《【新】アラフォーおっさん異世界へ!! でも時々実家に帰ります》第7話『おっさん、魔と戦う』前編

「ん、あれか?」

そこそこ調子よく食料を集めながら敏樹が森を歩いていると、し離れた場所にゼリー狀のものが現れた。

どぶのそれはゆっくりと形を変えながら移している。

《グリーンスライム:森などに生息するゲル狀の魔れたものを溶かして吸収する。理攻撃によるダメージはすぐに再生するため通常は魔などで対処するが、核を破壊すれば死ぬ》

これは敏樹が『報閲覧』を使って見つけ出した“いまの自分でも勝てそうな魔”である。

いずれ魔と戦わねばならないことはわかっていたので、とにかく弱い魔から始めてみようと思い、『報閲覧』で検索をかけた結果ヒットしたのがこのグリーンスライムだった。

「しっかし、こいつも臭いなぁ」

ゴブリンの悪臭も相當なものだったが、このグリーンスライムもなかなかの悪臭である。

ゴブリンの悪臭が的なものだとするなら、グリーンスライムの臭いは環境的なものといえばいいだろうか。

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長い間放置した花瓶の水の臭いに近い。

「さて、いっちょやりますか」

最後に核の位置を確認したあと、タブレットPCを〈格納庫〉に収めた敏樹は、しドキドキしながらスライムに近づいていった。

まずはグリーンスライムの能力をし把握しておくため、近くに落ちていた木の枝を持ってつついてみる。

「うおっ?」

木の枝はグリーンスライムにれた瞬間、粘著テープで絡め取られたようにかなくなった。

そして徐々にだがグリーンスライムのに引っ張られるように取り込まれていく。

「よっこらせっ……と」

とはいえし踏ん張れば耐えられる程度であり、敏樹は10秒ほど様子を見たあと、枝を引き抜いた。

「おおー、ちょっとだけ溶けてるな」

グリーンスライムに取り込まれていたあたりがわずかに溶けているのが見てとれた。

これに素手でるとそれなりにダメージをけるかもしれない。

今回は『報閲覧』で事前にその存在を知っていたが、どぶのスライムはある程度森に同化しており、油斷すれば見落としてしまいそうではあった。

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うっかり踏まないように気をつける必要はありそうだ。

敏樹は両手でしっかりとトンガ戟を構えながら、ゆっくりとグリーンスライムに近づいていく。

そしてそのに、しいびつな球狀の核が見えた。

スライム本から10センチほど離れたところまで近づいた敏樹は、トンガ戟を地面を耕す要領で核をめがけて振り下ろした。

ブニュリとわずかな抵抗をじつつも、トンガ戟の耕作用刃はスライムのを突き破り、そのまま核を貫いた。

核を破壊されたグリーンスライムは、ドロリとし広がったあと、完全にきを止めた。

「倒せた……か?」

〈格納庫〉からタブレットPCを取り出し、『報閲覧』で死亡を確認する。

初めての魔退治は功に終わったようであった。

トンガ戟を伝わってじられた、スライムのを貫き核を破壊するは、あまり気持ちのいいものではなかった。

「うええ、これにるのか……」

敏樹はグリーンスライムの死骸を〈格納庫〉に収納すべく手をばしていた。

スライム系の魔は死ねば無害となる。

しかし、微妙な悪臭を放つそれにれるというのはあまり気分のいいものではない。

「ふー……おっし!!」

気合いをれ直した敏樹は、グリーンスライムの死骸を〈格納庫〉へ収めることに功した。

「で、これを解……と」

〈格納庫〉の『分解』には、魔の死骸を解する機能もあることがわっている。

だからこそ敏樹はりたくもないグリーンスライムの死骸にれてわざわざ収納したのだった。

「お、出來た」

グリーンスライムの死骸が〈格納庫〉の中で、と核、そして魔石に分かれたことがわかった。

敏樹はさっそく魔石を取り出してみる。

それは小指の先程度のくすんだ黒い小石のようであった。

「これが、魔石か」

この世界の魔に魔石というものを宿している。

魔石は魔の力の源ではないかといわれているが、詳しいことはわかっていないようだ。

とにかく魔、多くの場合は心臓の中に魔石を宿しているのである。

そしてその魔石は、この世界における重要なエネルギー源であった。

この世界には魔道と呼ばれる、魔力を力源とした機械のようなものが存在し、その魔力の供給源として魔石が用いられている。

いずれ人里に出ればこれを売って生活費と出來るだろうし、持っておいて損はないと思われる。

その後敏樹は周りを警戒しながら森を歩き、グリーンスライムを數匹倒していた。

森を歩く際は〈視覚強化〉や〈聴覚強化〉など覚強化系のスキル、〈気配察知〉〈魔力知〉などの探知系スキルを発しながら慎重に進んでいた。

これらのスキルは意識して集中することで発し、覚強化系はHPを、探知系はMPを消費するようであったが、〈無病息災〉の回復ペースがし落ちる程度の消費量だったので、常時発しておくことにした。

そうやって森の中を歩いていた敏樹は、再びゴブリンを発見したのだった。

**********

そのゴブリンは1匹で行していた。

もちろん、単獨行をとっているゴブリンを『報閲覧』で探したのであるが。

「よっしゃいくぞコノヤロー」

敏樹は自を鼓舞するようにそうぶと、しっかりとトンガ戟を構え、ゴブリンに向かって歩いた。

「グゲッグゲッ!」

向こうも敏樹に気付いているようで、木の棒を構えたゴブリンは、敏樹を威嚇するようにわめいた。

短時間〈影の王〉を使って不意打ちを食らわせるということも可能ではあるのだが、この世界でかなり弱い部類にるゴブリンをまともに倒せないようではこの先ここで生きていくのもままならないであろうと思い、正面からぶつかることにしたのだった。

このゴブリンが持つ木の棒は棒程度の長さであり、敏樹が持つトンガ戟の半分程度の長さしかない。

つまり、リーチに関しては敏樹のほうが優勢である。

敏樹はし広く足を広げて腰を落とし、トンガ戟を頭上に構えている。

柄の末端――槍でいうとろこの石突き――のほうを持つ右手を高く上げ、斜め下に向いた刺包丁の切っ先がゴブリンを狙っていた。

なかなか堂にった構えである。

ゴブリンのほうは、木の棒を振り上げて威嚇したものの、敏樹に反応がないとみるや木の棒を振り上げて走り込んできた。

「ゲギャギャー!!」

棒を振り上げた無防備な姿で突っ込んでくるゴブリンを、敏樹は半の構えで迎え撃つ。

額ににじんだ脂汗が頬を伝う。

早鐘に打つ心臓がいまにも口から飛び出そうだったが、敏樹はそれに耐えながら、ゴブリンの接近を待った。

相手の位置をしっかりと見據えつつ、敏樹は攻撃モーションに移った。

軸足に重心を移しながら狀態をひねり、高く掲げた右手を下げつつトンガ戟を引く。

「オラァッ!!」

そしてゴブリンを間合いに捉えた瞬間、気合いとともにトンガ戟を突き出した。

軸足でしっかりと大地を蹴り、をひねりながらその力を腕に乗せる。

突きを繰り出すタイミングといいフォームといい、素人は思えないほど見事なものであった。

それもそのはずで、敏樹は〈短槍〉スキルを習得していたのである。

スキルレベル1であってもあるのとないのとでは大違いであった。

スキルを習得した瞬間、敏樹は短槍の使い方をなんとなく把握しており、それをうまくトンガ戟で再現できるよう一時間ほど素振りを続けていたのだった。

たかが一時間と思うなかれ。〈無病息災〉を持つ敏樹は常に全力でけるのである。

そしてそれは“疲れない”のではなく“疲れてもすぐに回復する”のであり、両者には大きな違いがあった。

一回の素振りでわずかに損傷した筋が回復することで筋力が、わずかな疲労が回復することで力が増強されるのである。

それはもちろん微々たるものであるが、ちりも積もればなんとやら、である。

敏樹が繰り出したトンガ戟の穂先――すなわち刺包丁の切っ先――は、見事ゴブリンの首に直撃した。

それはゴブリンの首の中心をし右にずれたあたりを捉え、相手が走り込んできた勢いも相まって、繰り出された刃はその首を半ば切り裂くように貫いた。

「ゴゲェ……」

くぐもったようなうめきを発しながらゴブリンが自分に向かって倒れ込んできたので、敏樹は慌ててを翻しながらかわした。

ドサリと音を立てて地面に倒れ伏したゴブリンは、やがてかなくなった。

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