《死に戻りと長チートで異世界救済 ~バチ當たりヒキニートの異世界冒険譚~》第1話『見知らぬ世界』

俺は薄暗い森の中を全力で走っていた。

たぶん今は晝ごろなんだと思う。

時々だけど木々の間から差し込む日差しは、かなり高い位置からだったし。

「クソッ……! 始まってすぐにダッシュしてるってのに!」

無駄口を叩かず走ることに集中したほうがいいのはわかっている。

でも、どうしても悪態をついてしまう。

呼吸をするのも一杯の狀態なのに、獨り言が出てしまう。

《……悔い改めい、バチ當たりもんが……》

うるせぇ!!

俺みたいな奴なんざいくらでもいるだろうが!

家族に迷かけた? 働け? わかってらンなこたぁよ!!

でも無理なもんは無理なんだよ!!

《……世界を救うのじゃ……それがお主に科せられた罰なのじゃ……》

冗談じゃねぇ!!

大したチートもなしで世界なんざ救えるかよ!!

どんなムリゲーだよ!!

《……お主が世界を救うまで……》

チクショウ……チクショウ……!!

もう……足音が近い。

なんでだ?

5回死んだ!!

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もう、終わりにしてくれよ……。

「ぐぁ!! あ……、チクショウ……痛ぇ……」

背中に何かがぶつかる。

そして背中からを貫く熱い痛みに襲われる。

元をみると、ドリルのような螺旋模様のある獣の角が飛び出ていた。

地獄のような痛みと苦しみが全をめぐる。

でも、それ以上に嫌なのが、なんとも言いがたい”恐怖”。

”それ”は足の先から徐々にせり上がってきて、下っ腹のあたりに溜まるんだ……。

そして”それ”はその後、下っ腹を中心にじわじわと全を蝕むように冒していく……。

なんだよこれ……。

もう5回も経験してるのに、全然慣れねぇ……。

嫌だ……、怖い……、もうこんなのやめてくれよぉ……。

……………………

………………

…………

……

《……それは終わらんよ……》

クソッ!!

結局またここかよ……。

**********

俺は山岡勝介。

大卒以降ずっと家に引きこもっていたエリートニートだ。

俺には両親と妹が1人いる。

親父はもう諦めたのかなんも言ってこねぇ。

お袋は床ドンすりゃメシは持ってきてくれる。

妹は……こないだ泣きながら「頼むから死んで。行方不明でもいいから」っていわれたな……。

なんか俺のせいで結婚できないんだとよ。

いや、まあそれは申し訳ないけどさ、自分で死んだり蒸発できたりする勇気がある奴は引きこもったりしないんだぜ?

まあそんなじで家族に迷をかけつつのんべんだらりと生きてたんだが、ちょっとしたマヌケな事で俺は死んだらしい。

いや、死にかけてんのか。

そこで神さまっぽい奴に會って、なんやかんや説教された後、異世界に飛ばされることが決まった。

なんでも親不孝で妹にも迷かけてその上バチ當たりな俺は、この世界を救うことを義務付けられたらしい。

しかしそこはそれ、俺もエリートニートだからして、ネットでラノベなんかは読み漁ってるわけよ。

ってことはあれだ、異世界転生ってやつだ。

正直わくわくしたよね。

だって異世界転生だぜ?

いや、正確には転送って言われたかな。

転生ってのは元の世界で死んで、新たな生命として異世界に生まれ直すことなんだって。

んで元の世界からそのまま異世界に飛ばされるのが異世界転移、あるいは召喚。

で、俺の場合、元の世界のは辛うじて生きてるんだと。

その上で、新しい世界に適応した、元の世界のに似たを用意してもらって、そこに魂だけ転送されてるらしい。

そしてなんと、この世界を救った暁には死にかけてる俺を生き返らせてくれるんだと。

しかも功績次第じゃなんらかの報酬もくれるらしいんだわ!

今まで家族に迷かけてきた分、利息つけて返せるぐらいの報酬は最低限保証されるってよ!!

こりゃもうサクッと世界救ってみんなハッピーってじで行こう!!

……と思ったんだけどな。

いろいろ説明けていざ転送!ってなって、気がついたらこの薄暗い森の中にいたってわけ。

異世界に來たからには、まず確認するよね?

そう、ステータスだよ。

だから目が覚めてすぐに俺は念じたわけよ「ステータス!」ってな。

そしたらさ、出たよ。

マジで出たんだよ、ステータス畫面が!!

異世界モノっつったらチート能力だよな!!

ってわけでステータス畫面を詳しく見ようと思ったら……、いきなりドンッっと背中にきたわけよ、衝撃が。

の中心が熱いっつーか痛いっつーか、ほんとシャレに何ねぇじでさ。

そっから中に激痛が走って、しばらくしたら”それ”がきたんだよ。

足元からゾワゾワってさ……。

それが徐々にせり上がってきて、下っ腹あたりにモヤモヤと溜まるの。

なんつーか、すげー怖い。

何が怖いのかわかんねーけど、とにかく怖い。

一刻も早く逃れたいのにき取れねーし……。

んで、それが今度は全に広がるようなじになって、だんだん視界が暗くなってくる。

あ、これが死ぬってことなんだなって思ったら、急に視界が開けたんだ。

最初とおんなじ、薄暗い森の中。

何がなんだかわからなくてボーッとしてたら、また背中に衝撃だよ……。

おんなじこと繰り返して、また同じ場所で視界が開けた。

だから今度は、振り返ってみたんだ。

そしたらいたね、ヤツが……。

ウサギなんだよ。

形はウサギ。

でも大きさがヤバい。

大型犬ぐらいある。

で、もっとヤバいのが角つの。

そう、角が生えてんの、頭から。

なんかドリルみたいな長いのが。

(……なんだよコイツ、ヤベェじゃん)

って思ってたら飛びかかってきた。

で、を角で貫かれてアボン。

そしたらまた同じとこから。

……………………。

ここまで來たらもう分かるよ。

アレだろ、”死に戻り”ってヤツ。

でもさ、ホント死ぬのヤなんだよ。

痛いのもあるけど、あの怖いのがとにかく嫌。

ホント二度と味わいたくない。

だから、なんとかしようと思ったんだ。

異世界といえばチート能力だろ?

魔法でも出ねぇかと思って念じてみたんだ。

何も出ねぇよ……。

みぞおち貫かれてまた同じとこから。

振り返ればヤツがいる……。

まあチートは理系かもしれないしな。

おもいっきりぶん毆ってみたわ。

……ダメだったよ……。

今度はこっちから突っ込んだせいでやられたよ……。

……………………。

これが罰?

死に続けるのが罰?

いくらバチ當たりっつっても、これはマジ勘弁。

こんなんだったら死んだほうがマシだっての!

そしたら、一応死亡保険ぐらいかけてるだろうし、その分で多なりとも今までの迷料家族に払えるじゃん?

なによりこの先何十年とかかる俺の生活費なんかも浮くわけだし、こりゃもう終わりでいいやッて思ったわけよ。

暗くなっていく意識の中で俺は念じたね「報酬とかいいから、もう終わりにしてくれ! 俺もう死んでもいいから!!」ってさ。

でも5回目の死に戻りは否応なしに訪れたよ。

今度は視界が開けた瞬間、後ろも見ずに一目散に逃げ出したんだ。

で、ご存知の通り5回目もアウトだったよ。

ホント、マジ勘弁してしい……。

かけてすんません……。

バチ當たりですんません……。

だからもう、終わりにしてください……。

俺はもう、死んでもいいです……。

どうせ生きてたって何の役にも立たないんだしさ……。

……………………。

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