められていた僕はクラスごと転移した異世界で最強の能力を手にれたので復讐することにした》83・漆黒の流星

「で、お二方が複製しようとしている神ってどういったものなんですか?」

盜賊からは轟音と共に人が倒れる筒の神と聞いているが、やはり実は見ておきたい。

協力関係にある今、神の正を隠す必要が無い錦と新尾は、警戒心を完全に解いて懐からそれを取り出した。

「これは……」

差し出されたのを手に取った優希。

こそ見たことは無いが、それが何かは分かる。

手に乗った瞬間、ずしんと重みをじる。

それは命を奪う力の重さ。だとしたら、今の優希には空気のように軽くじてきて。

「イギリス……って言ってもおそらく分からないですなぁ。とある國で作られた軍用中折れ式回転式拳銃ッ! モデルはウェブリーリボルバー、全長二六〇ミリ、弾は六連発シリンダーのダブルアクション! 鋼の都『メタリカ』で研究に研究を重ねて仕上げた逸品。素材は黒鋼蟹の甲羅を使った軽くて丈夫。グリップは蛇の皮を使って使用者が握りやすいように変化する優れもの。この世界でしか集められない素材で改良に改良を重ね、度、威力共に問題ない有効程を五〇メートルまで引き延ばし、弾丸は専用に改良した特殊な455弾を開発。我らの知識と熱、、思い、その全てを注ぎ込んだその名も“漆黒の流星シュヴァルツァメテオール”ッ!! おっと失禮。我としたことが理解出來ないことを長々と語って申し訳ありませんなぁ」

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徐々に熱を帯び始める錦の長広舌に圧倒され、よく舌が回るものだなと心しながら優希は“漆黒の流星シュヴァルツァメテオール”を見る。

優希が見た想は普通の黒いリボルバー。銃の知識など皆無に等しい優希だが、錦の熱い語りから凄いことは理解した。

確かにこの世界の遠距離武と言えば弓くらい。

マスケット銃すら存在しない世界でのリボルバーは神と言っても差し支えは無いだろう。

それに、この世界でしか得られない素材で作り上げたこのリボルバーは、元の世界のよりも能は良いようで。

錦に促されて優希はグリップを握る。

まるで優希の為に作られたように、グリップは手に合うように形を変えていった。

「中折式は威力の強い弾を使えないでござるが、この“漆黒の流星シュヴァルツァメテオール”は、素材の特を利用して特殊455弾の発を実現。特殊455弾の破壊力とさは、三センチくらいの厚さがある鉄板でもが開くレベルでござる。ただし反もでかい故多の筋力は必要でござるが、貴殿も恩恵者。問題なく扱えるでござろう」

あくまでも初めてそれにれるかのように扱い、慣れない手つきで弾を込める。

シリンダーに弾を込めて6発。手首から振り上げると銃が上がってかちゃりとはまる。

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「後はこのまま的に向けて、ここを人差し指で引くだけで撃てるでござる」

部屋の中には木の柱に的の形に掘られた部分があり、その部分に優希は狙いを定める。

 リアサイトとフロントサイトを合わせて、的の中心部に定まった瞬間引き金を引いた。

「――――ッッ!!」

銃口から火が噴いて、耳に響く破裂音と共に柱の的からし上に外れてが開く。

木屑がポロポロと落ちて風を開けた柱。優希は予想以上の反に思わず“漆黒の流星シュヴァルツァメテオール”を見た。

硝煙の香りが鼻腔をくすぐる。

契約によって得た超覚によって、一でコツを理解した優希は再び構える。

目の覚を元に手元を補正して、引き金に指をかける。

狙いを定め、引き金を引こうとしたその時、

「――ジークさん、大丈夫ですかッ!?」

銃聲を聞きつけ、外で待っていた皐月が勢いよく扉を開けた。

********************

「それにしてもジーク殿と共に行していたのが西願寺殿だったとは思いもしなかったでござる」

「私もびっくりしたよ。錦君、新尾君にこんなところで會えるなんて!」

「我らのアイドルとこんな偶然、これも何か運命的なものをじますなぁ」

「ははは…………アイドル?」

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再會を喜ぶ三人。

西願寺に合えてテンションが最高にまで高まっている錦と新尾。

そんな二人の高揚度に西願寺は言っていることは本音でも苦笑いが出てしまう。

「それに隣の銀髪。ジーク氏は両手に華で羨ましいですな。お嬢さん、よろしければお名前を教えてください」

「近寄るな。汗臭い」

腕を組んで満面の笑顔でメアリーに近づく錦に、メアリーはまさしく豚を見るような眼で一蹴。

汗っかきの錦は、そんな彼の嫌悪剝き出しの表に、

「ごみを見るような視線! たまりませんなぁッ!」

まったくもって図太い神である。

「西願寺殿は髪を切ったでござるか。前の長髪もしかったでござるが、短いのも小生は好みですぞ」

「ぁはは……ありがとう……」

逆に新尾は西願寺との會話を楽しんでいるようで、笑顔を崩さないように口角を無理やり引きつっている狀態だ。

錦と新尾、二人の暑苦しいまでの詰めよりに、皐月とメアリーは壁に追いやられていた。

そんな二人に興味を示さず、優希は手に握る銃を見ていた。

威力は申し分ない。契約者の能力と研ぎ澄まされた五なら、素人の優希でも構えから発までコンマ數秒で行える。

優希は鑑定士の恩恵だけでなく武闘家の恩恵も持っている。

加えて“銀龍ヴィートのオ白籠手シルヴェル”と契約者の高い能力により接近戦なら十分に戦える。

だが、遠距離の攻撃手段が優希にはない。

勿論、今後は弓兵や魔導士の恩恵も手にれたいが、いくら數多くの恩恵が使えようとも優希が宿す魄籠は一つ。どの恩恵の恵を使ってもエネルギー源となる魄籠のマナは共有しているのだ。

つまり、優希にはマナを使わずに使用できる遠距離武しい。

それも弓では足りない。何故なら目の前に、弓よりはるかに強い武を手にしているからだ。

「おい……」

メテオールを見つめる優希に、苛立ちをじさせる聲が響いた。

視線を変えると、困った表の皐月と、眉間に皴を寄せるメアリーがこちらを見ていた。

「こいつらをどうにかしろ。鬱陶しい」

優希はメテオールを機に置いて、興狀態の錦と新尾を引きはがした。

すると多は冷靜さを取り戻した二人。錦は皮から溢れる脂汗を吹き、新尾は眼鏡をかけなおす。

「ごめん。そちらの銀髪が超絶戦士ゲルドマンのヒロイン、ソフィア氏に似てたから、テンションがハイになってたよ」

「小生も風変わりした西願寺殿に興を抑えれなかったでござる。申し訳ない」

謝罪を終えた二人は、優希と対峙する。

ここから先は渉の時間だ。

優希からすれば錦と新尾、この二人との協力関係はすでに破綻していると言ってもいい。

錦と新尾の目的はメテオールの複製。これほどのが複製可能となれば一気にこの世界で富を築くことが可能だ。

マナを使わず、威力を抑えれば恩恵者でない一般人ですら人を簡単に殺すことが出來る。

軍用武としての確立や、魔族がひしめく世界で護用に商人が持ち歩く。

そしてメテオールの技を起點に、更なる兵開発が見込め、第一人者として二人の名は響くだろう。

だが、優希はメテオールに求めるのは富や名聲といった価値ではない。

優希が求めるのは武としての価値ただそれのみ。

銃は広まれば一般人でも扱える代だ。今は強力な武でも、相手も持っていればそのアドバンテージが無くなる。

複製してもあと一丁。それ以上は不要だ。

だがどうする。目的は違えど、優希は二人との協力関係を維持したい。

メテオールは神ではなく、科學による武。故障もするし、手れも必要。

弾丸は有限。作れる人材がいる。言うなれば、この二人は優希にとって利用出來る存在だ。

〖思考命令マインドプログラム〗を仕掛けられる狀況を作らなければ。

その為に、二人の心を折る必要がある。

 

「それでは、打ち合わせを始めましょうか」

黒い思を覆い隠す笑顔は、この場の全員を欺いた。

皐月が軽く掃除をして、五人が卓に著いた。

時間は夜。皐月が作った料理が並べられ、五人はそれを口にしながら、談笑を楽しんでいた。

打ち合わせと言っても、必要な材料や製造方法、日程と計畫の確認で、それほど時間は要しなかった。

だから、話の容は錦と新尾について変わっていった。

「でも、どうしてこの村で盜賊を?」

皐月が切り出したのは、優希も気になっていたところだ。

優希達召喚者は、神――エンスベルからすぐに死なないように々なものを用意していた。

恩恵、眷屬資格、そして大金。

それに、召喚者の練度は元々アルカトラの住人と比べて上がりやすくなっている。

でなければ、今まで死とは無縁の世界で過ごしていた未年のが生きていけるはずがない。

優希でも、鑑定士という生き殘るうえでは不便な恩恵でも、アルカトラの住人に比べれば練度は上がりやすいし、同じ練度の恩恵者と比べても能力値はやや上回る。

ましてや二人の恩恵。錦は武闘家で、新尾は剣士。

優希達のように場所は選ばないが、ちまちま練度上げをしなければいけない援助系恩恵ではなく、魔族を倒せば効率よく練度を上げられる戦闘系の恩恵だ。

金で魔導士の眷屬を雇えば、今頃二人は天恵使いとなっているはず。

だが、実際は――――

名前――ニシキ ツカサ

恩恵――武闘家

練度――3500

天恵――【????】

名前――ニイオ イッペイ

恩恵――剣士

練度――3450

天恵――【????】

天恵どころか練度4000にも至っていない。

おそらく、銃の製作に勤しんでいたのだろう。

皐月の質問に、錦は額の汗を拭きながら口を開いた。

「ボク達は召喚された後、ノリノリで魔境に向かった。勇者になって世界を救えばみんなから讃の眼差が向けられると思って。けど、すぐ引き返したんだ……」

「……どうして?」

「恐かったんだ。見たこともない生が、ボク達を人間じゃなくて餌として見てる。それが分かった途端かなくなったんだ。まるで全に鉛でも流されたみたいだった」

つくづく彼らは、自分と同じだと優希は思った。

アルカトラに召喚されてから、優希はひたすら町に籠った。

魔族と戦う。そんなこと、恐ろしくて挑戦すらしないはずだった。

竜崎に連れていかれた魔境で、初めて対峙した魔族。

ここで魔族と戦うことが出來たのは、近くに助けてくれる存在がいたからだ。

竜崎は、優希が恐怖で怯える姿を楽しんではいたが、命の危機に陥った時に、助けられるだけの技量があった。

でなければ、優希も錦達と同じようにが竦んで逃げることすら出來ずに殺されていただろう。

「だからボク達は鋼の都に向かった。『始まりの町』ですらあの技力なら、一番工業が盛んな鋼の都なら、銃やミサイルのような化學兵が作れるんじゃないかって思った」

「最初は『メタリカ』で住み込みで銃製作に努めたでござる。しかし金は有限。生活費や材料費、施設の貸出代、最初に貰った金もほとんど使ってしまったでござる。唯一の救いは一丁だけなら完できたことでござる」

合點がいった。

彼らがこの村に滯在しているのは生活費を浮かすためだ。

この村は盜賊が支配していた。銃で數人殺してしまえば、グランドールですら警戒する。

そして、グランドールがイカれているほどの好戦的な格をしていない限り、戦いは避けたいと思うだろう。

この場を拠點に盜賊が材料を集め、メタリカで銃を作。そして、それを売りさばいて利益を得る。もしくは、銃を使って勢力圏の拡大を図る。

彼らは臆病だ。臆病だからこそ武を揃えて抗おうとしている。

そんな彼らに対して優希は――――

「なら、二人が世界に名をす勇者になれるよう、僕も僅かながら力を貸しますよ」

そんな建前を述べて、頭の中ではひたすらに作戦の計畫を立てていた。

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