々な場所が似合わない人であると認識している。

今回のような襲撃に逢うことは珍しくない仕事だ。だから恩恵者ではない商人は護衛を雇うし、恩恵者の商人はそれなりに強い。

殺さなきゃ殺される世界。それでも、ジークには人を殺してほしくないと思う皐月がいる。

だから後で話をしよう。そう思いながら皐月は、埋めた死に土を被せた。

背後で戦闘の後処理をしている中、優希は縛り上げた三人の盜賊の前に立って、その緋の眼をぶつけた。

メアリーとは別の、平気で命を奪い取るような、背筋が凍る冷徹な視線。

さっきとは違った恐怖心に耐え切れず、盜賊達はんだ。

「頼むッ! 今まで奪ったもんはすべて渡すから殺さないでくれ!」

「おぉっ俺達は雇われただけなんだ!」

「そ、そう。金で雇われたんだ。その金も渡すから命だけは!」

盜賊は金で雇われたと言っている。

このじだとグランドールが雇っているようには思えない。

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グランドールを筆頭にした一味を雇っている誰かがいる。

「雇われたってんなら、何故この竜車を? 誰でも良かったのか俺達を狙ったのか。教えてくれたら殺しはしない」

優希が聞くと、縛り上げた盜賊の真ん中の奴がすぐに口を開いた。

「俺達を雇ったのはニシキとニイオっていう二人組だ。奴らは神を持っていて仲間の何人かは一瞬で死んだ。それに奴らはその神を複製出來るって言ったんだ。だからグランドールの兄貴はその話に乗った。それが本當に出來たなら俺達の名は帝國中に響き渡る。それにあくまでも雇うと言って金まで出してくれるんだ。これほど味しい話はない」

「つまりお前らは神を複製する為に必要な素材を集めてたってわけか。んで、お前らが震え上がるその神ってのはどんなのだ?」

優希が尋ねると、今度は左にいる奴が口を割る。

「見た目は金屬製の筒だ。だが、ただの筒じゃねぇ。凄んげぇ音が鳴ったと思ったら仲間が一人倒れた。額にが開いてが噴き出していた。【堅護】で守っても凄まじい激痛が走る威力の何か。何が起こってるのか分からねぇ。だが、目に見えない攻撃をけてるのは理解できた」

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「…………」

男の話を聞いて優希は顎に手を當てて考え込む。

恩恵者ですら見えない攻撃ができる神。それを複製出來るなら優希もその話に乗っかりたい。

それに、盜賊を雇った奴にも興味がある。

「分かった。約束通り命は助けてやる。なんなら後ろで倒れてる奴は衛兵に突き出すがお前ら三人は見逃してやってもいい。ただし條件があるがな」

「條件?」

「あぁ。俺をそのニシキとニイオに會わせろ。それが條件だ。會わせてくれた後は勝手にしていい」

「……ああ分かった。案するぜ」

********************

優希達は三人の盜賊を連れて鋼の都『メタリカ』を東に外れた集落に訪れていた。

帝都等の街並みは中世にでもタイムスリップしたような覚を覚え、その覚を今優希はもう一度味わっている。

さらに昔、日本でいうなら彌生時代のようなじだ。

にかかればすぐ倒れそうな木の柵、木と藁で出來た住まい、ここに來るまでにあった田畑はこの集落にいる人たちのものだろう。

「いっちゃ悪いが、マジでこんなところにいるのか? 神を複製するならここだと設備も環境も悪いだろ。せいぜい刀が打てるぐらいじゃねぇか」

を複製すると聞いていたので、てっきりメタリカにいると思っていた。だが、ここは工業ではなく農業が盛ん。刀を打つくらいといったが、その設備があるかすら危うい。

「ここは俺達が五年前から拠點にしてた場所だ。集落の連中は殺されない代わりに栽培した作の三割を獻上して、俺達の腹を満たし、俺達が商人から奪った皮や布で服を作らせ、道なんかはメタリカで換金する。そうやって俺達は過ごしていた」

「命を資産として回してるのか。盜賊のくせに集落の経営かよ」

集落に覇気がじられないのは、あくまでも生かされている環境だからだろうか。

「でももうそんな生活を送らなくて済みますね。皆さんの笑顔が見れるといいですけど」

荷臺から顔を出す皐月。

グランドールが死に、盜賊の大半は衛兵に捕まってしまった今、集落の人々が作類の獻上をしなくて済む。

「だといいがな」

荷臺から同じ景を見ていたメアリーが冷たく言った。

皐月が首をかしげているのを見て、優希はメアリーの考えを代弁する。

「野蠻な盜賊に支配されていると言われれば悪い印象を持つが、逆に言えば既に盜賊の保護下にあるってことだ。だが、支配者が消えた今、ここは他の盜賊に襲撃されるかもしれないし、魔が襲ってくるかもしれない。ここの人達に戦うがない以上、誰かに守ってもらわないといけないってこと」

集落の今の狀態は、行ってしまえば土地が開いたということ。

他の盜賊による支配や殺、帰屬による土地開発で住まいを追われたり、魔に狙われて殺される。

ここの集落の人が幸せに暮らすのならば、武力、権力的に力を持った優しい心の持ち主に保護してもらうぐらいだろう。

「だから絶対に賊の壊滅はここの連中に言わない方がいい。謝されるのは一瞬だけで、下手をすればその後は一生恨まれる。私達に責任が持てない以上はそっとしておいた方がいい。バレなければ私達は関係ないからな」

メアリーが笑みを浮かべてそう言った。

皐月は納得しながらもあまりいい表は浮かばない。

実際皐月は荷臺に隠れてただけで一切関係ないのだが、優希を仲間として認識している以上、罪悪も共有してしまうのが彼だ。

まあ、優希には罪悪など微塵もないが。

「ここだ」

盜賊の一人が言った。

集落よりし離れたところにある家屋。集落とは違い木材と石でしっかりとした構造の建屋が、盜賊のアジトだったのだろう。

優希は竜車から降りると、三人の盜賊の一人の腕を摑む。

そのまま他の二人に視線をやって、

「案ご苦労。お前らはもう行っていいぞ」

リードが外れた犬のように、二人は走って逃げていく。

相當優希とメアリーが恐ろしく見えていたのだろう。

そんな二人の背中を見て羨ましそうな顔をする殘された男。

「皐月とメアリーは外で待っててくれ。ほら行くぞ」

強引に男を連れて行き、建屋の扉を開いた。

盜賊のアジトだけあり酒と獣の臭いがり混じった空間。

掃除もされていないのか、埃っぽさもある。

そんな住処としては劣悪な環境に、優希はあからさまな嫌悪が顔に出るが、中にいた二人を見て表は戻った。

一人は力士のような重量のある男。贅という贅に纏う男。

もう一人は対稱的にヒョロヒョロの男。長な為筋の無さがより目立つ男。

デブとガリガリ、と骨、ワイドとロング。

そんな単語が優希の脳裏に印象付けられる。

「お、戻ったでござるか? おや、そちらの仁は?」

ガリガリの男が眼鏡を押し上げて言った。

「実はアンタらに會いたいって言うんで連れてきやした」

そう言って男は優希の顔を窺いながらその場を去った。

盜賊の男の事だとどうでもいい。今は目前の標的相手にしか興味が無い。

錦 司《にしき つかさ》と新尾 一平《にいお いっぺい》。

優希のクラスメイトが、今、目の前にいた。

名前を聞いた時に予想はしていた。

だが、いざ目の前に姿を現されるとが沸騰するような覚が襲ってくる。

「初めまして。僕はジーク。旅商人をやっている者です。何やら面白い事をやっているみたいでしたので一噛みしたいなと思いまして」

ビジネススマイルを決める優希。

彼ら二人には爽やかな青年という印象が刻まれて、クラス一のデブ――錦が優希に近づいた。

「面白い事? 一何のことですかなぁ」

「ほら、何やら神の複製をしようとしてるとか」

わざとらしく白を切る錦と、それを笑顔で返す優希。

「神の複製。もしそれが出來たのなら天才魔道技師アルミナの再來、いやもしかしたらそれ以上になるかもしれません。言わば金のなる木、商人として黙っていられませんよ」

言うと今度は新尾が優希に近づいて、

「ジーク殿と申されましたか……小生らは確かに神なるものの複製を試みているでござるが、その計畫に貴殿が関わることで生じるメリットの提示を要求するでござる」

眼鏡を指で押し上げて、レンズ越しで笑みを浮かべる。

その瞳に嫌悪というのはじられない。

利益さえ提示すれば、計畫に參加させてくれるのは間違いないだろう。

「まず一つ、僕は商人ですので、神複製に必要な材料をタダで提供できます。盜賊を雇って略奪行為は指名手配される恐れがあります。それに比べれば商人から素材を手にれられる。これほど好都合なことは無いはず。それに盜賊の皆さんはここに來るまでに衛兵に突き出したので、素材を調達する當てがいるはず」

優希の話に耳を傾けていた二人は、盜賊が衛兵に突き出されたと知ってあからさまに肩を落として落ち込んだ。

「マジでか。クソッ、折角大金積んで雇ったのに!」

「だから言ったでござるよ。盜賊なんかより眷屬雇った方が良いって」

アルカトラに來た際に支給された金を使っていたようで、盜賊が捕まったと聞いた瞬間後悔の念に駆られていた。

だが、それもすぐに切り替えて、

「そういう事ならよろしくでござるジーク殿」

「我らは同志、言わば兄弟。よろしく頼むぜジーク氏」

錦が握手を求める。

その分厚いの手を、優希の赤眼が睨みつけると、

「よろしくお願いします」

笑みを浮かべて、その手を握る。

――こいつらと手を組むのは二度目か…………

そんなことを思いながら、優希の手は力士のように大きく厚い手を握りしめた。

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